第103回:前田司郎さん

作家の読書道 第103回:前田司郎さん

劇団「五反田団」を主宰し、劇作家、演出家、俳優として活躍する一方で、09年には『夏の水の半魚人』で三島由紀夫賞も受賞し、小説家としても注目されている前田司郎さん。実は、幼い頃から志していたのは小説家。どんな経緯を辿って現在に至るのか、そして大学生の頃に出合った、それまでの本の読み方、選び方を変えた1冊とは。

その7「最近読んでいる児童書、絵本」 (7/7)

  • 水滸伝 1 曙光の章 (集英社文庫 き 3-44)
  • 『水滸伝 1 曙光の章 (集英社文庫 き 3-44)』
    北方 謙三
    集英社
    640円(税込)
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  • オオカミ族の少年 (クロニクル 千古の闇 1)
  • 『オオカミ族の少年 (クロニクル 千古の闇 1)』
    ミシェル ペイヴァー
    評論社
    1,944円(税込)
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  • ねないこだれだ (いやだいやだの絵本)
  • 『ねないこだれだ (いやだいやだの絵本)』
    せな けいこ
    福音館書店
    756円(税込)
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――最近読んでいるのは、どんな本ですか。

前田:今、宮沢賢治を読んでます。小さい頃は読んでいなかったんですが、『イーハトーブ通信』に原稿を執筆させていただいて、いい機会だから読もうと思いました。福島さんも宮沢がいかに天才かを分析していた人だったので、その流れもありますね。でも天才の書いたものって読みたくない(笑)。しょうがないなあ、かなわねえなあ、と思って読んでいます。他ジャンルだと嫉妬しないんですけれど。だから人の小説と戯曲は読まないですね。真似ちゃったらどうしようとか、似ちゃったらどうしようという怖さもあるので。

――じゃあ、今生きている作家の作品はあまり読まないんですか。

前田:自分と違いすぎるものなら。北方謙三さんの『水滸伝』なんかは、面白れー、と思って読めます(笑)。

――そういえば、最近は海外文学は読まないのですか。

前田:繰り返し読んでいるのが『赤毛のアン』で、あと友達に薦められてジュンパ・ラヒリの『その名にちなんで』は読みました。児童文学でミシェル・ペイヴァーの『千古の闇』というのがあって、それも読んでいます。酒井駒子さんが挿絵を描いているんです。紀元前の話なんですが、原始人が好きなんで。僕もいつか文明以前の小説を書きたいと思っているんです。石器から縄文にいくかいかないかあたりのことを書きたい。でもきちんとした歴史小説は書けないので、ほぼ空想で。

――児童文学は今でもよく読むのですか。

前田:読みますね。『精霊の守り人』のシリーズも読みました。作者の上橋菜穂子さんが文化人類学の人でアボリジニの研究をしているので、そこから入ったんです。あとは絵本をよく読みます。立ち読みでもすぐ読めるので、最後まで読んで気に入ったものを買います。
子供の頃に読んでインパクトがあったな、と思って『ねないこだれだ』をもう1回読んだらすごく面白くて、それで絵本ってすごいぞと思ってまた読むようになったんです。佐野洋子さんとかの日本の有名どころはほとんど読んでいます。酒井駒子さんも好きです。『ロンパーちゃんとふうせん』以外は読んでいなかったのですが、今はもう出ているやつはだいたい読んでいます。
詩に対しての短歌みたいに、小説に対しての絵本なのかなと思う。写真の興味から絵本にいったのかもしれませんね。大学の頃から美術館にも行くようになって、画集も買うようになっていましたから。

――生活のサイクルは不規則だと思うのですが、読書はどんなときに...。

前田:実は不規則じゃないんです(笑)。夜中3時か4時に寝て、12時くらいに起きてご飯を食べて、喫茶店に行って書いて、6時か7時くらいから稽古がある日は稽古に行って、ない日は本屋に行ったり飲みに行ったりして、11時か12時に帰ってきてご飯を食べて、お風呂に入って寝ます。公演が近くなるとサイクルがズレてくるんですけれど。でも公演はあっても連載ものは書かなくちゃいけないし。
読書は寝る前や、あとは電車の中で。疲れているときでも、何かしら漫画や雑誌を読みます。

――今、連載などの執筆はどれほど...。

前田:『SPA!』と『トリッパー』と、「FOIL」のWEBと、『小説宝石』の連載があって、あとはちょいちょいエッセイとかが入ってくる。公演が近いので今はちょっとイッパイです。でも『トリッパー』と『小説宝石』は小説の連載で、書き貯めしてあったので。

――いや、充分に大変そう(笑)。では、今後の刊行予定を教えてください。

前田:今年は8月くらいに『グレート生活アドベンチャー』が文庫になります。

(了)