WEB本の雑誌

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4月28日(木)

 御茶ノ水のM書店さんを訪問すると、担当のYさんが「さぁ、今日中にいっぱい本、売らないとね! 5時以降が勝負。でも自分もいっぱい買って帰りそう」と話される。

 そうか明日からゴールデン・ウィークで、御茶ノ水のような学生街やオフィス街は、ある意味ゴーストタウンになってしまうから、今日が戦いなのだ。しかもGW明けには、お客さんのお財布が空っぽになっているから、ここ数日に出た新刊はほんとにここが勝負どころなのだろう。

 実際に統計をみたことがないからわからないのだが、なんとなく出版業界には年末年始やGW需要があるように語られ、そこに合わせて大量の新刊が吐き出されている。今週もかなり多くの新刊が出たようで、とある書店さんではもう並べられない!という悲鳴も聞こえてきたほどだ。

 しかし本当にそんな需要があるのか? 4月末発売というのは逆に損をしているような気がするのだが、どうなんだろうか…。

 とにもかくにも何を読もうかな…と思って本屋さんを訪れたお客さんに本屋大賞が役立つといいですね、なんて話していたら目の前で『夜のピクニック』が売れていった。うう、うれし。そして、ありがとうございます。

 さあ、こちらももう一仕事やって、GW獲得だぁ!!

4月27日(水)


 娘。一足早く5月病になってしまったのか、約2週間通った幼稚園に行くのを猛烈に拒む。理由はママがいないからだと話す。うう、妻の目に涙。

 しかし、ここで休ませたら、GW明けはもっときつくなるだろうと、柱にしがみつくのを引っぱがし、無理矢理バスに乗せる。当然こちらは激しい自己嫌悪。

 気持ちは分かる。そして幼稚園も学校も本当は行かなくたって良いってこともわかる。でもだからといって現実に行かなくて良いとは言えない、自分の度量の狭さ。椎名や野田さんだったら「おお、いいぞ行かなくて。その代わり川に行くぞ」なんて言うんだろうが、それが出来ない。

 父よ、母よ、スミマセンでした。
 子供が学校に行きたがらないのが、こんなに親としてツライことだとは知りませんでした。しかも私、行きたがらないだけでなく、幼稚園と小学校はしょっちゅう登校拒否、中学はサッカーが楽しみで通いましたが、高校なんて現実にほとんど行かなかったわけですから。さぞや心配だったことでしょう。どうもスミマセンです。

 頭の中では今朝、娘が叫んだ言葉がリフレインされている。
「パパなんて大嫌い!」
 ううっ。

4月26日(火)


 とある書店さんから電話が入り「来てくださいよ」なんて言われ、ビックリ。いやいやそうじゃなくて、実はその書店さんで、今春とある大手出版社に就職していった元・助っ人アルバイトTが書店研修しているのだ。そして今日が最終日にあたるそうで、一生懸命働いている姿を見に来てあげてください、との連絡だった。

 ご迷惑をかけていたのではないかと、早速お店を訪問すると、Tが必死に平台に文庫本を積んでいるではないか。おお! なんか本の雑誌でアルバイトしていたときと、表情が違うではないか。まさに真剣。

 声をかけるとあわてふためき、それでもやはりやらなきゃならない作業が気になるのか、台車と平台を行ったり来たり。書店員さんに挨拶しつつ、話を伺うと「一生懸命で助かってます」との有難きお言葉をいただく。

 Tよ、この数週間、書店の現場で感じたことを、これから本を作るときに絶対忘れないでくれ。たぶんこれから仕事で悩むだろうことの、ほとんどの答えがここにあるはずだから。そしていつも書店を覗く、編集者になってくれ!

4月25日(月)

 なかなか思い通りにいかないコミック営業を終え、疲れて会社に戻る。そして注文の処理やらデスクワークをしていたら営業事務の浜田が話しかけてきた。

「杉江さん、世界の山ちゃんで良いですか?」

 浜田は、いつも会話に前置きがなくて、唐突に結論を言う。ちなみに京都の山ちゃんは友達だけど、世界の山ちゃんは知らない。

「は?」
「いや30日の翻訳文学ブックカフェの打ち上げの会場ですよ」
「ああ、そうか。えっでも、いつものところは? あの忍者屋敷」
「あそこは土曜日休みなんです、で池袋は土曜日でも結構飲み屋が混むんで、予約しておきたいんです」

 なるほどなるほど、しかしその飲み屋の予約と世界の山ちゃんがどう繋がるのかわからない。

「杉江さん! 世界の山ちゃん知らないんですか?! 名古屋の手羽先屋チェーンで、超超超有名ですよ」

 そうなのか。前の会社で名古屋担当だったのが世界の山ちゃんは知らなかった。いつもウサギ大好きな先輩に、中国産のウサギがいるお店に連れて行かれていたのだ。そんなことより、超を重ねて話すのが似合わない年頃だと思うんだが、それは保身のため言わずにおいた。

「わかんないけど、世界の山ちゃんで良いんじゃない。でもそれってさ、編集の仕事じゃないの? 自分たちで組んだイベントの打ち上げでしょ」
「それはそうなんですけど、あの人たちにはこういことできないじゃないですか。これで放っておいたらどこも予約しないで、その場で適当になりますよ。それで右往左往して、みんなに迷惑かけるんですよ。そしたら結局本の雑誌社が恥をかくんですよ。だから仕方ないじゃないですか。それにわたし、新元さん好きだし。」

 何だかなぁ。うちの会社だけなのか、他の出版社もそうなのかわからないけれど、雑用というか「編集以外の仕事」は全部営業の仕事になるんだよな。例えば助っ人の管理及び採用、文房具やお茶等の購入、献本分の発送、飲み会のセッティング、それに本屋大賞の仕事だって…。

 そんなことを思って、口をモゴモゴさせていると、浜田に先回りされる。

「杉江さんはいつも編集はとか、営業はとか言いますけど、こんな小さな会社でそれを言い出したら仕事が回りませんよ。だから良いんです、わたし、イヤじゃないし」

 うう…。

 この会社、椎名と目黒と沢野は別格にして、例えば僕や荒木や松村が辞めたっていくらでも替えが効くし、それこそ極端な話、浜本が辞めても仕事は回るだろう。いやこれは誰かを貶めていっているわけでなく、仕事って、というか会社って、現実としてそういうところだ。しかし浜田の替えは効かないし、こいつが辞めたら仕事は絶対回らなくなるだろう。

 スマン、浜田、そしてありがとう浜田。

4月23日(土) 炎のサッカー日誌 2005.03

 先週のFC東京戦で05年シーズン初勝利をあげ、今後は一気に連勝、そして優勝争いに加わるはずの我が浦和レッズであるが、この日の駒場スタジアムでは、とても懐かしいサッカーが行われていた。

 それは4,5年前の浦和レッズのサッカーだ。チームコンセプトも浸透せず、そして規律がない。闘う姿勢もなければ、ボールも追わず、シュートは枠に入らない。そして45分だけサッカーをしてどうにか誤魔化す。

 見ているこちらにとっては、まさに苦行で、まあかつてだったらいつものことだったから我慢も出来たが、ここ2、3年の素晴らしいサッカーを見てしまった僕にはとてもつらい状況だ。どうしてこんなことになってしまったんだろうか?と、大声を出しながらずーっと考えていた。

 目の前で行われているサッカーは本当に単調で、自陣近くDFラインで取ったボールを(去年なら中盤でボールを取れた)、前線にポカーンと蹴る。いや蹴れればまだ良いのだが、その目標で前線にはしっかりマークが付いているので、近くの選手に横パスすることになる。だからパスは一応繋がっているのだが、意図的なパスでないため、まったく崩すことが出来ない。そこを素早いプレスで追われ、あわてて出したパスを奪われるか、あるいは無理して1対1を仕掛け奪われる。

 もちろんセレッソの前半のプレスが素晴らしかったとは思うけれど、実はそんなプレスを去年の浦和レッズがしていたのだ。スタンドで声をあげながら、この酷さ、どこかで見た感じだなと思ったら、現在の日本代表と似ているではないか。嗚呼。

 結局、試合は1対2の敗北で、いくらシーズンが長いといっても、もう目標を変えざるえないのではないか。

 かつて試合後の選手を迎えるサポーターの行為は、賞賛かブーイングの2種類ばかりだったが、今年はここに「沈黙」が加わった。とまどっているのは選手だけでなく、観ているこちらもだ。どうして良いのかわからない。

 闘え! 浦和レッズ!!

4月22日(金)

 社内は少女漫画ブーム。

 清原さんの新刊を作っている荒木や浜本は当然なのだが、その浜本が持ってきた「しげるちゃん秘蔵少女漫画コレクション」を浜田や松村が読みあさり、ああでもないこうでもないと大騒ぎ。しかも本日ちょうど下版の『本の雑誌』6月号も少女漫画特集なもんだから、一段と熱が上がっているってものか。

 そんななかゲラをチェックしていた荒木が「ほんとすごいんですから杉江さんも読んで下さいよ」と勧められるのが、いやすごいのはわかるんだよ。ただな、オレは自分でも驚いているんだけど、ここのところ漫画が読めないんだよ、なんかよくわからんけど。どう目を動かして良いのかわからないし、絵があって字を追うってのが難しいんだよ。

 そんな話をJ書店さんのTさんにしたときは「杉江さん、マンガ脳が退化しちゃったんですよ」なんて言われて、本当にそんなことがあるのかわからないけれど、その通りだと思った。

 そういえば毎年、年末年始に実家に帰って『キャプテン』と『プレイボール』と『のたり松太郎』を全巻読むのが僕の一年の終わりで始まりだったのだが、それを今年怠っていたことに気づく。もしかして、マンガの神さまに見放されたのか?

 うう、そういえばTさんにもうひとつ言われたんだよな「オヤジっすね、杉江さん」。
 もしかしてオヤジ化したってことか?

4月21日(木)


 ポツポツと迷い過ぎた学生さんからこんなチビ会社にも採用情報の問い合わせがメールで来てますが、今年は今のところ誰も辞めそうになく(坪内さん、荒木は6ヶ月で辞めませんでしたよ!)、仕事は山盛りにありますが、新たに人を雇うほどお金がないので新規採用もありません。

 なんて書いていたら、小社の迷える助っ人学生T君が「杉江さん、営業に一番大切なものってなんすか?」なんて突然大まじめな顔で聞いてきてビックリ。詳しく話を聞くと、どうも昨日面接にいった出版社で聞かれたようで、彼は「書店さんとの信頼関係」と答えたそうだ。

 それを壁の向こうで聞いていた編集部の荒木は、すかさず「腹黒さ!」と叫んだが、荒木君、本当に腹黒い人というのは、仕事であるオフィシャルなサイトの日記は半年以上も更新しないくせにミクシィなんてところで日記を書いている人たちのことを言うんだよ。

 さてさて、営業に一番必要なもの…。しばらく考えて僕の口から出たのは「愛」であった。
 お客さんへの愛、商品への愛、その他もろもろへの愛。

 せっかく真剣に答えたのにT君を含め助っ人全員が大爆笑となった。
 そしてまた壁の向こう荒木が呟いた。
「自己愛が一番強いんでしょ」

4月20日(水)


 昨日、まともに営業できなかった中央線の続き。

 立川は書店で考えると独特な町で、駅周辺の書店さんがみんなオリオン書房さんの支店なのである。きっと立川で生まれ育った人は、本屋というとオリオン書房というイメージなのではなかろうか。まあ、僕が住んでいる浦和も本屋といえば須原屋さんで、地元に根付いた書店チェーンというのがあるものだ。

 それにしても新店のアレア店から順に南から北へ営業をしていると不思議な気分に襲われる。だってこれが例えば横浜だったら有隣堂西口店、栄松堂、有隣堂ルミネ、丸善BM、紀伊國屋と5軒4書店を訪問することになり、結構売れ方も品揃えもそれぞれのお店で違ったりするもので、そうか同じオリオン書房といっても、もしかして各店でかなり違った傾向が出ているのかもしれない。

 その辺の把握がまだ出来ていなかったと反省しつつ、ノルテ店のSさんを訪問したのだが、いきなり「30周年記念楽しみにしていますよ」との先制パンチを食らわされ、ノックアウト。

 うう。30周年なんですよ、30周年。その仕事が実は山盛りで、しかも本屋大賞みたいに誰かが助けてくれるわけじゃない。自分が動かない限り、別冊も特大号も飲み会も何にもないわけで、いやはやまずい。思わず中央線に乗って高尾山に逃亡しようかと思ったが、山登りは長距離走の次に苦手だったのだ。くはー。

4月19日(火)


 『千利休』の重版搬入を待って営業へ向かう。

 それにしてもすごいな『千利休』。今回の重版で5刷目なんだが、こんなに一気に版を重ねたのは僕が入社してから初めてのことだ。しかも書評掲載爆発後もジックリ売れていくこの感じは、出版社としてというか、営業としてというか、作品としてというか、とにかく一番良い売れ方なんじゃなかろうか。出来上がってきた5刷目の『千利休』を思わず頬ずりしてしまう。

 まあ、こんなことを書くとまた浜本や荒木から「お前がチマチマしているからだ」と怒鳴り声が聞こえて来そうだが、なんと調子にのった浜本は、なんと「本の雑誌」6月号で本の雑誌初のマンガ特集、それも少女漫画特集をするという暴挙?に出て、何だかここ数日、ノリノリの鼻歌交じりに編集作業に勤しんでいるのである。

 やっぱり人間好きなことやらないと、そして出版社もやはり好きな本を出すというのが原点なんじゃなかろうか、しかし好きなことで勝負して負けたとき(売れなかったとき)は本当にツライだろうなぁ、なんてことを考えつつ、本日最初の営業先、阿佐ヶ谷のS書店さんを訪問する。が、いきなりトラブル発生で、急遽会社に戻ることに…。

 くくく、オレは何も失敗するなとはいわないよ。オレだって失敗ばかりだし。ただ失敗しないように注意して仕事をするのと、失敗したときにはきちんと責任を取るってことは大事なんじゃないか。

 そういえばとある打ち合わせの際の、先方の上司と部下の会話を思い出す。部下の書類のケアレスミスに気付いたとき「気持ちのこもった仕事をしようぜ」とその上司は部下の肩を叩いたのである。たかがケアレスミスでと思ったが、そういうケアレスミスこそ気持ちがこもっているかいないか一番現れる部分なのだ。

 そうそう「気持ちのこもった仕事しようぜ!」

4月18日(月)


 目黒、恵比寿、渋谷、青山と営業。

 05年本屋大賞作品の『夜のピクニック』恩田陸著(新潮社)の売れ行きを各書店さんで確認しているのだが、とても順調なようで、2年目のプレッシャーからやっと解放される。フゥー。

 おまけに今年は2位の『明日の記憶』荻原浩著(光文社)も売れているようで、良かった良かった。そういえば先週訪問した川口のS書店さんでは「中高年にはこちらがお薦め」というPOPが『明日の記憶』に立っていて、そうやって各書店さんの主観が入るのが、本来の目的だったりするのでうれしいかぎり。

 2年連続受賞の新潮社さんも今年は昨年のデータや実績があるので、商品の供給もやりやすそうだ。朝日新聞の広告はもちろん、業界誌『新文化』に掲載された広告も愛がこもっていて感動してしまった。ご協力ありがとうございます。

 さて、そろそろ自社本を売らないと、5月の新刊『清原なつの忘れ物BOX』の営業に勤しむ。しかしいつも営業している文芸書売場とは違う不慣れなコミック売場への営業に苦しむ。

 明日5刷り目があがってくる『千利休』や吉野朔実さんの作品は文芸売場で面倒みていただいたりしていたのだが、さすがに『清原なつの忘れ物BOX』は完全なコミック作品であり、そういう意味でいうと100%コミック売場に向けて営業するのは初めての経験だ。

 出版業界では他ジャンルの本を出す時に「新規参入」なんて言葉を使ったりするのだが、その言葉の意味を噛みしめる毎日。この業界、ほんとジャンルが違えば別商売…みたいな感じで、それこそ本の雑誌社30年の歴史も、僕の今までの営業実績もまったく役立たず、それよか逆に文芸書の版元というのが邪魔になったりして、悪戦苦闘、お店から出ると身もだえしてしまう。それこそ、名刺をいただけただけで嬉しい新入社員時代の気分を思い出し、そして日頃どれだけ甘えた営業をしていたかを思い知る。

 夕方までガッチリ営業すると、足も心もフラフラの状態に。でも、コミック売場に関していろいろ感じることが出来たり、それこそそんななかで暖かい対応をしていただいたりすると感動も大きかったりして、つらいなかにも喜びがいっぱい。

 さあ、頑張りましょうと自分に声をかけ、ルート最後の書店さんに向かう。

4月16日(土) 炎のサッカー日誌 2005.02

 飛田給駅から味の素スタジアムへ向かう道。駅前のたった1本、それも数百メートルの道なのに、やたらに警官が立っているのはなぜなのか?

 確かに我らが浦和レッズとFC東京は、あまりよろしくない関係のチーム同士あるけれど、それにしては多いんじゃないか。もしかして警視庁。浦和レッズが負けて、開幕6戦勝利なし、俺たち暴動にかけていたりしてないか。オイオイ、お前ら、それは税金を無駄遣いってもんだ。休日出勤なんてしてないで、早く家に帰って寝てなさい。

 なんて威勢の良いことを言いたいところだけれど、今週の水曜日以降、僕はずっと下を向いていた。サッカー観戦がこんなにつらいものだったとは…。ここ数年の好調で、すっかり忘れていたけどサッカー観戦とは本来「苦行」のひとつだったと思い出す。うう、勝てないってこんなにつらいことだったんだ、そして1勝することはこんなに大変だったのか。なんてまるで93,4年のツライ日々をシンクロさせて下を向いていたのである。

 さて本日は、憎きFC東京戦である。

 僕、一番好きな色は何ですか? と聞かれた当然「赤」と答えるが、一番嫌いな色はと聞かれたら「赤と青の組み合わせ」と答えるだろう。

 だから先日はじめて「みなとみらい駅」を訪れ、階段を上っていたら吐き気がするほど怒りがこみ上げて来て、なぜなんだろうとビックリあたりを眺めたら、なんとこの駅、あろうことか通路の壁を赤と青のツートンに塗りたくっているではないか。もう2度と使うものか「みなとみらい駅」。とにかく生理的に赤と青を受け付けないというか、FC東京が嫌いなのだ。

 しかもFC東京が嫌いなのは僕だけでなく、チームも同様のようで、嫌い過ぎて思い切り苦手。昨年のナビスコカップ決勝は当然思い出したくないけれど、それ以外もほとんど勝てたことがないのである。ここ味の素スタジアムに限っていえば、ナビスコの予選で一勝しただけで、あとは全部負けか引き分け、腹立つくらいやられてる。嗚呼。

 大事な試合が始まって45分、まったく得点の匂いもなく、前半が終わる。FC東京のサイドに広がる3トップに対応した4バックがうまく機能しているのが救いだったが、これでは引き分けがいっぱいなのではないか。

 無性にタバコが吸いたくなるが、すでに禁煙一年。ここで破っては沢野画伯に怒られてしまうとポケットに入れておいたバーボンをあおり耐える。

 後半も同じような展開が続いたのだが、やっとサイドが上がり、そして絞り、その空いたスペースを長谷部が利用し、中に折り返す。僕は一瞬「誰もいねーところにいれてんじゃねーよ」と怒鳴りそうになったが、なんとそこに飛び込んできたのは我らがエメルソン! ここ5試合散々外してきたシュートも、やっと自主キャンプが終わってフィジカルが上がってきたようでしっかりゴールネットを揺らし、1対0。味の素スタジアム、炎上!!!!

 さらにそれまで入る気のまったくしなかったコーナーキック。なぜか僕の目には堀之内がピッカリ輝いて見え、ほんとにその通り堀之内の頭にボールが流れ、今年2点目のゴール。ラッキーボーイ!!

 その後も何度も何度もバーやポストに助けられつつも、ついに05年シーズン初勝利! まだまだ行けるぜ浦和レッズ。これからもたくさんの「ゴールで俺たちを熱くさせてくれ」。

 それにしても試合後の道路には、なぜかあれほどいた警官が見あたらなかったぞ。やっぱり俺たちの負けにかけていたのか警視庁。くそ!


追)この日の試合後。ゴール裏からすでに引退して何年も経つ、水内猛のコールが響き渡った。

「み~ずうちたけし、ごお~る、ごお~る」

 それは当然、TBSアナウンサー・小倉弘子との結婚に対しての祝福のコールである。
 そう僕たちはファミリーなのだ。いつだって僕たちとともに闘ってくれた人は、家族なのである!

4月11日(月)


 通常営業に戻って、神保町と池袋を訪問。しかし会話の内容はやはり「本屋大賞」になるのが当然で、いろいろな意見を伺い一日が終わる。そうかこの時期の意見を全部書き出しておけば、次の「本屋大賞」につなげられるのか。とりあえず会社に戻ってすべてメモに残す。

 夜はドタキャンで保留になっていた焼肉。

 出版営業マン同士というのは、他の業界に比べたら相当互いの敷居が低く、というか敷居そのものがないような感じで、各飲み会でざっくばらんに話をしたりする。それこそ他の業界じゃとても話し合えないようなことも話し合え、まあそれは良い面も悪い面もあるんだろうけど、そんなざっくばらんな営業マン同士の出会いのなかでも、気の合う人というのはそういるわけでない。

 それは当然で、ものも味方も違えば、考え方も違うわけで仕方ない。だからまあ、逆に気の合う人、考え方の似ている人に出会えれば、もうほとんどそれは学生時代の友人に近い人間関係が築けるってものだ。僕自身、数人であるがそうやって情報交換というよりは、もう生き方、考え方の相談ができる営業仲間がおり、本当に幸せだと思う。

 本日もそんな営業仲間のひとりと焼肉を食い、その後はまるで高校生のように喫茶店で2時間しゃべりどおす。腹も心も大満足な夜であった。

4月9日(土) 炎のサッカー日誌 2005.01

 風呂場で倒れて病院に運ばれた娘は結局何の問題もなかったようで、本日、満開の桜の木の下で幼稚園の入園式を迎えた。よくぞ育った娘よ、そしてこれらもしっかり育てと幼稚園に向かったのであるが、その途中で車がガタガタ言い出し、あわてて停車、そして確認すると左後ろのタイヤがパンクしているではないか。

 くはー。マジかよ! 入園式に遅れたらオレはどれだけ妻に罵られるんだ。いかんせん昨夜遅く、いきなり真面目が話があるんだけどなんて腰を蹴飛ばされ、優先順位を決めてくれと問題を出されたのだ。

問題その1 入園式と浦和レッズ 午前と午後だから質問無効
問題その2 運動会と浦和レッズ ピーン! 浦和レッズです。なぜならガキが走っているのを見るならエメルソンが走っている方を見たいから。
問題その3 父兄参観と浦和レッズ ピーン! 浦和レッズ。父ちゃんが学校と先生が大嫌いだから。
問題その4 遠足と浦和レッズ ピーン! 浦和レッズ。芋なんか八百屋で買え!
問題その5 卒園式と浦和レッズ ピーン! 浦和レッズ。卒園式に興味なし。

 全問正解したのに、出てきたのが般若のような顔と深いため息だけ。「でも初めに確認しておいて良かったわ。あきらめがつくからね。まあ結婚したときからあきらめていたけど」なんて言われ、まあそれは僕にとっては大成功ってことなんだが…。

 パニックになりそうな頭をどうにか抑え、ダッシュボードを開ける。確かあったはずだぞ、おおホントにあったよと説明書を取り出し、見よう見まねでジャッキアップ&スペアタイヤに交換。なんだこんな簡単なのかよとビックリしつつ、再度エンジンをかけ、幼稚園へ向かう。どうにか間に合い、レッズバカ父ちゃんの命は繋がったのであるが、なんと結局タイヤ4本を新品に替えることになり、計3万円の大出費。

 いてーいてー、不幸のどん底だぁと泣きつつ向かったさいたまスタジアム。しかし底はもっと深かった。

 開幕4試合、勝ち星なし? 2年ぶりの最下位だ? 最下位は確かに経験してるが、18位なんてでっかい数字は初体験だ。もしかして、もしかして、つい1ヶ月前にサッカーバカの年が明けたというのに、たった1ヶ月で年が終わってしまうのか? 

 計算したくはないけれど、ついつい計算しちまおう。
 去年の浦和は1stステージ7勝4分4敗(勝ち点25=3位)と2ndステージ12勝1分2敗(勝ち点37)の合計62で数字の上での総合で1位だったわけだ。これに今年は2チーム増えているからホーム&アウェーで4試合足されるわけで、まあ勝ち点7くらいが妥当な上乗せ分か? ということは勝ち点69~70が優勝ラインってことか。

 残り30試合で勝ち点70ってことは、現在勝ち点2を確保しているからあと23勝すればいいわけか。まだ7回負けられる…。おお、数字は偉い。まだまだ諦めることはないってことだ。うん? ほんとなのか?? なんか違う気がするんだけど。

4月8日(金)

 本屋大賞と違って、推定二人にしか相手にされていないサッカー本大賞ですが、こちらはサッカー&サッカー本バカの僕が、年末の「本の雑誌」のスペースを有効に利用し、独断と偏見で選んでいるものだ。2001年の1月号で初めて開催し(おお! 栄えある第一回目のサッカー本大賞は名著『ぼくのプラミア・ライフ』ニック・ホーンビィ著(新潮社)ではないか!)、すでに5度大賞を発表をしている。

 さて今年のサッカー本大賞は、「2月の時点で決定かぁ!!!! 」なんてこの『帰ってきた炎の営業日誌』に2月10日付けで『アヤックスの戦争―第二次世界大戦と欧州サッカー 』 サイモン・クーパー著、柳下毅一郎訳 (白水社) を大プッシュしていたのだが、いやはや凄いところから絶妙のクロス(本)が上がってきたではないか! オランダのビッククラブ・アヤックスと対するのは、なんと人口たった8000人の温泉町草津である。

『サッカーがやってきた ザスパ草津という実験』 辻谷秋人著(NHK出版 生活人新書)

 いやー、昨日購入し、帰宅時にすでに家族が寝ていたのを良いことにそのまま読み込んだ約2時間。ザスパ草津というチームは当然ある程度は知っていた(3年でJに昇格、選手も温泉で働く、奥野や小島がいた)のだが、そんな表面的な部分ではなく、もっと奥深い、例えば町がどうやってザスパ草津を受け入れたのかとか、あるいは旅館の人々がどう選手を迎え入れたかやサポーターはどうやって誕生したかなんてエピソードが丁寧に描かれていてサッカーバカは一気読み間違いなし。

 特に第二部で書かれるザスパ草津の前身であるリエゾン草津の話はビックリ仰天というか、サッカー魂炸裂の話で思わず読んでいるこちらも「ガンバレ!」なんて声をあげてしまいたくなる話なのである。クラブの母体であったサッカー学校が倒産し、それでもサッカーから離れられない選手たちが協同で部屋を借り、コンビニバイトの選手が持って帰ってる廃棄処分の弁当を奪い合って食っていたというのだ。

 しかも選手が集まらないから試合終了時には試合成立最低人数の8人だったりするときもあったそうで、おまけにいつもコンビニ弁当しか食っていないから試合中に栄養失調で倒れていたりするのである。これ、何も昔の話ではない。2002年ワールドカップの自国に日本中が浮かれていた頃のことだ。うう、新作が出る度、徹夜でやっているサッカーゲーム『サカつく』は破産したらリセットを押せば良いけれど、やはり現実のサッカークラブというのはそうはいかないのである。

 そんなリエゾン草津に、日本一人格者のサッカー選手(杉江推定)奥野らがやってきてザスパ草津というクラブが徐々に出来上がって行くわけだが、こちらも当然困難の連続で、しかしサッカーを愛する人々、あるいは愛し出す人々の協力により、3年でのJリーグ昇格という奇跡が起こるのである。まさにここに描かれているのはJリーグの100年憲章に書かれているようなものなのだ。

 ああ、この本については、もうとことん朝までサッカーバカな人と酒を飲みながらアツく語り合いたい。とにかく素晴らしいサッカー本だ!!! しかもそれがたった680円(税別)。ぜひぜひワールドカップ予選なんてお祭りを騒いでいる隙間に、おらがチームを応援する喜びを伝えるこの本を読んでください!! 前にも書いたがおらがちーむを応援することこそが、日本代表を強くする第一歩なんです!! もしおらがチームがないなら作りましょう。

 それにしてもNHK出版! ここは素晴らしい写真集『木曜日のボール』近藤 篤著 やぴかぴか頭の審判の自伝『ゲームのルール 』ピエルルイジ・コッリーナ (著)や同じく生活人新書で『国見発サッカーで「人」を育てる』小嶺 忠敏著なんてのを出していてサッカー本バカにはたまらない出版社なのだ。たぶん誰かサッカーバカな編集者がいるのだと思うけれど、ぜひぜひ面白サッカー本を出し続けてください。応援してます!!

4月7日(木)

 満を持して営業活動を再開する、といっても別に外回りを辞めていたわけではないのだが。
 ただ気持ちの問題として…。

 それにしても暑い。コートを脱いで外回り出来るとうれしがったのがつい先日のことなのに、もう上着を着ているのがツライなんて、どうなっているんだ? ほとんど外にいる僕の実感として、もう日本は冬と夏の二季しかかない感じだ。しかも4月の上旬じゃ電車もクーラーが効いてないからキツイ。

 新宿のK書店さんを訪問すると、店頭のイベント台でドーンと「本屋大賞」が展開されていて、いやはや嬉しい限り。しかも目の前でお客さんが大賞作品の『夜のピクニック』恩田陸著(新潮社)をレジに持って行かれ、思わずその後ろ姿に向かって深くお辞儀してしまった。ありがとうございます。

 一年の苦労が頭をよぎる。苦労が報われるってこういうことをいうのか。
 ああ、何だか泣けてくるなぁ…。

 しっかし今日は泣きすぎだ。何せ通勤途中に買った『Number』625号のなかで掲載されている【メモリアルインタビュー】と題された三浦知良と中山雅史のインタビュー記事が、もう胸を揺さぶられる言葉の嵐で、不覚にも埼京線のなかでボロボロ涙を流してしまった。

 もちろんコイツら二人は我が浦和レッズの選手じゃないから敵なんだけど、長く続けてきた選手の言葉の重み、しかもまだ第一線で活躍しているその努力、それはそれで敵ながらあっぱれ。特に三浦知良のインタビューは、インタビュアーがあの名実況でお馴染みの山本浩で、ふたりの信頼関係からなる会話がたまらなく良い。ああ、こういう歳の取り方をしたいもんだ…ってそんなに変わらないのか…。

 その後は会社についてメールを開けたら、『夜のピクニック』の単行本編集の担当AさんからとあるMLにメールが届いていて、いやはやこれがもうスイッチ押されっぱなしの感動のメール。

 こうやって真剣に本を作っている人が、本屋大賞受賞本の担当だったことがなによりもうれしい。基本的に著者とj編集者という人種の人が苦手で、なるべく近づかないようにしているのだが、いやはや、ああ、読み直しても涙が出てくる。これからも面白本作ってください。Aさん、期待してます。

4月6日(水)

 発表会の後、実行委員の打ち上げ。それも終わって一段落。さあ、長い一日も間もなく幕を閉じる。家路に着こうと歩き出したところ、隣を歩いていた実行委員のオリオン書房ノルテ店白川さんに「今年も杉江さん、泣きませんでしたね」と残念がられたてしまったが、実は違う意味で僕は心のなかで泣いていた。

 それは、たとえば日々の営業で、あるいはこの「炎の営業日誌」で、そしてこの日あった「本屋大賞」で、僕自身、少しは「書店」「書店員」というものをわかっているつもりでいたのだ。

 ところがこの日、立錐の余地なく、いや会場から溢れてしまうほどいらしていただいた書店員さんの、その熱意、その情熱、その想い、その笑顔、その本への愛情に触れ、自分は全然わかっていなかったと痛恨し、しかも実行委員お手伝いでありながら、結局、僕は出版営業マンでしかなく、本当の意味でこの書店員さん達と、一緒に頷き、笑い合うことが出来ないんだと、ときわ書房聖蹟桜ヶ丘店の高頭さんの素晴らしい挨拶を聞きながら気付いてしまったのだ。

 ちくしょー、書店員になりたい! つくづくそう思わされた夜だった。

★   ★   ★

 恩田さん、おめでとうございます。そしてお付き合い頂き、ありがとうございました。

 会場にいらしていただいた皆様。実行委員の予想を大きく上回る入場者数で、しっかりおもてなしも出来ず、それこそ立つ場もなく、本当に申し訳ございませんでした。

 全国の書店員様、第2回本屋大賞作品『夜のピクニック』をよろしくお願いします。

 そして実行委員の皆様、お疲れ様でした。
 でも来月には第3回の打ち合わせします!!!

4月5日(火) 2005年本屋大賞発表日!


 2005年本屋大賞、発表日。
 発表時間は、発表会に合わせ午後8時を予定しています。
 本屋大賞ホームページにご注目ください。


 昨日、ふだんどおり営業をしていたら「発表前日に普通に営業していて大丈夫ですか?」なんて書店員さんに心配されてしまったのだが、そうではなくて、普通に営業をしていないとどうにかなってしまいそうなほど緊張と興奮をしてしまっていたのだ。

 それは今日も一緒で、というか今日の方が酷くて、今朝目覚めたのは午前4時だった。

 まだ日も昇っておらず、本日の長丁場を考えるともう少し寝ないと布団をかぶり直したのだが、当然眠ることも出来ず起き出し、仕方ない本でも読もうと読みかけの『半島を出よ』村上龍著(幻冬舎)を開くが、まったく頭に入って来ない。

 うう、村上龍の待ちに待った新刊(小説)をこんな集中力のないときに読んでしまってはもったいない。結局本を閉じ、ジャージに着替え、外に出て、サッカーボールを蹴ることにした。

 10代の頃から使っているボロボロのサッカーボールを蹴っていたら、だいぶ気持ちが落ち着いてくる。ロナウジーニョ!なんて叫んでアヤシイターンをしたらそのまま転んでしまったが…。

 ジャージに付いた泥をたたき落としながら、発表後の実行委員の打ち上げを想像する。

 おお! そういえば実行委員で酒を飲むなんて、昨年の本屋大賞発表会以来ではないか…。そうか、月に一度や二度会っていることは会っているのだが、いつも真面目な会議ばっかりで、酒を飲むなんてことはなかったんだな。

 皆さん、発表会を成功させて、うまい酒を飲みましょう! 

4月4日(月)


 いよいよ明日に迫った第2回「本屋大賞」の発表!

 今年は公式発表も発表会も増刊号の搬入もすべて明日、4月5日に合わせているため、昨年以上にいろんなことが同時進行で動き出す。しかしここまで来ると僕自身の仕事はだいぶ減り、こんどは現実に発表会を仕切る部隊がおおわらわに。

 そちらは、司会、進行、裏方とほとんど現役の書店員さんがやるわけで、本業の傍ら様々な雑務に追われ大変なことだろうと思う。が、今年はいろいろと協力を申し出てくれる書店員さんもおりうれしい限り。お願いできることはどんどん頼み、まさにみんなの本屋大賞になれると良いなと考えている。

 日本代表がバーレーンと闘っているとき、我ら本屋大賞実行委員は発表会のリハーサルをしていたのだが、実行委員一同のまとまり&熱気は日本代表を超えていたのは間違いなし。ジーコよ、見てろよ!って見ているわけはないんだけど…。

 昨夜、妻に火曜日は「『本屋大賞』の発表会で遅くなるから」と伝えたら、「あれからもう一年も経っちゃったんだ。ああ、早いね」なんて言われたが、そう考えると一度しかしていないこのお祭りの浸透度にはもっとビックリ。

 たった一年でこれだけ多くの人に認知され、しかも楽しみに待って貰えるように成長していること、本当に幸せとしか言いようがない。昨日の朝日新聞に掲載された広告を見て思わず感動してしまった。

 もちろんもっともっと盛り上がるようにしなかればいけないし、そのためには第2回目の今年がとっても重要だということは承知している。

 さぁ、明日! 実行委員の皆様、頑張りましょう。

 そして全国の書店の皆様、ぜひぜひ今年も大賞作品をガーンと売って、もちろんその隣には自身のお薦め本があればそれも売り、店頭に春のお祭りを展開させてください。

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