WEB本の雑誌

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2月25日(金)

 とあるネット書店さんから「一度来て見ませんか?」とお誘いを頂き、おお、ならば前々から聞いてみたいことがいっぱいあったんですよとすぐさま訪問することにする。

 そのネット書店さんは高層ビルにあった。
 うう。僕はジュンク堂書店池袋店より高いところに行くと、急に落ち着きを失ってしまうのだ。ドキドキぶるぶる、おまけにもうひとつ苦手な「立派な受付」なんてのがあって、そこで名を名乗り訪問を告げると、まさに外資って感じのアメリカンスマイルを返されるではないか。うう。ヤバイ、もう僕、完全に正気を失っている。

 しばらく受付で落ち付きなくキョロキョロしていると担当者さんが見え「もうちょっと上になりますので」とさらに上に連れて行かれてしまうではないか。もうこの時点で僕の高さに対する限界を超えており、まさに「上の空」。

 打ち合わせするオフィスのなかへと入っていくと、こちらはこちらで、この『WEB本の雑誌』のシステムを制作しているB社同様、クリックの音しかしない無音の世界。いつも浜本の鼻をかむ音や事務の浜田の「キーッ」という吠え声なんてのに囲まれて仕事をしている人間には、信じられない静けさで、緊張にさらに追い打ちをかけられる。

 そんなガチガチの状況下、唐突に担当者さんが振り返り「僕、椎名さんの浮き球△ベースに参加したことがあるんですよ」なんて話しかけてくるではないか。

 最先端のネット世界と海辺に転がっているゴミを使ったあまりにアナログな野球がまったくかみ合わず、一瞬この人はオレをバカにしているんじゃないかなんて考えてしまったが、そうではなく本当にとあるチームで浮き球△ベースに参加していたようだ。しかも同じ大会に参加していたりしていやはや世間は狭いとというか、椎名の世界が広いのか。
 
 しばらくすると他の担当者さんもいらして、それぞれ名刺交換をさせていただく。その度に、肩書きについている仕事の役割がどんな仕事をする人なのか質問するが、親切丁寧に教わってもいまいち理解ができず「普通の書店さんでいうと仕入れですね」とか「棚担当になるんですかね」なんて、まるで兵隊の位で人を理解する山下清。うう、ほんとにオレってバカなんだなぁ。

 しかししかしここまで来たら恥も何もあったものかと、とにかくわからないことを質問すると担当者さんもあまりのバカが来たんでビックリしたのか、ひとつひとつ丁寧に教えてくれるではないか。長年の疑問がキレイさっぱり解消され、いやはや、やはり疑問は本人に聞くのが一番なんだな。ありがとうございました。

 生まれて初めてのネット書店見学会は、かなり面白く、そして刺激的で、その後は様々なことを考えてしまったが、それはまだまとまっていないので、いつの日にか書くとしよう。

2月24日(木)

 中野A書店さんを訪問すると文芸書の担当者さんが見あたらなかったので、他の書店員さんに所在を確認する。すると休みだと告げられるが、その後「あっ」と声をあげられ、いきなり「マー君、知ってる?」と聞かれるではないか。

 マー君? マー君? 椎名誠がマー君?
 ?だらけの頭を抱え、その書店員さんを見つめ返すと、「ごめん、ごめん。Hさん、Hさん」と今度はとある名字を言い出した。

 おお、Hのマー君といえば、僕の中学時代の同級生だ。えっ? どうして?!

「あのね、マー君といとこなんですよ、僕。それで今年のお正月に会って、本屋で働いているって言ったらマー君が『本の雑誌』知ってる? 知ってるって答えたら『じゃあ杉江っていうのは?』って聞かれてね。担当が違うからあったことないけど、お店には来ているはずだよって答えたら、もし会うことがあったら宜しくって言われていたんだよね。そうそう伯母さんにもよろしくってお願いされていたんだ」

★   ★   ★

 Hと出会ったのは中学校1年のときだった。その頃、僕は嫌な奴だった。Hにも嫌な想いをさせた。だから彼は今でも酒に酔うと「オレ、ツグに虐められたからね」なんて暗い顔をする。こういうことは時間が解決するわけじゃないのだなと深く反省し、「悪かった」と謝るがそれで解決するわけでもない。取り返せない過ちってことだろう。

 それでも中学校を卒業後も、Hとはかなり仲良く遊び、毎晩僕の部屋で麻雀やらテレビゲームをしていたっけ。そんな付き合いは、僕が結婚して家を出て行くまで続いたが、今はほとんど会うことがない。

 会うことがない…その理由は、たぶん忙しいとかそういうことでなく、僕のなかで過去の負い目があり、そしてずーっと心のどこかで僕はHに嫌われていると感じていたのだ。だから何だか会いづらくなって疎遠になってしまっていたのだろう。

 最後にHに会ったのは去年の今頃、昔の仲間と飲んだ時だ。数年ぶりの再会だった。
 そういえばそのときHが遅れて到着する前に、中学校時代に裏番長だったKに「ツグ、Hは良い奴だよ、だからそんなに嫌うな」なんて怒られたんだ。「オレは嫌ってないよ」って反論したけど、Kには僕の心の中にあるHに対しての距離感が見えていたのだろう。

★   ★   ★

 そのHが、わざわざいとこに僕のことをよろしくって言ってくれなんて…。

2月23日(水)

『千利休』清原なつの著の3刷目が出来上がってくるが、社内滞在時間10分、あっという間になくなってしまう。

 「すげーなぁ」と驚いていると顧問・目黒が降りてきて「昔な『もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵』椎名誠著を出版した時、朝、製本所からトラックが着いたら、それを待ちかまえるように取次のトラックが来てな、在庫分みんな持っていかれたことがあったよ。あれにはビックリしたし、後にも先にもあれ1回きりだな、取次店が本を取りに来たのは…」と遠い目をして話される。どうも僕、この会社に入る時代を間違えたようだ。

 直納しつつ書店さんの文庫売場をうろついていて、おや?と首を傾げたのは『ラッキーマン』 マイケル・J・フォックス著を見つけたときだ。えっ? これどこの出版社だったっけ? デザインの感じだとソニーマガジンズ? いや扶桑社? 

 なんて不思議に思いつつ手に取ると「SB文庫」の文字。「SB文庫」って? あわてて出版社を確認したらソフトバンクではないか。そりゃそうだ『ラッキーマン』はソフトバンクから出て、かなり売れたんだよね、あれ? でもソフトバンクって文庫出していたの? なんて再度平台を見ると隣に『不良品』宇梶剛士著や『100億稼ぐ仕事術』堀江貴文著なんてのも並んでいて、それが新文庫の創刊だったと気付く。

 一昔前の文庫創刊なんていったら、いきなり20点くらい出して一気に平台と棚を奪い、当然広告もガンガン打って、書店さんの間からは「まったくもう棚がないわよ」なんて苦言が聞こえてきたのに、何だかもう創刊自体も日常的な出来事になっているようだし、しかも普通に単行本を出すような感じで出せるのか? なんてこの気分をうまく書けないんだけど、かなり驚いたのである。

 もう少しで文庫は、そのいちばん後ろの方に書いてある「創刊の言葉」なんてすっかり忘れて、単なる単行本の簡易版というか、安くしたものになっていくのだろう。いやもう読者から見たらそういうものだろうし、先日書店さんと話していたとき「今は文庫と新書だけで総合書店ができるよね」なんて話題になったことがあったっけ。それは書店員さんの意識も変わってきたってことかもしれない。

 うーん。単行本と文庫。この位置づけをそろそろ真面目に考え直さないとダメかもしれないな。本の雑誌社くらい小さな出版社でも変に古い本の在庫を持っているより、文庫にしてもう一度ライトを当てることが出来るのかも…。

 でもでも管理も営業も大変そうだし、そうそう5年くらい前の会議で、「自社文庫を立ち上げましょう」って提案したとき、その頃まだ発行人だった目黒に「お前はアホか? その仕事、誰がやるんだ?」って笑われたんだよな。

 うーんうーん。そういえば、兄貴がこんなことを言っていたっけ。

「オレもさ、新刊を読みたいんだよ。でもあんなデカイ本を置いておく場所が家にないんだよ。だからさ、同じ値段でも良いから、新刊を出す時に文庫サイズと単行本サイズと両方出してくれよ。そしたらオレは1500円でも文庫サイズで買うよ」

2月22日(火)

 大塚、上野、そして常磐線を営業。


 柏のW書店さんでは、午前中に来た本屋大賞ノミネート作品に選ばれた本を持つ某出版社が「うちの取れますかね?」と期待していたよと話され、ジワジワそのときが近づいてきた喜びを感じてしまう。

 いったいどの本になるのか? そして去年同様、あるいはそれ以上話題になるのか? 期待と不安でいっぱいだ。

 もう1軒、柏で訪問したS書店さんでは、友達付き合いさせていただいている書店員Mさんが、今度新宿店に異動になる聞き、うれしさ半分哀しさ半分。うれしさはもちろん本の雑誌社から近くなるのでしょっちゅう会えるようになることで、哀しさはMさんがお店でお客さんからとても人気があったことを知っているので、それらのお客さんに気持ちを想像して、である。

 その後はとある書店さんを訪問し長話。なんと店長のTさん、昨年体調を崩し病院にいったところ即入院を告げられたと。しかし、とても休める状況でなく、どうにか薬で誤魔化して今に至っているというではないか。ダメですよ、キッチリ治さないとつい心配になってお節介なことを言ってしまったが、そんなことは本人も重々承知のことで、それでも人はいないし、お店も気になるしで、休めないってことなんだろう。

「いちばんの薬は、売れることだよね」なんて話されるTさん。
 ホントにホントにお身体にお気をつけください。

2月21日(月)

 先週半ば、地方小出版流通センターのKさんから「経験的に来週の月曜日あたりが大変になるよ」とご忠告を受けていたとおり、本日『千利休』の注文が二度目のブレイクを迎える。

 しかしすでに23日重版分は見る間もなく「売り切れ」状態になっており、次はもう「気合いじゃ~」と叫んで重版を決めた3月2日出来。むー、またもや重版部数の設定で失敗してしまい、編集部の奥から浜本と荒木の「あの人背も小さいけど、気も小さいっすね」なんてコソコソ話が聞こえてくるではないか。ちくしょー。

 出版営業の間では「売れた時は営業マンなんて必要ない」なんて言われるが、本当にその通りで何もする間もなく刷った分が消えていってしまい、これでは逆に営業が出来ない。うー、会社で虐げられ、存在価値もなくなり、やはり川に飛び込むしかなかろうか…。

 いやいやそんなことはない、と自分に言い聞かす。

 何せチビ会社の、気も小さいチビ営業マンは、『千利休』だけで騒いでいてはならないのだ。3月の新刊は、僕の大好きな中場利一さんの新作『純情ぴかれすく』で、しかも先日ゲラを通して読んで思わず「傑作だぁ!」と叫んでしまったほどの素晴らしい青春小説で、こんな作品を営業できるだけで幸せだ。

 かつての暴れているだけのチュンバに、暴れるだけでは解決できない内面が出来、どう折り合いをつけていくのか? そこに中場さん独特の笑いと涙がいっぱいつまっているから、これを売らずして営業としてどうする?って感じだし、最近流行りの他者とまともに関わらない自意識過剰な小説を、是非是非中場さんのパワーでぶっ飛ばして欲しいのだ!!

 さぁ、二丁の拳銃を手に、本日も営業頑張りましょう。

2月18日(金)

 毎日毎日こうやって日記を書く場合、スピードが大切なので深く考えずに書いていることが多いし、そもそも僕はバカなので、たいした考察もなく勢いや気分で書いていることが多い。

 だからいろんなところに迷惑をかけているかもしれないし、嫌な気分にさせていることもあるかもしれない。それは申し訳ないと思うし、本当はこんな日記書きたくないけど仕事の一環で書かされているわけで、どっちにしても責任はすべて僕個人が取りますのでお許しください。

 さてさて何でこんなことを書き出したかというと、2月8日の日記で何も考えずに「汚名挽回」という言葉を使ったところ、友人のNさんから「汚名は返上するもので、挽回するのは名誉ですよ」とメールをいただいたことがあった。そんな言葉の用法に僕はハナから自信がないので、すぐさま「ありがとう」とメールを送り、何も調べずに訂正更新したのだが、なんと昨日になってNさんから「汚名を挽回してもいいみたい…」とメールが届いたのである。

 しかもこの件で彼女とケンカしちまったと続いていたからそんなカップルに僕はビックリしたのだが、いったいどうなっているんだろうと会社で騒いだところ、そうそう杉江さん間違ってましたよね!とみんな笑いだすではないか。なんだ知っていたのか、君たち。だったら教えてくれよ、えっ、何々、よしだまさしさんのHPで日記に書かれていたって? そうなのか…。

 でもね、でもね、良いんだって、汚名挽回で!と自信満々に伝えると、みんなまったく信じていない様子。ならばとこれを見よ!!!!とまるで水戸黄門様の印籠のように、にしては重い『大辞林 第二版』松村明編(三省堂)を掲げる。

 この辞書で「汚名」をひくと、使い方として「ーー挽回」と説明されているぞ。これを見よ!!!!

 と見せつけたが、松村曰く「辞書が正しいわけじゃない」とのこと。そうなのか、そうだったのか。

 まあ人に教わったことで自慢してもしょうがないし、それに僕、浦和レッズの悪口を言われたら怒るけど、こんなことどうでもいいんだ。とにかくNさん、仲直りしてください。

2月17日(木)

『千利休』は相変わらず確変中。注文が止まらない。

 これでは23日出来の重版分もほとんど会社に滞在しないままなくなってしまうのではないかと焦り、重版部数を上乗せしようと思ったがまたもやときすでに遅し。思わず営業中の小田急線から多摩川に飛び込みそうになってしまった。

 売れて落ちこむ…なんて他の業種の人にはまったく理解不能なことだと思われるが、出版業界には恐怖の「返品」があるわけで、注文=実売ではないのだ。だからどこまでこの集まっている注文をそのまま信じて刷って良いのかわからないのだ。

 おまけにどれだけの人が買おうと思っているかなんてわからないから、いきなりピタッと売れ行きが止まったりして、いやはやここ数日は、真っ暗な部屋で仕事をしている気分。それでも本の雑誌社は一応「買い切り」出版社なので、むやみやたらな見込み発注が来ない分、楽なのだが…。

 数日前に書いた本が来ないという小さな書店さんの言葉をひもといていっても、結局いつも返品の問題にぶち当たる。書店さんはとにかく並べたい、出版社はロスを減らしたい。うーん、どうしたらいいんでしょうか?

 返品といえば、『ハリーポッター』だけど、僕が見ている感じでは、小さな書店さんではそれほど残っていない。なぜなら小さな書店さんは売り逃すことにも売れ筋本がないことにも慣れているから、身の丈にあった注文しかしていないのだ。もちろん支払いのことだって切実だし。

 ただやはり、大手書店さんの仕入れには山積みなっているし、店頭をいつまでも占領されている中規模書店さんも多い。何だかこのハリーポッターの残り方に、次なる取引方法への教材が隠れている気がするのだけれど、どうだろうか?

 うーん、うーん、そんなデカイことを考えている場合でなく、手元にある『千利休』の重版だ。重版中に次の重版を検討するなんて…。

 こうなったらやっぱり…。
「気合いじゃ~」

 ってそれが『ハリーポッター』の大量売れ残りを生んだ原因だったりして。

2月16日(水)


 朝、結構大きな地震があった。
 僕は娘を、妻は息子の上に覆い被さるほどの揺れだった。

 震源地もまだわからない段階で、これはきっとどこかで壊滅的なことが起きたのではないかと思った。そして僕の頭の中を「ああ、これで世間(?)は『千利休』どころではなくなってしまう」なんて考えてしまった。ああ、いつの間にかこんなワーカーホリックな人間になってしまったんだろう…。

 テレビの上に置いてあった目覚まし時計が落ち、大破していたが、それ以外の被害はなく、家を出る。しかし雨にも風にも弱い武蔵野線は揺れにも弱かったようで、相当の遅れをもっての運転。もし今朝起きた地震が震度7とかの大地震で、大変な被害があったとしても、かなりの数のサラリーマンが会社に向かおうとするんじゃないか、なんてことを雪の舞うホームで考える。

 『千利休』フィーバーは、3日経っての相変わらずで、全国から客注の嵐。そりゃ元々ほとんどの書店さんに置かれていないチビ出版社の本なんだから、客注がでるよな、だからネット書店からの発注がすごいのか?なんて思いつつ、いつもはほとんど見ないネット書店を覗くと、いろいろと面白いことに気付かされる。

 まずアマゾンさんは普通というか、月曜日にベスト10に入るほど売っていただき有難いかぎりで、読者レビューも良い採点で満足。調達時間表示が長いのは取次店に在庫なしだからだそうで、それはまあチビ会社だから仕方ないだろう。たぶん今日あたりに納品させていただいているので、変わるのではないか。
 
 次は永嶋さんのいるセブンアンドワイさんを訪問すると、こちらには立ち読みボタンなんていうのがあってPDFのファイルで10ページ分くらいが読めるようになっているではないか。全部の本がそうなのか?と思って試してみるがそうではないらしく、なぜに『千利休』がこうなっているのかは理由がわからない。

 さて次はと、bk1さんを覗くが、なぜかどう検索しても『千利休』が出てこず、小社の本でも他の本はみんな出てくるのになぜなんだろうか?と思わず首をかしげてしまう。うーん、もしかしてオレ、登録ミスとかしたのか、っていうか登録ってどこにしたのがここで使われているんだろう…。

 で、最後に楽天ブックスさんを訪問したのだが、ここでは思わず大爆笑してしまう出来事が…。

 なんと『千利休』を表示させると、その下の方に「この商品に関連するジャンルの注目商品です。」なんていうのがでるのだが、そこに並んだ注目商品はこれら3点。

『【DVD】 ピラティスフィット キレイな姿勢、ぽっこりお腹もこれで解消』
『OL合コン四季報』
『菊とバット完全版』

 うーん、どうみてもギャグとしか思えない。

 もしリアル書店で『千利休』を買ったお客さんに「似た感じの本ないですか?」と聞かれ、上の3点を紹介したらどんな対応をされるだろうか?

 あれ? もう一度やってみたら

『季刊陶磁郎(41)』
『どこでも1歩ウォーキング・ダイエット もっとやせる!もっと若くなる!』
『鉄道ものしり雑学 思わず人に話したくなる』

が出て来たぞ。すごい本屋さんを発見した気がする…。

2月15日(火)


 会社についてしばらくすると浜田が「パンパカパーン、発表します」と椅子の上に立ちあがる。ついに負け犬脱出か?なんて期待してしまったが、『千利休』増刷分の品切れを発表だった。

 たった一日で、重版分が消えてなくなるなんて、狐につままれた気分だ。次の重版は約一週間後の23日に出来上がる予定なのだが、1週間でもロスはでるわけで、ちまちま営業は嫌みを言われる前に外に向かう。

 新宿K書店、御茶ノ水M書店と直納し、その後とある書店さんを訪問。

 そのお店では、すでに本屋大賞のノミネート本をフェア展開していただいているのだが、品切重版未定本がいくつかあるそうで、10点全部が揃わないと哀しい訴え。

 もしかしてそれって大賞を辞退していることになるのではないか?(なにせ選考する書店員さんが買えないのだから) しかも、こんな状況をわかってもらえずに大賞作品しか売れない賞なんて批判を浴びるのも納得いかない。ああ、だったらノミネートの連絡をした時点で「当社はこの本を売る気はありません」と潔く断ってくれればいいのに!!! 

 そういえば昨夜は遅くまで、ベテラン書店員さん3人(全員小さなお店)と飲んでいたのだが、その方々の憤りはもっと深くそして長いものであった。

「新聞を見て初めて新刊を知る。読者と一緒」
「それで知ったとしても、注文してもほとんど入ってこない」
「うちのお店が個性的な品揃えっていわれるけどそれはただただ入りやすい本を並べているだけ」
「まっ、こんなこと20年前からずっと言いつづけて、何も変わらないからね」

 愚痴といってしまえばそれまでだが、もうひとつこんな話を聞くと、僕は思わず酒場で泣けてくるのである。

「オレね、4,5年分の販売スリップ、全部とってあるんだ。少し時間があくと、そのスリップをみて、あっこんな本あったな、今でも売れる、売れないって考えるんだよね。でもさ、支払いがあるじゃない。返品出来るっていわれても請求はたつわけだからいったんは払わなきゃならないわけだから。そうすると入れたいけど入れられない本いっぱいあるんだよね。ああ、この本があったら棚が良くなるけど、支払いを考えたらその2,3千円の本すら注文ができないんだよね、哀しいよ」

 書店、書店員と騒いでいるけど、だったらその人たちがもっとしっかり仕事ができる環境に変えていかなければならないんじゃないか…。

2月14日(月)


 電車男は「キタ―――」と叫び、シャラポワは「カモーン」と怒鳴る。僕はいつもさいたまスタジアムで「打てぇー」と吠えているが、本日は仕事中、ずーっと何かしらの言葉を叫び続けていた。

 何せ清原様、浜本様、荒木様申し訳ございませんでしたの『千利休』が、昨日の朝日新聞のコミック書評欄『コミック教養講座』で紹介され(湯浅学様本当にありがとうございました)、しかも増刷分の出来日が今日という最高の状況だったのだ。

 さぁ来い!と勇んで、いつもより早く出社したが、埼京線が信号機故障で完全ストップ状態で結局会社に着いたのはいつもの時間という最悪の展開。でも雨で売れる、あるいは失敗のあった本は売れるというマイナスプラスの法則のある本の雑誌社、これは来たなとにやけつつ、会社の扉を開けると、いやはやすでに大量のFAX注文が届いているではないか。

 「たはーーーー」と興奮しつつ、FAX注文を仕分けしている間もなく電話が鳴り出し、その応対に大わらわ。いかんせん注文の電話に出られるのが、僕と事務の浜田と経理の小林の3人で、注文の間には、インチキ電話屋のセールスやら、やたらにハイテンションな○○商事やらの電話もあって、何だかずっと電話の応対をしているような一日。

 結局、直納を1件するだけで夕方となり、本日受けた注文を締めたところ、なんと1日で増刷分がほとんど消えてなくなってしまったではないか…。こんなこと入社以来初めてのことで、いやはやビックリどころか、鼻血がブーだ。

 あわてて印刷会社に電話し、再度重版の指示。
 浜田よ、オレの頬を思い切りつねってみてくれ。イタっ!

2月10日(木)


 営業を終え、ぶらぶら書店さんの棚を眺めていたところ、思わず飛び上がってしまう新刊に出くわした。

『アヤックスの戦争―第二次世界大戦と欧州サッカー 』
 サイモン・クーパー著、柳下毅一郎訳 (白水社)

 誰がなんといおうと、サッカーバカ及びサッカー本バカにとって、白水社は日本一のサッカー本出版社であり、(何せ『サッカーの敵』『狂熱のシーズン』『フーリガン戦記』を出版しているのだ!)、柳下毅一郎さんはサイモン・クーパーを訳すために『殺人マニア宣言』や『ケルベロス第五の首』などの仕事をされていると考えている。

 当然早速購入し、娘と息子を早く寝かせ、読み通した3日間。
 いやー、素晴らしい。

 今回はどちらかというと、サッカーそのものにスポットを当てた本ではないが、逆にそれがサッカーの力、あるいはクラブチームの影響力の大きさを浮かび上がらせることに成功している。

 日本と世界のサッカーを比較する際、100年の時間の差というのが絶対に出てくるのだが、それがサッカーそのものの時間をさすのではなく、サッカーを取り巻く社会、すなわち歴史そのものをさすのであるということをこの本を読んで思い知る。

 歴史のなかでサッカーがどのように扱われ、そしてその逆にクラブチームが、歴史をどう扱ってきたのか。殺される寸前のユダヤ人がクラブチームから届く会報に喜んで手紙を書いたりするあたり、いやはやサッカーってやっぱり凄い。そしてもちろんどこにでも飛び込み、足でネタを探すサイモン・クーパーの取材力、そして考察力と、文章力に今回もたじたじにされたのであった。

 いやはや今年のサッカー本大賞は、2月の時点で決定かぁ!!!!

2月9日(水)

 早朝から自宅上空をヘリコプターが飛んでいる。
 基地が近いわけではなく、本日すぐ近くで「闘い」があるからだ。
 しかし、どんな近くで行われようとチケットを持っていなければスタジアムに入れるわけでなくテレビ観戦するしかない。まあ、レッズ戦じゃないからテレビでも良いや。

 田町、浜松町、新橋と営業。
 
 と書くと、同じ山手線の新宿や池袋などに比較して、地味な印象を与えてしまうかもしれないが、あなどるなかれ、本屋好きにはたまらない3駅なのである。

 まず田町駅前にある虎ノ門書房。
 こちらは歴史のある本屋さんだから、その伝統が売場に現れている。平台の本は高さを揃えきっちり並べられているし、当然品揃えも充実。これだけのお客さんがやってくるお店でこの綺麗さを維持できるということは、よほど手をかけている証拠だろう。駅前の路面店としては、まさに優等生な書店さんだと思うし、本屋さんの基本はここにすべてある気がする。

 次はひと駅行って、浜松町。
 こちらは言わずもがなの、ブックストア談浜松町店。
 JRとモノレールの乗り換え側入り口から入った右手の棚は圧巻だ。そのとき旬の、あるいはこのお店が売りたい本が、どーんとひと枠分面陳になっており、こんな攻撃的な棚はなかなかなかろう。

 そしてこのお店の真骨頂は、実はその棚ではなく、POPつきで紹介されている本や、オリジナルのフェアである。文庫の平台はまさに発見の連続だし、本日の訪問の際には、文芸書の平台でタイムトラベルフェアを開催されていたのだが、その品揃え、そして現実に時計まで置いてしまうディスプレイのすばらしさ。この規模で、ここまで細かく手を入れられているのは凄い。このお店が繁盛している要因が、決して通行量の多さだけではないのは売場を見ればわかるだろう。

 トドメは新橋(汐留)の八重洲ブックセンター汐留メディアタワー店である。

 このお店、もしもっと人通りの多い場所にあったとしたら、大変な反響を呼ぶお店だとずーっと思っている。目の前の道が完全に整備されるのが2年後だそうで、そのときの売上が今から楽しみである。

 1F、2F、3Fとそれぞれ趣向が凝らされ、特に3Fの文芸、文庫の棚の素晴らしさ。出来ることなら、営業なんてせずに、ぼーっと棚を見ていていたい衝動にかられるほど、本好きにはたまらない本屋さんだ。決して押しつけがましくないセレクトとPOP。その品揃えも新旧取り混ぜた正真正銘の面白本が並べられており、まさに店員さんの読書量の多さを物語っている。

 また文庫棚が、出版社別でなく著者別なのがうれしい。読者本意に考えたらこの方が絶対良いはずで、ならば実用・ノンフィクション系はどうしているのか?とのぞいてみるとしっかりジャンルでわけているのである。いやはや脱帽だ。

 ちなみに僕、もし本屋さんだけで生活を考えてみたら?という問いがあったとしたらこう答える。

 住むのは、中村橋。なんといっても大好きな町の本屋さん中村橋書店さんがあるからだ。ここに休日ジャージででかけ、おお!という喜びを味わいたい。

 働くのは池袋。できればジュンク堂書店池袋店さんの裏手辺りで働いて、昼休みやストレス解消に、あの大量の本に埋もれたい。

 そして最後は、誰にも邪魔されずにサッカー観戦できる専用の部屋を汐留の高層マンションに用意。サッカー観戦前に、この八重洲ブックセンター汐留メディアタワー店に通いたい。
 
 問題は我が浦和レッズが遠いってことと金がないってことか…。

2月8日(火)

 午前中は『本の雑誌』3月号の搬入。珍しく編集部もいて、搬入もスムーズに終わる。

 午後は、昨日の続きの銀座、そして神田、秋葉原、上野、大塚と廻るが、ほとんどのお店で書店員さんのお休みにぶつかってしまう。これだからアポなし営業はダメなんだよなぁ。でも、アポを取るとして電話したら、そこで仕事が済んでしまう可能性もあって、これは難しい。

 最近は汚名返上とコミック売場に顔を出したりしているのだが、いくつかのお店でかつて文芸書を担当されていた書店員さんと再会できたりして感動してしまう。本日も秋葉原のS書店さんでKさんとよもやの再会を果たし、早速サッカー話。って結局それかという突っ込みは、既に事務の浜田に受けたので、お許しください。

 その浜田から携帯に『NEWS!!』のメールが届き、こいつはいつも大げさなんだよ、と適当に読み始めたのだが、それが正真正銘の大ニュースで、あわてて会社に戻る。会社では浜田がひとりパニくっていて、それを見ているウチに僕までパニくりだしてしまい、何をして良いのかわからない状況に。

 あわててメモを取り出し、やらなきゃならないことを整理。
 まずは印刷所へ連絡し、それから書店さんに連絡し、その他もろもろ。むはー、とてもそんなのひとりじゃ対応できない。

 そうか、そうだったのか。もしかして「本が売れ出す」と忙しくなるのか。ああ、来週月曜日が待ち遠しい…けど怖いな…。

2月7日(月)

 午前中、娘が今春から入園予定の幼稚園で、「一日体験入園」なんてのがあったもんだから、駐車が出来ない妻のために、とりあえず車で幼稚園まで送っていき、幼稚園に停めてから出社することに。

 それにしても駐車も出来ない人間に車の免許を与えていいのだろうか、しかもゴールド免許だしと、運転しながらブツブツ呟いていたら、「だってポールが立ってないんだから出来るわけないじゃない!」と妻。うーん、だからそういう人に免許を与えてはいけないって話をしているんだけど…。

 その幼稚園で、事前に注文しておいた制服やら文房具やらを受け取ったのだが、このカワイイこと。思わず帽子とカバンを娘から奪い取り、園内でかぶっていたら、他の親御さんから冷たい視線を受ける。おまけに娘は泣き出してしまうわで、すぐさま退散し、会社に向かう。

 ちなみにこの制服やらで約10万円の失費。また入園金は別に10万円くらい払っており、しかもこれがお受験などするような幼稚園でなく、普通の幼稚園でこれだけ金がかかるのだからビックリ。思い起こせば次男坊だった僕は、いつもいつもお古で、そのことに関していまだに両親に不平不満を訴え続けていたが、いざ自分が買う側になってみると、できることならお古で誤魔化せないものかなんて考えてしまう。ハッキリいって低所得な我が家庭において、本を買う余裕はなくなりつつある。

 会社についてすぐ、印刷会社の人から営業を受ける。いつもと逆の立場に、思わずふんぞり返ってぞんざいに扱ってやろうかと考えたが、そこは哀しい営業マンのサガ、こちらの方が下手に出てついつい大変ですよね、なんて世間話を振ってしまう。

 その後は会社を飛び出し、大手町、東京、銀座、四ッ谷と営業し、夜は夜で、書店員座談会の立ち会い。その座談会は過去最高の面白さだったのだが、いったいどこまで活字に出来るのだろうか? うーん、怖い。

2月4日(金)


 どこの書店さんを訪問しても、1月の売上は悪かったという話題に。それでも僕が「他も悪いみたいですよ」と話をすると皆さんちょっと一安心される。

 目立った新刊もないし雪などの天気の影響も大きな要因なんだろうけれど、それだったら大寒波で大雪らしい(関東はまったく雪がないんです)2月も悪いのではなかろうか。8年ぶりのプラス成長の後に、記録的なマイナスなんてことにならなければいいんだけど。

 下北沢を訪問後、昨日の続きで渋谷、それから恵比寿、目黒、五反田と営業。

 そんななかとある書店さんの文庫売場で「本の雑誌が激賞した作品…」との出版社作成看板が掲げられていて、あわてて何だ何だ?と確認に走る。てっきり『バッテリー』あさのあつこ著(角川文庫)にでも付いているのかと思ったら、『ジョッキー』松樹剛史著(集英社文庫)でビックリ。

 うーん、確かに『ジョッキー』は面白いと思うし、『本の雑誌』2002年2月号で競馬本大賞に選ばれ、その翌月号の「新刊めったくたガイド」で吉田伸子さんが誉めているけれど、それが「本の雑誌が激賞した」に変換されてしまうのは、なんだかなぁ…な感じ。

 『本の雑誌』の誌名のことだけでなく、最近いろんなところでいろんな人の推薦帯を目にするけれど、そこに名前を使われるってことは、当然推薦の責任を持つことになるのだ。だから、もしその作品を面白くないと感じる人がいたら、著者はもちろん推薦者の信頼も一緒に落ちることになるのだ。

 だから帯に名前を貸す人はもっと気を付けた方がいいんじゃないかなんて思うけれど、その点、顧問・目黒(北上次郎)は本当に面白い本にしかコメントを出さないから、市場に影響を与える書評家になったのだろう。

2月3日(木)


 本屋大賞に関して『編集会議』から取材を受け、その後は青山、渋谷と営業。予定の半分であえなく時間切れ、60点の出来か…。

 そんななかとある書店さんで芥川賞を受賞した阿部和重の話題になったのだが、受賞作の『グランド・フィナーレ』(講談社)よりも、新潮社の文庫が売れているとか。

 若い人が興味を持っても、やはり単行本はつらいのだろう。しかし書店員さんは「それでも興味をもってくれるだけでもうれしいですよね」とのことで、確かにそのとおり。

 また別のお店でコミック担当の方にコミックの売り方を教わろうと声をかけたら、上げられた顔に大汗。

 どうしたのかと問うと集英社のジャンプコミックの搬入日だそうで、しかも『ONE PIECE』や『NARUTO』やらの大ベストセラーコミックが4点も重なって出版されるとかで、その発行部数だけで600万部(?)を越えるとか。

 むー、何だかもうコミックは出版のなかでは別の産業なのではないか…なんて考えさせられる数字がその後の話でもいっぱい出て、これはこれはと興奮してしまったのだが、実は逆にそれだけシビアで、文芸書以上に絶版や品切れがすごいとか、ページの指定も厳しいとか、最低の出版ロットがとても高いので、単行本にしてもらえない作品も結構あるとか、なかなかどうして他人の芝生が青くみえるだけのようだ。

 どっちにしても汚名返上ではないけれど、清原さんの本をしっかり売らなければならず、そのヒントをたくさん頂いて帰社。

2月2日(水)

 いつもいつも編集部に新刊スケジュールをズラされるのは、○月という、月だけの指定で予定を組んでいたからだと気づき、今年からは日にちまで一気に指定して予定表を提出してみた。

 そこには当然チラシの制作〆切り日などもきっちり書き込んでいたのだが、いやはやビックリ、4月の新刊チラシがしっかり2ヶ月前の今日、出来上がっているではないか! 指定注文のみでやっている出版社の営業マンとっては、ほんとに一日でも営業時間が長いことが売上に繋がるので、非常に助かる。

 荒木よ、この調子で一年間いってくれ。ところで『荒なみ編集部日誌』はどうしたんだろうか? 自分が荒なみに揉まれて終わってしまったのだろうか?

 そのチラシを書店さんに送りたいのだが、何を隠そう営業部で作っているDMがまだ出来上がっていなかったのだ。これでは編集部に顔向けできないので、本日は予定を変えて、一日中DM作りに勤しむ。

 夜、そのDM「本の雑誌通信」と注文書2通を作成し終え、一段落。

 ふらふらと顔向け出来るようになった編集部に近寄り、昨日に続き「30周年」&「5周年」の話題を振るが、しかし誰もが気のない返事。たぶんそれぞれ今現在の仕事でいっぱいだからそれどこじゃないんだろう。

 でもでもやっぱり30周年だよ。祝おうよ。しかも50周年はないと思うぜ、としつこく話をし続けていたら、浜本から「わかった、わかった、お前を、30&5周年事業推進委員会会長に任命するから、企画を紙に書いて提出しなさい」と言われてしまう。クソ、またひとり委員ではないか…。

 しかし仕方ない。とりあえずすぐさま思いついたのは、『社史 本の雑誌』の出版で、これは前・発行人の『本の雑誌風雲録』と編集長の『本の雑誌血風録』に、現・発行人の浜本が書き下ろす『本の雑誌格闘録』を足した1000頁の豪華本。

 それからもうひとつすぐに思いついたのは、『本の雑誌』1号から10号を合本にしての記念復刊。WEB本の雑誌の5周年の方は、「その日バーチャルがリアルになる 池林房貸し切り来るなら来い! WEB本の雑誌大オフ大会」なんてのをすらすら紙に書いて、早速提出。

 果たしてほんとにどんなことが出来るのか? いやたぶん何も出来ないんじゃないかと思い出した夜8時。本の雑誌社30周年&5周年に乞うご期待?!

2月1日(火)

 これは多くの出版営業マンの悩みの種ではないかと思うんだけど、編集者の来る時間がまちまちで打ち合わせがまともにできないのである。例えば僕の場合、ある程度自由に使えるのが午前中なんだけど、その時間は編集部には松村しかおらず、そうなると単行本の打ち合わせはできない。

 それでは夜ということになるのだが、その時間帯は、こちらも注文の処理作業があったり、あるいは散々ぱら外廻りをして殺気だっていたりして、うまく話すことができないのだ。しかも本の雑誌社には改まってする会議なんてものはなく、よくよく考えてみるとこれでよく会社が成り立つモノだと思うけれど、それはもしかしたら逆かもしれない。会議なんてなくても会社はまわるのだ。

 ところが本日はどうしても確認しておきたいことがあったので、本日は昼過ぎまで待って、浜本や荒木と打ち合わせ。タイトル、単行本の方向性、企画。すべて決まって会社を飛び出せたのが1時30分。京王線に乗り、八王子、聖蹟桜ヶ丘、府中と営業するが、沿線の半分で時間切れ。本日の営業は消化不良の50点。

 夜。注文の処理も終わってすっきりした頭で、全員いる編集部に向かって「『WEB本の雑誌』が秋に5周年を迎えるんだけど、何か企画があったらよろしく」と声をかける。すると目のつり上がった松村に「その前に『本の雑誌』の30周年があって、こちらの企画をよろしく、きー」とほえられてしまった。

 何が出来るのか? いや何か出来るのか? そもそも普通にして限界の仕事量なんだから無理なんじゃないか? えっ? 無理を越えるから給料を出している? 鬼の浜本がこちらをにらむ。鬼は~、外。

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