WEB本の雑誌

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4月24日(月)

 営業に出かけようとしていたらヤフーニュースを覗いていた浜田が「あっ! 山手線と埼京線と湘南新宿ライナーが止まってますよ」と報告。むむむ、営業コースを変えなくては、というか、埼京線が止まっていたら俺は帰れないんだけど…。

 とある書店さんを訪問すると「ほんと感謝しているのよ本屋大賞」とありがたいお言葉を頂戴する。「4月のこの時期、これだけ文芸書が活気づく。ほんとありがとう」何だか泣けてくる。

 しかしこの書店さんでは『東京タワー』江國香織著(新潮文庫)を「これよこれよお母さんの話」と持ってくるお客さんが激増中で、あまりに紛らわしいので平台を外したとか。うーん、すごいもんだ。

 ちなみに本日の読書は、ただいま僕がもっとも新刊を待ち望んでいる作家ベスト3のうちのひとり粕谷知世の待望の新刊『ひなのころ』(中央公論新社)。前著、大傑作『アマゾニア』に気づくのが遅く、本の雑誌2004年度ベスト10に挙げられなかったことを未だに激しく後悔しているので、今度は速効読む。

 『クロニカ』『アマゾニア』と中南米を舞台にした小説から今度は一転してちょっと昔の日本。大丈夫なんだろうか?と心配しつつ、読み始めたのだが、いやはやそんな心配は無用だった。粕谷知世はどこを書こうと粕谷知世。

 女の子の成長を通して家族や生きるということを描いていているのだが、その根底にはいつものテーマ「古いものと新しいもの」だったり「生と死」の衝突というか対比というかが置かれており、特に大したことは起きないのだが、とても奥深い物語になっていると思う。

 『アマゾニア』が粕谷版「もののけ姫」なら今作『ひなのころ』は「となりのトトロ」か。
 うーん、やっぱり僕はこの作家が好きだ。

4月21日(金)

 浦和美園ジャスコオープン!

 というわけで直行で旭屋書店さんとヴィレッジヴァンガードさんを覗きに行こうかと思ったが「私たちより先に行こうとしているわけ?」と妻に恫喝され、素直に出社。

 通勤読書は、酒飲み書店員の課題図書『異人たちとの夏』山田太一著(新潮文庫)。

 この本を推薦したのは、松戸良文堂の高坂さんで、なるほど高坂さんはこういう本が好きだったのかと違う意味で楽しめたりするのが、こういう企画のもうひとつの面白さか? たぶんドラマか映画は見た記憶があるんだけどすっかり忘れていて、重松清の『流星ワゴン』ぽい話かな?なんて読み進むうち、現実と想像の区別がつかなくなり、ちょっと恐ろしい。

 営業は京王線。

 府中の啓文堂さんがリニューアルされていてビックリ!
 今まで入り口の狭さ(目立たなさ)が気になっていたのだが、今度は駅コンコース側にドーンと開いて、これでもう分からない人はいないだろうという感じ。しかもその新設された入り口正面に棚なし平台を設置し、その奥に通常の棚あり平台。これはこれはとても見やすい、そして目立つレイアウト。いやー、良いリニューアルだ。

 と驚きつつ、調布に移動したら、リブロ調布店もリニューアル終了。
 レジをセンターに配置し、全体のゾーニングがわかりやすくなったような印象。

 いやはや京王線は聖蹟桜ヶ丘にあおい書店さんとときわ書房さんが出来、既存店のくまざわ書店さんが大々的にリニューアルを計り迎え撃ち、今度はそれに続けとばかりに沿線の2点がリニューアル。大変なことになってきたな。

 夜はL出版社のNさんや、取次店N社の方と飲み会。
 なかなか取次店の方と飲む機会がなく、まるで社会科見学の子供のように、どういう仕事をされているんですか? なんて初歩的なことを聞いてしまう。そんなことまで取次店の人はしているのか…。うーん大変だ?

4月20日(木)

 夜、浦和の力(りき)で、ランダムウォークの山村さんと酒。
 
 山村さんが以前勤めていた神保町店は店舗の老朽化で閉店してしまいとても残念なのだが、今度、そのランダムウォークが大阪に出店することになり(http://www.bookshop.co.jp/whatsnew/index.html)、山村さんはそちらの店で腕を振るうこととなったのだ。うれしいやら淋しいやら。本日は無事引っ越しも完了し、浦和最後の夜。

 ビール、ビール、レッズサワー、レッズサワー。
 いつもはこれくらいなら大丈夫なのに、妙に酔う。
 気持ち悪くはないが、呂律が怪しい。どうしたんだ? 俺は。疲れていたのか?

 こりゃーダメです、とギブアップし、帰路につく。
 山村さんは線路の反対側にあるビジネスホテルに一泊し、明日から大阪の人となる。
 「では!」と頭を下げたら不意に涙が溢れてくる。

 俺、淋しかったんだ。

4月19日(水)

 浜本ほど強い力で叩いていないつもりなのだが、3,4年ごとにパソコンのキーボードが壊れてしまう。今回はまず「C」が反応しなくなり、まあローマ字入力ならあまり「C」は使わないからとしばらく我慢していたのだが(よって日記の更新もできませんでした)今朝から「S」が反応しなくなり、これではもうどうにもならないと、新宿・ヨドバシカメラへ。

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 4月5日に本屋大賞を発表してもイマイチ終わった感がしなかったのだが、それは昨日行ったでるべんの会(http://deruben.exblog.jp/)で講演を頼まれていたからだ。本屋大賞が始まってから何度かこういうことを頼まれ、本屋大賞の広報活動として引き受けて来たのだが、やっぱり人前で話すのは難しい。

 椎名さんや目黒さんのように笑いを取りながら本来のテーマを伝えられるようになりたいと、前日までアアでもないこうでもないと悩みつつノートに話すことの断片を書いていたのだが、笑いを取るなんてことを考える必要はないんじゃないか? とにかく真剣に本屋大賞のことを伝えた方がいいんじゃないかと考え直し、前日早朝、すべての下書きを消して、いたって真剣な話にしたのである。

 それが功を奏したのかはわからないけれど、とりあえずこれでやっと今年の本屋大賞が終わった感じか。

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 講演の後の懇親会で、C出版社のTさんという方と名刺交換をしていると「炎の営業日誌を読んでいてすごい怖い人だと想像してたんですけど、良かったです、普通の人で」と言われビックリ。

 そうかそんな威張っているように見えるのかこの日記は…。そういえば昔もすごい大きい人だと思ってましたなんて言われたことがあった。深く深く反省。スミマセンです。

 本人(僕のことです)は、講演のことを考えて、ここ数週間なかなか眠れなかったような弱弱なチキンハート野郎で、おまけにチビで、仕事も出来ず、最近は広がるおでこを鏡で見ないようにしつつ、一部から腹黒と言われている、そういう男です。誤解なきよう、よろしくお願いします。

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 早めに仕事を終えて、慰労を兼ねて本屋さんへ。って散々営業で廻ったのに…。

 ずいぶん前から欲しくて欲しくて、でも高いのと、何か特別なときにと考え、買わずにいた『グレートジャーニー全記録1 移動編 我々は何処から来たのか』関野吉晴著(毎日新聞社)を購入。

 埼京線で早速開き、頬ずりしながら読み進む。今度またお金を貯めて2巻を買おう。

4月12日(水)

 池袋のL書店さんを訪問すると、なんとなんと本屋大賞コーナーの大展開におののく。こんなやっていただいていいんでしょうか? あわてて担当のTさんに頭を下げたが「売れてますよ~『東京タワー』」とのことで、一安心。しかもその目の前で中年男性が『東京タワー』を持ってレジに向かうではないか。すごいもんだ。

 その後ジワジワと駒場に向けて営業。赤羽のB書店さんではなんとその『東京タワー』が売り切れ! 「早く刷るように扶桑社さんにきつく言っておいてください」と言われるが、ああ、僕もいつか言われる側に廻りたい。

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炎のサッカー日誌 2006.07

 そして午後4時。社内から抜け出すことに苦労しているであろう編集部の藤原を焦らすため営業先からメールを入れる。

「電車止まってるよ」

 するとすぐに返事が返ってきた。
「えっ? マジですか? 京王線ですか?」

 しばし間をおいて返事を書く。
「日本中の駅に…」

 奴は会社の抜け出して、三ツ沢に辿り着いたのであろうか?


 さてこちらは浦和・駒場スタジアムにてナビスコカップ第2戦・アビスパ福岡戦だ。先週の日曜日にリーグ戦で戦ったチームと中2日で再度戦わせるなんて、もうちょっと考えてもいいんじゃないか? 川淵キャプテンよ。

 ちなみに我が浦和レッズは本日ワシントン、ポンテ、小野、三都主、都築を休養に充てたようで、前回このチームをBチームと記したが、改める。なぜならAとBだと何だか差があって、Aの方がよく思われてしまうからだ。

 本日のナビスコカップ第2戦アビスパ福岡戦を観て思ったのだが、リーグメンバーから半数近く入れ替わっても、浦和レッズは浦和レッズのサッカーをしているわけで(浦和レッズのサッカーだって…こういうの言って見たかった)そこに差はほとんどないことがわかったのだ。だからカップ戦のメンバーを浦和レッズ・プラチナと呼ぶ。

 水曜日の弛緩した雰囲気をそのまま体現したかのようにあっけない流れで今季初の先制点を奪われてしまったが、選手もスタンドもまったく慌てる様子がなく、いつも以上にシンプルにボールをつなぎ、採算プラチナ・サイドコンビの相馬と平川がチャンスを作る。

 そして前半24分コーナーキックを得、相馬が蹴った鋭いボールを堀之内がゴールし同点。
「ホーリーノウチ!」
 天皇杯決勝を思い出させるコールが駒場に響く。

 ほとんど攻め続け、それこそ疲労が少ない選手が多いからかリーグ戦よりもボールも選手もよく動き、楽しいサッカーが展開される。

 そして後半10分。ついにマブイを入れ替えた山田暢久が技ありのループシュートで逆転。

 これで安心とレッズサポ及び浦和レッズ関係者一同は思っただろうがただひとり満足しない男・闘莉王は前線に上がり続け、本当にゴールを決めちゃうんだから、凄い奴だ。

 これでナビスコ2連勝。予選突破はほぼ確定か?

 うん? オーロラビジョンになんか映し出されたぞ。

 「横浜Fマリノス 2 対 0 FC東京」

4月11日(火)


 予想以上のペースで『助っ人クロコダイル日誌』が更新され焦る。
 しかも何だかこの『炎の営業日誌』より面白い。そろそろこちらを閉鎖してもいいかな。

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 本屋大賞燃え尽き症候群でイマイチ乗り切れない。

 しかし我が愛する黒田信一さんの、待望の新刊『カフェ・ピエンチャン大作戦!』の営業は始まっているのだ。しかしこの本どこに置くのが正解なのだろうか? 浜本は「そりゃお前エッセイだろ、開業だからビジネスだよ、それにそれに実用のカフェの棚だな」なんて言うが、オイオイっ!

4月10日(月)

 昨日の福岡戦は、外出していたためビデオ観戦。
 情報を遮断し、子供が寝静まった後、再生のボタンを押したのだが、結局その寝静まった子供たちを絶叫で起こすことになってしまうとは!! ビバ! 闘莉王、ビバ! 岡野。

 本日の通勤読書は、ときわ書房本店宇田川さんご推薦の『天国の扉 ノッキング・オン・ヘヴンズ・ドア』沢木冬吾著(角川書店)。ムムム、これ、面白いかも…。通勤音楽は、当然書名に合わせてボブ・ディラン。

 しかし本当は同じ宇田川さんの推薦でも「酒飲み書店員共同企画文庫ベストセラーを作れ!」のノミネート作品の方を読まなきゃいけないわけで、いやはや大変だ。

 ちなみにそのノミネート作品は下記9作品で、今月いっぱいにこれらを全て読んだ上で上位3作品を投票する仕組みになっているとか。どっかで聞いたことある方法だと思うけど、とりあえず飛び入りで参加させていただきただいま挑戦中。果たして僕の推薦本に何票集まるか? いやどれが最高投票を獲得するか乞うご期待!

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『異人たちとの夏』      山田太一 新潮文庫      良文堂 高坂さん推薦
『セントメリーのリボン』稲見良一 光文社文庫 ときわ書房 宇田川さん&
                                小峰さん推薦
『写楽殺人事件』    高橋克彦 講談社文庫    旭屋書店 和泉沢さん推薦
『スメル男』      原田宗典 講談社文庫     旭屋書店 星野さん推薦
『三たびの海峡」    帚木蓬生 新潮文庫      浅野書店 杉山さん推薦
『美術の解剖学講義』  森村泰昌 ちくま学芸文庫 紀伊国屋書店 三輪さん推薦
『やっちまったよ 一戸建て』 伊藤理佐 文春文庫   東西書房 仁礼さん推薦
『朗読者』    ベルンハルト・シュリンク 新潮文庫 浅野書店 岩立さん推薦
『ワセダ三畳青春記』     高野秀行 集英社文庫    本の雑誌 杉江推薦
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 本日よりやっと普通の営業マンに戻れ、幸せいっぱいで新宿を営業。

 福家書店新宿サブナード店で時代小説ファンに大人気の藤原緋沙子さんのサイン会があるというのでちょっとビックリ。(http://www.fukuya-shoten.jp/event/#860)いやあまりサイン会の話題を聞いたことがなかったので。

 その話を西口のY書店さんでお話しすると「へぇ~すごい企画力ですね」と感心しつつ、最近は佐伯泰英、藤原緋沙子、鈴木英治に続くかたちで荒崎一海が売れてますよとのこと。相変わらずまだ手を付けていないジャンルなのだが、読み出したらきっと毎月これらの作家の新作発売日を心待ちにするんだろうな。

 ムムム、それはさておき、このY書店さんの平台で『増刊 本屋大賞2006』に手書きPOPを付けているのを発見。しかも「発掘部門も楽しんで下さい」とあるではないか。うう、思わず涙。ありがとうございます

4月7日(金)

 通勤本は引き続き『山のかたみ』萩生田浩著(西田書店)。まるで短編小説のような味わいをもつ珠玉の山岳エッセイ。沢野さんの山の話や、辻まことさんの本が好きな人にはオススメです。

 早速『増刊 本屋大賞2006』の追加注文が入ったので直納に向かう。
 取次店さんがあるのに直納なんて無駄と思われるかもしれないが、出版営業が感じられる数少ない幸せな瞬間を奪ってはいけない。

 夜は疲れたので直帰。サッカーじゃないよ。

4月6日(木)

 朝、何気なくNHKのニュースにチャンネルを合わせたら本屋大賞が本日の主なニュースのひとつに取りあげられていて思わず腰が抜ける。いやースゴイ。昨日も書いたが、酒飲み話の延長が、3年半経ったらこんなことになるなんて。驚き過ぎて子供みたいな感想しかでない。

 本日の通勤本は『山のかたみ』萩生田浩著(西田書店)。
 この本は昨夜行った本屋大賞発表会の会場で、とある書店員さんから慰労をかねてプレゼントされた本だ。

 なかなかシブイ本だなと開いたその最初のページに「山頂」という詩が掲載されていて、これがもうまさに今の僕の気分を言い得ている詩なのだ。思わず魂を揺さぶられてしまったが、ど、どうして、こんなピッタリな本が選べるのだ?

 しかも実際に会った数なんてほんの数回程度で、しかもこういう発表会の場などでだから話してもたかだか数分だろう。ネット上の付き合いはあるにしてもこの本を選ぶのは相当難しい。信じられない。うう、すごい書店員さんがいるではないか。

 そしてきっとまだ一度も見たことがないけれど、こういう書店員さんが作っている棚、売り場は素敵なはずだ。丸善福岡店、いつか行きたい。

★   ★   ★

 本日は社内で、本屋大賞の残務整理。机の上に築かれた書類の山を片っ端から捨てていく。この瞬間のためにやってきたと言ってもいいかも、なんて。

4月5日(水) 本屋大賞発表!

 本屋大賞発表会。

 朝から雨。第3回本屋大賞に向けての定例会議は実は毎回雨だった。
 これはもう諦めるしかない。

 そんな朝はやっぱり例年どおり緊張で眠りが浅く、4時には目覚めてしまう。さすがにこの天気じゃサッカーボールを蹴ることはできず、PS2のサッカーゲーム・ウイニングイレブンで時間が過ぎるのを待つ。

 いつもどおりの時間に出社。会社に着くと社員及び助っ人一同、全員がスーツ姿。いつもは僕だけがスーツ姿で、会社の飲み会のときはなぜか僕のところに請求書が廻ってきたりするのだ。

 そのスーツ姿で問題なのが発行人の浜本だ。こんなこと書かなきゃ誰も気づかないだろうが、書いちゃおう。なんと浜本、去年とまったく同じスーツ、ワイシャツ、ネクタイなのだ。そのことを指摘したら、「へへ、残念でした。靴下も一緒なんだよね」と正真正銘の全身一張羅を自慢するではないか。しかも「着れたから良かった」と呟いていたが、そういう問題じゃないだろう。

 4時半、発表会会場の明治記念館へ。

 今年の本屋大賞で何が一番うれしかったかというと、ってまだこれからなんだけど、この発表会の手伝いとして、実行委員ではない書店員さんが数多く名乗りあげてくれたことだ。せっかくの発表会なのに裏方を引き受けていただき感謝。でも書店員さんの輪がこうやって広がっていくのは、本屋大賞のもうひとつの大事なことだと考えていて、とてもうれしい。

 さて発表会スタート。
 浜本の挨拶、小川洋子さんのスピーチ、そして実行委員であるジュンク堂書店池袋本店小海さんから第3回本屋大賞の発表。

「第3回本屋大賞は、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキーさんでした~」

 僕はそのときを舞台袖で見つめていた。すさまじいまでの明るさのライトを浴びるリリーさん。そしてそのライトの向こうにいる書店員さん。互いの笑顔。

 酒飲み話の延長でスタートした「本屋大賞」が1回できただけでも奇跡だと思ったのに、それが目標だった3回も続くとは…。もうこれは奇跡中の奇跡だ。

 投票してくれた書店員さん、ありがとうございました。
 それから投票はしなかったけど売り場で展開していただいた書店員さん、ありがとうございました。
 そしてそして応援していただいた出版業界の皆様、ありがとうございました。
 最後に読者の皆様、本当にありがとうございます。
 
 本屋大賞、バンザイ!!

4月4日(火)

 本屋大賞発表会まであと一日。

 舞台アシスタントの助っ人アマノッチは、すでに緊張でガチガチで、その手にはシワシワになった進行台本が握られていた。

「いやーもうダメです。去年もやったはずなんですけど、会場が広くなったって聞いただけでもう…。杉江さん失敗したらどうしましょう?」

 すまんな、アマノッチ。プロに任せる金がなくて。しかし失敗しても仕方ないよ…なんて立場上、口がさけても言えない。

「絶対失敗すんなよ」と肩を揉み、とりあえず緊張をほぐす。
 明日大丈夫かなぁ。

4月3日(月)

 朝9時。通勤本は引き続き『絶海にあらず(下)』北方謙三著(中央公論新社)。下巻の半ば。藤原純友、ガンバレ! ああ、いつまでも電車に乗っていたい。

 本日も本屋大賞発表会の用意。
 3度目でも大変さが変わらないのはなぜだろうか? たぶん会場が変わったからだろう、そう思おう。しかし今年は多くの書店員さんがお手伝いに名乗りをあげていただき、その辺はとても楽になっていたりする。ありがとうございます。

 嗚呼、発表会まであと二日だ。
 長かったような短かったような、とにかく発表会を無事終わらせましょう!

4月2日(日)炎のサッカー日誌 2006.05

 埼玉スタジアムに自転車で向かう。その道沿いで桜が満開に咲いている。
 ふふふ、我が浦和レッズはとっくに満開だぜ。思わず笑みがこぼれてしまう。

 まさかサッカーに行くのがこんなに楽しくなるなんて数年前は考えられなかった。あの頃スタジアムに向かうのは期待よりも不安がいっぱい、そしてその不安を裏切らない試合展開で、帰りは怒りに任せて自転車を走らせていたのだ。「喜怒哀楽」でいえば、怒と哀ばかり。ああ、生きてて良かった。

 しかしそんな弛緩した気持ちを察したのか、試合開始前、ゴール裏のコールリーダーK氏が怒鳴る。

「まさかお前ら、楽に勝てるなんて思ってねえだろうな。勝つことがどれだけ大変かわかってるだろ? トップに立っても俺たち浦和レッズはチャレンジャーなんだ」

 目の覚めるようなその言葉に、気を引き締め直し、雄叫びをあげる。「オイッ!」

 ところが、この日の相手名古屋グランパスエイトから、攻めても攻めてもゴールネットを揺らすことができず、0対0の引き分け。久しぶりに味わう猛烈な怒り。そうだよな、負けると悔しいんだよな。あっ引き分けか。でももう引き分けじゃ我慢できないぜぇ、浦和レッズ!

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