【今週はこれを読め! エンタメ編】小説家・津村記久子へのインタビュー『ふつうの人が小説家として生活していくには』
文=高頭佐和子
小説家・津村記久子さんへのインタビューをまとめた1冊である。どんな子どもだったか。どんな青春時代を過ごしたか。就職してから起きたことや、小説家になるまでのこと、現在の生活についてなどの話が、出版元である夏葉社の島田潤一郎氏との対話のような形で進んでいく。
まず最初に驚かされるのは、小さな頃から物語を書いていた理由だ。
「絵本を熟読して、親にも買ってもらうけど、すぐに足りなくなるから、たぶん自分で書き出したんじゃないですか」
「基本はお金がなかったから。......自分で書いたらタダやし、なんか人に頼まんでいいし、楽」
タダだから自分で書く⁉︎ 非小説家の私から見るとめっちゃ斬新な発想だ。「栴檀は双葉より芳し」っていうことわざを久々に思い出してしまった。だが、生まれながらに才能のあった子どもが、大人になって小説家になってよかったね、ということがこの本のテーマなわけではない。
自分の好きなことを大切にすることが、人生にとってどんなに重要かということがわかる本なのである。好きだった音楽や小説、スポーツ観戦について語る著者の言葉は生き生きとしている。読んでいる私はあまり関心のないことも多いのだけれど、津村さんがどれだけ熱心にそれを追ってきたのかということはわかる。好きなことを「掘る」ことが生きる力になって、そうやって身につけた力が、子どもの頃から続けてきた「書くこと」を仕事にすることに繋がったということが、具体的なエピソードを交えて語られていくのである。
人から何を言われても、好きなことを手放してはいけない。たとえそれが無駄に思えても、無駄にはならないから。
ずいぶん前に、年上の友人からそう言われたことを思い出した。今よりずっと若かった私は、そうだよね、人生には楽しみが多い方がいいよね、というくらいにしか考えなかった。好きなことととことん向き合う時間があなた自身をつくるし、あなたを助けてくれるんだよと、その人は教えてくれていたのだということに、私はこの本を読みながら初めて気がついた。
「ふつうの人が小説家として生活していくには」という題名だが、小説家以外のどんな人にとっても、生活していくために大切なことをきっと教えてくれる本だ。津村記久子さんの小説を読んだことがない人にも、手にとってほしい。(読み終わった後には、『水車小屋のネネ』〈毎日新聞出版〉もぜひ)
(高頭佐和子)

