『ロング ウェイ ラウンド』ユアン・マクレガー&チャリー・ブアマン

●今回の書評担当者●正文館書店本店 清水和子

  • ロング ウェイ ラウンド Long Way Round Chasing Shadows Across The World ―ユアン・マクレガー大陸横断
  • 『ロング ウェイ ラウンド Long Way Round Chasing Shadows Across The World ―ユアン・マクレガー大陸横断』
    ユアン・マクレガー Ewan McGregor,チャーリー・ブアマン Charley Boorman
    世界文化社
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 共に俳優である著者の2人が、バイクで世界一周の旅をします。実はユアンは13歳から、チャーリーに至っては6歳の頃から、バイクの魅力に取り付かれたバイカー種族なのです。2人が仲良くなったのも、撮影現場でバイカー同士だ、と分かったからです。バイク以外の事でも気が合い、今では家族ぐるみの付き合いです。この世界一周の旅はまずユアンが思いつき、休暇を取る為に「スターウォーズエピソード3」など3本の映画を立て続けにこなします。渋い顔のエージェントを頼る訳にはいかず、自分達で旅の為のオフィスを探したり、スポンサー獲得の為何社も営業に行ったり...と、ユアン級の俳優でも大変なんだな〜と映画界のシビアさも感じました。そしていよいよバイク選び!チャーリーには、バイク界のローリング・ストーンだぜ!と思う程、思い入れのあるバイクメーカーがあります。オーストラリアのKTM。しかし、色々あって最終的にKTMには決定できず、BMWになります。チャーリー、残念...。

 気を取り直していざ出発!(それにしてもこの本は、2人が交互に数ページずつ描いているが実際にはどうやって描いたのだろう?)ユアンもチャーリーも、あんなに世界一周だ〜と浮かれていたのにいざ家族と離れるとなると寂しくなってクヨクヨしたりして、2人には悪いけどプププと笑ってしまいます。ルートはロンドン→カザフスタン→モンゴル→アラスカ→NYでゴール。有名人という事もあってシンプルにいかない場合もあるけれど、国境をウイリーで越えたり(楽しそう)、同じ国の貧富の差にショックを受けたり、この旅の最大の目的であるユニセフの事務所にもいくつか行きます。ウクライナでは、初対面のヤング・デ・ニーロ似の男に、いきなり銃でいっぱいの家に歓待されてびくびくしたり。〈死の道〉〈骨の道〉といわれる険路もボロボロになりながら何とか走破します。ユアンは旅に出れば世界で起きていることから遠ざかる、と思っていたが最後には「世界はそれほど大きなものじゃない。」と感じる。前向きに。とても柔軟で心が広いなあ。

 2人は性格が違うけどいつもお互いを思いやっている。一緒に旅をしていても1人になりたい時はなる。その距離感がとてもよい。

 道端でボーッと見ていると、まるで車は部屋でバイクは馬のように感じます。バイクは剥き出しで挑んでいってるような気がします。ユアンが触発されたというテッド・サイモンのバイク旅行記「ジュピター・トラベル」。とても読みたいけど、洋書のみの発行だそうです。嗚呼すごく残念だ...。

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正文館書店本店 清水和子
正文館書店本店 清水和子
名古屋の正文館書店勤務。文芸書担当。名古屋は良い所です。赤味噌を笑うものは赤味噌に泣くぞ!と思います。本は究極の媒体だ〜。他の書店に行くのも図書館に行くのもすき。色々な本がすきです。出勤前にうっかり読んでしまい遅刻しそうになり、凄い形相で支度してることもしばしば。すぐ舞い上がってしまうたちです。(特に文学賞発表のときなど)すきな作家の本の発売日は、♪丘を越え行こうよ〜の歌が頭の中でエンドレスに流れてます。誕生日占いが「落ち着きのないサル」だったので、心を静めてがんばりたいです。