WEB本の雑誌

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6月28日(水)

 事務の浜田が髪型を変えた、らしい。
 僕には昨日と今日の違いがまったくわからないのだが、本人が騒いでいるのでそうなのだろう。

「ねっ? ねっ? 大木凡人に似てるでしょう? 大木凡人、同郷なんですよ」

 33歳自称負け犬女の自虐ネタにどう対応していいのかわからないので聞こえないフリをする。

 そうそう最近気づいた。面倒なこととか、どうでもいいことをいわれたときは聞こえないフリをするに限る。そうすると相手も「あっ聞こえなかったのか?」って感じで簡単に引き下がる。というわけで困ったチャン藤原が何か言っていても(こいつは自分ラブの人間だから自分のことしか話さないんだけど)まったく聞こえないフリをしている。

 非常に不満げな浜田は、その後社内中に髪型の話を振っている。僕と同じでこういうことに無頓着な発行人浜本はやっぱり聞こえないフリをして、下版作業に勤しみ、最近急速に負け犬化し、浜田と急接近している氷結・松村は、本当は興味もないのに「凡人? うーん違うよ」なんて無理矢理フォローしていた。困ったチャン藤原は、本日も重役出勤でまだ来ておらず、さすがに浜田も椎名さんには「髪型変えたんです」とは言えず、イマイチ不完全燃焼な様子。

 あっでも本の雑誌社の薄給、もとい給料には基本給の他に浜田手当というのがあって、こういう浜田につき合うことを仕事と見なしており、お金が支給されているのである。それにプラスして昨年からは藤原手当というのが支給されるようになり、こちらは精神的な負担だけでなく、仕事の負担も増えているため浜田手当の1.5倍、僕や松村や経理の小林に支給されているのだ。たぶん本人達は知らないと思うけど。

 そんなところにやって来たのが助っ人・アマノッチ。
「おはよーございます。あれ? 浜田さん髪型変えました?」

 ゴダールと外国文学を愛する偏屈学生とは思えない発言に、浜田は半狂乱。

「えーーーー? 気づいた?」

 ってアマノッチが入ってくるなり、ライブハウスのヘッドバンギングしてたじゃねーか。

「当然わかりますよ~。すごいキレイになってビックリしちゃいましたよ。僕、今、ドキドキしてます」

 社内は一瞬静まりかえり、先に来ていた助っ人・鉄平は酒と酢を間違って飲んだような顔をした。しかしその沈黙の後は、ゴールを決めた浦和レッズゴール裏のような雄叫びが沸き起こる。しかもひとりの。

「ほんと? ほんと? ほんと? ねえ、もう1回言って、お願いだから言って。松村、取材で使っているレコーダー貸して。早く。ねぇーーーーーーーーーーー。」

 まったく悪びれる様子もなく、助っ人・アマノッチは「いやマジでキレイっすよ」なんていいやがり、そのたびに浜田の身体は空中浮揚していった。


★    ★    ★


 営業中、会社の浜田からメールが入る。

「丸善丸の内店のU様から電話あり。折り返し欲しいそうです。03-××××-××××」

 何だろう? 新刊のことかな? なんて早速電話を入れる。

「ハイ! 丸善御茶ノ水店です」
「(御茶ノ水? Uさん今日は御茶ノ水にいるの?)えーっと本の雑誌社の杉江と申しますが」
「あっ。Mです、M。元気? 文芸のYでしょ?(????)あっ今電話中なんでもう一度かけ直してくれる?」


 結局正解は、丸善御茶ノ水店Yさんからの電話で、浜田はお店の番号はあっていたものの、店名と担当者を間違えて知らせてきたのだ。うむー、どうしたらそんな間違いができるんだ?

 落ち着け、凡人。

6月27日(火)

 うーむ。こんなことがあって良いのだろうか?

 例えば「新刊を心待ちにしている作家をあげよ」と言われたら「金城一紀、高野秀行、粕谷知世、蜂谷涼、ジョージ・P・ペレケーノス、ニックホーンビィ……」と答えるのだが、なんとこのなかで金城一紀とニック・ホーンビィ以外の新刊が、ここ最近どどどっとタイミングを合わせたかのように出版されていて驚いているのである。みんな寡作な作家だけに信じられない。いや浦和レッズの優勝とヤクルトスワローズの優勝とサントリーラグビー部の優勝が重なったくらい幸せなんだけど。

 というわけで、その待望の作家のひとりである高野秀行さんの新刊『アジア新聞屋台村』(集英社)を読む。

 時代背景としては、ただいま「酒飲み書店員ベストセラーを作れ!」企画で満票に近い票を集め、各店で大々的に展開している『ワセダ三畳青春記』の後になるんだろうか? もちろん小説だからそのまま続編というわけではないだろうが、思いつきで各国の新聞を作っていく新聞社・エイジアンに編集顧問として入った主人公が、そのまさにアジア的混沌編集部のなかで、青春を送る物語。

 しかしこのエイジアンの無茶苦茶ぶりが結構我が本の雑誌社に似ていて、そのなかにいる主人公の置かれている立場と僕の立場がとても似ていたりして、何だか途中から他人事とは思えなくなってしまった。ああ、ページをめくる手が止まらない。えーい、仕事なんてもうどうでもいいや。この本を読み続けよう。やっぱり高野秀行は面白い! ついでに黒田信一も面白いぞ! 『カフェ・ビエンチャン大作戦』も合わせてお読み下され!

 午後から神奈川を営業。川崎のあおい書店さんを訪問するが、この書店は僕の好きな書店のひとつ。既刊書と新刊書のバランスがよく、棚や平台が耕されているのがよくわかる。吉祥寺の啓文堂さんに相通じるモノがあると思うんだけどどうでしょうか。

 川崎はこれから丸善さんの出店があったりして、今でさえ激戦区なのに、大変なことになるだろう。お互いがお互いを刺激して良い反応が出ればいいが、世の中そんな甘くはないか…。

6月26日(月)

 土日のW杯と子守の合間に読み続けた待望のジョージ・P・ペレケーノスの新刊『魂よ眠れ』(ハヤカワ・ミステリ文庫) を朝の埼京線のなかで読了。最後の方でビックリすることが起こり、今でもそれが信じられない。

 ペレちゃんよ、久しぶりの新刊でこんなことを起こさなくてもいいじゃないか…。しかも次回作が超気になってしまうではないか。うーむ、早川書房様、及び翻訳者様、素早いお仕事切に願っております。ちなみノンシリーズもの『ドラマシティ』は、秋までには出版されるとか。その勢いでよろしくお願いします。

 中央線を営業。
 阿佐ヶ谷のS書店Mさんと競馬談義。
「今年は3月以外、ずっと勝ってるんだよ。ビックリだよ」

 このお店の担当を僕から藤代三郎に変わった方がいいかも。藤代さん、勝った月ありますか?

6月23日(金)

 3時半起床。
 妻から「嫌い嫌いも好きのうち」なんて嫌みを言われつつ、日本代表対ブラジル代表をテレビ観戦。

 前半は激しいプレッシャーをかけてボールに向かっていき、オオ! それだそれだ! と興奮したが、いかんせん点を取るのが早すぎた。その後は目の色もカナリア色になったブラジル代表の攻撃練習となり、ロナウドにまで火を付けてしまったから、こりゃ今後ブラジルと当たるチームに恨まれる。

 日本代表はあえなく惨敗。当然といえば当然の結果。川淵キャプテンのここ数年の勘違いもこれで治ってくれるといいんだけど。

 会社に出社すると事務の浜田がブツブツ言っている。
「私、日本人として悔しいですよ。」
「君は4年に一度だからいいよ。俺なんて毎年浦和人として悔しい想いをしているよ。ついこの間もナビスコ敗退で今日以上に悔しい想いをしたし、去年は新潟で泣いたし、その前は…。君は愛媛の人でしょ? だったらJ2の愛媛FCを応援しなさい。そしてJリーグを盛り上げなさい。裾野の大きなところにしか大きな山は立たないんだよ」

 具合がいくらか良くなったので、昨日の分も取り戻せと営業に飛び出す。しかし某書店さんで話していたのだが、ほんと今の20代半くらいの書店員さんの過酷な状況はどうしたら改善されるのか? かつては肉体的にツライといわれていた書店員の仕事だが、今はそれにプラスして精神的な部分も追い込まれているのではないか。

 その方は「もう倒れた方がいいですよ。そしたら会社も少しは考えるでしょうし」なんて話されていたが、もはや使い捨ても使い捨て、30歳定年説といるのではないかと思えるほど、その年齢に差し掛かる頃、書店員さんは辞めて行く。

 何だかなぁ…。まるでノワール並に救いのない話にぐったりしつつ、待望のペレケーノスの新刊『魂よ眠れ』(ハヤカワ・ミステリ文庫)を読む。

 早川書房様、例えこの文庫が1500円でも僕は不平不満を一切言わず、買います。2000円でも。3000円だったらちょっと文句いうかも…。でもでも、これからもペレケーノスを出し続けてください!

6月22日(木)

 昨日の酒とは関係なく、具合が悪い。そりゃ当然だろう。酒を飲んで帰っても朝までW杯を観ているのだから。

 本日は大人しく社内に残って、さかんに人出の足りない光線を送ってくる本の雑誌編集チームのお手伝い。

 4月号で評判が良かった「本棚プロファイリング座談会」を再度行うとかで、その写真の整理。各所からいただいた本棚の写真を書名がわかるようにパソコンで加工。こういう作業をしていてつくづく思うのは、もう僕の身体はデスクワークが出来ないってことだ。30分もパソコンに向かっていると気が触れそうになり、ガス抜きに助っ人青年・鉄平をいじめ、また戻るの繰り返し。

 そうこうしていると顧問・目黒が降りてきて「ペレケーノスの新刊がもう置いてある本屋を教えてくれ」という。

 えっ?!! ペレケーノスの新刊が出るんですかぁーーーーと大騒ぎ。すっかり売れなくて翻訳されなくなったのかと思っていたのだが、早川書房バンザイ! ペレケーノスバンザイ!! くそー先にわかっていたら、ハリポタ並にカウントダウンしたのにぃ。

 しかしネットで調べてみると発売は明日。「どっかないのかよー、早く入るところ。出来れば俺、これから渋谷の東急ハンズに行くから、渋谷で帰ると良いんだけど」と目黒は、だだっ子同然・

 というわけで僕が電話するのも恥ずかしいので、事務の浜田が大のペレケーノスファンのフリをしてブックファースト渋谷店さんに在庫確認の電話を入れる。

「あっ、ハイ。折り返していただけるんですか。ありがとうございます。電話番号は、ゼロサンサンニニキュウー……。名前は本の雑誌社の浜田です。」

 ご迷惑をおかけしました、ブックファースト渋谷店様。

 結局ホウボウに電話したが、まだどこも入荷しておらず、目黒は肩を落としてトトロの森へ。うーむ、俺だって早くペレケーノスの新作が読みたいんですよ!!

6月21日(水)


 昨日からどうも喉が痛い、と思っていたら、本日はその症状にプラスして鼻水。かんでもかんでも止まらない。

 僕は根を詰めると病気になるタイプで、ドラクエが出ると1週間後にぶっ倒れるという人生を送っている。今回は晩から朝までW杯にハマリ、体調を崩したのだろう。赤ウレンジャー、早速の危機。

 しかし本日は千葉会があるので休むわけにはいかず、フラフラと出社。フラフラなのは具合が悪いからではなく、日頃飲み慣れない薬を飲んだからだ。

 その千葉を営業。千葉の三省堂さんはリニューアルオープン後初めての訪問なのだが、噂通り不思議な店舗。なんだかそごうが心斎橋店で取り入れた店内に店内を作るパターンで、三省堂さんのある9階は昭和(大正?)の雰囲気を醸し出していた。亀有アリオのキディランドさんといい、書店も「魅せる」ということが重要になってきたのだろうか?

 そのまま千葉会へ。
 こちらは千葉近辺の書店員さんと文芸系営業マンが集まって、ただただ飲むという会なのだが、その趣旨どおり難しい話はまったく抜きで「ただただ飲む」。

 僕自身、飲み始めた当初は、具合も悪いし…と控えていたのだが、出版コンサルティング会社・ユートピアサービスを立ち上げたばかりのKさんに「4回飲んだらもう何でも言っちゃうよ」なんて噛みつかれたところから、こちらもヒートアップ。気づいたらアホ話に腹を抱え、具合が悪いのもすっ飛んで大盛り上がり。

 会社の壁を越え、年齢も関係なく付き合えるこのような関係は、仕事として大切かどうかはわからないけれど、生きていくには何物にも代えられないほど大切だと思う。

6月20日(火)

 明け方、足下で何か気配を感じた。
 モゾモゾモゾ。顔あげたら1歳半の息子がひとり早起きし、一心不乱に何かをいじくっている。

 こういうときは起きてしまっては負けなのだ。起きたら息子は本気になって遊びだし、1時間や2時間、遊び相手をしなくてはならない。妻も覚醒度70%くらいで起きているはずなのだが、嘘くさい寝息を立てている。

 しかし息子の動きが妙だ。手元で何かいじくり、しばらくすると足を持ち上げ、顔を下に向ける。薄目を開けて、ゆっくり身体を動かし、その手元を見ると、なんと誕生日買ってやったミニカーが握られていた。やっぱり男の子だな。車が好きなんだよな。いつかその真っ赤なフェラーリ、父ちゃんに買ってくれよ・父ちゃんは絶対そんな稼ぎもらえる仕事にはもうつけないからよ。

 ミニカーのドアを開けた。ドアも開けられるようになったのか? エライエライ。
 うん? 足を上げて頭を下げる。もしかしてもしかして、お前はミニカーに乗り込もうとしているのか?

★    ★    ★

 通常通り、営業。どこの書店さんも変わらない「売行きベスト」に頭を抱えている。

 夜は、水曜社の営業マンOさんらと酒を飲む。Oさんは自ら「出版芸人」と名乗って営業活動されているのだが、その名のとおり関西弁のテンポある会話が面白い。

「どうせならそれをゴレンジャーにしましょうよ」と悪ノリし、出版芸人戦隊「ウレンジャー」を突如発足。もちろん僕は赤ウレンジャー、Oさんは黄ウレンジャー(とてもイヤそうだったが)を任命。ウレンジャーの入りたい出版営業マンの皆様、勝手に名乗って下さい。

6月19日(月)

 渋谷の書店さんを廻るがことごとくお休みだったり、休憩だったりで、日本代表並みに惨敗。
 しかもただでさえ暑苦しい渋谷の街を、真夏並の暑さのなか廻るのはツライ。ああ、6月でこんな暑くて、8月、9月はどうなるんだろうか?

 こういうときは方位を変えた方がいいなと別ルートに飛ぶが、こちらもお休みばかり。もしかしてみんな日本戦を見て休んでいるってこと? ジュースの自動販売機で懐かしのマウンテンデューを発見したので、しばし休憩。

 そういえば、大好きな書店リブロ渋谷店では、もはやこのお店のロングセラーとなった『東京R不動産』(アスペクト) と並んで『ファンタジア』ブルーノ・ムナーリ著(みすず書房)なんて本が売上ベスト10に入っていてビックリ。なになに? 無知な僕はまったく知らなかったけれど、とっても有名なデザイナー(といっていいんでしょうか?)なんですね。

 結局夜までほとんどうまく営業出来ず、哀しき帰還。

 ため息をついていたら、目黒が降りてきたので、しばしサッカー談義。しかし結局それでまたため息をつくことになる。そして事務作業。

 はぁー。眠い。W杯終わって欲しいような、欲しくないような。サッカーバカの皆様、7月はちゃんと働きましょう。

6月16日(金)

『フチボウ 美しきブラジルの蹴球』アレックス・ベロス著(ソニー・マガジン)読了。500ページを超える分厚い本だったが、まったくだれることなく、クライマックスのソクラテスのインタビューまで一気読み。今のところ2006年サッカー本大賞、最有力候補!

 よくブラジルと日本のサッカーを比較する際「歴史が100年違う」なんて言い方をするけれど、その差は時間の問題ではないことがこの本を読むとよく分かる。ブラジルにとってサッカーはまさにアイデンティティであり、その浸透度はアマゾンの奥地まで広がっているのだ。帯には「サッカーに取りつかれた国」とあるが、本書を読むと取りつかれたのはサッカーの方なのではないか思えてくる。名著『サッカーの敵』サイモン・クーパー著(白水社)を楽しめた人は絶対この本も楽しめるだろう。そして日本のサッカーライターもこの著者を見習って欲しいぞ。

 本日の営業目的地・御茶ノ水へ向かう前に新宿K書店さんを訪問。担当のKさんと話をしていたら「これすごい胸に来るんですよ」と紹介していただいたのが『愛する言葉』岡本太郎、岡本敏子著(イースト・プレス)。「ほら。ここ」と広げられた一遍の詩というか言葉を何気なく読んだら、こちらも思い切り胸をわしづかみにされてしまった。

 うーむ、愛も恋もとっくに終わってしまった僕でもこんなことを言われたらたまらないけど、これは現役で恋をしている人には相当来るんじゃないか? Kさんも「こんな女になりたいですよね」とうっとりされていたが、その気持ちよくわかる。

 その後は予定通り御茶ノ水へ。M書店のコミック担当のMさんから「この本があるから僕は書店員を続けている」と熱烈プッシュされたのは『スピリット オブ ワンダー』鶴田謙二著(講談社)。 ああ、そういうことを言われてみたい。

 神保町のS書店さんでは、レッズバカ仲間のS出版営業ヤタベッチと遭遇。ゴール裏では誰よりも汚い言葉で選手を罵っているのに、営業中はとっても真面目で、メガネがキラリと光っているではないか。昼間のパパは違うのね。

 営業を終えたヤタベッチとしばし立ち話をするが、サッカー場以外で話すときの話言葉に戸惑う。ため口でいいのか、敬語なのか? うーん、そんなことよりヤタベッチを見習ってきちんと仕事をしよう。

6月15日(木)

 先週リニューアルオープンした青山ブックセンター六本木店を訪問。

 事前に文庫担当のMさんから「天井がスケルトンなのよ!」と興奮気味に電話をいただいていたのだが、いやはやほんとにカッコイイ! 天井は確かにスケルトン(剥き出し)だし、しかもどう説明したらいいんだかわからないけど、2階の側面と側面をつなげる橋もあるし、日本の書店には珍しい窓まであった。その橋を当然渡って1階を見おろしてみたが、本好きや本屋好きにはたまらない眺めだった。

 そうやってキョロキョロしていたら、レジで本を買っていたおじさんが店員さんに話しかけている。

「いいねぇ、このお店。なんかここで本を買うのが楽しみになるよ」

 確かにそう言いたくなる気持ちがわかる。

 しかも通常なら一等地に置かれるであろう雑誌や一般書は奥に置かれ、その変わりにお店の方向性を主張するかのように、デザイン書がドーンと並べられているのは圧巻だ。

 しかししかしレイアウトや什器だけがすごいのではなく、リニューアルオープン直後だというのにすでに棚がしっかり作り込まれていることに驚いてしまった。たいていオープン時はバタバタになってしまい「とりあえず感」が漂うものなのに、すでに長年使い続けたような棚になっているではないか。

 そのことを文芸担当のMさんに話すと「いやーもうほんと大変でした。おかげさまでお店はキレイになりましたが私はボロボロです」なんて。店長のIさんもずーっと休んでいないとのことだったが、リニューアルオープン後の1週間の売上はかなり好調なようなので、皆さん少しはゆっくり休んでくださいね。

 閉店からリ・オープン、そして今回のリニューアル。
 青山ブックセンターは歩み続けている。

6月14日(水)

 ふと気づいたら見慣れぬ景色。

 いやはや、ついにやってしまった。帰宅電車で爆睡。武蔵浦和駅で乗り換えるはずが、終点の大宮まで乗り過ごしてしまった。良かった川越じゃなくて…。

 いやそんなことよりもう一度新宿まで行ってしまったら大変だ。今度は座らずに乗り換え駅を目指す。

 家に着いて、着替えを済ませ、うがいをしているとその音で僕の帰宅に気づいた娘が2階から駆け下りてくる。

「おかえりぃ!」
「今日幼稚園で何した?」

 5月病以来つい心配で聞いてしまうが、5歳にもなるとそう素直に答えやしない。

「教えなーい」

 しかしこっちが聞くのをやめると「今日ね、すずちゃんとね…」なんて話し出す。

 その娘をおんぶで2階に連れていくと階段に付けたゲートの向こうに1歳半になった息子が立っている。

「アッウー!! アッウー!!」

 生まれる前は入院やらであんなに大変だったのに、生まれてからはほとんど病気知らずで順調に育っている。こいつの顔を見る度、生きていることに感謝する。ありがとうございます。

 しかしそんな僕の気持ちも知らず、二人の子供は床にぺたりと座った僕の膝の上に乗る。娘曰く「ひだりがわたし、みぎがおとうと」の指定席になっているようだが、息子はまだそんなことはわからずお姉ちゃんを追い出そうとする。

 10代の頃、変わりばえのしない毎日がイヤでイヤで、昨日よりちょっと違う今日にしようと必死にあがいていたっけ。ところが今は、この瞬間が一生続けばいいのに、なんて前夜録画したワールドカップのビデオを再生しつつ考えている。

「パパ! またサッカー?」

6月13日(火)

 日本代表よ! 勝とうが負けようがどうでもいいけど、そんなしょぼいサッカーじゃなくて、しっかり闘ってくれよ! じゃないとかつて我が浦和レッズが「Jリーグのお荷物」なんて言われたように「ワールドカップのお荷物」なんて言われちまうぜ!

 本日もすいみん、すいみん、睡眠不足。しかし今日は頑張って本を読む。

『フチボウ 美しきブラジルの蹴球』アレックス・ベロス著(ソニー・マガジン)。どうだろう?なんて半信半疑で購入し読み出したのだが、いやはやこれは2006年サッカー本大賞の第1候補だ!とまだ読んでいる途中にも関わらず宣言できるほどの素晴らしいサッカー本。ブラジルサッカーに興味があろうがなかろうが、サッカーバカは読むべき1冊。第1章ではフェロー諸島に移籍していったブラジル人が紹介されるのだが、いまだにサッカーが貧困から脱出するための大きな手段であることがわかる。うう、年齢を詐称し、しかも金につられてカタールに行っちまったエメルソンの考えがちょっと理解できたぞ。そうかそうか、こういう社会から出て来てるんだよね、君も。

 Mっ気体質の僕。追い込まれれば追い込まれただけ働く気力がわくようで、本日もいつも真面目に銀座などを営業。

 とある書店のとある女性書店員さんがこんなことを言っていたのを報告しておこう。

「もう『笹塚日記』3冊一気読みですよ。なんか目黒さんにハマっちゃって。ほんとカワイイですよね『ふーん』だとか『いいんだ俺なんか』とか。最高ですよ。だから杉江さんあんまりタオルのこととかいじめないでくださいね。いじめるっていえば、大森望さんも許せないですよね。『SIGHT』の対談(※『読むのが怖い』)を読んでるといじめるんですよ、目黒さんのことを。許せない、大森さんに会ったら言っておいてくださいね」

 うーん、なんか最近妙に女性に人気があるんだよなぁ、目黒考二。一緒にサッカーを観ているキリの奥さんもサイン本くださいなんて言ってきたし、そういえば昔女性書店員さんの頼みで「目黒考二を囲む女性書店員の会」なんていうのを開催したこともあったっけ。

 なんでこんな太った片づけられないおじさんがいいんでしょうか?
 というか、いじめられているのは僕の方で、こうなったら大森さんと目黒考二被害者の会でも結成しようかな。

6月12日(月)

 勘弁してくれ、W杯。

 我が愛する浦和レッズが出ているわけでもないし、ジーコも川淵も大嫌いだし、だから大して熱心に見るつもりもなかったはずなのに、始まったのが週末で、そうなると、そこでサッカーをやっているなら見てしまうのがサッカーバカ。ついつい見始めてしまったら、止まらなくなってしまったではないか。うう。

 これではとても身体が持たないと反省し、どうにか真ん中の1時~3時の試合はビデオ録画で後から見ようかと考えているのだが、その時間帯に結構面白い組み合わせがあるから、寝る間がまったくない。睡眠、睡眠、睡眠不足! 思わずキテレツ大百科のテーマソングを朝から歌ってしまう。

 通勤読書はとても本を読めるような状況でなく、隣の人に身体をあずけ爆睡。

 それでも一応、というかそれなりに仕事をしないダメなのがひとり営業部。映画館や漫画喫茶で寝るわけにもいかず、つらい、ツラスギル。こんなときだけでも、誰か雇ってくれ、社長。

 ぼんやりしつつとある書店さんを訪問すると、別の出版社の営業マンが営業中。それが完璧な営業トークで、次から次へと本を紹介し、この近辺には○○会社がありますから、この本は、なんてオススメしているではないか。そんな会社があったのか?

 むう、何だかこちらはフラフラで、いやふらふらのときでなくても、まともな営業トークも出来ず、自爆してばかりなのに、いやはや頭が下がる。

 そのキッチリ営業マンが終わったので、棚陰から顔を出し、「スミマセン。次はだらだらなんです」と書店員さんに声をかけたら笑われる。しかしその書店員さん曰く「いやーあんまりしっかり話されるんでこっちが緊張して聞いちゃいましたよ」とのことで結局注文も出さなかったらしい。

 そうなのか、そうなのか。この辺が営業の難しいところなんだろうな。当然、人(お客さん)によって合う合わないもあるし、こうやってそのまんま営業っぽいのがダメなときもあるのだ。

 いやはや10年以上営業をやっているけどやっぱり正解はないんだな。あっでもこうやってふらふらになって、しかもこの書店さんでは杉江家の家計の事情なんてのを愚痴っているのは絶対間違いなのはわかる。

 先ほどの営業マン様、爪の垢ちょっとください!

6月9日(金)

「実録 タイトル会議」

 そろそろ夕飯の出前に何を取るか揉め出す夜7時。
 メシの問題よりも7月の新刊『読書相談室』のタイトルを決めないと拙いわけで、今週末までに決めろと伝えておいた藤原に声をかける。

杉江「藤原~」
藤原「えーっと僕は親子丼大盛りにするか鴨南蛮うどんにするか悩んでいるんですけど」
杉江「違うよ、『読書相談室』のタイトルだよ!」
藤原「あっ! それはもう24時間、寝ているときも考えてますよ」
杉江「嘘つくなよ。今だってメシのこと考えてただろ」

ちょっと待ってくださいよと言いつつ、彼が考えた候補をプリントアウト。

藤原「じゃじゃーん! どうですか!!」

すると浜本が奪い取り、チェック。

浜本「ははぁ、だからお前、昨日一昨日四字熟語の辞典とか読んでいたのか。しかしこっちで来たか…」
藤原「こっちって何ですか?」
浜本「いや読書相談室と関連ある感じの言葉だよ」

------------------------藤原案-------------------------

活字の世界へようこそ編
千客万来招きネコ編
笑う門には福来たる編
活字中毒者養成編
活字教時代黎明編
カモン!ティーンズ編
濫読水先案内編
本は読んでも読まれるな編
---------------------------------------------------------

浜本「杉江どう?」
杉江「うーん…。このなかでは「活字中毒者養成編」がマシかなと思いますけど、その前に『読書相談室』が付くから、漢字だらけで、表紙の字面が良くないかなぁ。」
藤原「そうですねぇ…。もうめんどくさいからPART.5でどうですか?」
松村「めんどくさいとかいうな!」

しばし藤原の案を前にブツブツ言い合う4名。

浜本「やっぱりさぁ。ここは関係ない路線で行きたいなぁ。前のが特盛すこぶる本編でしょ? そういう感じの奴がいいと思うんだよ」
杉江「本日は晴天編とかジジ抜きババ抜き編とかってこと?」
浜本「そうだけど、ジジ抜きババ抜き編って何だよ?」
杉江「いやうちの娘が凝っているんですよ、今」
浜本「えっ? お前のうちの娘もうトランプできるの?」

しばし親バカ談義が続く。

藤原「特盛すこぶる本編かぁ。じゃあ、大盛!」
松村「減ってるよ」
一同「……」

松村「寄せ鍋ってどうですか?」
浜本「いいねぇ。なんかそういういろんな質問と回答が載っているって感じが伝わるのがいいよ。でも寄せ鍋は7月発売の本にはつらいよなぁ。幕の内とか」
杉江「幕の内?」
藤原・松村「いいですねー、幕の内」
杉江「まじ? 本の本だよ」
浜本「だから関係ないところに飛ばすの」
杉江「???」
浜本「ところで幕の内ってどういう意味?」
杉江「え? 歌舞伎の幕と幕の間に食べる弁当じゃなかったでしたっけ?」

一同ググル。

浜本「あっほんとだ! 杉江ってサッカーだけじゃなくて歌舞伎も知っていたのか?」
杉江「知りませんよ。常識ですよ」

松村「とりあえず幕の内でいきましょうか?」
浜本「そうだな、あとは『すこぶる』みたいな勢いのある言葉を付けたいな」
藤原「エビ入り」
一同「???」
藤原「幕の内弁当にはやっぱりエビが必要でしょう?」
一同「……」

杉江「松村さん、関西弁で多いって何て言うの?」
松村「『ぎょーさん』かな?」
杉江「うーん、合わないねぇ。どえりゃー幕の内編もダメ出し」
藤原「大盛り幕の内編!」
一同「……」

松村「相撲用語とかどうですか?」
浜本「何?」
松村「うっちゃり幕の内編とか?」
浜本「なんか質問を交わしているみたいでイヤだなぁ」
杉江「どすこい?」
一同「それだぁ」
杉江「はぁ?」
浜本「『どすこい幕の内編』いいじゃん! 勢いもあって、いろんな質問に答えている感も伝わるし。」
松村「京極ファンが買ってくれたりして」
杉江「関係ねーよ」
藤原「神が降りましたね」
杉江「降りてねぇよ」
浜本「じゃあ、メシ頼もうぜ。俺は健康診断が終わったから『カレー焼肉定食』な!」

というわけで、7月発売の『読書相談室』は、『よりぬき読書相談室 どすこい幕の内編』になった。1時間以上かかって、こんなんで良いのか?

6月8日(木)


 月曜日に顔を合わすと、顧問目黒=藤代三郎は「杉江はいいよな、いくら負けても金は減らないし」なんてことを言うのだが、なーにを、こちとらサッカーバカは金よりも大事な心を奪われているのだ。本日は心に傷の「傷心」。ブロークンハートじゃ!

 まったく仕事をする気力もないのだが、『カフェ・ビエンチャン大作戦』の見本が出来上がったので、事前注文短冊を手に取次店さんを回る。そして驚いたのはT社さんに掲げられていた新刊搬入点数の数。160点だ。いつもはその倍近い数が掲示されているのに…。

 担当者さんに話を伺うと「例年6月は減るんですけど、それにしても少ないですね」とのこと。うーん、各社W杯をかわしたということだろうか? しかし僕の周りはほとんどW杯なんて興味がなさそうだし、放映時間も時刻開催と違って夜中だし、出版業界にそんなに影響がでるんだろうか?

 無事、全社見本出しを追え、夕方会社に戻る。するとすぐに事務の浜田が「昨日はどうだったんですか?」なんて聞いてきやがった。嫌味か?と思ったがそうではないらしい。しかしもちろん僕にまともに答えるだけの強さはなく、おいおい泣いてしまった。

6月7日(水)

 POPや展開、あるいは新聞なども作られ、熱心に本を売られているとある書店員さんを訪問し、今月の新刊『カフェ・ビエンチャン大作戦』を営業。

「面白そうですね~。ちょっと手にとってもらえれば売れそうだなあ」
「そうなると装丁や帯が大事ですね、えーっと装丁は…」と色校で上がっていたイメージを伝えようとしたらきっぱりこう言われた。

「いやそれは書店員の仕事ですね」

 すごい職人魂に思わず感動。

 しかし、その言葉のあとにこんな話が続く。

「でもですね、それが最近まったく伝わらないんですよ。POPを書いても多面展開しても手にも取ってもらえない、素通りなんです。その代わりテレビでちょっと紹介した本とか、そんなのばっかり競い合うように買われていく。いっぱい売れなくてもいいんです。これならせめて1冊は売れるだろうと思うような本がまったく売れなくて。もう悲しいですよ。他の書店さんどうしているんですかね。なんかこれまでやってきた販促の方法が通用しなくなっているような気がして、ほんと悩んでます」

 果たして次の販促方法はどんなものがあるだろう……。うーん大きな宿題だ。そして大好きな黒田さんの本をきちんと売りたい!

6月6日(火)

 通勤読書は『てけれっつのぱ』蜂谷涼著(柏艪舎)。

 蜂谷涼はただいま僕がもっとも注目している時代小説の書き手で(大正や明治は時代小説になるならば)大正の小樽を舞台にした連作シリーズ『ちぎり屋』『煙波』『蛍火』(すべて講談社)は、北上次郎も認める傑作。

 そんな期待の著者の新刊なのだが、これがその期待を裏切らない素晴らしい出来で、1編読むごとに埼京線のなかで、深い息を吐き出すほど堪能。

 著者があとがきで書かれているが『てけれっつのぱ』は「人と人との縁が、つなばりながら転がっていく物語」で、舞台は明治維新直後の東京だが、一編ごとに主人公は変わるものの、それがどこかで繋がっていく連作短編集になっているのだ。こういう作りが僕は好きなのでポイントup!

 しかも著者が今まで書いてきた舞台(小樽)や時代(大正)を離れても、この著者の得意技である人の深い描き方も腹が鳴りそうなほど見事な食べものの描写は健在で、いやはやほんとオススメです。

 6月の新刊『カフェ・ビエンチャン大作戦』黒田信一著の事前注文の〆切が佳境を迎えており、厚木、町田を駆け足営業。

 途中、まもなく転職する相棒とおるからメール。「35歳の人間に向こうの会社が求めるのは、マネジメント力でした」なんて。

 とほほほ。入社9年半経っても部下もいない俺はどうしたらそんな力を手に入れられるんだ? 

6月5日(月)

 浜本、松村の本の雑誌チームは『本の雑誌』7月号を下版し、社内は思い切り弛緩した雰囲気。「ふわ~」という大あくびが聞こえてきたが、あくびをしているのはまったく関係ない単行本チームの藤原で、コイツは相も変わらずマイペース。仕事中に突然「散歩に行ってきます」なんて行って、その足でなぜか不動産屋を廻ったり、パスポートを取りに行ったりで、いやはや甘い会社につけ込む困ったチャンなのだ。

 というわけで若かりし目黒考二並に壁(へき)に呼び出し、説教のひとつでもしてやろうかと思うのだが、のれんに腕押し、糠に釘状態なので、あとは獲った人間である浜本に任せることにする。

 こんな会社にいてはストレスがたまる一方なので、会社を飛び出し、営業へ。ああ、外は厳しいこともいっぱいあるけど、真剣勝負で楽しいぞ。

6月3日(土) 炎のサッカー日誌 2006.11

 遠い遠いビールとじゃがいもの地で、年に数回しか集まらない青いユニフォームを着たチームを応援するよりも、たった2000円でその青いユニフォームを着たチームの数倍強いチームの対戦を生で見る方が100倍楽しいと再確認した土曜の午後。

 Jリーグ1位、2位(暫定)の対決となったナビスコカップ準々決勝1STレグ。我が浦和レッズは三都主、シンジ、坪井が日本代表としてW杯に招集されているため、いわばBチームの出番。しかしこれまで何度も書いてきたけど、代表選手がいなくても遜色なく、ときにはそれ以上のプレーを見せるのが今年の浦和レッズなのである。

 その期待どおり開始9分“炎のサイドアタッカー”相馬が左サイドを駆け抜け折り返したボールを我らが“大砲”ワシントンがヘディングでゴール。駒場スタジアムのスタンドは狂喜乱舞。これは余裕で勝てると思ったのだが、もうひとり期待通りの男“Jリーグ史上最低最悪の審判”奥谷彰男がお得意の訳のわからないジャッジを繰り返し、ナーバスになってしまった浦和レッズのゴールを川崎・ジュニーニョにこじ開けられてしまった。

 ゲームの入り方は非常に下手だが、現在Jリーグ首位の川崎フロンターレの攻めは敵ながら天晴れ。バイタルエリアに何人ものプレイヤーが飛び込み、あるいは引き下がり、我らがケイタや長谷部が身体を寄せるとそのひとつ前のタイミングでパスを出す。そして後手後手に回るDF陣の感激をぬって、ジュニーニョやマルクスがゴールに迫る。うーむ。ガンバ大阪の攻め方に似ているような気がするがどうだろうか?

 前半32分には中村憲剛にゴールを決められ、よもやの逆転を食らってしまったが、ここからがギド・ブッフバルトの腕の見せ所。前半まったくやる気のなかった“確変終了”山田暢久を平川と交代する。この辺の厳しさは、ギドの凄さだ。

 果たして後半4分、コーナーキックからワシントンのゴールで追いつき興奮したのも束の間、マルクスの逆転ゴールを決められてしまった。しかもアホアホマルクスは我らが浦和ゴール裏に向かって挑発行為。そして勝ちを勝手に決めつけたのか自ら交代を申し出、佐原と入れ替わってしまうではないか。アホ、アホ!

 しかしスタンドはものすごい熱気に包まれヒートアップ。おいらの頭も完全に爆発! こんなアホども、クソターレなんかに負けてたまるかと大声でアレ!浦和を歌っていたら、何と何とまたもやワシントンがゴールを決めて3対3。ワオ! ハットトリックや! と興奮していたら続けざまにまたもやゴールを決めて大逆転!!!

 当然おいら失禁。それどころか危うく心臓が止まりそうになるほどの大興奮。もしおいらが入れ歯だったら間違いなくピッチに向けてすっ飛ばしていたことだろう。ホゲホゲホゲ~。

 うーむ、エメルソンのときのゴールは、エメルソンって凄いよねって感じのゴールだったけれど、ワシントンのゴールは、それまでの展開の良さもあり、なんというかチーム全体で点を取ったようになれるのが大きな違い。だからこの日もワシントンへのコールだけでなく、相馬や平川、あるいは闘莉王へのコールも続けざまに起きていたのだ。

 逆転逆転大逆転の展開で4対3で試合終了。

 ドイツまで行かなくたってよっぽど凄い試合が見られるし、内容だってこっちの方がいいんだぜ。そろそろみんなきづいてもいいんじゃないかい? そして近所のチームを魂の限り、応援してやって欲しいなぁ。

6月2日(金)

 本日も蒸し暑い。
 唯一20代の社員・藤原と夏だけ人事異動するっていうのはどうだろう。

 通勤読書は『太陽の塔』森見登美彦著(新潮文庫)。何だか今月はやたら新潮文庫を買っているな。

 『太陽の塔』は単行本が出版されてすぐまったく読書傾向の違うT書店のTさんに「これは杉江さんでも大丈夫」と強烈にプッシュされていたのだが、結局今まで読まずに来てしまっていたので今回の文庫化で挑戦。

 いやー面白い。電車のなかでクククなんて変な笑いをしてしまったではないか。

 確かTさんは「椎名さんの『哀愁の町に霧が降るのだ』にも相通じますから」なんて話していたのだが、それはそれで確かに感じるし、あとユーモアのセンスが、ただいま酒飲み書店員で熱烈ブッシュしている『ワセダ三畳青春記』高野秀行著(集英社)にも通じるものがあるし、内面の語り口は町田康『告白』(中央公論新社)にも似ているかも。

 というか『炎の営業日誌』よりも人気が出て、顔を会わせる度にワニ目で「もう杉江さんに時代は終わったんですよ」と呟く関口鉄平『クロコダイル日誌』の原型はこれだったのね。『クロコダイル日誌』を面白いと思われる読者の方、『太陽の塔』はその100倍面白いんで必読です。

 はぁ、暑さに負けず、本日も営業頑張りましょう。

6月1日(木)

 ジワジワと夏になるなら許してやってもいいけれど、いきなり夏はないんじゃないか?
 ああ、35歳になるこの夏を、僕は乗り切れるだろうか。

 通勤読書はカズと中田の対談が掲載された『Number』654、655、656号。しかしペラペラめくっていて見つけた「3000円分図書カードが当たるアンケート」に激怒。「Numberはこれからも進化して行きます」は結構だが、世帯年収を聞く必要がどこにあるんだろうか? しかもその年収区分がゴール裏でサッカーを観ているような労働者階級をバカにした設定で、『LEON』でも目指すのか? もういいや、と網棚に乗せたら速効で隣のオヤジが手に取った。おっさん年収いくら?

 口直しの読書は『銀河のワールドカップ』川端裕人著(集英社)。
 てっきりSFかと思って敬遠していたのだが、サッカー小説だと教わり、あわてて読み出した次第。サッカー選手やチーム名を本名で使ったり偽名で使ったりが気にかかるのと、あと著者のサッカーに対するウンチクがちょっとうるさいけれど、しかしなかなか面白い。

 サッカー本といえばセブンアンドワイさんで始まった「2006ワールドカップ特集」(http://www.7andy.jp/books/fair/detail/-/fair_cd/2006w-soccer/)が地味な本や細かい企画までしっかり取りあげられていて秀逸。『ドルジ 横綱・朝青龍の素顔』武田葉月著(実業之日本社)に三都主アレサンドロと朝青龍の対談が載っているなんて知らなかった。

 営業は田園都市線。しかしホームで電車を待っていると久喜行きなんて我が故郷・東武伊勢崎線の地名が出てきて驚く。そういえば相互乗り入れを開始しているんだよな。でもこんな上流階級の路線に東武伊勢崎線が乗り入れていいのかなぁ?

 どこの書店さんもベストが変わらない、よって平台も変えられないと嘆いておられる。ようは新刊がなかなか売れず、既刊のベストセラーの売れ数をまったく追い越せないとか。

 もはや地味に売れる本とかって難しいのか…。

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