『愛がなくても喰ってゆけます。』よしながふみ

●今回の書評担当者●丸善お茶の水店 勝間準

  • 愛がなくても喰ってゆけます。
  • 『愛がなくても喰ってゆけます。』
    よしなが ふみ
    太田出版
    968円(税込)
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 はじめまして、今回からこちらでお世話になる勝間です。

 プロフィールに書きましたが食べものに関する本が大好きで、とくに食漫画は一日一冊読み、さらには行儀が悪いと言われそうですが小さいころからの癖でご飯の時は必ず食漫画を読みながら食べています。

 そんな僕が一回目に何を紹介するか悩みに悩んで決めた本がこちら。

 自分のバイブルである『美味しんぼ』や『ミスター味っ子』!!といきたかったのですが、流石にこれらを紹介すると原稿用紙何枚分になんねん!!となるので今回はパス。

 それでは改めて今回本当におすすめしたいのは、僕がめちゃくちゃ好きな食い物コミックエッセイ。よしながふみさんの『愛がなくても喰ってゆけます。』。
 コロナが落ち着いたら皆で美味しいものが食べたいと思っている人は必ず読んでほしい一冊。

 よしながさんおすすめの東京うまい店ガイド、出版されたのが2005年なので残念ながら閉店しているも店も多い。それでも作中で美味しそうに食べているのを見たら、まだ営業している店を探し出し行きたくなること間違いなし。

 その中で皆さんに是非とも食べにいって欲しいお店は五つ目の話に登場する「北島亭」。ここは出てくる料理が本当に全部美味しい。

 僕はこの本を読んでどうしてもここの料理が食べたくなり、当時付き合い始めたばかりの妻と食べに行った。僕らは作中のよしながさんの倍ぐらいの料理を食べ、お金も倍払い、そして帰り道で妻が食べ過ぎで動けなくなってしまった。

 10年ほど前の話だけど「北島亭」で食べた料理の数々、今思い出しても涎がでるし、お腹がはちきれるまで食べたのは初めての体験だった。

 もっといろいろと美味しいところを紹介したかったのですがそろそろお時間、いや文字数の限界のようですので、あと一品だけお付き合いください。

 この作品で一番の名言は「にくづきにうまいと書いて「脂」と読む」だと僕は思う。

 これはウナギを食べに行く話で登場したのだが、このページを初めて読んだ時は口の中が「う・な・ぎ食べたい」となった。

 当時の僕ですが、うなぎは喰わず嫌いでうなぎと言えばうなぎのたれの味ぐらいしか知らず、うなぎの味を知らなかった。けれど、これを機会にこのうにょうにょした魚に挑戦し、その美味しさに目覚めたわけである。おかげで今はうなぎ大好き人間になってしまった。

 僕はこの本のおかげで妻と結婚でき(たのかもしれない)、さらにはうなぎ嫌いがなおったと良いことづくし。

 そんなこのコミックエッセイが気になったら、それはきっと食べごろ......ではなく読みごろです。
 遠慮なしにお召し上がりくださいな。

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丸善お茶の水店 勝間準
丸善お茶の水店 勝間準
1981年大阪市内の中華料理屋の息子として生まれる。新卒時に入社したスーパーを辞めた後なんとなく働き始めた書店で本を読む楽しさ、売る楽しさを知る。コミックエッセイ、食マンガ、食小説、食エッセイ大好き書店員。生まれて初めて買った本は『ミスター味っ子』。この機会に美味しい本を紹介したいです。それではいただきます!!