『新帝都物語 維新国生み篇』

新帝都物語 維新国生み篇
  • 荒俣宏(著)
  • 角川書店
  • 税込2,520円
  • 2007年6月
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  1. インシテミル
  2. ピカルディーの三度
  3. サクリファイス
  4. 海に帰る日
  5. すべては消えゆくのだから
  6. ロック・ラモーラの優雅なたくらみ
  7. 新帝都物語 維新国生み篇
佐々木克雄

評価:星4つ

 博識巨人、荒俣センセの想像力って、どこまで行ってしまうのでしょう?
 ブ厚い本を閉じたあと思わずそう呟いてしまう。相変わらず凄いです、帝都シリーズ。
 舞台は戊辰戦争の会津から箱館、登場するは新選組の土方歳三、学者の平田銕胤、鬼人怪人加藤重兵衛などなど。国を生む尺をめぐって彼らが死闘を繰り広げる、史実とフィクションがチャンプルーの壮大(って言葉も超えてしまいそう)なストーリーに釘付け。
 司馬遼太郎の歴史浪漫に陶酔した人、山田風太郎の奇想天外譚を堪能できる人なら、この作品は必読、でもって満足感は得られるはず。なんせ時代設定は維新時だけど、神話の世界から古代東北史やフリーメイソン、お馴染みの平将門まで「へぇ」な話が満載、それが当たり前のようにストーリーにはまっているのだから。
 でも三角関数が長々と講釈されるシーン、数学赤点だった身には辛かったス。

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下久保玉美

評価:星3つ

 実は『帝都物語』も『帝都幻談』も読んだことがなくて。あと映画も見てません。だから魔人加藤という人が怨霊を出して帝都転覆〜とか加藤の役は嶋田久作だなという断片的な知識はあるのですが実際、加藤が何者なのかよく知らないし、周辺の事情もよくわかりません。もしそれらを読んでいたら本書はもっと面白かったかも。その辺で読者が限定されてしまうのでは。
 しかし、陰陽師とか伝説の神器みたいなネタは大好きなのでその辺は楽しく読めました。でも、本書に出てくる尺による国生みの方法って岡野玲子の『陰陽師』とかにも出てて、割と知っているものが多かったので目新しさには欠けるように思いました。もう少しびっくりするようなネタがあればなお面白かったのに。

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増住雄大

評価:星3つ

 「ベストセラー」と聞くとそれだけで鼻白んだり敬遠したりしてしまうのは、平均よりちょっと多く本を読む人によくある気質だと思う。今は極力何でも読むようにしているが、以前は私もそうだった。だから一昔前のベストセラーは未読の作品も多い。
「新」が付かない「帝都物語」シリーズは「500万部突破の大ベストセラー」だそうだ。けれども前述の理由から、恥ずかしながら私は読んだことがない。なので、この評は「帝都物語」に初めて向かい合う読者によるものである。その点、ご容赦いただきたい。
 おもしろいじゃないか。それが最初に抱いた感想である(ファンの方に怒られそうだ)。フィクションでありながら、史実や実在の人物を絶妙に物語に絡めていて、それが著者の膨大な知識や薀蓄とあいまって壮大な世界を生んでいる。加藤と土方の戦いは手に汗握る。シリーズのファンはもちろん、「帝都物語」を知らない方も、七百ページという厚さに尻込みせず、ぜひとも読んでいただきたい快作である。

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松井ゆかり

評価:星3つ

 荒俣先生……筆が進まれたのですね、こんなに長い話になって……電車の中で読もうと思って鞄に入れたことを後悔しました。
 さて、私などの年代の者にとっては、“「帝都物語」といえば嶋田久作”というくらいあの映画の強烈なビジュアルが脳裏にこびりついているのではないかと思う。観てないですけど(ポスターだけでも十分すぎるインパクト)。本書を読み進めるにあたっても、登場人物の顔がすべて嶋久の顔に変換されて困った。土方歳三も嶋久、斎藤一も嶋久、平田篤胤の亡霊もその娘おちょう(女だけど)もみんな嶋久。嶋久の呪縛。
 そんな私の脳内イメージはどうでもいいのだが、この小説世界では日本はすごいところになっている。伝奇小説好きにはたまらないだろう。壮大なるイメージの奔流に身を投じるのが正解。

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望月香子

評価:星3つ

 会津若松の古寺の寺宝である物差「瑠璃尺」は、古から伝わる「国生み」のための伝説の神器。その「瑠璃尺」を使い、新たな幕府が…。新撰組の土方歳三も登場し、繰り広げられる幕末の日本を舞台にした物語。妖術を操る土方歳三の敵・加藤重兵衛保憲など、設定と物語の壮大さ、それだけでなんだか爽快感を感じてしまいます。
 妖術の魅力を練りこんで、幕末の争いを描いたこの物語は、まるで映画を観ているように映像が頭の中に浮かんできてしまうほど。726ページという厚さなのに、一気に読んでしまいました。ぜひ、映画化をして欲しいです!

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