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2010年7月 オニヤンマ腹出し号 No.325

 いよいよ日本でもiPadが発売されて、キンドルだリーダーと大騒ぎだが、では電子書籍とはいったい何なのか! 電子書籍を読むと視力がぐんぐん回復したり肩こりがみるみる治ったりするのか! というわけで、本の雑誌7月号は電子書籍に真正面から切り込む緊急特集。竹熊健太郎・永江朗・米光一成の「電書」通三人が電子書籍の先行きを考える座談会から、発売前のiPadと日本語未対応のキンドルを発行人・浜本が体験するどすこい始末記、電子書籍の実験台を志願したライターの激白に「ウンココロ」電子化中のデザイナー・寄藤文平インタビュー、さらに一足先にデジタル化した音楽業界からの提言、内沼晋太郎の電子書籍の楽しみ方に、児玉憲宗の書店の明日予測まで、読み応えたっぷりの23ページ! いい原稿が集まりすぎて読者アンケートがちょびっとしか載せられなくなっちゃって、読者のみなさんには、ほんと申し訳ないが、こういうところが紙版ならではの面白さではないか、と笑って許して読んでくれぃ!

 新刊めったくたガイドは、三橋曉がボッシュシリーズ最高峰『エコー・パーク』に五つ星を打てば、山崎まどかは今年一番ヒップな海外小説『野生の探偵たち』にズブズブ。大森望ががんがん実名が飛び出すスリリングなSF私小説にSF魂を直撃されれば、宇田川拓也は"新人"宮部みゆきの『小暮写眞館』で明日に向かってレッツゴー! アライユキコが憧れと敵意が交錯する少女たちの友情物語に81年生まれの心意気を感じれば、金子のぶおは「きかんしゃトーマス」で科学と社会の関係を再確認。そして北上次郎はあさのあつこの大傑作時代小説が出たあ! と『火群のごとく』に大興奮。今月のベスト1を争う、もう一作の時代小説と合わせ、江戸の小藩にタイムスリップだあ!

 今月のゲストは畸人研究学会主幹・今柊二。噂の定食評論家がいよいよ書店と定食の研究に着手、まずは横浜有隣堂の定食事情をチェックするのだ。さらに住所不定の無宿者・堀切直人に謎の洋書者・橋本輝幸、古書の森在住のノンフィクション作家・黒岩比佐子が初登場! 「映画論叢」が痛快だ!と断言したり、キノコ・ハードボイルドを満喫したり、古書の森を巡り歩いたりするので、おお、大変だ。いざ、注目! 
 そして今月は大森望が『二十世紀から出てきたところだけれども、なんだか似たような気分』を出したばかりの鏡明と待望のSF漫談で懐かしの70年を振り返れば、高野秀行の辺境読書が怒濤の最終回。沢野ひとしが編集部Mと広島に殴り込みをかければ、冷蔵庫の物怪と闘う内澤旬子、試着室でブラジャーと格闘する絲山秋子、不倫妻の生姜焼きに舌つづみの吉田伸子と女性連載陣も絶好調! お子さまランチから梅酒の梅まで、B級もC級もグルメならおまかせの「本の雑誌」7月号はまさに電子のお針箱。棒パン穂村弘ともてる本について考察しながら、いざ、梅雨にそなえよう!

目次

今月の一冊

高野秀行の辺境読書/評論から放浪物まで座右の書大集合! 高野秀行
黒豚革の手帖/冷蔵庫の物怪 内澤旬子
魅惑のキノコ・ハードボイルドを満喫! 橋本輝幸
絲的モノ道具/試着室と通販 絲山秋子

特集:電子書籍の時代がくるぞ!?

電子書籍どうするどうなる座談会 竹熊健太郎・永江 朗・米光一成
キンドルとiPadを体験してみたぞ 浜本 茂
電子書籍の実験台を志願して 中野晴行
寄藤文平インタビュー/面白いことをいっぱいやりつつ宝物のような本を作るのだ!
一足先にデジタル化した音楽業界の現場から 鈴木健二
電子書籍で、読書はこんなに楽しくなる(かもしれない)! 内沼晋太郎
そのとき本屋はどうなるか 児玉憲宗
読者アンケート/こんな電子ブックなら欲しい!

SF漫談スピンオフ/『二十世紀〜』の次は『アメリカの夢の機械』だ!大森 望vs鏡 明
書店と定食 今 柊二
言語芸術・小説の力を見よ! 豊崎由美
リトルマガジン「映画論叢」が痛快だ 堀切直人
吉田伸子の食えばわかる!/“きちんとした”不倫妻の生姜焼き!? 吉田伸子

新刊めったくたガイド

ボッシュシリーズ最高峰『エコー・パーク』に五つ星! 三橋曉
今年一番ヒップな海外小説『野生の探偵たち』を読むべし! 山崎まどか
がんがん実名が飛び出すスリリングなSF私小説 大森望
“新人”宮部みゆきの『小暮写眞館』で今すぐ走りだせ! 宇田川拓也
憧れと敵意が交錯する少女たちの友情物語 アライユキコ
古道?暗渠?鉄道? 「機関車トーマス」に見る科学と社会の関係とは? 金子のぶお
あさのあつこの大傑作時代小説『火群のごとく』が出たあ! 北上次郎

怒濤の勢いで展開する『ノンストップ!』を一気読み 穂井田直美
人生で大切なことはすべてプロレスで学んだ 伊野尾宏之
イラスト先行小説アンソロジー『逆想コンチェルト』 山岸真
のんびりだらだら酔っぱらい随筆 荻原魚雷
正統派新書タイトル『芭蕉』にやられた! 渡邊十絲子
女子フリペ仙台×千駄ヶ谷 石川春菜
古今東西虚実いりまじる『失われた建築の歴史』 風野春樹
オビミシュラン M・オビスピエール

ブックス・墨瓦蝋泥加/本居宣長の一大ファンタジー地図!? 宮田珠己
私が愛する古書・雑書たち 黒岩比佐子
坪内祐三の読書日記/二十数年前がついきのうのような気がする 坪内祐三
文学賞記者日記 
ヒーローたちの荒野/汚れたヒーロー像とカタルシスの変化 池上冬樹
パリの英語の古本屋 鏡明
南の話/ケルアックの頭のなかへ 青山南
サッカーストーリーズ/過去 はらだみずき
日本SF戦後出版史/強力連載続々スタートの巻 高橋良平
単純素朴なのになぜか伝わらない本 円城 塔
フィアリング『大時計』の寓話性 吉野 仁
オススメSFにまつわる深〜い悩み 池澤春菜
古代中国の叡智が詰まった幻の稀覯本!? 柳下毅一郎
今月書いた人
掲載図書索引

続・棒パン日常/もてる本  穂村弘
三角窓口/「殺人者」はいつ「殺し屋」になったか!? 他
小学4年生書評家ゆきちゃんの読んで育つ ゆきちゃん

キムラ弁護士小説を書く/町田秀子という女(その7) 木村晋介
歩く旅/聞き上手な人・都築響一さん 沢野ひとし
今月のお話/書いても書いても荒野が続く 椎名誠
後記

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