6月5日(火)
表紙を見た瞬間にピンと来て、即買即読した『鯨の王』藤崎慎吾著(文藝春秋)は、その期待をまったく裏切ることなく一気読み。これは個人的に2007年度ベスト1級の1冊であり、海洋冒険小説の傑作だ。読み終わった瞬間「男は黙って『鯨の王』だぁ!」と叫びたくなってしまい、いや叫ばずにはいられず、ときわ書房の宇田川さんを訪問し、早速叫んでしまった。
福井晴敏さんの作品や『ホワイトアウト』真保裕一著(新潮文庫)や『五分後の世界』村上龍(幻冬舎文庫)などが好きな方には特にオススメ。いやはや手に汗握る展開に約450頁上下2段なんてあっという間に過ぎ去ることだろう。
なんだか年明けからイマイチピンと来る本がなく、今年は不作か、なんて思っていたのがウソのよう。『湖の南』富岡多恵子著(新潮社)、『ミノタウロス』佐藤亜紀(講談社)、そしてこの『鯨の王』とベスト1級がどどっと出ていて嬉しい限り。もちろんまだまだ未読の話題作もあるわけで、ここはしばらく内需拡大で、本を買いまくる日々が続きそう。
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とある書店さんを訪問すると文芸書が減っていて、やっぱり売れないから棚替えしたのか、と落ちこみつつ担当者に確認すると「違うんですよ。文芸書を狙った万引きが多くて泣く泣く減らしたんですよ」とビックリするような回答をいただく。
そのお店はテナント店なのだが、入口から近くにあり、レジが中央に配置されているから確かに万引きされやすい店舗なのかもしれない。初めは万引きだと気づかず、売れたんだぁ〜なんて喜んでいたそうだなのが、後にスリップを確かめるがスリップもなく、レジを通った形跡もなく、万引きだと気づいたようだ。そして気づいてみるとかなりの頻度で本がなくなっており、どうも常習者が担当者がいない時間帯を把握し、複数冊も盗んでいくという。もちろん転売目的で。
高額で転売できるような本であるから、それは売り場では売れ筋本であるわけで、せっかく仕入れた本が盗まれるのは2重、3重の被害なのである。本と万引きは切っても切れない関係なのだが、なかなか改善されることなくここまで来たのは、僕ら出版社側がなかなか真剣にとらえて来なかったからなのではなかろうか。被害はすべて書店さんが被るわけで、その辺の実感のなさが対応の遅れを招いているのだと思う。
そうはいってもこうやって万引きによって苦しめられている書店さんはたくさんあるわけで、しかも最近は下手に捕まえると逆ギレされることも多く、捕まえるのも命がけである。いち早く安価でICチップなどを埋め込む方法が開発されることを祈っているが、もしかしてそれが出来ても、反応するような機械やレジの対応は、書店さんの負担になるのだろうか。
なんだかなぁと僕がぐったりしている場合でなく、目の前の書店さんはもっと激しく落ちこみ憤りを感じており、どう言葉をかけていいのかもわからない。
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最近営業していて一番よく聞く言葉は「それほどでもないんですよね」だ。
人気作家…だと思える作家の、それも待望の新作が何点も出ているのだが、それが思ったほど売れないようなのだ。出版社はかなり期待を込めて、いや、これくらい売れて当然と思って刷っているのだろうが、読者の反応はイマイチどころかイマ10くらい。
うーむ。お客さんの指向や物の買い方が変わって来ているような気がするんだけど、うまく言葉にできない。
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人気作家(のはずの人)の作品が思ったほど売れないため、別の本を売らなきゃいけないわけで、本日訪問した津田沼の芳林堂書店の飯田さんは『走れ!T校 バスケット部』松崎洋(彩雲出版)に「読んでみたら面白かった!」と率直なコメントを付けて展開されていた。
「いやーほんと面白かったんですよ。それを、ひとりでも多くの人に知って欲しくて、思わずこんなひねりのないPOPを付けちゃったんですけど、おかげさまで順調に売れています」
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第3回酒飲み書店員大賞の推薦作の投票が本日〆切。飯田さんの話じゃないけれど、僕も素直にひとりでも多くの人にその作家の面白さを知って欲しいとひねりもなく投票を済ます。果たして他の酒飲み書店員は何を推薦してくるのか? やっぱりこういうのは楽しいな。