評価:★★ 三十歳を過ぎたイラストレーターの主人公は、あまりに不安定な自分の精神状態がPMS(生理の前に身体や精神が不安定になる症状)であると知るのだが……。 細かな描写がリアルで、文章も上手い。小学校の時のエピソードもいいし。 でもね、だから何だ? という読後感。だって話はひたすら主人公がPMSに向かいあうことに終始してるんだもの。この小説は何を伝えたいのかがわからなかった。まさか「いつもと違う時は、誰にでもある」という一文じゃないだろうね。それは……知ってる。 さらさらと読めるんだけど、う〜ん、身体に関する悩みはパーソナルすぎて小説のテーマにするにはちょっとむずかしいんじゃないだろうか。自分も経験したことじゃないと、共感は出来ないからねぇ。
ゆりかごで眠れ 垣根涼介(著) 【中央公論新社】 定価1890円(税込) ISBN-4120037177
まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん(著) 【文藝春秋】 定価1680円(税込) ISBN-4163246703
ミス・ジャッジ 堂場駿一(著) 【実業之日本社】 定価1785円(税込) ISBN-4408534889
評価:★★★★ アメリカのレッドソックスに移籍したピッチャー・橘は、日本で行なわれたヤンキースとの開幕戦で、意外な人物と出会う。それは学生時代の先輩で、肩を壊した天才ピッチャー・竹本。行方知れずだった彼はアメリカで修行を積み、日本人初のメジャーリーグの審判となっていたのだ。十年前の確執を思い出し、不安を覚える橘だったが……。 原因がわからぬままマウンドでの違和感を払拭できず、結果的にチームメイトとの空気も悪くしてしまう橘。なぜ自分が…という気持ちを捨てきれずに、強気なジャッジを繰り返し、批判を浴びる竹本。再会の<ミス・ジャッジ>が二人の男を苦しめる、その人間ドラマがたまらない。ちょっと重い内容ではあるのだけど、プレーオフに向けてチームがまとまっていくあたりは読んでいて楽しいし、試合中の描写も緊張感溢れてて引き込まれる。 そして竹本をたんなる悪役に仕立てないあたりがいい。竹本の心に根ざす深い闇、そして橘のしたたかさがきっちり描かれてるからこそ、この物語は読み応えがある。
トーキョー・プリズン 柳広司(著) 【角川書店】 定価1680円(税込) ISBN-4048736760
イラクサ アリス・マンロー(著) 【新潮社】 定価2520円(税込) ISBN-4105900536
ブダペスト シコ・ブアルキ(著) 【白水社】 定価2100円(税込) ISBN-4560027404
ページをめくれば ゼナ・ヘンダースン(著) 【河出書房新社】 定価1995円(税込) ISBN-4309621880