WEB本の雑誌

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6月28日(火)~7月1日(金)


 唐突に忙しくなってしまったのは、何だかわからないうちに採用面接の立ち会いをすることになったからだ。まあ、そうはいっても当然僕に人事権なんてあるわけでなく、ただただ浜本のワキに座って、あれこれ質問をするって係りなのだが、いやはやこれが結構大変。

 そんななか、やっと出た我が愛する金城一紀の新刊『SPEED』(角川書店)だ。ピンクの装丁にビックリしつつ、いつ、どこで読んだかは、とても面接を担当している人間が言えない場所だが、いやはや、待った甲斐があったというもの。至福の時間とはこのことだ。

 それにしても金城一紀が作家として誕生してからの、若者はなんて幸せなんだろうか?

 『GO』にしろ『レヴォリューションNo.3』にしろ『フライ、ダディ、フライ』にしろ、もちろん『対話篇』にしも、明日が変わるっていうか、世の中の可能性について教えてくれるっていうか、なんていったら良いのかわからないけど大事なものがいっぱい詰まっていて、こんなもんを10代のうちに読めたらどれだけ幸せなことか。いや僕は33歳でこの『SPEED』読んでいるんだけど、ものすごく走り出したくなったり、飛びたくもなったりして、ああ、歳なんて関係ないんだな。

 今回の『SPEED』は女子高生が主人公で、今までとはちょっと違うのかななんて思ったけど、ゾンビーズの面々がいつも通り活躍するし、シリーズものらしい仕掛けもいっぱいで、何気ないシーンで涙が出そうになってしまうこともしばしば。そしてそしてその中心には金城一紀特有の“希望”がいっぱい詰まっている。

 そうか娘が大きくなったら『SPEED』をプレゼントしよう。息子には『レヴォリューションNo.3』を、妻には『GO』を、そして僕自身は『フライ、ダディ、フライ』だ。

 ああ、幸せ!

6月27日(月)


 暑い。暑すぎる。まだ6月だというのにどうなっているんだ?

 営業に向かうため会社を出る際「いってらっしゃーい」とクーラーに涼んでいる内勤どもは声をかけるが、こちとら戦地に向かう兵士のような状況で、運よく戻ってこれたらそれは幸運だったというほどの暑さだ。しかし仕事だから仕方ない。それは諦める。その代わり猛暑手当の支給を求む! 経営者よ、出てこーい!!

 フラフラになりつつ菊名のポラーノ書林さんを訪問するとH店長さんがちょうど配達を終えて戻ってきたところに遭遇。坂の多いこの町を自転車で走り回るのはさぞ大変なことだろう。H店長さんもフラフラで互いにしばしクーラーの下で休憩する。

 いやはや、ほんとにこんな暑いんじゃ仕事にならんぞ。おまけに本屋さんは結構混んでいるけどレジは空いていて、ようはみんな涼みに本屋さんに来ているのではなかろうか…って僕も涼みがてら営業しているようなもんで、とにかく棚よりも平台よりもクーラーの吐き出し口を探していたりする。

 ああ、暑さはまだ始まったばかり。クールビズなんてどうでも良いから、猛暑手当を!

6月24日(金)

 本来今月発売の予定だった編集長椎名誠の新刊『読書歯車のねじまき仕事』が来月にズレ、営業的には苦しいのだけれど、新刊がないということは追い込まれることがないわけで気持ち的には楽か? いやそりゃ自分の首を自分で絞めているようなもんか。

 ネット予約用にサイン本が作れないか編集長に確認したところ「ああ、その時期はアラスカだなぁ」とのことで残念無念。それにしても上司のスケジュールがアラスカとかアマゾンって、うちの会社は商社か?

 久しぶりに行徳の山下書店さんを訪問するが、やっぱり良い店だなぁとしばしお店を眺めてしまう。

 O店長さん曰く「普通のお店を作ってます」とのことで、どこも奇をてらった品揃えではないんだけど、現在の出版業界でこの坪数で、普通のお店を作ることがどれだけ難しいことか。そして本を選ぶのはお客さんというスタンスだから、まったくお仕着せがましさのなさがとても心地良い。

 中村橋の中村橋書店さんやこの行徳の山下書店さんのようなお店が地元にあったらどれだけ幸せなことか。ああ、駅前に普通のお店が出来る仕組みを早く作って欲しいものだ。

 なんてことを考えつつ、夜、とあるベテランの書店員さんと酒を飲んでいたら「いや~、杉江くん、もうダメだよ書店は」と弱音を吐かれる。

「出版社の人は、ベテランの書店員が辞めていくとあの書店はもうダメだとか言い出すけど、そんな状況に書店を追い込んでいる要因は出版社にもあるんだよね、この間なんてさ、本に付いているCDが不良品だってクレームがあって、出版社に取り替えの連絡を入れたの。そしたらその出版社は直送なんて当然やってくれなくて、普通に取次通して流してくるわけ。その間に1週間とか2週間かかって、お客さんはもう取りにいくのも面倒なんて言い出して、結局うちから直送したよ。たかだか1000円ちょっとの本で、そんなことしていたら赤字も赤字だよね。でもどうすることもできないよね、お客さんだもん。それでさ、そうやって元々少ない利益を食っていかれて、削るところって人件費しかないじゃん。ベテランはリストラして、若い子は社員っていっても、ものすごい薄給で、田舎からお米とか送ってもらってしのいでいたりするんだよ。それでも社会保険がつくから良いかなんてさ」

 先日とある取次店さんの人と飲んでいた時は「もう中間マージンじゃ食っていけない」なんて言葉も聞いた。

 しかしだからといって出版社である、例えばこの本の雑誌社は食っていけるのか?と聞かれたら、僕自身この先どうやって子供二人を育てていくのかと悩み、出来れば先のことなんて考えないようにしようなんてフタをしてしまう状況だ。

 いったい誰が笑っているんだ? それとも誰も笑えない仕組みなのか?

6月23日(木)

 年に一度の健康診断。

 発行人の浜本は「本の雑誌社はデブ養成所だぁ」なんて言っているけど、毎日2万歩歩かされる営業マンは太っている間もなく、8年間体重は変わらず。

 その代わり偏食の激しさのせいかコレステロール値が高いとここ数年言われるようになり、豆乳やらゴマやらを食っているのだが果たしてどうなることやら? 血液検査の結果は後日郵送。それと今年も身長は大台の165センチを超えられず、またもや自称165センチの一年を送ることになってしまった。

 血を抜かれたのでフラフラしつつ営業。京王線から中央線へ。

 立川のオリオン書房さんが北側のお店から順々に閉店時間が1時間ずつずれていくことを知り、ちょっと笑う。ノルテ店9時、ルミネ店10時、サザン店11時、アレア店12時閉店。ちなみに12時まで開いていたのでは、書店員さんは帰れないんじゃないかと思ったら、なんと担当者さんは立川に引っ越して来られたそうで、いやはや書店員さんもほんとに大変だ。

 大変といえば、サザン店のHさんがフットサルで靱帯を痛めていて、足を引きずりながらの作業。本人曰く「いやー迷惑を絶対かけたくないですから」と話されるが、ほんと無理しないで下さいね。

 ちなみにそんなHさんのただいま一押し本は、ヨシタケシンスケさんのヒトコママンガエッセイ(?)『やっぱり今日でした』(ソニーマガジンズ)と『しかもフタが無い』( PARCO出版)。寝しなにクククっと笑ってしまう本だそうで、僕も何気なく開いたページでツボにはまるヒトコマがあり、思わず店頭で「ククク」と笑ってしまった。

 そして当然購入しようと思ったのが、ワオ! 給料日前で金がねぇーじゃねーか!! ちょっと待て! 俺、立川から戻る金があるのか? あわてて財布を探るとどうにか帰れるだけの金はあることが判明し、次に購入することを胸に刻みつつ、ノルテ店の白川さんのところへ。

 すると白川さん。大好きな外国文学の棚前で、新刊をどこに積むか悩んでいる様子。どれを外して、どの隣に並べるか…。その表情が思いきり幸せそうだったので、しばし声をかけずに売場を見学。

 そうなのだ! 営業時間が長くて大変だったり、怪我をしても足を引きづりながらの仕事だったりで、ほんとにほんとに書店員という仕事は大変なんだと思うけど、こうやって好きな本を並べたり、売ったりすることが出来るのは、とっても幸せなことなのだろう。

 だからこそ頑張れるわけで、ならば出版社は、そんな書店員さんにおんぶにだっこでなく、もっときっちり本を作って、書店員さんが売ってうれしい想いが出来るようにしなくてはならない。もちろんほんとはそんな精神面だけでなく、流通やマージンを改善しなければ、ほんとの笑顔になれないだろうが、それはまた別の機会に。

 その後訪れた国分寺のK書店さんでも、うれしそうに新刊台をいじっている書店員さんを発見。ほんと元気なのは書店員だけ? なんて言われないよう、出版社の皆様、頑張りましょう。

6月22日(水)

 うー、こんなに不景気な話ばっかりを聞く、営業期間も珍しい。
 どこへ言ってもため息混じりに「売れないなぁ」なんて呟かれるばっかり。大丈夫なんだろうか? 出版業界は。

 まあ僕が話を伺っているのは文芸ジャンルだけなんで、他のジャンルは売れているかもしれないけれど、とにかくその文芸に限っては、ちょっとヒドイ状況らしい。

 そんな暗くなるばっかりの話をしつつ、我が身を振り返ってみたら、なんと僕自身4~6月はたいして本を買ってない。正直単行本で買いたくなるほどの新刊がそんなんになかったわけで、そのことを書店員さんに告白したら「実は私もなんですよ~。最近は再読ばっかりしてます」とのこと。うー。

 先日、とある出版社の営業マンと飲んでいたとき
「最近は編集者が企画の段階で数字を言うんですよ。類書がK書店さんのデータで何部売れてるとか、同じ著者の本が何部とか。まあ営業が数字を言い過ぎたからってのはあるんでしょうけど、編集者はもっと自由に考えて欲しいですよね」との話されたのを思い出す。

 そうなのだ!
 どいつこいつも数字数字で、もちろん数字は大事だけど、企画とか編集には、もっと大事なものがあるんじゃないのか! 数字なんてのは営業がこさえれば良いわけで、編集者は本をこさえれば良いのだ!! もしそれで3回連続自分の企画が空振りだったら、素直に商売替えするとか5年くらい冬眠してみる潔さが必要なのではないか!!!

 僕たち営業が売りたいのは、本ではなく、そんな編集者の想いや気持ちなのではないか!!!!

 その晩、すっかり酔っぱらって頭上にやたらと「!」マークを飛ばしつつ激しく机を叩き、そんなことをわめいていたのだが、いやはや元気のある本を読者も書店もみんな待っていると思う今日この頃。

6月21日(火)

 何気なく椎名編集長の『小魚びゅんびゅん荒波編 にっぽん海風魚旅3』と『大漁旗ぶるぶる乱風編 にっぽん海風魚旅4』(どちらも講談社)を読んでいたら、知らず知らずのうちに涙がこぼれてしまった。うーん特別何が?って感じじゃなかったんだけど、この包み込むような優しさは何なんだろうか? 『小魚びゅんびゅん~』の小笠原の章なんてもう電車のなかで読んでいてヤバイって感じだった。

 10代の終わり頃、椎名編集長の本を読んで、読書に目覚め、笑い転げつつ感動し、「いつかこんな男になりたい」なんて考えていた。それが不思議な縁で、その椎名誠の下で働くことになり、しばらくしたら「こんな働き人になりたい」と思うようになった。そして今日、この旅本を読んでいて感じたのは「こんな人間になりたい」ってことだった。

 カッコ良すぎるぜ! 椎名誠。

6月20日(月)

 8月中旬よりいよいよ<本の雑誌30周年記念出版>(ぼくひとり勝手に銘打ってます)の第一弾として『都筑道夫少年小説コレクション』全6巻が発売になる。

 こちらは膨大な作品を残した都筑道夫さんの作品のなかから日下三蔵さんが集めまくった少年小説のみの作品集で、すでに最高顧問の目黒も発売を心待ちにしているほどのものなのだ。

 しかしそうはいっても全6巻ものなんて出版したことない本の雑誌社。それもこの手の小説を今まで出したこともなく、日下さんからお話をいただいたときには浜本と2人で、結構悩んだりしたのだが、やはりこれは世に残しておくべき作品群だ!本の雑誌はそういう作品の力になるのだぁ!! と最後はいつも通り気合いとビックリマーク連発で出版を決めたのであった。

 そんな期待と不安の入り交じった『都筑道夫少年小説コレクション』の新刊チラシが先週できあがり、早速、書店さんに向けてDMを送った。すると本日朝、注文のFAXがバタバタと届いていており、思わずニヤリ。

 いやもちろんこの企画にそれほどの大量部数の注文が届くわけではない。

 そうではなくて、何人もの書店員さんから「待ってました!」と感謝のコメント入りの注文書が届いていたのだ。もちろんご自身の定期分も含めて発注されていたりして、それを見たときもうこの企画は僕のなかでほとんど終わったも同然で、あとはしっかり商売になるよう専念すれば良くなった。

 なんていったらいいのかわからないけど、本の雑誌社みたいな小さな出版社は、何十万部とかいったマスで商売するなんて考えられないわけで、それはそれで営業としてジレンマを感じることも多々あるのだが、そうではなくて、ならば少部数でも(当然最低限みんなが食っていけるだけ売れて)読者にしっかり喜ばれるものを作りたいと願っている。

 清原なつのさんの作品はほんとにその良い例で(もちろんすでに少部数ではない・当社比)『千利休』の読者ハガキの感動! そしてそれをヒントにして作った『清原なつの忘れ物BOX』への感謝の手紙、とにかくこういうものを作って売ることが出来た時の喜びは、浦和レッズの大勝利と同じくらいうれしかったりする。

 さあ、8月から約5ヶ月と続く長丁場。今までにない経験だけど、とにかく待ってくれている人がいるのだから頑張るしかない。そう考えていたら日下三蔵さんからメールが届く。おお! 日下さん自身も出版できることになって、とても喜んでいるようだ。これは、幸せな本になりそうだ?

6月17日(金)

 都内某所にて本屋大賞について講演。

 こう書きつつ、未だ自分自身が信じられないのだが、なんとワタクシ、約50名ほどの聴衆の前で講演したのだ。もう死にものぐるいでおしゃべりし、その50名を眠らせた。大成功…。

 ってほんと心も身体もくたくたになった約1時間。そもそも営業マンとして日本一おしゃべりの下手な人間が講演なんてできるわけもなく、いつもこんな風に話している編集長の椎名や顧問改め最高顧問に勝手に就任しちゃった目黒さんの凄さを再認識させられる。

 ご依頼していただいた方、期待に応えられず申し訳ございませんでした!

6月16日(木)


 会社から一番近いパン屋「ベーカリーリスボン」が閉店し、かなり混乱していた社内昼食事情に光明が射す。なんとお弁当屋が出来たのだ。その名もクロズトウ。

 って僕はほとんど社内で昼食を取らない僕には関係ないことなんだけど、朝から晩まで事務の浜田がうるさいのだ。やれ弁当屋が出来た。やれカレーと日替わりだ。やれスローフードだ、などなど。うー、浜田よ、お前、食べることしか楽しみないのか?

 というわけでかなりそのお弁当屋さんを気にさせられていたのだが、本日中野方面営業のためバス停へ向かう途中、ついにお店を覗くことができたのだ。そして思わず驚く。

「ありえねぇー」

 まともな看板はないし、商売っけもまったく感じられないし、なんじゃこりゃ? しかも商店街から外れているし、採算はどうなってんの? なんかよくわからないけど、こういうのスローライフっつうのか?

 物をいかに売るかってことしか考えられない営業マンには、大きな衝撃で、なんかもしかして僕の人生間違っていたかも…なんて京王バスに揺られながら考えてしまったほど。

 しかもその日、結局我が社全員がこのお店に昼飯を買いにいったのだが、浜本は店員さんがいなくて購入できず、松村は2時から4時の休憩時間にぶち当たり購入できず、結局笹塚グルメを自認する目黒以外誰も買えなかったのだ。

 むむむ、商売って何じゃ?

6月15日(水)


 当ホームページのシステム担当B社のSさんと打ち合わせしていたら、打ち合わせの最後にふと思い出したように報告される。

「POP王さんのPOPはいつも気にして数えていて、ついこの間500枚達成を祝ったところなんですけど、ふと気になって杉江さんの営業日誌の掲載を数えてみたら、とっくに1000回を突破してました。おめでとうございます」

 ってそんな付け足したように言わないでください。おまけにもうちょっと盛大に祝ってください。

 しっかしこれだけ続けているのに、これだけ注目されないページも珍しい。それは外に対してもそうだし、内、すなわち社内でもそうだ。社員一同誰もこの「炎の営業日誌」の話題を出すことはなく、せめてこれだけ続けているのだから年に2回くらい讃えても良いんじゃないかと思うのだが、まったく何の反応もないのである。

 何度も書いているけど、この日誌、社命だから書いているのだ。
 ホームページ開設当時、コンテンツが不足気味で、ならば暇そうにしているお前、なんか書け! そしてできることなら少しでも読者が増えるような原稿にしろ! でも原稿料はゼロだからな、なんて言われ、早1000回の更新だ。

 辞めて良いって言われたら、その瞬間に辞めるし、そもそも書くことなんて苦しいだけだし、実名が出るってことはそれだけプレッシャーがあるし、もちろん思いきり非難や罵倒されることだってあるわけで、そのつらさは社内の誰ひとりとしてわからないだろうなぁ。

 なんか僕ってもしかして凄い損な性格? なんて最近思うことが多いんだけど、まあどうせ本の雑誌何でもやります課だし、何でもやらなきゃ能力ない人間は居場所がなくなるわけで、今日もこうして日記を書き続けている。

 とにかく誰も祝ってくれないので、自分で祝う。
 1000回とっくに突破、おめでとうございま~す。

6月14日(火)

 もし本日の日記にタイトルを付けとしたら「炎の営業マン 千葉の中心で撃沈!と叫ぶ」って感じか。

 何せ、久しぶりに訪問した千葉で、いきなりK書店さんに改装中の文字。くくく、Kさんに久しぶりにお会いできるのを楽しみにしていたのに…。しかし、こんなところでため息をついている場合でなかったのだ。

 なんとの後訪問するお店、訪問するお店で「不在地獄」に陥ってしまったのだ。もしや千葉の書店員さんがどこかの海岸に一同集まって、潮干狩りでもしてるんじゃないかと疑いたくなるほど、誰にも会えない。N書店のMさんもS書店のYさんも、それからコミック専門店のIさんもとにかくみんな不在かお休み。大撃沈。

 そういえば前も千葉でこんなことがあったよな。ということは僕と千葉の相性が悪いのか?なんて考えてしまったがそうじゃない。僕の営業頻度が低すぎるのだ。もっと頻繁に通っていれば、しっかり会えることも多くなるはずで、いやはや本屋大賞に振り回されていないで、しっかり営業しましょう。

6月13日(月)

 思わず「あ」に「”」をつけて「あ”ーーーーーーーーーーーーーー」と叫んでしまったのが、土曜の朝6時30分、朝日新聞を見てのこと。

 いやはやほんとは前夜終電で帰宅したからまだ眠っていたかったのだ。しかし娘に「今日はサッカーもレッズもないって言っていたよね」と叩き起こされ、そのついでに寝ぼけ眼で新聞を取りに行ったのに玄関口で大声で叫んでしまったから、生後半年で9キロを超えもしや目黒さんの子供?と疑問を頂きつつある息子も起きるは、義母も起こしてしまうはで、いやはやスンマセン。

 何をそんな大声をあげてビックリしたかというと、この日の朝日新聞朝刊の一面が「文学賞異変」というテーマで「審査員から作家外し」なんて見出しが踊っているのである。そういえばそんなテーマで本屋大賞に取材に来られた記者の方がいたよな…なんて思いつつ文面を追っていたら我が名前が紙面にあるではないか! しかもなんかコメントしちゃっているよ。いや確かに何か話をしたのだが、てっきりテーマ的に夕刊の文化欄あたりだと思って気楽に答えていたのだ。

 早速、妻に見せると「いつか新聞に名前が載るようなことをするだろうと思っていたけど、良い方で載るとは予想外だった」とつぶやかれる。アホたれ! 俺に出来るのは所詮軽犯罪で、そんなもんじゃ一面に載るわけないだろう!。

 しっかしやはり一面は効果があるようで、電話やらメールやらが鳴りだし、さあ大変。我が父親は「苦労した甲斐があった」なんて涙声で連絡してきたが、母親はその奥で「なーに言ってるの、この子は何もしてないのよ、他の人がしたのをたまたま取材を受けただけよ。昔から調子良いのよ」なんて、いたって冷静にしかも正しい判断をしているではないか。

 まあ、「権威より販売促進」なんて言われると、二次投票の苦労が報われずなんだか哀しくなってしまうのだが、「本屋大賞」がこんな目立つところで言及されたのはとてもうれしい。しかも第一回、第二回大賞作品の『博士の愛した数式』や『夜のピクニック』の書名があがったのが何より。

 ちなみになぜ作家が選考委員から外れだしたか?って、経費削減が大きな理由なのではないかなんて思うんだけど。

6月10日(金)

 梅雨入り…?
 営業マンには、地獄の季節が近づきつつある。雨、湿度、暑さ。本日も西武新宿線を廻っていて、ぐったりしてしまった。同僚や友人に営業マンがいたら、ちょっとだけ優しくしてあげてください。本の雑誌のスタッフも少しは俺に優しくしなさい!

 夜、『本の雑誌』30周年企画として、どこもやれない(やらない?)企画をやれと顧問・目黒があげたのが、あまりに無謀な「退職者座談会」で、本日はその収録。いったいどうなってしまうんだろうか?と収録前は散々心配していたのだが、スタートしたら、腹を抱え、あまりの苦しさのため身もだえしてしまうほどの爆笑座談会へ。

 これまで本の雑誌の歴史といえば編集長の椎名や顧問の目黒が書いたものを読んできたのだが、違う視線で追えば、まったく違う歴史が見えてくるものだ。そういう意味でも本当面白く、また黎明期を支えた人たちの情熱は、やはり僕如きの情熱とはまったくレベルが違うもので、あまりのその落差に帰りの電車で悔し泣きしてしまったほどだ。

 悔しいけど、もうその時代に戻って入社し直すことは出来ないから、今まで以上の気持ちで本の雑誌に取り組もう! こんな面倒な座談会に出て頂いた元社員の皆様、ありがとうございました。そして読者の皆様、抱腹絶倒の座談会掲載の7月11日搬入予定の『本の雑誌』8月特大号をお楽しみに!!

6月9日(木)

 3大会連続、ワールドカップ出場決定! その瞬間をサッカーバカ出版人とともに飲み屋で見ていたのだが、何だかイマイチ盛り上がらない。かつては隣近所のオヤジすら絶叫するほどの緊張感だったのに、アジア枠が増えすぎた結果、こんなだらけた予選になってしまったではないか。むむむ、恨むぞ、FIFA。

 事務の浜田が決算終了記念で飲みに行きましょうと言い出し、向かったのがタイ料理屋。なになに? 社長浜本がどうしてもタイ料理が食いたいって言い出したからだって?

 実は僕、偏食が激しく、特に刺激の強い食い物に弱いのだ。だからトムヤムクンやパクチーやココナッツミルクなんてものはまったくノドを通らない。そんな偏食家として、常々訴えているのだが「セクハラ」同様「フーハラ」(フードハラスメントの略)っていうのがあって、食えない物を食わされるほどツライことはないんだってことなのだが、まあ食わず嫌いは自分自身の責任だから仕方ない。

 しかしテーブルに並んだ料理は、予想通りまったく食えず。いや食えない状況には慣れているから、おまけについていたえびせんなんて囓りながらビールを飲んでいたのだ。しかし何が腹立つってひとつひとつ「これ食べられる?」って聞かれることだ。食えりゃ箸出すよ、腹減ってるんだから…。

6月8日(水)

 本の雑誌7月号の搬入日。

 今月号の目玉はなんといっても8年ぶりの社員募集か?

 本の雑誌社で働きたいという方は、7月号(265号)の63ページを確認の上、要項に従い応募してみてください。尚、メールや電話での問い合わせはご遠慮下さい。ちなみに浜本が編集後記で書いているように業務は企画、編集、制作、進行とひとりで任されるわけで、非常に大変な仕事だと思う。

 でもそんなものは本を作れる喜びに比べたら屁でもないと僕は思っており、だからこそ8年経った今も続けているわけで、そんな気持ちになれそうな人がいましたら是非どうぞ。一緒に面白くって売れる本を作りましょう!

 しっかし営業は募集がないのか…。ああ、これからもひとりか。とほほほ。

6月7日(火)

 本の雑誌社で働いていると孤独だなと感じることがある。

 それは、社内唯一の営業で、しかも営業という仕事柄、ほとんどひとりで外をうろつき歩いていることから感じる孤独ではなく、同業他社の人たちの話していても、イマイチ話がかみ合わないことから感じる孤独だ。

 それはうまく説明できないんだけど、たぶん元々の成り立ちや、その後の経過が特殊だからだと思う。そしてそのような独特な会社で働くことの悩みやつらさや喜びなんていうのが世間一般の会社で働くのとなんとなくズレていたりして、心の底から「そうそう!」なんて同意することはほとんどなかったのである。

 そんななか前々から同じような会社であり、同じような状況なのではないか勝手に想像し、いつかお会いしてみたいと考えていた出版社があった。その出版社とは広告批評さんで、こちらの雑誌、取引(いまだに直です!)、組織とどこか相通じるものを感じていたのだ。

 そして本日、地方小出版流通センターのKさんの計らいにより、ついにその広告批評の方々とお会いすることが出来たのだ。

 乾杯!とビールジョッキを重ね合わせ話始めたら、いやはやビックリするほど似ていて、同じ会社の同僚か?と感じてしまうほど悩みを共有できるではないか。そうですよね、そうですよね、なんて頷いているうちにあっという間に夜の11時。まだまだ話したりなかったが、同じ業界、同じ職種で、同じ悩みを抱えて、でも一生懸命働いている人がいるってわかっただけで、かなり楽になれた。

 広告批評の皆様、ありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。

6月6日(月)

 常磐線を営業。

 この地域に限らずどこのお店を訪問しても5月の売上が悪かったようで、「売れる新刊が出てこないと…」とため息をつかれる書店さんが多い。うーん、確かにこれって新刊はないし、各店で掲示されている売れ行きベスト10を見ても変化に乏しい。

 こういうときに『半島を出よ』村上龍著や『美人の日本語』山下景子著など広告やメディアを使ってしっかり売るものを出してくる幻冬舎さんは、その商品が入る書店さんでは非常にありがたがられている。

 うーん、一度でいいからああいう広告展開をしてみたい。そしてその反響とやらを感じてみたい。でもでも慣れない出版社が同じようなことを失敗するんだろうな。身の丈にあった商売が大切なんだろうな。

6月4日(土) 炎のサッカー日誌 2005.06

 さいたまダービーなんて言われても、僕は納得がいかない。
 なぜなら僕はいまだに「さいたま市」なんて認めていないからだ。

 くそー。妻と結婚することが決まってした家捜し。その際僕が出した条件は「駒場競技場に自転車で行けること」であり、「浦和市」の住民になれることであった。それは妻にも不動産屋にも大きな声で伝え、そしてその通りのアパートを借りた。

 アパートは駅からかなり距離があって、妻にも同居する義母にも評判は悪かったがそんなことは知ったこっちゃない。ホームスタジアムに自転車で通えて、我が税金の一部が選手の給料になっていると思える幸せに比べたら、そんな不満はゴミみたいなもんだ。

 そしてそれから数年の歳月が経ち、我ら夫婦の間には子供が生まれ、部屋は手狭。妻は就職して以来ずーっと続けてきた定期預金の通帳を睨みつけ「あんた」と僕を手招きした。

 長い議論の末、僕は今後35年の人生と引き替えに唯一呟いた条件は「駒場とさいスタに自転車で通える場所」であった。すなわち、浦和レッズのために数千万の借金を背負った男が誕生したのである。

 しかしである。ローンを背負って数年後、我が住まう大地の名前が住民投票もなく勝手に変わってしまったではないか。いや区名に関してだけは住民投票が行われ、僕はもちろん「浦和レッズ区」と投票したのだが、市長は無視、思いきり無視、しかも東浦和区なんて浦和の名前が残る区名も却下され、付いた名前はさいたま市緑区だって。プライドオブ浦和の浦和はどこへやら。

 というわけで、僕、さいたま市を認めていない。だから大宮アルディージャと浦和レッズとの試合は決してさいたまダービーでなく埼玉ダービーだと思っている。

★   ★   ★

 ホームチーム(大宮アルディージャ)のスタンドを眺めつつ、そのガラガラさに驚く。こんなに人気がないのか? 大宮アルディージャ。そりゃすぐそこに我らが浦和レッズがあって、こちらのスタンドを埋めているかなり多くの人間が大宮市民となれば、仕方ないことか。

 それにしたって淋しい。これじゃダービーの盛り上がりどころか、普通の対戦チームよりも少なくて、なんだか弱いもの虐めしているようで悲しくなってしまう。でもこれから10年、20年経って、お互い半々くらいの入りで勝負が出来るようになりたいものだ。そしてそのときはアッパーも当然開放して6万人で埋めるさいたまスタジアムなんてのを観たいものだ。

 そんなことを夢見ていると試合開始のホイッスル。
 
 するといきなりいつもはシュートを打ったら思わず目を覆いたくなる鈴木啓太のミドルシュートが、素晴らしい軌跡を描いてゴールネットに突き刺さってしまうではないか。思わず頬をつねってしまったが、オーロラビジョンでリプレイが再生されているから現実の出来事なのであろう。生きてて良かった。

 その後も素晴らしく美しいサッカーが展開され、前半終了時で3対0。

 怪我人とコンディション不良で始まった今シーズンだが、逆にそれが幸いし、ここに来て多くの選手が覚醒し始めたのはうれしい誤算。

 ムラムラコンビだった山田と永井は昨シーズンから覚醒し、見事設定アップ。それに続けとばかりに、ゴールを決めた鈴木啓太、守備も上手くなった長谷部誠、そして我らがウッチー、内舘秀樹と次から次へと覚醒中。いやはやこれが順調に設定アップしてくれれば、良いチームになるよな。

 後半の失点とオーロラビジョンを停電させて雷雨は余計だったが、これにてナビスコカップ予選抜けが確定! 4年連続決勝進出、そして王座奪還を目ざし、頑張るぜ!

6月3日(金)

 本厚木、海老名、相模大野、町田と営業。

 思わず唸ったのは町田のY書店。こちらのお店には荻原浩さんをPOP展開で大々的に売り出したSさんがいるのだが、その荻原作品とは別に『肌の愛し方育て方 』佐伯チズ著(講談社プラスα文庫)にも大きなPOPが付いているではないか。

 常々店頭でPOP展開されている本が、やたら小説に多いのに疑問を感じていたため、実用書にPOPをつけられているのに感心し、しかも実践された結果のコメントがPOPに書かれているなんてビックリだ。

 早速担当のSさんにお話を伺うと「バイトさんが書いてくれたPOPなんですけど、すごい効果で」とのこと。ムムム、やはり手書きPOPは小説に有効なだけでなく、こういった実用書にも効くのだ。

 それにしてもこの沿線を営業していて思うのは、果たしてこの地域で既刊本というのが売れるのかという疑問。いや当然どこでも今は既刊本が売れないんだけど、でもここは世間の売れないよりもヒドイ状況になったりしているのではなかろうか。なぜならこの辺りは新古書チェーン店BOOK OFFの中心地で、町田にあるBOOK OFFは下手したら各新刊書店さんより大きな売場面積があるのではなかろうか。

 どう考えても既刊本の売れ行きには大きな影響が出ていると思われるのだがどうなんだろうか?今更この手の新古書店にNOと言えるような状況ではないと思うんだけど、そろそろ共存の道を探った方がいいのではなかろうか。

 そんなことを黄色と青の看板を見つめながら考えてしまったが、僕ごときが考えても意味がないわけで、どこかで誰かが考えておられるのだろう……。

6月2日(木)


 成城学園、経堂、代々木上原と営業するが、担当者さんがお休みだったり、不在だったりで、空振りばかり。くはー。

 しかし野球の選手は3回空振りしたらアウトだが、営業マンは3回空振りしてくらいから勝負だろう。人間関係なんてそう簡単に築けるわけはなく、例えデッドボールが当たろうとあきらめずに訪問するのが大切だ。気持ちがあればいつか届くはず、その代わり気持ちがなかったら絶対届かないんだから、これほど恐ろしいことはない。

 夕方、会社に戻るとコーヒーの山。(業務用ミックスナッツが入っているような大きな缶の奴)どうしたの? と聞くと笹塚駅前のカルディが3周年記念で10%オフセールをしていたから助っ人を総動員して買ってきたとか。くー、安いとはいえ、明日から喫茶・本の雑誌がオープンできるほど量だぜ。

6月1日(水)

 現在、もっとも新作を待たれている作家(僕だけじゃないはず!)であり、一番好きな作家でもある(こちらも僕だけじゃないはず!!)の金城一紀さんが初めて脚本を書かれた映画版『フライ、ダディ、フライ』の試写会へ駆けつける。なんと金城さんが、わざわざ招待してくれたようで、いやはや、ほんとにありがとうございました。

 僕、これまで映画をほとんど観ない人生を送ってしまったため、その小難しい善し悪しはまったくわからない。しかし原作(小説)にあれだけ感動した僕が観て、まったく違和感なく、そして映像と音が加わりまた違った良さが表現され、映画なのに思わず拍手してしまったほど。そして事務の浜田が大好きな朴舜臣役の岡田准一がカッコイイのなんの。最後のセリフと勝者の舞が僕の脳裏に焼き付いている。

 うーん、これは公開が始まったらまた行こう。そしてDVDが発売されたら即購入し、10数年後、娘や息子と一緒に観ようではないか。そのときもし僕が父親としてだらしない人生を送っていたら、子供達に怒ってもらおう。

 それにしても脚本と小説というのは結構違う物だと思うのだが、恐るべし金城一紀…。しかし映画も良いけど、是非、新刊(小説)を!と願うのはわがままな本読みの思いなのだが、なんと6月末に角川書店さんから待望の新作『SPEED』が発売になるそうだ。その日は有休取って(有給制度なんてないけど)一日読書だぁ!

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