5月14日(水)
5月3日、朝日新聞のインタビューで「人生なんてほとんど無駄に過ごしているわけじゃん。その中でちょっとびっくりすることがあれば大もうけみたいなもの」とあまりにカッコイイ話をされていたので読み出した佐野洋子さんの『シズコさん』(新潮社)なのだが、これがもう5月の時点で断言してしまうが、今年の僕のベスト1で決定だ! いやここまで魂のこもった本に対して、ベスト1とかそういう評価をして良いのか悩んでしまうくらい素晴らしいのである。
手も繋いでくれなかった、情というものが欠落してしまったかのようなお母さんと佐野さんの関係は、程度の差こそあれ、すべての親子にあてはまるだろう。まさに<家族とは非常な集団>なのである。それをとことんあけっぴろげに、毒舌とユーモア溢れる文章で描いたこの『シズコさん』は素晴らしい。すでに名作であろう『八日目の蝉』角田光代(中央公論新社)を読み終えたときと似たような感動を覚えた。
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目黒、五反田と営業し、一路ブックストア談錦糸町店さんへ。担当のSさんに『辺境の旅はゾウにかぎる』のゲラをお渡していたのだが、今朝こんな感想メールが届いたのだ。
「既刊、殆ど未読なんで順番の良し悪しなんかてんで判断出来ませんが、無性に他の高野作品読みたくなります! そういう意味で、今まで高野秀行さんを全く知らなかった人にこそ私は何とかして届けたい!!! なんだか「!」がやたら多いけど、一人で勝手にウルトラ盛り上がってるんで抑制効きません。」
孤独な編集者兼営業マンにこのようなメールが届いたら、そりゃどこにだって飛んで行くだろう!
というわけで、Sさんとふたりで『辺境の旅はゾウにかぎる』緊急拡販会議。
しかしほんとこの半年、何度も何度も原稿を読み返し、もはや面白いとかそういう感覚がすっかり麻痺し、僕のなかには客観というものがなくなってしまっていたのだが、いやはやついにこの本の面白さを分かってくれる人が現れたのだ。これを同志と呼ばず、なんと呼べばいいんだろうか。