●担当者●八重洲ブックセンター八重洲本店 内田俊明

2017年4月13日更新

『雑誌倶楽部』出久根達郎

 これまで、おもに過去の日本の小説について書いてきたが、今回はちょっと毛色の違う本を。古書店主にして直木賞作家の出久根達郎が「月刊ジェイ・ノベル」に連載していた『雑誌倶楽部』(実業之日本社)である。明... 記事を見る »
2017年3月9日更新

『我らがパラダイス』林真理子

 主人公は3人のオバサン、邦子と朝子とさつき。3人とも介護が必要な親がいるが、それぞれ家庭に問題を抱えており、満足に親の面倒をみてやれていない。そんな日々を過ごすうち、3人はふとした縁から、広尾にある... 記事を見る »
2017年2月9日更新

『少将滋幹の母』谷崎潤一郎

 ことしの元日から、朝日新聞の朝刊の連載小説で、吉田修一「国宝」がはじまった。長崎のやくざ組長の家に生まれた少年・喜久雄の物語。まだ序盤だが、ですます三人称という、最近の小説ではついぞ見られない表記と... 記事を見る »
2017年1月12日更新

『避暑地の猫』宮本輝

 高校時代、文庫で「泥の河」と「螢川」を読んで以来、宮本輝は大好きな作家だった。ちょうど『青が散る』がドラマ化され、人気が高まっていった頃である。次から次へと宮本作品を読み続けたが、中でも『避暑地の猫... 記事を見る »
2016年12月8日更新

『明智小五郎事件簿 7  吸血鬼』江戸川乱歩

 著作権切れにともなって、各社から続々と出版されている江戸川乱歩作品。中でも集英社文庫の「明智小五郎事件簿」というシリーズは、名探偵・明智小五郎が登場する事件を、作品中の描写から推定して、年代順に並べ... 記事を見る »
2016年11月10日更新

『春は馬車に乗って』横光利一

 妻の死を目前にした若い夫婦は、何を考えるのか。その姿を正面から描いたふたつの文芸作品を、読み比べてみた。  多彩な作品をのこした横光利一の、もっとも読みやすく情緒的な一編が「春は馬車に乗って」である... 記事を見る »
2016年10月13日更新

『恩讐の彼方に 忠直卿行状記』菊池寛

 私がいちばん小説を読んでいたのは高校生のときだが、もっぱら文庫は新潮、角川を買っていて、なぜか岩波は敬遠していた。岩波文庫は、たとえば日本の古典だと訳がついてなくて校注だけだったり、他社にほとんどな... 記事を見る »
2016年9月8日更新

『絹の変容』篠田節子

 映画『シン・ゴジラ』が大ヒットしている。私も封切直後に観て、凄いと思った。畏怖すべきゴジラの圧倒的な存在感、緻密に作り上げられた迫力ある映像、政府・自衛隊の対応のリアルさなど、見所が満載なのだが、と... 記事を見る »
2016年8月11日更新

『五重塔』幸田露伴

 幸田露伴『五重塔』岩波文庫版には、桶谷秀昭氏の解説がついている。冒頭部分はこうである。 「幸田露伴は、明治二十二年から二十四年にかけて、求心的な文体をつよめていって、そういう求心性のつよい文体と釣り... 記事を見る »
2016年7月14日更新

『辺にこそ 死なめ』松山善三

 太平洋戦争末期。特攻隊員の野波国弘は、出撃を前に、故郷の岩手へ5日間の帰郷を命じられる。いぶかしく思いながらも自宅へ着いた国弘に、絶対的家長である祖母のノブは、この5日の間に幼なじみのりんと結婚して... 記事を見る »
2016年6月9日更新

『女坂』円地文子

 明治初期。栃木県庁で大書記官という要職を務める白川行友は、妻の白川倫(とも)を東京に向かわせる。若い女性を、表向き小間使い、実は愛人として邸に迎えるためである。 正妻に、同居する愛人を探させるという... 記事を見る »
2016年5月12日更新

『女体についての八篇 晩菊』石川淳

「敬して遠ざける」という、便利な言葉がある。おもてむきには、あまりに尊敬すべきものには近づいてはいかんという、一見とてつもない敬意を払っているような意味だが、じっさいは「近寄りたくないから敬遠していま... 記事を見る »
八重洲ブックセンター八重洲本店 内田俊明
八重洲ブックセンター八重洲本店 内田俊明
JR東京駅、八重洲南口から徒歩3分のお店です。5階で文芸書を担当しています。大学時代がバブル期とぴったり重なりますが、たまーに異様に時給 のいいアルバイトが回ってきた(住宅地図と住民の名前を確認してまわって2000円、出版社に送られた報奨券を切りそろえて1000円、など)以 外は、いい思いをした記憶がありません。1991年から当社に勤めています。文芸好きに愛される売場づくりを模索中です。かつて映画マニアだった ので、20世紀の映画はかなり観ているつもりです。1969年生まれ。島根県奥出雲町出身。