『BRUTUS 2012年12/15号』

●今回の書評担当者●リブロ池袋本店 幸恵子

  • BRUTUS (ブルータス) 2012年 12/15号 [雑誌]
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 年の瀬である。本屋の周辺でいえば、各種ベスト本の発表など年末年始に本を読みたくなるような企画で賑わう季節でもある。各紙誌でも様々な本の特集が組まれ、その一端を担う。そんな中、年末に恒例の本特集を組む『BRUTUS』が、そのひとつ前の号にちょっと変わった特集を組んできた。
 その名は「文芸ブルータス」。

「文芸ブルータス」は、文芸誌8誌の協力のもと、雑誌ブルータスが文芸誌をつくるという企画。『新潮』『群像』『文藝』といった純文学誌から、『オール読物』『小説新潮』『小説すばる』といったエンターテイメント文芸誌、『yomyom』『en-taxi』といった比較的新しい雑誌まで、幅広いジャンルの文芸誌から提供された小説と共に、対談やコラムが並ぶ、まるまる一冊の文芸誌特集。今年は、我らが『本の雑誌』でも文芸誌特集が組まれたが、文芸誌ファンとしては、文芸誌が注目されることは喜ばしいことである。
 
 さて、今回のブルータスで注目したいのは、内容はもちろんであるが、文芸誌を模したデザインだと思われる箇所がいくつもあることである。通常の目次ページがあるのにも関わらず、それとは別に観音開きの目次があったり、本文にざらつきのある紙(文芸誌では、もう少しすべすべした紙が使われている場合が多いと思うのだが)を使用したり、束のある造本になっていたり、文字組にも編集者の雑誌愛=文芸誌愛をひしひしと感じる作りになっている。

 斯く言う私にも、深くて大きい、本屋としての「文芸誌愛」がある。
 ひとつの雑誌に複数の作家の作品が掲載されている文芸誌は、単行本とは違った形で想像の力、フィクションの力に触れることができるメディアである。また、特集記事や小説だけではなく、音楽やアート、哲学などの文学を取り巻く様々なジャンルが掲載されている誌面には、文学の最前線を読者に伝えようとする編集者の思いが詰まっている。が、時にはつまらないと思ってしまうことがあるのも事実。しかし、たとえ面白くなかった号があっても、次にまた文芸誌を読みたくなるのは、文学の、そして編集の力なのだと私は思う。
 
「文芸ブルータス」に掲載された作品や記事は、ずっと憧れていた文芸誌へのラブレターのようであり、各文芸誌編集部からのコメントはそれに対する返信のようであった。そんなやりとりが、ちょっと羨ましくもあった。ともあれ、この特集をガイドに文芸誌を手に取る読者がいたら、とても嬉しい。

 これまでも、私にとって文芸誌は、文学の豊かさを教えてくれただけではなく、本屋としても、特集が面白ければ新しい号が出ても返品せずに継続販売したり、作家の特集号であれば作家のガイドブックとして文芸書の棚に差しておいたり、挙げ句の果てには文芸誌のフェアを組んでみたり、様々な場面で一緒に歩んできた存在である。私はこれからも、文芸誌をずっと応援していくだろう。

 そんな私にエールをくれた「文芸ブルータス」。ありがとう。

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リブロ池袋本店 幸恵子
リブロ池袋本店 幸恵子
大学を卒業してから、大学の研究補助、雑貨販売、珈琲豆焙煎人、演劇関係の事務局アシスタントなど、脈略なく職を転々としていた私ですが、本屋だけは長く続いています。昨年、12年半勤務していた渋谷を離れ、現在は池袋の大型店の人文書担当。普段はぼーっとしていますが、自由であることの不自由さについて考えたりもしています。人生のモットーはいつでもユーモアを忘れずに。文系のハートをもった理系好きです。