『でんせつのきょだいあんまんをはこべ』作:サトシン 絵:よしながこうたく

●今回の書評担当者●うさぎや自治医大店 高田直樹

  • でんせつの きょだいあんまんを はこべ (講談社の創作絵本)
  • 『でんせつの きょだいあんまんを はこべ (講談社の創作絵本)』
    サトシン,よしなが こうたく
    講談社
    1,512円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HonyaClub
    HMV&BOOKS
    honto

皆さんは今まで、どれほど大きいものを運んだ事があるだろう。
加湿器ぐらい? 漁船ぐらい? それとも東屋ぐらいだろうか?
皆さんは今まで、どれほど重いものを運んだ事があるだろう。
スーパーファミコンくらい? 冷蔵庫くらい? それとも東屋ぐらいだろうか?
そしてその時、どうやって運んだのだろう......動物に手伝ってもらったり、機械を使ったり、不思議な力を使ったりしたのではないだろうか?
現代人はとかくサボる。徹頭徹尾 己のチカラで運びおおせた事がある人など、ほぼ皆無ではないだろうか? 

そんなあなたにこそ、この本を!
己のチカラで巨大な獲物を運ぶその尊い姿にシビレるだろう。

アリたちが平和に過ごす世界......その平和が突如秩序が乱される
空から降ってきた真っ白な巨大な物体によって。
アリたちは騒然となる。困った時は今も昔も長老にすがる。
長老曰く「あれは...あんまん」......!!
更に「中にはあんこがたっぷり」と聞くに至っては狂乱の極みに到達。
だって甘いから! アリだから!
アリたちの壮大なプロジェクトが幕を開ける!
力を出すもの、知恵を出すもの、声を出すもの、それぞれに死力を尽くしてのビッグプロジェクト。古の知恵も紐解きながら、徐々に巣に近づけていく。
時には敵が! 生命の危険も冒しながらのまさに命がけの行軍が続く。
すべては、その"甘み"のために!

いやぁいやぁ......笑った。そして感動した。
普段なかなか本を読んで笑わないんです。滅多に笑った事がない。
でも、笑った。
物語もイイし、絵もまた秀逸。
独特のタッチで臨場感がビシビシ伝わってくる。
アリの頑張り、アリの哀切が読者の胸を打つ。
ホントウに面白い。

大人も楽しめる。もちろん子供に読ませても大丈夫。
「アリさんのお話だー」と、楽しんでくれるでしょう。
......でもこの本の奥行は、子供ではなかなか探りきれないような気もする。
とにかくページを隅から隅まで見て欲しい。セリフを味わって欲しい。
笑えるから。

帯を見ると納得。
「うんこ!」のサトシンと「給食番長」のよしながこうたくの強力タッグじゃないか! 
独特で強烈な絵本作家2人の夢のコラボだぁ。これはスゴイはずだ......。

疲れたとき、勇気づけられたいとき、心がクサクサした時、おすすめしたい。
きっと、凝った心をほぐしてくれる。

« 前のページ | 次のページ »

うさぎや自治医大店 高田直樹
うさぎや自治医大店 高田直樹
大学を出、職にあぶれそうになっていた所を今の会社に拾ってもらい早14・5年……。とにもかくにもどうにかこうにか今に至る。数年前からたなぞう中毒になり、追われるように本を読む。でも全然読めない……なぜだ! なぜ違う事する! 家に帰っても発注が止められない。発注中毒……。でも仕入れた本が売れると嬉しいよねぇ。