WEB本の雑誌

11月20日(火)

 朝、本棚から今日読む本を抜き出そうとしたら、娘に「パピプペポ! そこを触って本を出しちゃダメなの!」と大声で叱られてしまった。パピプペポとは、最近の僕の呼び名であるが、なぜそう呼ばれるようになったかは不明である。

「えっ? 何で?」
「その上の部分(背の上部)を触って本を取り出すと本が壊れちゃうってこの間図書館の先生に教わったの。だから本と本の間に指一本分くらい隙間が空いているから、ちゃんと指を入れて抜くようにしなきゃダメなの!」

 僕の本棚には本と本の間に指一本分の隙間もないのだが、娘の言うとおりなので素直に謝る。
 学校って本を大切にしてくれているんだなぁ……。

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 その娘は毎週土曜日に近所の図書館へ連れて行っていたら、思い切り活字中毒になってしまった。土曜日に20冊本を借りてもその日のうちに全部読んでしまい、日曜日にまた図書館に行こうと言い出すのだ。ツボにハマると「これ面白いよ」なんて薦めてくれるのだが、今、ハマっているのは松谷みよ子の『ちいさいモモちゃん』シリーズとあまんきみこの『車のいろは空のいろ』シリーズで、これは何度も読み直しているので今度買ってやろうと思っている。

 しかしどちらも単行本と文庫(新書サイズ)が出ていてどっちを買うか悩んでいる。いや金がないから経済的にとってもお得な文庫と思うのだが、せめて子供の本くらい単行本で買い与えてやりたい気持ちもある。もしかしたら子から孫へ受け継がれるかもしれないし……ってそんな夢みたいなことはないか。

 ちなみに先々週の土曜日が学校公開日(いわゆる参観日)になっていて、学校は大嫌いなのだが娘がどうしても来てくれというので嫌々顔を出した。すると各クラスに「私のおすすめ本」なんて感想文とPOPの間みたいな100字程度のものが貼られていた。

 我が娘は、ゾロリの本でそれを書いていたのだが、最後の一文に泣けてくる。「とっても面白い本なのでみんな読んでみてください」。うーむ、既に父親と同レベルではないか。娘のレベルが高いのか、父親のレベルが低いのか。間違いなく後者だと思うけれど、でもな、娘よ。そういうときは、文の最初に「いやはや、すごいぞ、ぶっとぶぞ!」で書き出さなきゃいかんのだ。

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 通勤読書は、北極繋がりで、『旅をする木』星野道夫(文春文庫)。どう考えても好きなはずなのに、今まで星野道夫の著作に触れて来なかったのはなぜなんだろう。本物過ぎて怖かったのか……。

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 青山ブックセンター六本木店を訪問すると、なんと「金城一紀さんの本棚」なんてフェアをやっているではないか!! 金城さんがセレクトした約30点の本がコメント付きで紹介されているのだが、うー、このコメント全部コピーして欲しいんですけど……。12月上旬までは開催されているようなので、金城ファンはぜひ。

 その後は地下鉄をうろつくが、半蔵門と霞ヶ関を間違えて下車してしまう。実はこれで3度目。ついでに白状すると大井町で京浜東北線を逆方向に乗り間違えたのは4回あって、このふたつの場所は僕の思考及び方向感覚を狂わす魔の地である。

 大手町のY書店Kさんとしばしお話。
「コミックがあまりに売れるんで広げたんですけど、今度は単価が下がってしまって難しいですね」とのこと。この辺、本当に2007年の出版界を象徴する話で、本はそこそこ売れているけど、文庫、新書、ケータイ小説とほぼ1000円以下の本ばかり。書店さんは冊数は前年比を越えているのに、金額が前年比を越えないという状況なのではなかろうか。

 しかししかしである。カップヌードルやその他の生活用品が材料費高騰で値上げしている今、実は出版業界も紙代が上がっていて、ハッキリ言って値上げしないとやっていられない状態なのである。営業である僕は、ことあるごとに発行人の浜本に「そろそろ雑誌の値段あげてもいいんじゃないですか?」と申告しているが、やはり雑誌の値段を上げるというのは相当抵抗があるようで、なかなか決断できずにいる。

 そんなことを印刷会社の営業マンと話していたら、「いやー紙代もそうなんですけど、ガソリンの値上げで輸送コストがめちゃくちゃ上がっているんですよ。そろそろ出版社さんにお願いしないといけないかもしれません」なんて耳を塞ぎたくなる話をされる。参った。