第169回:深緑野分さん

作家の読書道 第169回:深緑野分さん

デビュー短篇集『オーブランの少女』が話題となり、第二作となる初の長篇『戦場のコックたち』は直木賞と大藪賞の候補になり、注目度が高まる深緑野分さん。その作品世界からも、相当な読書家であったのだろうと思わせる彼女の、読書遍歴とは?

その3「映画もスポーツも絵も好き」 (3/7)

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――読書記録はつけていませんでしたか。

深緑:全然つけなかったです。映画もそうなんですけれど、あんまり記録をとるのは得意じゃないんです。日記がすごく嫌いなんですよ。なので書き溜めることはなく、記憶が残っている状態です。

――では、読書感想文などは好きでしたか。

深緑:てのひら文庫のメダルは何回かもらったことがあります。ちょっとだけ上手な子にメダルがもらえるんですよ。

――「小説家になりたい」と思ったことはなかったんですか。

深緑:なかったです。映画を撮りたいという気持ちのほうが強かったです。『さぶ』が好きだから、自分が『さぶ』を映画化するならこういうふうに撮るっていう絵コンテを切っていましたね。
映画は好きで、ラブストーリーがちょっと苦手なのですが、それ以外はだいたい観るという感じでした。はじめて映画館で観た洋画は『ジュラシック・パーク』でしたね。海老名にワーナーマイカルがあったので、学校帰りにシネコンでよく観ていました。母と待ち合わせして見に行ったり、子供の頃は姉と行ったり。

――お母さんとはかなり、本も映画も趣味が合ったんですね。

深緑:映画マニアは父親のほうだったんですけれど、父親とは合わないところがあるんです。それでめっちゃ議論を戦わせたりしていました。

――好きな監督って誰かいたんですか。

深緑:いちばん好きな映画監督はジャン=ピエール・ジュネです。『アメリ』とかの監督。私は中学の時に『ロスト・チルドレン』に出合って、もう、「これが人生で絶対ナンバーワンだ」って思ったくらいに大好きな映画でした。

――小さい頃は外でも活発に遊んでいたとのことで、中高時代は部活はなにかやらなかったのですか。

深緑:中学の時は陸上部と柔道部をやっていました。陸上は走り高跳びです。私、神奈川県の厚木・愛甲地区で2位だったんですよ。運動は好きなんです。でも走るのはあんまり好きじゃなくて、縦に飛ぶのが好きだったんです。顧問の先生からも「お前は背が低いから、絶対ハードルのほうが向いている」って言われたんですよ。でもハードルは走らなきゃいけないから嫌だなと思って。

――そういえば、すごく足が速いのだとか。

深緑:足が速いのと走るがの好きなのは違うんです。でも競技で走るなら200mとかのほうが好きでした。後半伸びるタイプなので。
高校の時は、ボランティアをやっていたんですね。子供会にジュニアリーダーっていう、ゲームなどをやってくれるお兄さんお姉さんがいるんですけれど、それでちょっと忙しくなっちゃって、運動部は入らずに美術部にいました。

――深緑さんは絵もすごく上手いですよね。ツイッターでよくお見かけします。

深緑:両親が美大だったんです。姉も私も絵は得意だったので、読書感想文よりも読書感想画のほうがうまいこといって、県代表とかになって。

――読書感想画というのがあるんですか。

深緑:あるんです。文か絵かを選べと言われて、文章を書くのがだるかったので絵にして。って、小説を書いている人の台詞とは思えませんよね(笑)。私が描いたのは、『銀河鉄道の夜』の感想絵で、ジョバンニが手前にいて、白鳥があって、サソリの火をバックにして...と、絵の中に印象に残ったシーンなどを大きくして描いたんです。それが県の何かに選ばれて文化会館に飾られていました。

――ところで、海外小説もたくさん読んでいる印象ですが、これまであまり挙がっていませんね。

深緑:そうなんです。中高の頃は国内ものばかり読んでいたんです。そうそう、梅崎春生も読みました。センター試験に梅崎春生が出たんですよ。「赤帯の話」っていう、シベリア抑留で赭所になった日本兵に、ソ連兵が鮭を食べさせてくれるという話で。その短篇がすごくよかったんです。黒パンと酢漬けの玉葱と生の鮭を食べるのが、すごく美味しそうでセンター試験で読みふけってしまって。ちょうどその頃本屋で兄がバイトしていたので、本の手配をしてもらって...。あ、義理の兄ですよ。当時はまだ姉の彼氏だったんですけれど、その後結婚したんですよ。で、その人から梅崎春生の全集を買って読んだんです。

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