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10月30日(月)

 直行で『ONCE UPON A TIME』の見本出し。750グラムを12冊持つと9キロになるわけで、
これが重いのなんの。手提げ袋の取っ手がぶち切れそうになったので、胸に抱え、汗だくになって運ぶ。

 しかしこんな重さ。この本を著者椎名誠が世界中旅して歩いたときのバックパックの重さに較べたらなんてことないだろう。もしかしたらアナログカメラとレンズだけでこれくらいの重さになることもあるのではなかろうか。そしてそういう物を担いで、この本のなかに収録された美しく郷愁を誘う写真は撮られたわけだ。椎名誠の写真家生活の集大成。その意味の重さに較べたらほんと9キロなんて、なんてことない重さだ。

 午後3時地方小さんを廻って見本だし終了。いつもだったらここから数時間が1ヵ月の仕事のなかで唯一ゆとりのある時間になるのだが、今月はまだ『二人目の出産』安田ママ著があるわけで、とても気の抜ける状態でなく、新宿へ向かい、営業活動。

 肉体的にも精神的もフラフラになって夕刻会社に戻ると、トトロの森から顧問目黒が降りてきた。この浮世離れした生活をしている顧問と、こうやって疲れ切ったときに話すのは実は結構癒しになったりするから不思議だ。

 その目黒が言う。「杉江、お前の日記の、娘とサッカーに行った話すごい良かったぞ。単にうちの娘はカワイイみたいなのは誰にでも書けるし面白くないけど、サッカーと娘の間で自己が切り裂かれるのが良いんだよな。お前はどう思っているかわからないけど、娘とああやって過ごせる時間はほんと一瞬だから、ああいうのは書き残した方がいいぞ」

 うーむ。目黒にこの日記を誉められたのはこれで2回目(前回は父親の会社にいったときの父親と兄貴のやりとりを書いた会)なのだが、うれしいかぎり。ありがとうございます、と頭を垂れる。そういえばこの炎の営業日誌も6年目に突入したのか

10月27日(金)

『ONCE UPON A TIME』の見本出来日。そして事前注文締め日。

 その他もろもろやらなければならないことをため込んでいたので、今日は社内に残ってデスクワークに勤しむ。

 こういう日くらいスーツを着なくてもいいかと、私服で出社したのだが、その姿を見て、下版中の松村は「本当に真っ赤なんですね」と後ずさりし、顧問目黒は「お前は本当に中学生みたいだな」と言われる。ジーパンと真っ赤なアディダスのジャージを着ていたんだけど、いったい35歳二児の父親はどんな格好をすれば良いのだろうか?

 昼に印刷会社の人が待ちに待った『ONCE UPON A TIME』持ってきてくれるが、その重さに驚く。750グラム。『千利休』や『川物語』『海を見にいく』を抜いて、本の雑誌誌上一番重い単行本だ。

 来週から数日かかて、予約していただいた読者用に椎名がサインするのだが、いやはやこの量大変だ!

10月26日(木)


 一夜明けても『一瞬の風になれ』の余韻が残っている。つい走り出したくなってしまう。1巻から読み直そうかな。

 通勤読書は『Gファイル 長嶋茂雄と黒衣の参謀』武田頼政著(文藝春秋)。もしかしたら『一瞬の風になれ』の後に読んじゃ一番行けない本かも。何せ『一瞬の風になれ』がスポーツの素晴らしさを描いていたとすれば、この本に描かれている巨人が行っているのは、もはやスポーツではないのではなかろうか。いや巨人だけでなく、プロ野球自体がスポーツではないのではなかろうか。カムバック、プロ野球。Jリーグよ、こんな風になるなよ。

 渋谷などを営業。どこへ行っても『一瞬の風になれ』の話題。無理矢理しているんだけど…。読んだ人とは感想で盛り上がり、まだの人を見つけたら熱烈プッシュ。何をしているんだ、俺はと気づいたのは、飲み会の会場の関内へ向かう途中。

 しかしその飲み会でも結局『一瞬の風になれ』の話題。まだ他の3人は2巻までだったので、お兄ちゃんがスナイバーに殺され、一気にミステリーになる、なんてウソの粗筋を教えてしまった。もちろん誰も信じなかったけれど。

10月25日(水)

 通勤読書は当然『一瞬の風になれ 3』佐藤多佳子著(講談社)。

 ページをめくる手が止まらない。いや止められない。早く読みたい、けれど読み終わりたくない。ずっとこの世界のなかにいたい。

 しかしどうしてこんな発売スタイルと取ったのだろうか? 上下巻で良かったんじゃないか? いや1巻が1年、2巻が2年、3巻が3年という学年で分けたのか? それならそれでいいけれど、せめて同時発売にして欲しかったぞ。この1ヶ月ごとの間隔が、この本の面白さと販売の興をそぐことになったら罪だぜ、講談社。

 なんて思っていたが、そんなことは読み出してすぐ忘れてしまうほどのめり込んでしまい、会社に就いてすぐ読書休暇を申請し、読み続ける。

 そして読み終えたのが午後。もはや仕事なんて手に付かない。最後の方は、自分も陸上競技場のトラックに立って、コースを駆けているような気分。間違いなく新二や連と一緒に僕は走っていた。だから心拍数もそうとう上がっていたはずだし、しばらく頭が痛かったほど。

 これはスポーツ小説の王道中の王道を直球ど真ん中勝負した1冊だ。そしてその力と想いを込めて投げられた1球は、打ち返されることなくミットにめり込み、スポーツ小説なんて枠を飛び出し、大傑作になった1冊だ。 ああ。本当に叫び声を上げたいほどの傑作。恐るべし、佐藤多佳子。ありがとう、佐藤多佳子、って仕事しろよ、俺。

10月24日(火)

 通勤読書は『脇役 慶次郎覚書』北原亞以子(新潮文庫)。

 「慶次郎縁側日記」シリーズの脇役を主役に持ってきた本書だが、ただでさえキャラクターのしっかりした脇役たちのその奥にこんなドラマがあったなんて。これを読んでから全編読み直したら、読み方が変わるかも。僕は佐七に惚れ直してしまった。

 午前中、昨日の続きで神保町。品出し、検品しているこの時間はいつも以上に気を遣う。しかも勝手の違う実用書や文庫売り場を営業するので、胃がキュッとなる。

 そんななかS書店の実用書担当Kさんに『二人目の出産』の営業をしていたら「あっ11月3日が良いお産の日だそうで、それにあわせて出産育児本のフェアを組んでいたのでちょうど良かったです」なんて教えていただく。そうか11月3日はイイオサンの日なのか…。

 昼飯は、いもやのとんかつ。相棒とおるにメール。まいうー。

 午後からは池袋へ移動。話には聞いていたのだが池袋の新栄堂さんが本当に閉まっていて、ショックを受ける。つい最近まであんなに活気があったのに。お世話になっていたYさんやSさんはどうしているのだろうか…。

 ジュンク堂、リブロ、旭屋さんと営業。旭屋さんでは、安田ママさんの同僚Dさんが異動で着任されていてビックリ。担当違いなのだが『二人目の出産』をお願いする。
 
 それらのどのお店でも『一瞬の風になれ 3』を探したのだが、まだ売り場に着いていないとのことで(たぶん検品中だった)残念無念と肩を落とす。

 そして夕方、会社に戻る間際に覗いた新宿K書店本店にて発見! おっ、結構分厚いじゃないか。即購入。お店を出て輪ゴムを外し、ページを開く。地下道から京王線ホーム、車中、10号通りと二宮金次郎となって読み進む。もはや仕事どころではない。読書休暇を申請だ…と思ったが、我が机の上に仕事の山。新二よ、連よ、待っておれ。

 仕事を終え、帰宅。
 とにかく子供を寝かせなくては読書は出来ない。娘と息子を引き連れ寝室へ。ネンネーヤコローリーヤ。

 すわっ。何だ妙に明るいではないか? 鳥が鳴いているではないか? うわー、やっちまった…。子供を寝かしつけているうちに自分も寝てしまい、もう朝だ。嗚呼。

10月23日(月)

 本の雑誌社入社11年目に突入。
 よもやというか、まさかというか。ただ一言。「こんなはずじゃなかったのに…」

 本人が「書いて下さいよ」というので仕方なく書くが、藤原は定時の始業時間10時に出社。「普通のことを普通にしただけで威張るなよ」と言うと、自称ダメ男好きの浜田が「リッキーはこれでも頑張っているんだから」と妙に藤原の肩を持つ。もしかして本の雑誌ダメ連でも結成したのか?

 こういう会社にいるとまた調子が悪くなるので、外に飛び出す。

 神田のブックファーストさんを覗くと、入口の什器が変わっているではないか。担当のSさんに話を伺うと「かなり明るくなったので、これで女性客も増えてくれるといいんですが」と話される。確かにとても明るくなっていて、キレイだ。

 東京、秋葉原、御茶ノ水、神保町と移動。

 てっきり『一瞬の風になれ』の3巻が発売になっているかと思ったが、同好の士お茶の水M書店Yさんに「明日だって」と言われ、残念無念。ああ、お前はキャバ嬢か? そんなにじらしてどうするの?

 しかしそのYさんが手にしていた『一瞬の風になれ』拡販グッズに目を奪われる。それはポップスタンドだったのだが、止めるところの針金がランナーの形になっているではないか。果たしてポップをつけた際にそれが見られるのかどうかわからないけど、良いなぁ、コレ。

 夜は12月発売の増刊文庫王国用の座談会収録。お題は「文庫版元メッタ斬り2006 文庫番付を作っちゃおう」なのだが、過去の座談会のうちで一番ヒートアップしたのではないか。笑い過ぎて腹が痛い。

10月21日(土) 炎のサッカー日誌 2006.18

 昨夜。『どうぶつの森』を終え、一緒に布団に入った5歳の娘が聞いてくる。

「パパ、明日サッカーでしょう?」
「なんでよ?」
「ハルカちゃんのママがレッズの試合があるからジャスコに行けないって怒っていたもん」

 5歳ともなると、もはや娘は妻と一緒になるのか…。

「怒ることないよね。浦和に住むっていうことは、一番大事なのはレッズなんだから。」
「だから明日サッカーなんでしょ?」

 ウソはついちゃ行けないと教えている以上、ウソをつくわけにはいかない。どうせばれるし。

「そうそう。明日は3位の川崎フロンターレ戦だ。パパは眠れないくらい気合い入っているぞ!」
「えー。でも行かないで」と娘は大粒の涙を瞳に溜めた。

 そして本日午後1時。いざ決戦の地、さいたまスタジアムへ!と威勢良く飛び出そうと思ったら、娘がまとわりついてくるではないか。

「ねえ、行かないで。」

 うう。僕は人生でこんなに人を愛したこともないけれど、こんなに愛されたこともない。つらい、ツラスギル。

「ねえ。テレビで見ればいいじゃん」

 娘よ、サッカーは生で見て、声の限り叫ぶからこそ、なのだ。テレビで写っていないところで大事なことがいっぱい起きているんだよ。

「ダメダメ。パパは行くよ。パパが行かないと浦和レッズは勝てないからね」
「ねえ、じゃあ私も連れていってよ。一緒に行く、一緒に行く」

 うーん。思わず頭を抱えてしまう。普通にサッカーを観る人ならば娘や家族を連れて行くのは問題ないだろう。しかし僕はゴール裏でサッカーを観ているわけで、そこは闘いの場であり、狂気の場だ。

 例えば本日ポンテが同点ゴールを決めたときの、隣で観戦していた取次店K社のAさんの顔なんて狂気そのものだ。目なんてこれ以上ないってくらいひん向いて、分厚いほっぺたをブルブル震わせ、言葉にならない声を発して僕に抱きついてきた。

 そんなところに子供がいるのは危ないし、僕自身も気が散るし、周りにも迷惑だろう。しかも今日は大切な一戦。なるべくいつもと違うことはしたくなく、パンツもシャツも前回と一緒にして験を担いでいるに。

 しかし娘は玄関にうずくまって泣いている。嗚呼。

「わかった。3つ約束しろ。ひとつパパのサッカー友達にきちんと挨拶すること。恥ずかしかったら小さい声でもいいから『こんにちは』をきちんと言え。それから試合中は無駄口を叩かない。みんな真剣に見ているのにお前がしゃべったら気が散るだろう。それと最後に一生懸命浦和レッズを応援すること。歌ってみろレッズの歌を」

 娘は顔を上げ、「ウラーワレッズ!」と涙声で歌った。

★   ★   ★

 試合終了間際、抱っこしていた娘が僕の耳元に口をあてて話しかけてくる。

「パパ。もうすぐ終わり?」
「そう」
「終わりなのに応援するの?」
「そう、残り少なくても絶対あきらめちゃいけないの。最後まで闘うの」
「ふーん」

 逆転された後、すぐ追いつき、その後もかなり攻め込んだが、決定機を外してしまい試合自体は2対2の同点に終わった。しかしこの同点はレッズにとっては勝利に近い同点で、川崎フロンターレにとっては敗北に近い同点だろう。

 そのことを多くの人がわかっているから、試合後もサポーターはプライド・オブ・ウラワを歌い続けた。すると娘がまた耳元に口を寄せて聞いてくる。

「パパ、引き分けでも歌うの?」
「そうそう」
「なんで? パパはいつも勝たなきゃダメっていってるじゃん」
「違うの。勝たなくても一生懸命やればいいときもあるの。今日はみんな頑張ったの。それがプライド・オブ・ウラワっていう意味なんだよ」
「そうなんだ」

★   ★   ★

帰りの自転車で後ろに乗せた娘が、浦和レッズの歌を鼻歌で歌っている。スタジアムでは恥ずかしくて声が出せなかったようだが、ときたま僕の首に回した手をリズムに合わせて叩いていたっけ。その娘が、大きな声で聞いてくる。

「パパ。パパの友達、『バーカ』って言ってたよね」
「うん。」
「バカっていっちゃいけないんだよね?」
「うんうん、サッカー場じゃ言ってもいいの」
「そうなの? だからパパも下手くそ!って言ってたの?」
「そうそう、あそこじゃね、浦和レッズのためになるなら何でもいいの」
「ふーん。」

10月20日(金)

 午後12時過ぎに出社してきた藤原に「粗相はなかったか?」と浜田が聞く。藤原は昨日『本日記』できあがり記念で、著者の坪内さんと飲みに行っていたらしいのだ。

「粗相なんてとんでもないですよ。坪内さんが僕のこととても誉めてくれて、いやーうれしかったですよ。やっぱり誉められるのはいいですねぇ。ああ、誉められたいなぁ」

 これ見よがしに大きな声で話すが、浜本、松村、小林、全員無視。そりゃそうだ。その飲み会の後、友達と飲みに行って深酒し、社長の浜本よりも遅く昼間に出社するようなヤツをどうやって誉めろというんだ? 坪内さんも好きな山口瞳氏の『新入社員諸君!』でも読んで勉強した方がいいんじゃないか。品切れだったら僕が貸すけど。ああ、早く鈴木先輩や関口鉄平と入れ替え戦して欲しいなぁ…。

 午前中はデスクワーク。午後から営業。

 しかし今日出ると思っていた『一瞬の風になれ』の3巻は見つけられず、ガックリ。来週発売だったのか…。

10月19日(木)

 著者であり編者でもある椎名さんもかなり行きたがったのだが、どうしても外せない取材があったようで「任せたぞ」と京都の行ってしまった。そのため浜本と二人で『ONCE UPON A TIME』の印刷立ち会いで北戸田へ。

 デザイナーの呉さんの指示の入った校正刷りと本番の刷りがビッタリ合うよう、印刷機から刷り出されてくる出来たてホヤホヤのそれを見て確認するわけだ。肩の荷が重く、めり込んでしまいそうになるが、二つを眺め、もうちょっと弱くとか、ここはしっかりと何て浜本と二人で1枚1枚呟く。

 すると大きな刷り機の周りを走り回っていた印刷会社のお兄ちゃんが職人魂を発揮し、素晴らしい刷り上がりになったではないか。おそらく僕ら二人がいるのは相当鬱陶しはずなのだが、だ最後の台をOKしたとき、彼らが小さくガッツポーズしていた姿を見て、何だか胸が熱くなってしまった。

 椎名始め、呉さん、浜本、印刷会社の人々の気合いの入った『ONCE UPON A TIME』は11月6日搬入の予定。ぜひ!

10月18日(水)

 京王線を営業。

 どこの書店さんからも「文芸書が…、小説が…」という悲鳴が聞こえてくる。何だかほんとに小説にヒットのない年のようだ。面白いものがないのか、あってもすぐ文庫化されるのでそれを待たれているのか、そもそも小説なんて読みたくないのか、とある書店さんでは「いわゆる本好きがいなくなっている気がします」なんてゾッとする話も聞いたが、文芸書は悶絶の2006年なのかもしれない。

 そうはいっても通勤で利用している埼京線で朝夕と観察すると、本を読んでいる人は多い。本日も僕の周りで5人が文庫本や単行本を広げていて、その次に多いのが携帯電話をいじっている人、その次が携帯ゲーム機だったりする。しかしコミック誌を広げている人は減った気がするけど、本日初めて携帯電話でマンガを読んでいる人を目撃。もしかしたら携帯電話をいじっている人も読書している可能性があるのか?

 夜、千葉会(酒飲み書店員の会)の会合に出席。事務局である良文堂の高坂さんが一枚のレポートを差し出し、そこには「千葉会企画第2弾 酒飲み出版営業大賞」なんて書かれていた。今までどおり年2回酒飲み書店員は続け、その間に出版営業が選ぶのをやるという。ただし出版営業マンは推薦は自社本あり、投票は他社本という仕組みだそうだ。いやー、面白いなぁ。こうやっていろんなことをやって本を届けるしかないよな。

 うん? 僕はどっちに参加したらいいんだ?

10月17日(火)

 吉村昭『漂流』(新潮文庫)
 こんな面白い本が書店の棚で、しかも多くのお店で平積みで、ぐいぐいと版を重ねていたなんて。嗚呼、猛烈に反省。しかし死ぬまでに読めたことに感謝。

 僕のオールタイムベストに絶対入る『エンデュアランス号漂流』A・ランシング(新潮文庫)や昨年の本の雑誌ベスト10の第3位『脱出記』S・ラウイッツ(ソニー・マガジン)、あるいは漂流もの偏愛編集長・椎名誠の漂流ものベスト1『無人島に生きる十六人』須川邦彦(新潮文庫)なんかに胸を熱くした人は是非! って普通は『漂流』が定番で、その後にこれらの本を読むんだろうな。ああ、恥ずかしいけど、面白かったなぁ。

 ブルーな気分は、走って忘れようと、小走りで営業。

 その営業では11月中旬刊の『二人目の出産』安田ママ著の販促をしているのだが、いやー書店さんの棚というのは面白い。たいていの書店さんで、恋愛ものなんかは女性エッセイ、すなわち文芸で扱われているのに、出産育児となると実用書の扱いになる。

 どうしてなんだろう? なんてずーっと考えているんだけど(書店の棚から見た社会学なんて本を誰か書いてくれないかなぁ)、とある書店さんでは『Mammaともさか こそだてちゃん編』『Mammaともさか こそだてちゃん編』(ともにインデックスコミュニケーションズ )を文芸と実用の両方で置いてみたら、やっぱり実用の出産育児本の棚の方で売れたのよなんて話も伺い、ただいま僕の営業先は、未体験ゾーンの実用書エリア。

 右も左もわからず、書店員さんもほとんど知らず、新入社員の気分で、名刺を差し出し、緊張営業。吉野朔実さんや清原なつのさんのコミックのときも思ったけど、ジャンルが違えば、まったくの別世界、これはこれで大変だけど面白い。

 おまけにならばこういう本はファミリー層のいる郊外かな?なんて勝手に予測をしていたら、意外や意外、本日訪れた有楽町のS書店さんでは、「実は結構強いんですよ、出産、育児本。たぶん働きながらという人が多いから悩んだり考えたりしてるんでしょうね」とのことで、これは都心でも売れるのか。

 どっちにしても出産育児本を、妙に熱を込めてするおっさん営業マンというのが、実用書担当の書店員さんにどう思われるかわかないのだが、僕はこの『二人目の出産』を読んで何度も泣いたり笑ったりしているわけで、腹は張らず、胸を張って営業している。

 さっ! 明日も頑張ろう。何せ『漂流』の長平は孤島であんなに頑張ったんだから。

10月16日(月)


 金曜夜、新宿池林房で行った目黒考二還暦パーティーは、沢野さんの乾杯で始まり、木村弁護士の歌で絶頂を迎え、主賓である目黒さんの挨拶で終わったが、目黒さんがいつも以上に早口になっていたのは、涙をこらえてのことだったのだろうか…。しかし懐かしい面々に囲まれ、目黒さんは幸せそうだった。

 僕はその還暦パーティー以来、退職したい病に取りつかれ、ちょっとブルー。なんだろう、辞めた人(卒業していった人)ってすごく楽しそうに見えるんだよな。なんか自由っていうか。そして過去は常に賛美して語られるものだけれど、その賛美された過去に押しつぶされそうになっていたりする。

 東京、銀座を営業。

 とある書店さんで「月曜日っていったら昔は朝からあれもこれも電話注文していて忙しかったのに、最近はそんなこともないなぁ」と話される。本屋大賞などをやって盛り上げているつもりだけど、本屋大賞が始まった2004年以降も出版市場は縮小しているわけで、もっと違うお祭りというか、販促というか、本の面白さを伝えるというか、なりふり構わずいろんなことをやった方がいいのではなかろうか、なんて思うけど、どうだろう…。

 銀座のK書店Yさんとお話しのついでに妻から言われていたフルーツタルト屋の場所を伺うと、地図を書いて教えてくれた。早速銀座の街を探検し、しばし迷った末に、超メルヘンチックなそのお店を発見。こりゃとてもおっさんひとりで入れるようなお店じゃないし、そもそも妻が自分で買った方が楽しいのではないかと思い、購入は控える…ってまだ営業が残っていて買っている場合じゃなかったんだけど。

 書店店頭にはノーベル文学賞を祝うはずだった村上春樹の著作が並んでいるが、これが受賞をしなくても売れているからビックリ。

 うーん、やっぱりブルーだ。タルト買ってくれば良かったな。

10月15日(日) 炎のサッカー日誌 2006.16

 サッカー観戦から野球観戦、あるいはラグビー観戦から野球観戦という神宮ダブルヘッダーは何度か経験があったけど、本日はフットサル2時間(さいたまスタジアム)からレッズ戦(駒場スタジアム)というダブルヘッダーに挑む。しかも最近フットサルチームのキャプテン・モリが急激に太り、まったくボールを追わない選手になってしまったから、僕を含めチームメイトにかかる負担が増えているのだ。

 本日もそのモリは動かず、コマネズミのように走り回った僕は、駒場に辿り着いたときには足がパンパンに腫れ、痙攣一歩手前。モリよ、頼むから走ってくれ。せめてアレックスくらいは…。

 さてその駒場では、相手チームのアビスパ福岡が「残留」の段幕を掲げているではないか。僕らだって数年前まで、「残留」が目標というか、「降格」が心配だったこともあったわけで、あの頃秋から冬にかけてやたら勝ち点を足したり引いたりしていたな。それが今じゃ優勝なんて堂々と口に出せるようになり、しかも今現実になろうとしている。それもこれもWE ARE REDS、チームと僕らの力だろう。

 残留を目標としたアビスパ福岡とは、ハッキリいって圧倒的な差があった。ひとりひとりの能力の差があり、組織力の差があった。その差を見ていて気づいたのは、そうか昔、僕らがヴェルディやエスパルスと戦うときに感じていたものが、今逆転したのかということだ。あの頃、奴らは憎らしいほど強くて、そして僕らは悲しくなるほど弱かった。もちろんその位置にあぐらをかけば、あっという間に転落するのもサッカーで、だからこそ勝ったときでも厳しく見つめる必要があるだろうし、憎らしいほど強くなりたい。

 闘莉王、ワシントンのゴールで2対1の勝利。
 あと7試合。勝利あるのみ!

10月13日(金)

 昨夜見たテレビ、NHKの『プロフェッショナル』では、とある編集者と打ち合わせしている作家白川道が、百万円の束をバラバラポケットから取り出したではないか。競輪で900万円稼いだ後だった…とか。

 うーん、うちの会社に生息している自称博打打ち・藤代三郎=目黒考二にも、これくらい甲斐性があったらいいのに。藤代三郎のポケットから出てくるのは外れ馬券と糸くずばかりだ。やっぱりプロフェッショナルは違うね、って違うか。

 今月の新刊『本日記』坪内祐三著の見本が出来上がったので取次店さん廻り。中味はもちろん、外(装丁)も本らしい本に仕上がり大満足。同日発売の『酒日誌』(マガジンハウス)共々よろしくお願いします。

 しかし、とある取次店さんで僕の前に打ち合わせしていた出版社の言い分にビックリ。既刊の重版分の配本をお願いしているようなのだが、注文もほとんどないのに「3000部お願いします」とのこと。おいおい、そう簡単にそんな部数が裁けるなら、書店さんも営業も苦労しないでしょう…。

 さすがに取次店さんの担当者さんも困惑な表情で「それはさすがに乱暴でしょう」とだいぶ部数を抑えていたようだが…。うーん、取次店さんも海千山千の出版社相手(僕もそのひとりだけど)に大変だなあ。

 今夜は目黒考二の還暦パーティー。
 本の雑誌社の元社員や元助っ人が集まる予定なのだが、果たして目黒はこっそり用意した赤いチャンチャンコを着てくれるだろうか。もし着てくれたら、第4弾目の『笹塚日記』の単行本に写真を掲載するのに。いやそんなことより発行人浜本が「ハマやん、太ったねー」と10人以上に言われることに焼肉1回(普通バージョン)を賭けよう。

10月12日(木)

 昨日の仕切り直し(というか予定どおり)で高野秀行さんと来年号からの連載の打ち合わせ。いきなりインドへ3ヵ月旅されるということビックリしたが、まあ移動の多いのは編集長椎名で慣れているから、とりあえず大丈夫でしょう…なんて、本当に大丈夫なのか? しかし高野さんは作品同様、真面目な部分と不真面目な部分が入り乱れていて本当に面白い。気づいたら2時間も過ぎていてビックリ。連載、楽しみにしています。

 ちなみに第1回酒飲み書店員大賞の『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)は、5刷りまで行ったとか。バンザイ! でもでもあの面白さならもっと読まれて良いはず。というわけで未読の方は『アジア新聞屋台村』(集英社)との併読を熱烈にオススメしています。

 ところでもうひとり只今僕が熱烈にハマっている作家・吉村昭なのだが、こちらに関してまたもや仲良し営業マンL出版社のNさんから熱いメールが届いた。

「俺も吉村さんは大好きです。俺のオススメは『破獄』『仮釈放』『冷たい夏、暑い夏』『大本営が震えた日』です。ちなみに『漂流』はあまりに好きで、3回くらい読んでます(^^。 」

 うーむ、吉村昭、すごい人気あるんだなぁ。そういや父親の本棚にも黒い背表紙の本が何冊かあったっけ。今さらこんな興奮して読んでいる自分が恥ずかしい。しかもこんな公の場で書いてしまっていて、いやはや。でもでも面白いんだからしょうがない。とにかく読みます、吉村昭。

 夕方から『本日記』の事前注文〆作業。
 〆作業は、僕の仕事でいうと第一段階終了の一段落つく日ではあるんだけど、いただいた注文短冊を一枚一枚確認していると、ああ、もっと別の営業が出来たんじゃないかと後悔することも多い。どんどん背中が丸まって身体が小さくなる。

 飲もう、飲もう、友よ。

10月11日(水)

 出社すると氷結松村改め若干溶解松村から声をかけられる。
「杉江さん、今日の2時から高野秀行さんと来年号からの連載打ち合わせなんですよ。ぜひ同席してください」

 おうよ。高野さんに会えるなら喜んで同席するぜ!とその2時を待ったが、その2時になる直前、机の上のガサゴソいじっていた松村が奇声をあげた。「ギョエー」
 どうした、松村?

 「えっとここにあるメモには、高野さん12日って書いてあるんですよ。12日は明日で、今日は11日? うん? でも卓上カレンダーには11日に高野さんって書いてあって、いったいどうなってるの?」

 って両方自分で書いたメモだろう。どっちかが正解で、どっちかが間違い。どうなってるのと聞きたいのはこっちの方だ。

 こういうときの松村は潔いというか、無駄がない。なんの躊躇もなく高野さんに電話をかける。

「お世話になってます、本の雑誌の松村です。ご確認なんですが、打ち合わせの日程は……。そうですよね、明日ですよね、いえいえ。楽しみしておりますので、よろしくお願いします。では。」

 ガチャ。電話を置いた瞬間「コラー」という怒鳴り声と「スミマセ~ン」の叫び声が笹塚10号通り商店街をこだました。

10月10日(火)

 3連休明けで出社し、メールを開けるとときわ書房本店のの宇田川さんからこんなメールが届いていた。

「吉村昭を読み始められた杉江さんに一言。もし機会があったら、私の吉村昭最偏愛作品『破獄』(新潮文庫)をお試しくださいませ。傑作ミステリに匹敵するスリリングな、そして男泣き確実のエピソード特盛です!もう俺が死んだら『獄門島』『蘇える金狼』『銀河鉄道の夜』とともに棺に入れろ!くらい大好きな傑作なんですよ(笑)。ぜひ。」※スミマセン宇田川さん。無断で引用してしまいました。

 しかし棺桶に入れるほどの偏愛作品とはよほど素晴らしい作品なのだ。これは早く読まねばと思っていたところ、『本の雑誌』11月号搬入のため朝から来た助っ人アルバイト・小野くんが声をかけてきた。

「杉江さん、吉村昭にハマっているんですか? 僕も『漂流』(新潮文庫)を読んであまりの面白さにぶっ飛んで、『星への旅』(新潮文庫)とか『虹の翼』(文春文庫)とか貪り読んだんですよ」

 ううむ。何だこの吉村昭熱。すごいな。

 すごいといえば、10月8日(日)の朝日新聞書評欄の影響で、朝から『エンターテイメント作家ファイル108 国内編』の注文ラッシュ。もう少しで重版出来そう。ガンバレ! エンタメ108、ありがとう池上冬樹さん。

 搬入に若干のトラブルが発生したものの、どうにか無事終え、営業へ。書店さんを覗いたら、なんとカレンダーと手帳がドーンと展開されているではないか。ああ、もうそんな時期なのか。

 一年の早さにビックリしつつ、こちらは『本日記』坪内祐三著の事前営業〆切間際のため、師走じゃなくても走り回る。嗚呼!

10月7日(土)炎のサッカー日誌 2006.15

 嘔吐と下痢は試供品の整腸剤でピタッと止んだ。
 事務の浜田は「ストレスでは?」と言っていたが、ならばその原因は、女の、というよりは人間としての恥じらいを捨ててしまい朝から下品な話を「ガハハハ」と笑いながら話すあなたか、原稿を無くしても平気な顔をしている藤原が主要因だと思われるが、その辺いかがお考えでしょうか? 前略、浜田様。

 しかししかしハッキリいってそんなことは今の僕にとってストレスでもなんでもない。何せ我が浦和レッズがガンバ大阪を得失点差で抜き去り、ついにJ1の首位に立ったのである。僕、ただいま猛烈に鼻息が荒い。ムフー。

 というわけで本日さいたまスタジアムに迎えたのは「走って考える」のが大好きなジェフ千葉。実はここ数年我が浦和レッズはこのジェフ千葉に相性が悪いのだが、優勝するには勝つしかないわけで、試合開始前から気合いを入れる。そしてキックオフ!

 前半15分。坪井、負傷の代役として登場したネネから出た柔らかいパスをワシントンと結城が追い、絡みあうようにしてワシントンが倒れる。

 それを本日ある意味一番マークしていた相手である、審判の岡田正義が、千葉のペナルティアリアで笛を吹きPKの判定。おまけに結城に対してはレッドカードを掲示。どうした? 岡田。いやそりゃ当然のファールなんだけど、まさかあんたがまともな判定をするなんて。ああ、これぞさいスタの力なのだろうか。PKをワシントンが冷静に決めて、1対0。

 その後はひとり減った相手に対して猛攻を繰り広げたが、なかなかゴールにはならず、ううむ、と唸っていたところを救ってくれたのは、怪我を押して出場した闘う漢・闘莉王! 後日、編集の藤原は「何であそこに闘莉王がいるんですか?」と不思議そうな顔をしていたが、浦和サポから見たら、あそこに闘莉王がいて当然なのである。その闘莉王が、生まれ変わった男・山田暢久の後方からのセンターリングにヘディングを合わせ、2対0。これにて本日の勝利が決定!

 ここ数試合の動けない状態から、長谷部、ポンテ、暢久と復調し、レッズはシーズン後半に向けてエンジン全開になりつつある。これは期待大だと思っていたところ、ガンバ大阪、敗戦の報。さあ、リーグ制覇に向けて、全勝あるのみ! ムフー。

10月6日(金)

 昨夜未明。猛烈な腹痛に襲われ、目を覚ます。お腹の中心を細い棒で刺されたような痛み。

 確か数年前の年末もこんなことがあった。あのときは妻に車で病院に運んでもらい座薬を入れられたんだよなと思い出したところで、ダム決壊の半鐘が鳴り響く。後ろ向きで階段を這うように降り、トイレへ。上と下から崩壊。そのまま朝までトイレにうずくまっていた。心身ともにイマイチな1週間を象徴するような出来事。

 しかし仕事は待ってくれない。10月刊『本日記』坪内祐三著の事前営業が佳境を迎えているし、11月は『ONCE UPON A TIME』椎名誠著(申し訳ございません、遅れております)と『二人目の出産』安田ママ著とあり、12月刊『おすすめ文庫王国2006年度』本の雑誌編集部編と、力の入る新刊が立て続けに出るのだ。また第4回を迎える本屋大賞も間もなくスタートするので、休んでいる場合ではないのだ。

 試供品の整腸剤を飲み、さいたまスタジアムで前日抽選を済ませ、雨のなか出社。

 今週読んだ本は、吉村昭の『高熱隧道』『羆嵐』『漂流』『魚影の群れ』『海馬』と開高健の『フィッシュ・オン』(新潮文庫)。

 いやはや今さらこんなことを書くのも恥ずかしすぎるけど、吉村昭が面白い。面白すぎて止まらない。短篇の切れ味、長編の奥深さ、自然の描写、人間の描き方、どれも傑作で驚くばかり。かつてから恵比寿のY書店Sさんに薦められていたのだが、今まで未読でスミマセンでしたと土下座したい気分。とりあえず好きな自然モノから読み進めているけれど、戦記モノ、時代モノと著作はまだまだ多数あり、これで『一瞬の風になれ 3』佐藤多佳子著(講談社文庫)の発売まで耐えられるだろう。

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