1月9日(火)
昨年末、顧問の目黒考二から「杉江、年末に読む本決まったの?」と聞かれ、僕は北方謙三著『水滸伝』(集英社)を一気読みするつもりですと答えると、「じゃあ、いいや」なんて何だか言いたげな様子で目黒はトトロの森に消えて行きそうになった。
その雰囲気。「もしかしてなんかすごい面白いものを見つけたんじゃないですか? 本の雑誌の社訓をお忘れですか? 面白い本は独り占めするなですよ!!」とあわてて追いすがると、「そうなんだよ」ととても嬉しそうな表情で頬を揺らしながらいつもの早口で1冊の本についてしゃべりだす。それは桜庭一樹著『赤朽葉家の伝説』(東京創元社)だったのだが、あまりしゃべらせると全部喋ってしまうので、途中から耳をふさぎ、年末に書店さんで購入したのであった。
ところがよくよく考えてみると休みといっても、僕には二児の子の世話と天皇杯という大変な役割があり、年末年始の休みが8日間あったにも関わらず、本を読む時間なんてまったくなかったのだ。というわけで本日の通勤より目黒考二大推薦の『赤朽葉家の伝説』を読み出したのだが、いやはやこれが面白い。まだ第1部を読み終えたところなのだが、このまま仕事をサボっちゃおうかな…なんて黒杉江が顔を出す。
しかしそういうわけにも行かず、京王線を営業。調布のS書店Nさんに「ノロは大丈夫だったの?」なんて心配されつつ、L書店Tさんとはフェアの打ち合わせ。また府中のK書店さんでは担当者さんにお会いできなかったのだが、入口で『月の扉』石持浅海著(光文社文庫)が大きく展開されており「文庫ダントツの1位」とある。そこについていた手書きPOPが店員さんが書かれたものなのか出版社が制作したものかわからなかったのだが、いやはや文庫はこうやっていろんなアプローチで販売出来ていいなと、ただただ羨ましく見つめてしまった。単行本の販促どうにかしないとまずいよな…。
その単行本の販促を必死になって挑戦しているのが、聖蹟桜ヶ丘のときわ書房のTさんで、こちらでは『向日葵の咲かない夏』道尾秀介著(新潮社)や『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦著(角川書店)をPOPだけでなく独自のパンフレットも制作し、また他に応援書店さんを募り展開しているのだ。うーむ、これって本来出版社がやらなきゃいけないことを書店さんがやっているんじゃないか…なんて思わないわけではないけれど、その気持ちが通じたのか両書ともしっかり売れており重版もかかっているようだ。単行本もまだまだやりようによっては売れるということなので、やっぱり気持ちが大事と新年早々気を引き締める。
気を引き締めていたら別の担当のAさんが「2巻が出ましたよ~」と『万福児』下吉田本郷著(集英社)を持ってきていただく。このマンガ、1巻が出たときにAさんにオススメいただき、そのあまりの面白さにハマってしまっていたのだ。クレヨンしんちゃんをもうちょっとシュールにしたようなギャグマンガで、しかもこの主人公万福がうちの息子に似ていたりして、もはや目が離せない。帰社する電車のなかで読み出し、思わず吹き出してしまった。
会社に戻って「作家の読書道」のインタビューに立ち会う。今回は高野秀行さんで、その読書道は、そのままの部分とえっ?!という部分があって非常に面白かった。まあそれが高野さんの魅力なんだと思うけど。
その高野さんから「杉江さんも営業に本屋大賞にこういうインタビューの立ち会いだったり大変ですね」なんて心配されてしまったが、営業も本屋大賞も高野さんも好きなことだし、1冊でも多くの本が売れたり、面白い本を紹介できるなら、まったく苦にならない。
しかし木村晋介落語会や椎名誠写真展などのイレギュラーな仕事もあり、その用意で22時まで残業。おう! 終電があぶねーぞ。