WEB本の雑誌

« 2005年2月 | 2005年3月 | 2005年4月 »

3月28日(月)

 先日、二子玉川を営業に行った。

 今までだったら高島屋に入っている紀伊國屋書店さんを訪問し、それでまた次の駅へ移動していたのだが、そういえばブックファーストさんが出来たって話を聞いたなと思い出し、あわてて駅周辺を探すが見つからない。

 まさかそんな遠くにオープンさせるわけもなかろうし、うーんどこだ?とかなりウロウロしたのだが、結局あの青い看板を探すことが出来ず、肩を落として駅に戻った。改札を通り、顔を上げたら青い看板があるではないか おお! 駅の中にあったのか…ってそれくらい調べてから訪問しろよと深く反省する。

 かつて、とあるベテラン書店員さんと話していた時、どんなに凝った棚を作ろうと何をしようとやっぱり書店にとって一番大事なのは立地なのよ、とため息をつかれたことがあったけど、ほんと立地か大きさが書店の売り上げの大切なコンセプトになっているのは間違いなかろう。

 そういう意味で駅中というのは最高の立地であり、上野駅や品川駅、あるいは西船橋や千葉にも出来ているブックガーデンさんの売上は伸びていくであろうし、大宮駅やここ二子玉川のように駅中をテナントに貸し出す場所があれば、そこはチェーン書店さんの奪い合いの場になるのも想像がつく。

 ただ問題なのは、そういう場所はテナント代もきっと高額であろうということで、これをペイするほどの売上をその店舗がもてるのかどうかということだ。出版社から見れば、売れりゃいいわけだから関係ないといってしまえばそれまでなのだが、例えば単品50冊とか100冊とか売っているお店で結局店舗としては赤字だったなんて話は結構ある。

 そんなことをぼんやり考えつつ、担当者さんにお会い出来ずにお店を後にし、田園都市線に揺られていたら、ふと疑問が浮かんでくる。

 どんどん潰れていっているいわゆる「町の本屋さん」であるが、これってよくよく考えたらかなり良い立地にあるよな。駅前だったり商店街の入り口だったり。それなのにどうしてダメになってしまうのだろうか?

 って先ほどみた駅中ブックファーストさんを思い出したら、並んでいる書籍が全然違うじゃないか…。ブックファーストさんにはしっかり売れ筋本も多面積みされていたし、新刊も配本されているようだった。うーん、坪数は「町の本屋さん」と一緒なのに、どうしてこうも差が出るんだ。もちろん他店から在庫移動しているってことはあるだろうが、やはり看板の違いってことなんだろうか。

 うーん、結局「世の中」ってそういうことなのかな…。もちろん出版社に対するいろんな仕組みも結局大きいところの都合にあわされている気もするし。

 まあ、よくわからないことばかりだけど、僕自身はそういう「世の中」が嫌いってことだけはハッキリしているな…。

3月25日(金)

 一昨日、風呂場で意識を失った娘だが、その後はいつもどおりの腕白娘に戻る。おまけに点滴中に妻と僕から別々におもちゃを買ってもらう約束を取り付けていたらしく、雑誌『幼稚園』を開き、どれにしようか悩んでいる。いったい何だったんだ?

 しかし不安は不安なので昼過ぎに娘を病院へ連れて行き、いくつかの検査を受ける。そして出社。父親も大変だ。

 『増刊 本屋大賞2005』の事前注文の〆作業。これがいつもの倍近い短冊枚数で、いやはやこちらも大変。

 まあ大変だといっても実際に処理作業(注文短冊を切りとり、パソコンに打ち込み、順番に並べる)をするのは、営業事務の浜田ので、彼女は今、決算と本屋大賞の事務作業にも追われており、毎日毎日頭の上から湯気が出ているほどのオーバーヒート状態なのだ。

 ならば手伝えと多くの方がお思いでしょうが、これが手を出そうとすると、まるでおやつを盗むカツオくんを叩くサザエさんみたいに、ぴしゃりとやられるのだから手伝いようもないのである。ようは僕がからきし事務作業の出来ない人間で、手を出されると混乱するってことらしい。スンマセン。

 分厚い注文短冊の束を1枚1枚チェックし終えたら、今度は本屋大賞実行委員の会議。3月に入ってからほぼ毎週行われており、本日の議題は発表会当日の役割分担等。

 先日発表会会場の担当者さんが「酒も飲まずに本当に夜な夜な会議しているんですか!」とビックリされていたらしいが、2年目になっても予算がない有志事務局なので、誰かが買ってきたお茶とお菓子だけで、本当に終電まで打ち合わせしているのだ。おお、Y書店のNさん、陣中見舞いありがとうございました。実行委員一同で美味しく頂きました。それから実行委員の皆様、ワールドカップ予選にも関わらず、ありがとうございました。

 そのワールドカップ予選のイラン戦が、帰宅したところで後半開始。

 僕のサッカー観戦の基本方針は、一に浦和、二に浦和、三四がなくて五にレイナスなもんで、この蒼き日本代表に対して応援はするが、サポートするほどの興味はないといった感じ。だから遅い夕飯を食いながらテレビを見ても決して箸や茶碗を投げつけることはない。結果、1対2の敗北。くぅ~。

3月23日(水)

 朝イチで、昨日娘が運ばれた病院へ向かい、その後の経過報告。帰宅後はすっかり元気なっていたし、今朝もまったくいつも通りと伝える。

 うーん、それにしても昨日の大騒ぎは何だったんだろうか。妻は「もしかして私の早とちり?」なんて首を傾げていたが、いやいや、あんな事態に襲われたらをそりゃ焦るだろう。とりあえず検査の予約を入れ、会社に向かう。

 その後は営業へ。六本木、広尾、恵比寿、下北沢。本屋大賞も佳境を迎え、事務仕事も山積みなのだが、やはり僕は営業しているのが一番楽しい。いろんな書店さん、いろんな書店員さんにあって、いろんな話を伺える、これが仕事だというのだから、いやはや幸せ者だ。今の願いはとにかく第2回目の本屋大賞を成功させ、また普通に、いやもっと精力的に書店さんを廻ることだ。
 
 くー、もうひと踏ん張り、頑張ろう。そのためには心配ごとがあっちゃいけない。やっぱり家族の平穏無事というのは大事なことなのだ。うう。

3月22日(火)


 妻には会議で遅くなると伝えていたが、実は気の合う営業マンと、個人的には1年ぶりくらいになる焼肉を頬張る予定だった今夜。ジュージューモゴモゴプハーまであと30分。ヨダレを垂らしながら仕事を片づけていたら、携帯が鳴った。着信画面には「自分の家」の文字。どうしてバレたんだ?とあわてて電話に出たら、あれ?妻でも娘でもなく同居している義母ではないか…。

「あのですね、優希ちゃんがお風呂場で倒れて、今、救急車を呼んだとこなんです」
浦和レッズの優勝を希望してユキと名付けた我が娘が倒れただと。どういうことじゃ!!! 大声で問いただすと
「いや、今はけろっとしているんです、でも風呂上がりに何だかバタっとなって…」

 何だかどちらも興奮しているので、要領をえない。うう、もどかしいと思っていたら電話口に妻が出た。しかし妻も興奮していたが、話を総合するとこういうことらしい。

 娘と妻風呂に入る→息子も後から入れる→息子を出す→妻と娘出る→そのとき娘がふわりと倒れる→声をかけても応答がなくあわてて119番→しかしすぐ泣きだし意識復活→今はいつもどおり元気なったが一応心配なので救急車で病院に向かう。

 くはー。もう焼肉どころでなくなり、申し訳ないですがとドタキャンし、あわてて病院に向かった。電車よ! もっと早く走っておくれぇ~。

 救急病棟にあわてて駆け込み、娘のところに向かうと我が愛する娘がベッドに横たわって点滴を受けているではないか。その姿を見た瞬間思わず胸が潰されるような痛みを感じ、そのまま吐きそうになってしまったが、妻の説明を聞き一安心。

 とりあえずお医者さんの診察によるとどこも問題もなく、念のために取ったCTスキャンでも異常はなかったそうだ。うーん、空腹で長風呂っていうのがいけなかったのか…。

 点滴が終わった頃にはすっかり元気になっていた娘は、「パパ、看護婦さんにアサクラとセンパイがいるか聞いて」なんてとぼけたことを言っていたが、ううっ、父ちゃんはもうお前なしでは生きていけないんだから、とにかくどんなにバカでも良いから元気でいておくれ。

 ああ。親になるっていうのは大変だ。

3月18日(金)


「すぎえ~!」

 三日連続、社長に呼ばれるが、本日はパーテーションに仕切られた禁断スペースからではなく、ここは新宿・池林房の座敷の一角。

「そこのしょう油取ってくれ。そういや杉江は生魚を食べられなかったな。じゃあ、これはみんなオレのってことか」そういいながら、浜本は赤貝の刺身を一気に三切れ、口に突っ込んだ。

 そう本日は助っ人アルバイトの送別会で、珍しく社員アルバイトと顔を揃え酒を酌み交わしているのである。

 そもそも本の雑誌社というと体育会系で宴会ばかりしているイメージがあるかもしれないが、これだけの少人数で月刊誌を作るとなると、実はほとんど飲みに行く時間もなく、年に数回したみんなで飲むなんてことはない。いやみんなで飲むってことだけでなく、数人で飲むってこともない、非常にドライな会社なのである。

 ううっ。ここまで書いてふと気付いたのだが、もしかして飲んでないのは僕だけで、みんなは仲良くしょっちゅう飲んでいるのかもしれない。何せ僕は高校の同窓会にも呼ばれない嫌われ者だから、ここでもそういう扱いを受けている可能性は大である。どうなんだ、浜田? オレは嫌われるのにはなれているからハッキリ教えておくれ~。

 まあ、とにかくこうやって飲むのは、推定一年ぶりで、飲ミニケーションなんてのを取るために、酔った勢いで各自それぞれに座右の書を挙げさせてみる。

 そして「ふーん」と関心したのは、相変わらずW村上は人気あるなってことだった。助っ人数人が二人の著作を挙げているではないか。あとはこちらもいつの時代も読まれているんだなと実感したのは『深夜特急』沢木耕太郎著(新潮社)。編集長の影響で旅好きな学生が多くいる影響もあるのだろうが、その書名を助っ人のツバサ君が挙げたとき、うんうん頷く奴がいっぱいいたのだ。

 ちなみに発行人・浜本の座右の書は『瞬きもせず』紡木たく著(集英社)だそうだ。だから何だといわれたら何だが、そういえば最近、浜本秘蔵コレクションのマンガを会社の棚にせっせと運び込ばれているのだが、なぜなんだろうか?

 そんなことより卒業していく学生達よ、元気でな!

3月17日(木)

「すぎえ~!」

 二日続けて、パーテーションに仕切られた禁断の社長スペースの奥から社長に呼び出される。昨日同様、一応体育会系の従順な僕は、すぐに駆け寄っていく。

「あのさぁ~、3月14日の日記なんだけど……」

 今度は何だ? 悪口は昨日書いたし、そもそも最近は継続は暴力なり、じゃなかった力なりで、
さすがに4年半も書き続けていると、何も書かない人間は文句を言えなくなるらしく、この営業日誌に対するダメ出しを浜本がするなんてこともなかったのだが。

「ファンのことを考えなさい、ファンのことを!!」
「は?」
「せっかく清原さんの単行本未収録作品集を出版すると書いておきながら、書名だけでどうするんだ。どのタイトルがどの巻に入るか書かなきゃ、ファンの人は困るじゃないか。ファンの一番欲しい情報を提供するのが営業だろう」

 ムムム。まさか世界一冷たい発行人の口からファンなんて言葉が飛び出すとは想像もしなかった。いつもは僕が「ファン(読者)のためにはこうした方が良いんじゃないですか?」なんて発言すると「お前のいうことは正論だけど…」なんてたしなめられているというのに。うー、人間変わるもんだ、って何で変わったのかわからないけれど。

「とにかくもっときちんと『清原なつの忘れ物BOX』全2巻について、営業日誌に書きなさい。お前のあーだこーだはいらんからな。これ社長命令! じゃあ、いってヨシ!!」

 というわけで僕のあーだこーだは一切抜きで、詳細を書きます。

『清原なつの忘れ物BOX』全2巻 5月中旬発売予定

第1巻『サボテン姫とイグアナ王子』
A5判並製 216ページ 予価:本体1300円
収録作品:「サボテン姫とイグアナ王子」「五月の森の銀の糸」
「さよならはまにあわない」「カッパドキアの秋」「ヴォーカリーズ」
「ロストパラダイス文書」「とまとジュースよ永遠に」

第2巻『二十歳のバースディ・プレート』
A5判並製 216ページ 予価:本体1300円
収録作品:「二十歳のバースディ・プレート」「夏時間」
「お嬢さんお手やわらかに」

3月16日(水)

「すぎえ~!」

 パーテーションに仕切られた禁断の社長スペースの奥から社長の呼ぶ声。これでも一応体育会系の従順な僕は、すぐに駆け寄っていく。

「本屋大賞の対象作品というのは国内のオリジナルの小説だったよな」
自分たちで作ったルール。いまさら何を確認しているんだと思いながら頷く。

「だったら今月の新刊『純情ぴかれすく』中場利一著は対象になるわけか?」
「そうですね…」
「そうか! うちの会社で対象になりそうなのはこの本だけだから、今年は頑張ろう」
「頑張ろうって何がですか?」
「だからこれからお前は営業に行って書店員さんに会う度に、来年の本屋大賞は『純情ぴかれすく』ってつぶやき続けろ。毎回毎回だぞ。そうしたらサブリミナル効果もあって投票してくれる書店員さんが出てくるだろう」
「何をいっているんですか…。そういうことをやっているN賞に反発して作った賞じゃないですか」
「杉江、わかった。『純情ぴかれすく』がもし本屋大賞をとって20万部を越えたら1ヶ月みんなで休もう。それでいいな!」

 社員一同聞き耳を立てていたようで、休みと聞いた瞬間「わぁー」と歓声があがった。

 まったくこいつらはアホだ。1ヶ月の休みより金をもらえ、金を。20万部×1600円をかけてみろ。うちくらいの会社でこんな売上あがったら大変だぞ。

 うー、それにしても恐ろしい社長だ。サブリミナルで本屋大賞を狙えっていう発想も恐ろしいし、それで儲けたとしても一切社員に金を払う気がないなんて。こんな会社にいて良いのか…。

3月15日(火)

 中野のA書店Iさんを訪問すると「杉江さん、いま一番売れている作家誰だと思いますか?」と質問を出される。

 うーん…、片山恭一!っていっても『世界の中心で、愛をさけぶ』(小学館)が図抜けて売れているだけだし、やっぱりトータルでみたら神様仏様村上春樹様が強い!なんて答えたら「ブーブー」とのこと。

 正解は佐伯泰英で、この著者の時代小説は発売日にドーンと売れていくそうで、その売れ数も他の文庫の新刊と比べてもちょっと信じられないくらいなのだそうだ。そういえばそんな話を別の書店さんで聞いたことがあったな。そしてそのときその書店員さん自身佐伯泰英のファンで、毎月新刊が出るのを実はかなり楽しみにしていると告白されていた。

 この文章の「実はかなり」と「告白」が大事なところで、何だかその書店員さん、読んでいるのを恥ずかしがられておられた。なぜなんだろうか?そういえば佐伯泰英。こんなに売れているのに書評等にあがってこないこないのもどういうことなんだろうか?

 前からそのことが気になっていて『本の雑誌』でも気にして見ているのだが、鏡明さんと桑原清司さんが愛読しているらしいってことしかわからない。うーん…。また僕はすっとんきょなことを書いているのだろうか…。

 文芸書の担当であるIさんは「全部文庫なのが残念なんですよ。単行本で新刊が出たらガンガン注文しちゃうんですけど」なんて悔しがっていたが、なるほどなるほどみんな文庫作品なんだな。

 謎は深まる隠れたベストセラー作家佐伯泰英、って別に隠れているわけではないだろうけど、かなり著作も出ているようなので、どなたか読み方を教えてください。

3月14日(月)

 お気に入りの新刊『情報ぴかれすく』中場利一著の搬入。やはり本が出来上がってくる誕生日はうれしいもので、本を撫でつつ匂いをかいでしまう。中場さん、営業頑張ります!

 その後は営業に出かける。新刊営業は4月の『増刊 本屋大賞2005』と5月出版予定のファン垂涎の清原なつの単行本未収録作品集『清原なつの忘れ物BOX』全2巻(1巻タイトル=サボテン姫とイグアナ王子、2巻タイトル=二十歳のバースディ・プレート)。

 いつもの文芸書売場以外にコミック売場にもお邪魔させていただき、慣れないコミック営業。いつもと違った雰囲気にとまどいつつも、知らないことばかりなので、「どちて坊や」化し、いろいろと質問してしまう。

 そういえば『本の雑誌』4月号に掲載されていた書店員ガス抜き座談会のなかで、「努力したってたぶん1%ぐらいしか売上は伸びないから…」なんて自虐的な発言がされていたのだが、本当にそうなんだろうか?と考える。

 たとえば『千利休』なのだが、吉野朔実さんの本やサッカー関係で付き合いのあったコミック担当者さんあるいは文芸書売場でも面白そうじゃんと思って頂いた書店員さんが、一生懸命発売時期から面倒を見てくれていた。そしてそのお店はそろそろ三桁を超える販売冊数になろうとしているのだ。まあコミック売場の売れ行きからみたら100冊なんて何でもない数字かもしれないが、単価1700円を考えると通常のコミックの約4倍で、これは、なかなかのものなのではないかなんて自負したり…。

 こういうの、やっぱり書店員さんの力なのではないのだろうか。それがもしかしたら数字として捉えたときに、1%くらいなのかもしれないけれど、お客さんの「あったよ!」という満足度は、その数字では表すことのできないほどの大きいのではないか。

 なんてことを考えていたら兄貴からメールが入る。
「面白い本見つけたよ~。よしもとばなな『海のふた』(ロッキング・オン)読んでみ?」
 兄貴よ、弟はこれでも結構成長してるんだぜ。

3月11日(金)

 前日、久しぶりに飲み会に参加し、妙に喋りすぎてしまった。僕は酔って記憶を無くすなんてことはなく、かなり明確にその場の会話や雰囲気を覚えているタチなので、翌日、自己嫌悪に陥ることが多い。本日もそのパターン。スミマセンでした。

 午後取次店N社の返品説明会に参加。5月から新たな返品方法がとられるようなのだが、どうも本の雑誌社はそのシステムに適合しないようで、どうなるのか不安をおぼえる。質問はFAXでとのことだったので、夕方会社に戻り次第、すぐに質問事項を書き出す。

 ダラダラと遅くまで仕事。うーん、本屋大賞が続く限り、毎年3月はこんな感じになるということか…。

 社内で年度ごとの担当制にしたらどうか?と大声でほざいてみたが、誰もいなかった。

3月10日(木)


 地方小出版流通センターを訪問後、神保町の三省堂さんへ。

 すると書店員さん達がノドを枯らして「CLUB SANSEIDO」カードの入会を呼びかけていた。そういえば朝日新聞でもポイントカードの導入だ!と報道されていたっけ。

 まあ、いつもお世話になっているし、会費は無料だし、ポイントはともかく「Myブックシェルフ」という自分の購入履歴がわかる仕組みが面白そうなので入会する。この購入履歴。できれば店内で見られるようにして欲しい。それが出来ればあれこの本買ったっけなんて悩むことがなくなるわけで、目黒病の患者(僕も患者です)が通うことになるのではないか。

 ポイントカード等の値引きに関していろいろなところでいろいろ書かれているのだけどれ、ルミネやパルコのバーゲン時の書店さんの混みようを見ると、世間の人というのはたった数%得するだけでこんなに購買意欲が上がるのかとビックリしてしまう。

 また店頭で開催されたりしているバーゲンブックなんてのに、結構人だかりが出来ていたりして、うーん、本っていうのはやっぱり高いモノって認識をされているのだろうか。というかいつも定価販売しているものが安くなっているというだけで、やはり購買意欲があがるものなのだろうか。うーん、わからないなぁ。

 でもでも、そういえば、我が身を振り返ってみると、先日1年振りくらいにCDを買ったんだけど、そのCDには20%オフのシールが貼られていて、それが「買う気持ちボタン」を強く押したのは間違いない。

 うーん、うーん、再販制についてぼんやり考える。

3月8日(火)


 やはり本屋大賞が佳境を迎えるとこの日記の更新が出来なくなる。

 忙しいというか、心がついていかないというか。家に帰ってスーツを脱いだ時点で、もう完全にこのしょぼい脳みそしか詰まっていない頭が動かなくなってしまう。フラフラとすでに寝ている娘と寝てばかりいる3ヶ月の息子の匂いをかぎ、メシを食って風呂に入るので精一杯。あとは文字通りバタンキューで、本も読めずにまぶたがふさがってしまう。

 しかししかし投票に参加した書店員さんはもっと大変だったわけで、とある書店員さんからは2月はまるで運動会のように読書した感じで、そのおかげで3月は読みたい本が山よなんて笑われたが、その努力に応えなければ事務局お手伝いの意味はなく、頑張りましょうと毎朝気合いを入れている。

 そうはいっても本屋大賞は本業ではないわけで、本日は3月の新刊『純情ぴかれすく』(社内では『セカチュー』『イマアイ』のように略すと売れるのではないかと話され、なぜか『純ぴか』と呼ばれている)の見本を持って取次店廻り。

 各社決算期の3月は毎年狂ったように新刊が出版される月なのだが、今年もその悪しき習慣は変わらないようで、月の半ばの11日の搬入点数がすでに290点を超えていることがT社の窓口で掲げられていた。書店員さんは本当に大変だ。それにしても一日300点の新商品が出る業界って他にあるのか?

 というわけでその新刊洪水の中『純情ぴかれすく』は旅立っていく。中場さんの代表作になること間違いなしの面白さなので、荒波を越えてぐーっと大きく航海して欲しい。

3月3日(木)

 チームメイトの森川に会ったら「試合で活躍できないと日記を更新しないのか」とムカツクことを言われる。

 そうではなくてな、森川よ。お前はたぶん知らないだろうが「本屋大賞」っていう書店員さんが投票で決める文学賞を去年から始めてな、その二次投票っていうのが今週締め切りになっていたんだよ。それで、オレはお手伝いしているから集計に大わらわなんだよ。

 それにオレには普通の仕事もあってだな、一押しの新刊『純情ぴかれすく』の事前営業が佳境であっちこっちジグザグ営業しなきゃならんし、すっかり忘れていた結婚記念日も迎えるし、もちろんJリーグの開幕もすぐそこ出しで、発狂寸前なんだなこれが。

 身体はいくつあっても足らない状況なのに、心がいくつあっても溢れかえってしまうほど腹立つことがいっぱいあって、毎日毎日「我慢、我慢」なんて呟いているんだよ。ハァ。

★   ★   ★


 かなりすさんだ気分を抱えつつ書店さんを廻っていたら、新宿のK書店Hさんに「もう読みましたか?」と聞かれたのが『さくら』西加奈子著(小学館)だ。買っていたけどまだ読んでいない積読状態だということを告げると「早く読んで!! すんごい良いから!!」と大プッシュされる。Hさんとは『バッテリー』仲間なのですぐ読むことを約束する。

 翌日、横浜を営業し、M書店のYさんに最近の面白本の話を振ると、やはり『さくら』が挙がるではないか。「前作はちょっと物足りないところがあったけど、『さくら』で完全にプレイクしたね、あざとく泣かせようっていうんじゃなくて、気付いたら涙がポロポロ流れて止まらなくなっちゃうような自然さが良いのよ」。何だか新聞広告みたい…だけれど、マジらしい。

 そういえば半月ほど前、大阪のK書店Kさんから手紙を頂き、そこにもゲラで読んだ『さくら』がめっちゃよかったと書かれていたし、とある書店さんでは「小学館だと思ってなめていたら痛い目にあうよ」と訳のわからない薦められ方をし、ちょっとこの頻度は尋常ではないと、あわててカバンの中に入れてあった『さくら』を読み出した。

 そして現在96ページ。もう集計も事前営業も知ったこっちゃない。サボり決定だぁ!!

 ここまで読んだだけでも断言できるが、これは間違いなく傑作で、広告どおり今年のベスト1かもしれない。しかも何なんだ、この小説は。何だかものすごく誰かに「良いんだよ!!!」って伝えたくなるではないか。すでに友人5人にメールを送ってしまった。

 森川よ、君も買って読みなさい! 買うんだぞ、借りるんじゃなくて!!!

« 2005年2月 | 2005年3月 | 2005年4月 »