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1月8日(火)

 通勤読書は『賢者の山』遠藤ケイ(山と渓谷社)。年末年始に読むはずが、子供の相手で1冊も本が読めず、引き続き遠藤ケイさんの著者を読み続ける。白神山地や屋久島、熊野などを訪れ、その山や森に抱き込まれるルポであるが、とにかく文章がうまく、考察が深い、しばらく私のバイブルになりそう。野田知佑さんのファンや、私の大好きな『山の仕事、山の暮らし』(つり人社)や『古道巡礼』(東京新聞出版局)の高桑信一さんに相通じるものを感じる。

 しかしこの手の本を読んでいると、どうしても柳田国男や南方熊楠に向かっていくもので、今年の読書のテーマは、このふたりか。しかし20年前、八重洲ブックセンターでアルバイトしていたとき南方熊楠が読めず、しかもおバカな私は著者名なのかジャンルなのかもわからず、お客さんに怒られたっけ。

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 出版業界が世の中の社会・経済状況から10年遅れているというのであれば、今から10年後が今の社会・経済状況になるということか。返品改装した本を売ること新品として売ることを「偽装」と呼ばれる時代になったりして。

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 もろもろの日程を調整し、いざ営業へ。

 まずは異動になられたと聞いた三省堂書店Uさんの新天地・成城店を訪問。Uさんは千葉会のメンバーでもあるのだが、チェーンの書店さんは異動が激しいので、なかなかその土地に根付くことは難しい。それでも千葉会に参加し続けてくださいねとお願いすると、もちろんですけど「吉っ読」の吉祥寺まで電車で30分なんですよ、なんて意味深なことを言われてしまった。

 渋谷へ移動し、年末お会いできなかったブックファーストのHさんにご挨拶。Hさんとの会話は、ヒントにあふれていて、いつもお話したあと考えさせられることになる。本日もたくさんのヒントをいただき、頭をフル稼働。

 こちらも年末にご挨拶出来なかった南口・山下書店のFさんを訪問し、新年のご挨拶。売上ベスト10の8位に『シネマ・ハント ハリウッドがつまらなくなった101の理由』柳下毅一郎(エスクァイア マガジン ジャパン)が入っているではないか! F店長さん曰く「いやーうちのお店、映画批評の本が売れるんですよ」とのことなのだが、「へえ」ボタンを30回ほど押してしまった。

 青山ブックセンターを覗きつつ(担当者さんに会えず)、やはり新年は『いそがなくたって、そこに本屋があるじゃないか』(サンブックス)などの著作がある書店員・高津淳さんに会わないと年が明けないだとうとお店を覗くが、こちらもあちこち飛び回って仕事をされている方なので、お会いできず。うう、私の2008年はいつ明けだろうか。

 神保町へ移動し、書泉さん、東京堂書店さん、三省堂書店さんを訪問。三省堂書店さんで営業する際には、入館証明のバッチが必要で、その際、社名などを記入するノートがあるのだが、それが本日分だけで、何枚にも渡っていてビックリ。各社年始の挨拶に訪れているのだろう…がこちらは挨拶どころでなく、すでにフル営業モード。1階のAさんとお話した後、4階へ。こちらは完全な趣味なのだが、今、三省堂書店さんの4階、人文書等の売り場は非常に面白いと思う。というか、紀伊國屋新宿本店さんやリブロ池袋店さんなど、人文書の売り場で面白い試みをしているお店が多いと思うのだ。ちなみに三省堂さんは、12月からはアクセス閉店後の地方出版物を支えるために、新たな地方小出版物の売り場が作られていた。

 坂を登って、本の雑誌社としては一番最初に挨拶へ行くべき書店さんである、茗渓堂さんを訪問。店長のSさんにご挨拶。

 そして丸善さんを訪問。
 とにかくビックリするくらい本やゲラを読んでいるYさんから早速オススメ新刊情報をいただく。
「1月はもうなんといっても新潮社から出る竹内真さんの新刊『ワンダー・ドッグ』!!(1月22日発売予定)高校のワンゲル部を舞台に、少年と少女とそこで飼われている犬の物語なんだけど、もう最後のところなんて涙でウルウルよ。」

 そういえば随分に前に竹内真さんとは飲んだことがあるのだが、同じ年で作家なのか…とただただひれ伏すような気分であったのを思い出す。

 それからこんなの作ったのと渡されたのが『坂木司●女子応援隊ときどき男子』という小冊子。坂木さんを応援するために全作品の読みどころを現役【女子】(ときどく男子)書店員が紹介されている。この小冊子のスゴイところは、なんと丸善さん、三省堂書店さん、有隣堂さんが経堂で行っているということだ。いやー、なんだか売り場はネット社会のようにどんどん繋がっていっているんだなぁ。ということは私、営業マンは書店さんに役立つ、ネットそのものになればいいのか。リンクを繋げる役目とでもいうか。

「だってさ、坂木さんみたいに1作1作しっかり面白い作品を書いている作家さんは応援していかなきゃいけないじゃん。賞とかとは別に、書店員は売り場でそういうことをしっかりアピールしていかないと、それが仕事でしょう」

 Yさんの言葉は、新年早々身を奮い立たせるような重みがあった。

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