『愛を伝える5つの方法』ゲーリー・チャップマン

●今回の書評担当者●田村書店吹田さんくす店 渡部彩翔

  • 愛を伝える5つの方法
  • 『愛を伝える5つの方法』
    ゲーリー チャップマン,ディフォーレスト 千恵
    いのちのことば社
    1,760円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HMV&BOOKS

「愛してる」という言葉は「好き」の気持ちがどれだけ育ったら言えるんだろう。
どうすれば「好き」という気持ちは「愛」に変わっていくんだろう。
長年疑問に思っていたことの答えがこの本にありました。

愛する二人が生涯を共にして幸せになることが結婚。
そんな理想に反して、現実には幸せそうな夫婦なんてなかなか見つからない。
「長続きの秘訣は辛抱・我慢・妥協だ」と聞かされてきた。
結婚という過酷な挑戦に対して、かけられる言葉は『末永くお幸せに』。
そして二人は直面する。
顔つきひとつで妻を傷つけ、言葉ひとつで夫をたたきのめす。
些細なことで揉める度に相手の愛を疑い、自分の心の狭さにがっかりする。
大好きなのに、いつの間にか相手の気持ちがわからない。
どれだけ愛情を表現しても、想いはすれ違うばかり。
もうこうなってしまうと、好きかどうかもわからない。
こんな二人に愛が育つことはないのでしょうか。愛とは何なのでしょうか。

大切な人に愛情を伝えるとき、あなたは何をしていますか?

1992年に出版されて以降、世界各国で翻訳されて大ベストセラーとなった本書。
著者のゲーリー・チャップマンは、多くの夫婦関係や家族関係の改善に携わってきた有名なカウンセラーです。

この本の凄いところは、読むと自分と相手が「どのような愛情を求めているのか」「どのように愛情を表現しているのか」が、はっきりと分かるところです。
だから、すれ違いの原因が特定しやすく改善しやすい。
自分の想い・愛を確実に伝える方法が学べます。

本書で語られる大切なポイントは、『人には愛の第一言語(=愛情を感じる方法)がある』ということです。
お互いに第一言語が違うと、日本語とロシア語で語り合っているようなもの。
ひとたびすれ違いが生じると、どれだけ時間をかけて話し合っても、そもそも言語が違うので二人の関係は良くならない。
その結果「価値観の違いだから仕方がない」と諦めるしかなくなります。

でも大丈夫!
素敵なあなたが選んだパートナーは、最高で素敵な人に違いない!
相手を知ろうとする気持ちさえあれば、今からでも十分に愛へと育つ芽になります。
相手の言語を学び、その方法で愛を伝えるだけで、相手の態度や行動に大きな変化が起こるはず。
自分自身も他人を心から愛する充実感に満たされます。
著者が示す愛の言語は全部で5種類。とてもシンプルで理解しやすいです。
とにかく、読んだら目から鱗がポロリポロリ。

愛情を感じる方法が違うというのは、よく考えれば当たり前のことかもしれません。
生まれ育った環境も違えば、出会ってきた人も違う。
価値観や考え方は違って当然で、だからこそ自分とは違う相手を尊敬し、その魅力に惹かれるのでしょう。

思いやりと気遣い、そして謙遜という文化の深い日本人にこそ、この本はとても助けになると思います。
この本の力を借りることで自然に自分の思いを伝えやすくなるはずです。

「恋はするものではなく落ちるもの」という言葉のとおり、人を好きになるのに努力はいりません。
でも、愛することは自分の意思による選択です。
選択を積み重ねて、恋する気持ちが自然の経過で消えて無くなったその先に、真実の愛が生まれてくる。
著者の言葉に、私の長年の疑問が晴れました。

本の最後には確認テストもついているので、自分の愛の第一言語を簡単に知ることができます。
私は自分が親から貰えなかったものを欲しているということにも気づき、自分の内面とも向き合うきっかけになりました。

この本はもっと若いときに知りたかった。
でも、出会うべき時に出会うものですね。

興味深いのは、読むその時々の自分の状況によって、自分の第一言語が変わることです。
ずっと手元に置いて何度も読み返したい大切な一冊です。

« 前のページ | 次のページ »

田村書店吹田さんくす店 渡部彩翔
田村書店吹田さんくす店 渡部彩翔
田村書店吹田さんくす店に勤務して3年弱。主に実用書・学参の担当です。夫と読書をこよなく愛しています。結婚後、夫について渡米。英語漬けの2年を経て、日本の活字に飢えに飢えてこれまで以上に本が大好きになりました。小さい頃から、「ロッタちゃん」や「おおきな木」といった海外作家さんの本を読むのが好きです。今年の本屋大賞では『存在のすべてを』で泣きすぎて嗚咽しました。