銀河のワールドカップ 川端裕人 (著) 【集英社】 定価1995円(税込) 2006年4月 ISBN-4087748073
評価:★★★★ サッカーが好きなら、グラウンドに行って、ボールを蹴る。しかも楽しそうに蹴る。これしかない! サッカー界の裾野を広げるとかよく言うけれど、そうか、日本代表の試合だけ観てるようじゃだめなんだ。 失業中の元プロ選手・花島が指導している、小学生のサッカーチームは、上手い子ばかりじゃない。スーパープレイを繰り出す三つ子もいるが、キャプテンの少年や、太りすぎた少女は、三つ子から格下に見られている。このサッカー小説は、ものすごく間口が広い。 サッカーが好きな子どものすべてに光を当てているから、下手な人も希望を持って読める。草サッカーの子どもたちと、世界名門チームの選手が、一緒に違和感なく動く場面では、「楽しさ」を計る単位は万国共通なんだなあとうれしくなった。 読後には、本気でサッカーをやりたくなるはずである。しばらくすると、楽しくなって上手くなる。やがて、サッカーの裾野が広がる。そして、ファンタジスタの誕生! そんなことが起こりそうな本である。
配達あかずきん 大崎梢 (著) 【東京創元社】 定価1575円(税込) 2006年5月 ISBN-4488017266
鴨川ホルモー 万城目学 (著) 【産業編集センター】 定価1260円(税込) 2006年4月 ISBN-4916199820
柳生雨月抄 荒山徹 (著) 【新潮社】 定価1890円(税込) 2006年4月 ISBN-4104607029
評価:★★★★ 日本と朝鮮との歴史的つながりと、柳生一族のスピリットという土台が、その上に出来上がった物語のスケールを大きくしている連作短編集だった。 柳生友景は、柳生新陰流の剣士であり、陰陽師でもある。日本を滅ぼそうとする朝鮮の妖術師と戦う、クール・ビューティーな奴なのだ。男だけど。中でも情趣を感じたのは、若狭の高浜に朝鮮からの漂流船が現れ、流れ着いた女が、自分のことを淀君だと名乗る「柳生逆風ノ太刀」。妖術師の陰謀がからんでいるのだが、なぜ淀君が家康の国替え要求を拒否したのか、つじつまが合っているだけでなく、著者が創り出したストーリーが、とても情に訴えてくる。また、柳生の血をひく朝鮮の剣士との戦いを描いた最後の2編では、霊的なエピソードが、歴史と創作の隙間をうまく接合させているように思った。 それはそうと、登場人物のネーミングにも注目である。なんと、安兜冽(アンドレ)、そして呉淑鞨(オスカル)という名の女剣士が登場するのだ。えっ、ベルばら? ロマンチックな要素も加味されて、そういう意味でもスケールが大きい。
主婦と恋愛 藤野千夜 (著) 【小学館】 定価1575円(税込) 2006年6月 ISBN-4093797374
空高く チャンネ・リー (著) 【新潮社】 定価2520円(税込) 2006年5月 ISBN-4105900544
果樹園 ラリイ・ワトスン (著) 【ランダムハウス講談社】 定価2310円(税込) 2006年5月 ISBN-4270001259
わたしを離さないで カズオ・イシグロ (著) 【早川書房】 定価1890円(税込) 2006年4月 ISBN-4152087196