第169回:深緑野分さん

作家の読書道 第169回:深緑野分さん

デビュー短篇集『オーブランの少女』が話題となり、第二作となる初の長篇『戦場のコックたち』は直木賞と大藪賞の候補になり、注目度が高まる深緑野分さん。その作品世界からも、相当な読書家であったのだろうと思わせる彼女の、読書遍歴とは?

その5「人のオススメ本を読みまくる」 (5/7)

  • 卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)
  • 『卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)』
    デイヴィッド ベニオフ
    早川書房
    972円(税込)
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  • 暗い鏡の中に (創元推理文庫)
  • 『暗い鏡の中に (創元推理文庫)』
    ヘレン・マクロイ
    東京創元社
    2,498円(税込)
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  • 家蝿とカナリア (創元推理文庫)
  • 『家蝿とカナリア (創元推理文庫)』
    ヘレン・マクロイ
    東京創元社
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  • 幽霊の2/3 (創元推理文庫)
  • 『幽霊の2/3 (創元推理文庫)』
    ヘレン・マクロイ
    東京創元社
    929円(税込)
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  • 殺す者と殺される者 (創元推理文庫)
  • 『殺す者と殺される者 (創元推理文庫)』
    ヘレン・マクロイ
    東京創元社
    929円(税込)
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  • 失踪当時の服装は【新訳版】 (創元推理文庫)
  • 『失踪当時の服装は【新訳版】 (創元推理文庫)』
    ヒラリー・ウォー
    東京創元社
    1,080円(税込)
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  • 独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)
  • 『独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)』
    平山 夢明
    光文社
    648円(税込)
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――深緑さんはデビューされた時には書店員でしたよね。アルバイトの掛け持ちしていた頃からなんですか。

深緑:レンタルビデオ店で働いていたら、異動した先が新店オープンでスタッフをゼロから集めているところで、そこに書店部門ができたんです。スタッフが足りなくなり、本を読んでいるのが私くらいだったので、じゃあ私がやるという話になって、そこから文庫の売り場をやるようになりました。それが25歳くらいからでしょうか。

――ああ、じゃあ書店員の先輩からいろいろ教わって...というわけにはいかなかったんですね。

深緑:ゼロから全部自分でやりました。まあ他に人がいないのですごく好き勝手やって、すごくヘンな売り場を作りました。その頃はもうかなり海外ものを読むようになっていたので、海外小説を充実させたりして。それで、新人賞に応募してデビューが決まったくらいの頃に、書評家の方とか編集者さんとかミステリー研究会の子とかと一気にたくさん知り合いになって「あれ読め、これ読め、これも読め」と面白そうなものを教わって「うわー、なんだ、ひゃっはー、面白い!」みたいな感じで読みました(笑)。『ハマースミスのうじ虫』や『ウサギ料理は殺しの味』とか『ソフィー』とか『美しい足に踏まれて』とか。『食物連鎖』とか『カニバリストの告白』とか『奇妙な人生』とか。マイケル・スレイドとかジャック・カーリイとか...。この頃はじめてポケミスを見て、それで『卵をめぐる祖父の戦争』などを読みました。私の地元ではポケミスは売ってなかったんです。
毎度毎度ハマる作家はいるもので、ヘレン・マクロイにすごくハマりました。『暗い鏡の中に』をはじめて読んだ時にあまりにも怖くてツイッターに「マクロイが怖い」って書いたら書評家の杉江松恋さんに「怖いだろう、でもそれは一人で読むんだよ」とリプライされて、頑張って夜中に一人で読んで本当に怖かった(笑)。で、マクロイは『家蠅とカナリア』だったり『幽霊の2/3』だったり、『殺す者と殺される者』だったり、すごく面白くて。マーガレット・ミラーも『殺す風』とかを読み、そうそう、クリスチアナ・ブランドもちょうどこのあたりで読みました。あと、ヒラリー・ウォー。最初は『事件当夜は雨』を読んで、『失踪当時の服装は』を読み、『この町の誰かが』を読んでからなぜか『ながい眠り』と『愚か者の祈り』を。

――シリーズものも刊行順ではなく、バラバラに読んだということですね。

深緑:ぐちゃぐちゃです。あとはボストン・テランの『音もなく少女は』と『神は銃弾』を読んで。文春文庫の海外ミステリーを読んでいきました。
日本人では、山田風太郎や泡坂妻夫、山尾悠子さん、皆川博子さん、服部まゆみさん、飴村行さん...。飴村さんの『粘膜蜥蜴』、大好きです。平山夢明さんの『独白するユニバーサル横メルカトル』も好きでしたし、初野晴さんとか、久世光彦さんとか。ほかには北村薫さんが編まれたアンソロジー『謎のギャラリー』も好きでした。紀田順一郎さんのアンソロジーの『謎の物語』はブッツァーティの「なにかが起こった」がすごく怖かった。で、リドル・ストーリーにハマっている時には山口雅也さんのアンソロジーの『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎』を読みました。それと、私の大好きなゾンビアンソロジー『死霊たちの宴』というのがあって、最高です。これが復刊しないんですよね。

――深緑さん、わりとホラーとかお好きですよね。映画もホラー系をよくご覧になっている。

深緑:好きです、好きです。すごく怖がりなんですけれど、なぜか好きなんですよね。『アイリッシュ・ヴァンパイア』とか、めちゃくちゃ怖いのに好き。
もし自分が万が一アンソロジーを編むことになったら、私、絶対に「キャデラック砂漠の奥地にて、死霊たちと戯れるの書」を入れます。ランズデールの短編なんですけれど、ゾンビが普通に奴隷化している世界の話です。賞金稼ぎの、ウェスタンハットかぶっている悪い奴と、賞金首でそいつに捕まったちょっとチャラい男がいて、その二人が事件に巻き込まれて逃げるというロードムービーみたいな話なんですけれど、行った先がゾンビを洗脳している新興宗教なんです。ゾンビがディズニーランドのミッキーの帽子をかぶって「イエスの名のもとに」とか唱和させられているんですよ。それを人間の神父とシスターがやらせている。もう最高ですよね。シスターのゾンビのロリ系の女の子が、二丁拳銃が使えたりするんです。超可愛い。続篇があるなら読みたいです!!

――幅広くいろんな作品を読まれていますが、自分が好きなのはこういう作品だな、と感じるところはありますか。

深緑:自分で思い返してみると、たぶん、「奇妙な味」がいちばん好きなんだと思うんですよね。やっぱりどこかしら風変わりなキャラクターだったり、ちょっといびつなものだったりが出てくるものがすごく好きなんですよね。私、『ずっとお城で暮らしてる』のヒロインのメリキャットが大好きなんですよ。彼女は18歳なんですが、自分の中指と薬指が同じ長さをしているから、私はオオカミ女に生まれていたかもしれないと思っている、明らかに年齢とは合っていない幼稚な心を持っている。その子が本当に好きで。
『望楼館追想』『アルヴァとイルヴァ』のエドワード・ケアリーもすごく好きで、それもやっぱりちょっと偏った人間が出てくるんですよね。
ああ、あれ好きです。グラン・ギニョル。好きになったきっかけはたぶん『ブラック・ジャック』なんですよ。手塚治虫の『ブラック・ジャック』はグラン・ギニョル的な要素が非常に多いんですよね。人体切断だったり、やけどした人だったりとか。ブラック・ジャック自身もかなり無茶なことを言うじゃないですか。何千万円要求したりとか。その対価のために人間はどこまで頑張るか、どこまで切り売りするかの話になってくる。その落差が好きだったりするので、なんだろう、独特の正義感があったり、偏っているけれど真っ直ぐなものが好きです。

――そういえば映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に熱狂してましたよね。昨年はツイッターでほぼ毎日マッドマックスのことをつぶやいているのを見てました。

深緑:本当、大好きです。もう、どうしていいか分からない。

――一方で、俳優のサイモン・ペグのことも相当つぶやいてましたよね。イギリスのコメディアン・俳優。これは意外でした。

深緑:彼は、私が男の子だったらこうなりたかったっていうタイプの人なんですよ。すごくオタクだし、着ている服とかも、私が男の子だったら絶対真似しているような服なんです。彼にも偏っているけれど真っ直ぐみたいなところがあって、そこに憧れるんです。ペグがイアン・バンクスの『蜂工場』が好きだと言うから読んだら、私もすごく好きでした。

  • 謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル) (ミステリ・ワールド)
  • 『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル) (ミステリ・ワールド)』
    山口 雅也
    早川書房
    1,836円(税込)
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  • ブラック・ジャック (1) (少年チャンピオン・コミックス)
  • 『ブラック・ジャック (1) (少年チャンピオン・コミックス)』
    手塚 治虫
    秋田書店
    192円(税込)
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  • マッドマックス 怒りのデス・ロード ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]
  • 『マッドマックス 怒りのデス・ロード ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]』
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