1月30日(水)
秋葉原、神田、東京、銀座の一部を営業。
最近また夢中になって書店さんを廻っている。こういうのはムラがあって、出来ればムラを無くしたいのだが、ムラがあってこそ人間であって、ムラなくグイングイン自動車にネジを締め付けているのはロボットで、いつか営業ロボットなんていうのが出来たら、どんな世界になるのだろうか。名刺はロボコンのように腹から出すのか、頭を下げたら重すぎてそのままひっくり帰ったりしないのだろうか。ロボットも私みたいに書店員さんの鋭い指摘にしどろもどろになりつつ、お願い光線を出すのかな? 「お願いビーム」なんてハート形の目をして、見つめたりして。
いやロボットの話ではなかった。私が今なぜまたこんな夢中になって書店さんを廻っているかというと、先日、大宮のJ書店さんを営業している際、営業の大先輩C社のAさんにバッタリ出会ったからである。昔は半年に一度くらい飲んで、いろいろと営業などを教わっていたのだが、最近はお互い、ではなかった私はいつでも暇だが、Aさんが大変忙しそうだったので、なかなか顔を会わせる機会がなかった。
せっかくお会いできたのだからと、営業を終えた後、喫茶店でお話を伺う。なんとAさんは、この冬で60歳で、本来は停年であったのだが、会社側が延長を申し出てくれたそうで、今も毎日書店さんを廻っているそうだ。私は前日編集者をワンアウトも取れず降板になってしまったが、Aさんは営業を40年近く続けた上に、延長戦に挑んでいるのである。
「いやーやっぱり好きなんですよ、この仕事が。書店さんに行って欠本とって、新刊紹介して、いろんな話して、ねっ。」
もちろん私も営業という仕事が大好きだから、この言葉には大きく頷くのであるけれど、その仕事を40年近く続けるというのは並大抵のことではない。例えば今なら相手にしている書店員さんは自分の子供より若いだろう。そういう人に「そんなもんいりません!」なんて冷たく言われる可能性だってあるのである。普通の人だったら泣いちゃうし、僕だって泣いちゃう。たぶんAさんだって泣いていることがあるだろう。
しかしそんな酸いも甘いも知り尽くした上で、Aさんは営業が好きだという。その言葉に嘘はなく、今も私以上に精力的に書店さんを廻っているし、しかも多くの書店さんで愛されている。その証拠に私と話している間にも書店員さんから連絡が入り、飲み会のお誘いを受けていた。
それ以来、私も負けずに書店さんをアホみたいに廻っている。夕方には脹ら脛がパンパンになって、良いこともあれば、悪いこともある。でもこんな楽しい仕事はない。いつかAさんみたいになりたい。そう願って、今日も書店さんに顔を出す。