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2010年9月 古下駄月見号 No.327

「がんばれ、翻訳ミステリー」からはや5年。本誌がエールを贈ったにもかかわらず、翻訳ミステリーの危機的状況は回復の兆しどころか、悪化の一途。おお、このまま翻訳ミステリーの新刊が激減していってもいいのか! というわけで、本の雑誌9月号の特集は「たちあがれ、翻訳ミステリー」。8月いっぱいで閉店が決まった東京初のミステリー専門店「ブックスサカイ深夜プラス1」の浅沼茂インタビューから、初心者向けのおすすめミステリー30選に国内→海外ミステリー置き換えマップ、上級者向けおすすめガイドに翻訳家・古沢嘉通の「どうにもならなかったか」の叫び、そして都内三校のミス研訪問記に読者の翻訳ミステリー体験まで、翻訳ミステリーに再びエールを贈る21ページだ。さあ、みんなで翻訳ミステリーを応援しよう!

 新刊めったくたガイドは、三橋曉が掟破りの殺し屋物語『ベルファストの12人の亡霊』の凄腕主人公に驚愕すれば、山崎まどかはすっとんきょうで危険で唯一無比の超短篇をとにかく読め!とイチオシ。大森望が年間ベスト級の翻訳SF短篇集が2冊も登場!と大喜びなら、宇田川拓也は貴志祐介の圧倒的大傑作『悪の教典』に呆然! アライユキコが学校から地域コミュまで、七人の敵とヴァーチャル対決したかと思えば、金子のぶおは炎と煙と轟音の実験本『Mad Science』の大迫力にまいったあ。そして北上次郎は大森望から無償譲渡された『ハンターズ・ラン』を今年度のベスト1冒険小説だ!と絶賛。もう1冊譲り受けた『天冥の標 Ⅲ』はどうしたのだ?と言わず、まあ、読んでくれぃ!

 今月のゲストは複雑系の金子邦彦。学生相手に日々つぶやいている東大教授が大学教員の嚆矢とも言うべき人のつぶやき集をひもとくアンチ肉食系のツイッター論。複雑じゃないから大丈夫! そして今月は取材から6カ月。新潮社「幻の特装本」ができるまでの全貌を緻密な絵と文で伝える内澤旬子のイラストルポがついに登場。おじさんは虫めがねを用意して読もう! さらに「ほげほげ温泉読書日記」と高野秀行「オアシスの酔っぱらい」の超短期集中連載2本がめでたく大団円。絲山秋子が心の姑と鍋釜ゲットすれば、吉田伸子は直木賞受賞作『小さいおうち』の銃後の炊き込みご飯で腹いっぱい。いざ、鍋と釜と靴と本の雑誌9月号で、真夏の太陽と勝負勝負だあ!

目次

今月の一冊

大口製本のこまやかな職人技が支える新潮社「幻の特装本」 内澤旬子
紀元前480年のTwitter 金子邦彦
ブックス・墨瓦蝋泥加/謎のオホーツク文化を知っているか 宮田珠己

特集:たちあがれ、翻訳ミステリー

さらばブックスサカイ深夜プラス1
初心者向けおすすめ翻訳ミステリー30座談会 霜月 蒼・杉江松恋・千街晶之
国内←→海外ミステリー置き換えマップ 吉野 仁
上級者向けおすすめガイド 酒井貞道
どうにもならなかったか 古沢嘉通
都内三校のミステリ研に行ってきたぞ! 浦 高晃
読者アンケート/私の翻訳ミステリー体験

絲的モノ道具/心の姑と鍋釜食器 絲山秋子
黒豚革の手帖/靴よさらば 内澤旬子
実録エンタメ・ノンフ人生/オアシスの酔っぱらい(後編) 高野秀行
トヨザキ社長の「寄らば斬る!」/“笑いの底にある恐ろしい“リアル” 豊崎由美
吉野朔実劇場/でも、さっきそうおっしゃったじゃねえか! 吉野朔実
吉田伸子の「食えばわかる!」/『小さいおうち』タキちゃんの銃後の食卓 吉田伸子

新刊めったくたガイド

掟破りの殺し屋物語『ベルファストの12人の亡霊』 三橋曉
すっとんきょうで危険で唯一無比の超短篇 山崎まどか
年間ベスト級の短篇集が二冊揃って登場だ! 大森望
貴志祐介の圧倒的大傑作『悪の教典』に呆然 宇田川拓也
学校から地域コミュまで『七人の敵がいる』が面白い! アライユキコ
炎と煙と轟音の実験本「Mad Science」の大迫力を見よ! 金子のぶお
『ハンターズ・ラン』は今年度のベスト1冒険小説だ! 北上次郎

新生ポケミス第一弾は青春冒険小説だ! 穂井田直美
路地裏の散歩者 伊野尾宏之
「カメカメ」した物語 北野勇作『どろんころんど』 山岸真
七十三万人の高校生が聴いた講演会 荻原魚雷
わくわくがたっぷり詰まった科学新書 渡邊十絲子
富士山麓の性文化に迫る激レア本 石川春菜 
サイコドクターの日曜日 風野春樹 
精神科医ペリーとアンドリュー・ヴァクス M・オビスピエール

米とそろばん 鏡明
南の話/ライムの街路樹 青山南
文学賞記者日記
ヒーローたちの荒野/『燃える接吻』と『キッスで殺せ』 池上冬樹
坪内祐三の読書日記/柳田のおばさまの率直な発言にシビれました 坪内祐三
ほげほげ温泉読書日記(後編) 大矢博子
サッカーストーリーズ/予言 はらだみずき
日本SF戦後出版史/核戦争とSFの巻 高橋良平
「そういう人」スミスが好き 円城 塔
タロットを配した異色クライム・ノヴェル 吉野 仁
「人とは何か」を考える哲学者とオオカミの11年間 池澤春菜
“レッキとしたノゾキ”吉行耕平の写真術 柳下毅一郎
今月書いた人
掲載図書索引
今月本の雑誌に遊びに来た人

続・棒パン日常/いつどこでなに 穂村弘
三角窓口/奥付に初版部数が記載された本を応援する! 他
小学4年生書評家ゆきちゃんの読んで育つ ゆきちゃん

キムラ弁護士小説を書く/町田秀子という女(その9) 木村晋介
歩く旅ひとやすみ/森永博志を探せ!! 沢野ひとし
今月のお話/七月の太陽に気をつけよう 椎名誠
後記

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