7月14日(水)この映画が観たい!

 よしだまさしさんが『まだまだ熱中! フィリピン映画』(私家版)を送ってくれたので、またまた読みふけってしまった。昨年7月の『熱中! フィリピン映画』に続く第2弾である。私、フィリピン映画は1本も観たことがない。まったくの素人だが、前作の『熱中! フィリピン映画』も、今回の『まだまだ熱中! フィリピン映画』も、くいくい読んでしまうのは、よしだまさしさんがとても楽しそうに書いていて、それが行間から伝わってくるからだ。読んでいるだけで、こちらも幸せな気分になってくる。

 たとえば今回は、前作のように「とほほ映画」もたっぷりと紹介されるものの、フィリピンの黒澤明とも言うべきマルリー・ディアス=アバヤを正面から紹介するなど、実に本格的だ。そのくだりの一部を、少しだけ長くなるが、引いておく。

 僕が初めて観たアバヤ監督の作品は1984年の『ベビー・チチ』だった。当時、僕はマニラでウロウロしていたのだけれど、仲のよかった連中が「オレたち、エキストラで映画に出たんだぜ。観に行こうぜ」と言うので、みんなで連れだって観に行ったのだった。

 ヴィルマ・サントス、フィリップ・サルヴァドールというフィリピンを代表するトップスターの出ている映画だったのだけれど、フィリピン映画に関する知識など皆無のこちらにそんなことがわかるわけもない。

 しかも、タガログ語などまったく聞き取れないのだから、細かいストーリーもまったく分からなかった。だけど、それでも十分に面白かった。前半はエロティックな場面もあるギャング映画&恋愛映画。途中でヒロインは監獄に入れられ女囚映画となり、最後はヒロインが力強く人権を訴える社会派ドラマとなる。なんともごった煮的な作品であったのだけれど、一瞬たりとも飽きるということがなかった。

 当然、監督の名前など知らないまま「なんか、すごい映画を観たな」という印象を抱えて映画館を出たのだった。

 すごいでしょ。タガログ語がわからないのに、「なんか、すごい映画を観たな」という印象を与えてくれる映画なのである。

 こうやってまず監督が克明に紹介され、その後に作品紹介が続くという構成なので、とても理解しやすい。こういうところもこの本の素晴らしさの一つだ。

 しかししかし、私がいちばん観たいと思ったフィリピン映画は、2018年に公開された「バイバスト」という映画だ。まず、エリック・マッティという監督が紹介される。映像がひたすらカッコいいハードボイルド「牢獄処刑人」にも強く惹かれるが、よしだまさしさんの紹介を読むと、「バイバスト」にぐんぐん惹かれていく。

 これは「格闘家のブランドン・ヴェラと人気女優のアン・カーティスが主演する本格的なアクション映画で、スラムを舞台に延々と壮絶なバトルが繰り広げられるという異様なエネルギーに満ち満ちた作品」で、よしだまさしさんは次のように書いている。

 2016年頃に、この作品の撮影のためにアン・カーティスがトレーニングを始めたという動画がネットにあげられ、カリというフィリピンの武術を本格的に取り入れている作品としていやが上にも期待が高まった。だが、いざ公開されてみると、そんな生やさしい作品ではなかった。エグイまでに歯止めのないアクション描写が延々と続く、とんでもない作品だったのだ。

「エグイまでに歯止めのないアクション描写が延々と続く」んだぜ。観たいなあ。

よしだまさみ.jpg