
作家の読書道 第260回: 青崎有吾さん
2012年に『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞してデビュー、以来アニメ化された『アンデッドガール・マーダーファルス』やドラマ化された『ノッキンオン・ロックドドア』、最新刊『地雷グリコ』などで人気を博している青崎有吾さん。小学生時代は海外ファンタジーが好きだったという青崎さんが、ロジカルなミステリを書くようになった経緯は? ハマった作家、作品についてたっぷりおうかがいしました。
その1「「スーパーインドア」な少年」 (1/7)
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- 『ゲゲゲの鬼太郎(1) (コミッククリエイトコミック)』
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――いちばん古い読書の記憶を教えてください。
青崎:ハマっていたものでいうと、たぶんいちばん古い記憶は『ゲゲゲの鬼太郎』です。幼稚園の年長の頃に4回目のアニメ化作品が放送されていました。『地獄先生ぬ~べ~』も見ていて、その流れで妖怪好きになったんだと思います。鬼太郎の絵本とか、『鬼太郎ひみつ大百科』や『少年少女版 日本妖怪図鑑』、児童向けの妖怪の本もいっぱい読んでいました。戦隊ものの格好いいヒーローもいたのに、なぜか自分は鬼太郎が刺さったようで、当時の自由帳をめくると顔の片側が真っ黒な棒人間ばかり描かれていたりします。顔が髪で隠れた鬼太郎です。
それと並行して、シルバニアハウスとかリカちゃんハウスが好きでした。人形には全然興味がなくて、ドールハウスそのものや家具や小物に興味があったらしくて。ミニチュアに惹かれていたんですね。それを買ってもらって、鬼太郎の指人形を使って一人でごっこ遊びをしていました。
――ごきょうだいはいらっしゃるのですか。
青崎:二つ離れた弟がいて、弟とも遊んではいたんですけれど、一人で勝手にごっこ遊びをしていた記憶のほうが強いですね。
他にも細かいものや図解ものが好きで、「てれびくん」などの雑誌にウルトラマンの怪獣の断面図や戦隊ヒーローの巨大ロボの内部図解が載っていたので、よく眺めていたおぼえがあります。『輪切り図鑑』のシリーズを図書館で何回も借りては、船やお城の断面図も眺めていました。
――外で遊ぶタイプではなかったのですか。
青崎:スーパーインドアボーイだったと思います(笑)。外でも遊びましたけれど、みんなに「一緒に何かやろう」と言われても「僕一人で遊ぶから」と言って一人でごっこ遊びをしていました。自分でヒーロー役と悪役の一人二役をやったりして。
字が読めるようになってからは、絵本以外も読み始めました。流行っていた『おしいれのぼうけん』や、寺村輝夫さんの『ぼくは王さま』、『わかったさん』『かいぞくポケット』のシリーズを。それと、『こちらマガーク探偵団』のシリーズが好きでした。この「作家の読書道」の連載で今村昌弘さんも読んでいたと知ってびっくりしたんですけれど。あとはリンドグレーンの『名探偵カッレくん』や、岩崎書店版の児童向けの「シャーロック・ホームズ」シリーズも小学校低学年くらいで読んだ覚えがあります。
――「マガーク少年探偵団」のシリーズはこの連載でインタビューした時に万城目学さんも挙げてらして、万城目さん、裏表紙に載っていた探偵団の歌を暗唱されていたんですよ。
青崎:あ、僕も歌えますよ。「ボンボコマガーク探偵団 ペンペコ仲良し五人組 ブンチャチャ難問即解決 鼻のウイリー 記録のジョーイ......(以後すべて歌う)」
――憶えているんですか、すごい!(笑)
青崎:小学生の頃、勝手にメロディをつけてずっと歌ってたので。あのシリーズはちゃんと殺人事件も起きるし、「これは何か他の本とは違うぞ」という面白さがあるんですよね。小2のときにポプラ社版の江戸川乱歩の「少年探偵」シリーズも読み始め、その頃からミステリっていいかも、という気持ちの芽生えがあった気がします。
――漫画やアニメは好きでしたか。
青崎:高校生までは漫画家志望だったので、漫画のほうが好きでした。でも最初から家にあったコミックスは『ちびまる子ちゃん』と『ドラえもん』が数冊ずつだけだったので、古本屋で少しずつ漫画を集めていました。世代的に直撃したのは『ONE PIECE』ですね。僕が小1くらいの頃に連載が始まったのかな。最初は漫画を知らず、アニメの第1話を見たんです。オープニングでルフィの腕が伸びた瞬間に、子供ながらに「なんてすごいアニメが始まったんだ」と思い、コミックスも読むようになりました。田舎の祖父がお菓子やお米を送ってくれる時に、新刊を同封してくれていたんです。たぶん、僕が祖父にねだって「じゃあ送ってあげるね」ということで始まったと思うんですけれど。最初はそのシステムでよかったんですが、学年が上がるにつれ、書店で新刊が出たことが分かるようになるし、お小遣いでも買えるようになるので、もうじれったくて。新刊が出てから祖父が送ってくれるまでに2週間くらいタイムラグがあるし、たまに買い忘れたりもされる(笑)。なので荷物が届いてから開けるまで、「新刊が入っているか、いないか」とギャンブル気分でした。お菓子の下から新刊が出てくると嬉しかったですね。