WEB本の雑誌>今月の新刊採点>【単行本班】2007年10月の課題図書>『ロック・ラモーラの優雅なたくらみ』 スコット・リンチ(著)
評価:
活字の洪水に押し流されそうになりながら読み進めていくと、だんだんと物語の舞台が、登場人物たちが、想像のスクリーンに現れて活き活きと動き出す。そうだ、これは映画の世界に近いのだと気づく。(実際、映画化されるらしい。そのくらいスペクタクル)
中〜近世ヨーロッパと思われる水上都市で、天才詐欺師とその仲間たちが、街を牛耳る闇の支配者に立ち向かうという内容。だがストーリーはそんな単純ではなく、騙し騙されのコンゲームが張り巡らされているから、グイグイとのめり込んでしまうのだ。
RPGやハリウッドの超娯楽作、ジャパニメーションや香港の義兄弟任侠映画といった、あらゆる「おいしい要素」が凝縮されている。読ませ方でも、アメリカのハードボイルドを彷彿させるクールなセリフのやりとりや、章の合間にエピソードを挿入するなど、楽しませどころが満載、極上のエンターテインメントに仕上がっている。
評価:
表紙やタイトルからしてもう少しライトノベル的な内容を想像していたのですが割りと人がパタパタ死んでしまうやや重めの内容だったのでギャップに驚きました。
天才詐欺師ロック・ラモーラが仕掛ける貴族相手の詐欺ゲームと、同時期に起こる街の闇世界の争いが絡み合うって話です。その合間合間に補足的な昔の話、ロックの見習いの頃の話、が入るんですけどこの構造が始めの頃よくわからなくて混乱しました。もう少しわかりやすい組み方なら読みやすいだろうに。あと、天才詐欺師という割にはロックが天才に見えない……。
しかし、錬金術といった魔法世界と中世イタリア世界がミックスされた不思議な街という舞台設定が素敵です。ファンタジーが好きな人にはいいかも。
評価:
著者は小説家志望者のフリーターだったのだけれど、ウェブ上で発表していた作品が大手出版社の編集者の目に留まり出版が決定し、デビュー作である本書が世界15ヶ国で出版され、映画化も決定……って、実に羨ましいシンデレラストーリーですな。私もそんな体験してみたい。ウェブ上に小説発表してないけど。
で、肝心の内容。
うん、おもしろい。キャラクターもストーリーもしっかりしていて、ファンタジーに苦手意識のある私も途中から引き込まれたし、合間に挟まれる過去エピソードで登場人物への感情移入もしやすい。
ただ、序盤がきっつい。挫折する人、結構いるのではなかろうか。かくいう私も一度挫折してしまった。六百ページ弱で二段組みの大長編なのだから、序盤でもっともっと引っ張ってほしかった。原因はストーリーだけでなく訳文の硬さにもあると思う。造語を無理に日本語にしたり、常用外の漢字を使ったりしなくても良かったのでは?
ところで、著者はゲーマーであり、主人公の名「ロック」はファイナルファンタジーYへのオマージュだそうだ。なるほど。言われてみれば、泥棒つながりですね。
評価:
ロック・ラモーラに萌えた〜。読む前から表紙のイラスト(こういうラノベっぽい感じを嫌う人も多いかと思うが)ですでにノックアウトされました。天才詐欺師ロックについて、「神々がわざと人の目にとまらないようにかたちづくったのだろう、と思わせる」平凡な外見だという描写があるが、だとすればこの表紙絵はかっこよ過ぎ!
とはいえ、内容はなかなかにハードである。解説によればシリーズは今後6作続く構想とのことだが、重要と思われた登場人物が「え、この人も?この人も?」という感じでどんどん死んでいく。著者は筋金入りのゲーマーだそうで、なるほどロールプレイングゲームっぽいストーリー展開のようだ。
ロックと恋人サベーサの関係もすごく気になる。サベーサは本書では回想シーンにすら登場せず。この思い切った引き、天才詐欺師並みかも。
評価:
美しい水の都カモールが舞台の長編ファンタジィ。表の政治を司る公爵と、裏の社会をしきる人物がいる、という設定が面白く好きです。詐欺主集団が暗躍するというストーリーと繰り返される殺人という内容がこの物語だと非現実的で、シンプルにエンターテイメントとして楽しめました。登場人物もかなり多いですが、それぞれに個性があり、それも楽しめます。気分を切り替えたいときに、お薦めです。
私は、現実として没頭できる型のほうが好きなので、我儘を言うと少し物足りなかったです。
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