1月23日(水) 300本への道

 ちょうど1年前の当欄で、私が解説を書いた文庫の総数は、2011年の年末で290点であると書いた。先週の当欄に、2012年の解説文庫リストを載せたが、その数が11本。それでは300本を超えたのかと思うところだが、そうではない。

 私が勘違いしていた。もともとは北海道の山下さんが「北上次郎解説文庫リスト」を送ってくれたのがきっかけである。それが2007年暮れのことだ。それまで私、自分が何本の解説を書いたのか、まったく知らなかった。山下さんがつくってくれたリストを見ながら、そうか、それではこれをもとに完全リストをつくっていこうと思った。一から調べるのは大変だが、山下さんがここまでつくってくれたのなら、あとはこぼれたものを埋めていけばいい。

 というわけで、それから折りに触れ、おお、これも私も書いていたという文庫を古本屋の棚に見るたびに足していき、2008年からは当欄にも「解説文庫リスト」を載せ、そうしてリストを充実していったのだが、1978年7月刊の集英社文庫、生島治郎『殺しの前に口笛を』(これが私が書いた解説文庫の1冊目だ)から2011年末までの290本のなかに、純粋には「解説」と言えない文庫が含まれていることになかなか気がつかなかった。

 著者インタビュー(大藪春彦『凶銃ワルサーP38』徳間文庫)、鼎談(これは『素敵な活字中毒者』集英社文庫と、『幻!』徳間文庫で、お相手は椎名誠と鏡明、志水辰夫と森詠)、著者との対談(清水義範『普及版世界文学全集第1期』集英社文庫)、序文(アンソロジー『海を渡った日本人』福武文庫)、扉文(北村薫『六の宮の姫君』創元推理文庫)、再録(山田風太郎『甲賀忍法帳』角川文庫と、中山可穂『ザグラダ・ファミリア』集英社文庫。それぞれ富士見版と新潮版からの再録だ)と、解説とは言いにくいものが8本含まれていたのだ。そういうものまで山下さんは丁寧に拾ってくれていたのである。本当にありがたい。勘違いして単純にカウントするほうがおかしい。

 さらに、単行本や新書などに書いた解説を除くと、解説を寄せた文庫は、結論を書いてしまえば、2012年の年末で288本である。300にはまだまだ届かない。1978年から35年間で288本なら、年平均8本。たいしたことはない。私よりも多い人はいくらでもいるだろう。

 本年からしばらく一年の前半が他の仕事のために身動きが取れなくなりそうなので、今年からの文庫解説はおそらくここ数年の実績(だいたい年に10本)の半分くらいになりそうなので、あと12本書くには2年、場合によっては3年かかりそうだ。それまで元気でいたい。いや別に、解説を書くために生きているわけではないのだが。