【今週はこれを読め! コミック編】60年代ロンドンのスタイリッシュな探偵物語〜竹内絢香『ロンドンバディーズ』
文=田中香織
ロンドンが世界のポップカルチャーの中心だった時代。当地発の若者文化は一世を風靡し、その熱狂は「スウィンギン・ロンドン」と呼ばれた。だが、ようやく見つけた下宿先へ、手荷物一つで向かった青年・クリストファーにとって、そんな華やかさは縁遠いものだった。
下宿の大家である女性は、「天涯孤独で保証人は出せない」「ただし保証金は既定の三倍用意できる」というクリストファーの申し出に、彼が何か事情を抱えていることを察するが、それ以上は問わず受け入れる。
そうして彼女が下宿内を案内するさなか、二人は廊下に倒れ込んでいる先住者・キディを発見する。血まみれのシャツに寝ぼけ眼、ボサボサ頭の彼にクリストファーは思わずたじろぐが、キディが自らの職業を「探偵」と名乗った途端、顔色を変えて──。
連載が始まったころにSNSで見かけて以来、本の発売を楽しみにしていた。鮮やかな色の表紙に目を引かれ、スタイリッシュなデザインに心が躍る。見開きのカラーページにくわえて、表紙カバーをめくった下には描き下ろしの4コマ漫画も収録されていた。このご時世にこれだけサービス満点で、それでいて定価も控えめなのだから、頭が下がる。
既刊『60sUKSTYLE』(徳間書店)によれば、著者は「幼少期からの英国好きが高じて脱サラ・渡英。ロンドンの美術大学に私費留学」し、帰国後に漫画家デビューしたという。小物や街の描写など、隅々にまで著者の「好き!」が感じられて、実に楽しい。
そんな著者の描く本作は、1話ごとの読み切り連作だ。クリストファーは奔放なキディに振り回されながら、即席の探偵助手となっていく。そして以降のエピソードではタイトル通り、この二人以外のさまざまなバディの物語が描かれていく。特に薦めたいのは、3話目に登場する女性二人だ。
職務に励む中で、性別ゆえの壁に直面する婦人警官・ホーキンス。ある日、店のショーウィンドウで目にしたミニスカートを、仕事に活かせないかと思いつく。彼女を接客したのは、いつか自分の店を持ちたいと願うブティック店員・ローズ。まるで異なる性格の二人だったが、ホーキンスの悩みを自分の身に重ねたローズは、警官として働きやすいスタイルを提案する。出来上がった服を前に、「女だから選べないものなんて なくなっていくわ」と告げるローズと、その言葉に目を輝かせるホーキンス。機転と共感で未来を切り拓く二人の関係性に胸がすく。
バディたちのこれからや、クリストファーの抱える秘密も気になるところ。読み返しながら続きを待ちたい。
(田中香織)


