第4回 自己紹介をかねて~半田健人のギターの思い出④ 萩原健一さん、平尾昌晃さんとの思い出
自分と自分の音楽に似合うギターが買う基準
――これから、ゲストの「ギターの思い出」を半田さんがたずねていかれるのが楽しみです。
本当に人の数だけギターの思い出はあって、一人一人違うんですよね。例えばあるバンドのギタリストがギターを語る時に、そのバンドの音楽に興味がなくても、ギターの思い出の話にはすごく興味が湧くんです。だから、その人が作り出す音楽とギターの思い出話というのはまた味が違うんですよね。別腹です。僕はビートルズに全く興味ないけど、ビートルズマニアのギターにまつわる話は好きかもしれない。やっぱりギターが好きで、音楽のジャンルを超えてギターが好きなんですね。
――今はどんなギターに惹かれますか?
僕が楽器屋にプラプラって行って、どういう思いでギターを眺めてるかっていうと、自分に合うギターを探してるんです。人前に出る仕事をやってますから、いざとなればライブで使えるものを、という気持ちもありますけど、自分用のものをやっぱり常に探すんですよ。安いギターから高いギターまで、脳内でイメージします。持った自分の姿。あとこれで何を弾くのか。ギター単体としての魅力はあっても、自分のやってるようなジャンルは合わないよなと思えばパス。見ため的に美しくてもね。例えばレスポールは自分が持つギターじゃないし、自分のやる音楽で使うギターじゃないのはもうはっきりわかってる。実は金成さんがレスポールだったってわかれば、考えが変わるかもしれないんけど。レスポールというギターはまだ自分には必要のないギター。だってあのギターを持ってるイメージ湧かないもんね。あれは専門家のギターだから。
今になって身に染みたショーケンさんの言葉
――レスポールに特別なイメージがおありなんですね。
ショーケン(萩原健一)さんに誘っていただいてね。昔、一緒にギブソンのショールームに行ったことがあるんですよ。ショーケンさんはやたらとレスポールジュニアとかレスポールスペシャルを今度のライブで使いたいって言って、そういうちょっとそのギブソンの中では格下のモデルばっかり選ぶんですよ。で、「いや、ショーケンさんであれば、このぐらい(高級機種)のギターをお持ちになってもいいんじゃないですかね」みたいなことを提案すると、「これは専門家のギターです」「これを持ったら何か弾かないと怒られますでしょ」みたいにおっしゃるわけです。その時は「スターだから持ってくださいよ」って気でいたけど、ショーケンさんの言ってたことが最近、すごく身に染みて分かりますよ。そう、ショーケンさん、正しい。
――どういうことですか?
スペシャルとかジュニアはコードをジャカジャカやるとか、下手したら弾かなくてもいい。ファッションで肩からかけてるだけもアリだけど、レスポールはまさに専門家のギターですよ、あれを持ってコードだけでは......もう恥ずかしい(笑)。ちゃんとリードも取って、しかもそれなりに上手い人じゃないとダメですね。そこがやっぱりレスポールというギターの敷居の高さ。だからいいギターなんです、きっとね。
――ショーケンさんも半田さんも敬意を表してるんですね、レスポールに。
そうだと思いますね。だからレスポールが嫌いなわけじゃなくて、レスポールに立ち向かうんであれば、もうちょっと練習してから行けよってところです。ギリギリ持ててデラックスかな。レスポールデラックスというのはピックアップはミニハムでちょっと安っぽいんですよ。トラ目もないし。あれならギリOKかなって感じです。ご好意で人から「お前にこれを使ってほしいんだ」って思いで譲り受ける高級ギターはいいんです。なぜならば、その人が判断して僕にくれているわけだから。だけど、自分で探して自分が手に取るものは、やはりある程度釣り合いの取れてるものを持ちたいっていう思いはあります。逆に買ったからには釣り合いが取れるようにならなきゃいけないなっていうのもありますね。でも、この年になるとあんまりうまくならないんですよ(笑)。根性がいるの。中学生の時は本当アホみたいに長時間弾いてた。他にすることもなかったですから。だけど大人になると、夢中で練習できなくなるから、そうなってくると上達の範囲も限られてくると。そしたら、その辺のバランス、釣り合いって大事だなと思いますよね。
半田健人の「(恐怖の)ギターの思い出」
このままだと僕のギター自叙伝みたいなコラムで終わりそうなので、ちゃんとした「ギターの思い出」を話しますね。あれは今から二十年近く前に起きた恐怖体験です(笑)。
――恐怖体験ですか!?
25歳くらいの頃だったかな、日本テレビの昼の番組でコーナーレギュラーをやってたんですよ。生放送でロケ物なんですが歌謡界の歌手の方と当時の思い出の地を訪れてお話を伺うんです。事件が起きた回のゲストは作曲家の平尾昌晃先生でね、銀座にあった「白いバラ」という古いキャバレーのステージを使って生歌を披露して頂くことになった。そこで番組のディレクターが演出で僕に、先生の後ろでギターを弾いてる'フリ'をしてくれって言うの。いわゆる当て振りってやつです。なら問題ないやということで、当日ギターを持って行き......、あ、この時はKAYというメーカーの50年代の古いフルアコをわざわざ知り合いの楽器屋から借りてきたんですよ。「監獄ロック」を演られるというのでその時代に存在したモデルをと思ってね(笑)。で、リハーサルをしてたんだけど、完全な当て振りじゃなくて一応ラインでミキサー宅に音を送って現場では音を出しながら演ってたら、平尾先生が「なんだぁ、ちゃんと弾けるじゃん! じゃあ本番ソロ取ってよ」とおっしゃって......。先生のリクエストをお断りする選択肢は僕にはなかったので(笑)。その段取りで本番を迎えることになりました。そしていざ本番。トークブロックを終えて一同ステージに上がり監獄ロックがスタートしました。すると...リハーサルでは鳴っていたはずの僕のギターの音が聴こえない!
――ええ! ボリュームを絞っていたとかではなく?
ええ。ギター側には問題はありませんでした。しかし生放送でもう曲が始まってしまってます。こう言う場合にタレントの裁量が試されますよね......(笑)。一番ダメなのが主役じゃない僕が自分の都合で演奏をやり直させること。なので問題ないふりを続けるしかなかった。歌中は先生にカメラが行っているからしのげたんですが、いよいよソロパートが回ってきました......。相変わらず音は一切聴こえてこない。これね、いっそ放送上も音が出てないなら良いんです。音声ミスだなと思われて終わるから。一番怖いのが放送には音が乗っているがこちら側だけ音を聴けていないというパターンです。でも、一か八かでやりました。幸い、「監獄ロック」は3コードブルースだったので目視のみでB♭のマイナーペンタトニックスケールを弾いて走り切りました(笑)。それで生放送が終わってすぐにテレビを観てくれていた友達に電話して「僕のソロ、どうなってた?!」って聞いたら、「普通に弾けてたよ」って......。ホッとすると同時にやっぱ放送には音乗ってるじゃん!って2回汗をかきましたね(笑)。
――それは忘れられない「ギター思い出」というか、ある意味貴重な体験でしたね。
しなくていい体験ですよ(笑)。でも今考えると平尾昌晃先生の後ろでギターを弾かせて頂けた経験は宝物です。平尾先生ってものすごく優しくて楽しい方なんです。お仕事ではご一緒できなかった年も毎年年末にはお電話でご挨拶させて頂いていたんですが、必ず出てくださってね。
人もギターもいつどういう出会いがあるかわからないのがおもしろい
――最近、お母さまに言われて納得した言葉がおありとか。
ええ。最近母が「あなたは自分の憧れてる人に会うために芸能界に行ったんだね」って言ったんです。そう言われたら、都倉俊一さん、阿久悠さん、ショーケンさん、会いたかった人にほとんど会ってる。幼い頃から憧れて憧れて憧れ抜いた人に会えているんです。多分僕が「今度何々という番組に出るよ」じゃなくて、「この前、誰々さんと会ってさ」ということをすごく嬉しそうに言ってきたのを見てきた積み重ねで思ったんだと思うけど、なるほどそうだったのかあと思って。僕は憧れの人との出会いを求めてきた人生かもしれないですね。そしてその多くにはギターや音楽が強くかかわっているんです。
――最後に、連載開始への意気込みを。
やっぱりギターというのは出会いなんですよね。いつどういう出会いがあるかわからないから、ワクワクするし、これからも僕はギターと共にあると思う。人との出会いと同じで。あと、最後に言いたいのは、ギターは「そこにあること」が一番大事ということです。弾かなくても、自分と同じ空間にあることが大事。寺内タケシさんは、「ギターは弾かなきゃ音が出ない」という名言を残されてるんですけど、僕の場合は「ギターは弾かなくても存在意義はある」と思ってて。もちろん弾くこともあるけど、最悪弾かなくても弾けなくてもいいんです。視界に入れることも大事だと思っているから、うちでは何部屋かに分けてほぼ全部出してスタンドに立ててます。意識の中からギターが消える日はないように。
ギターが好きということに関しては、多分芸能界でもトップクラスなんじゃないかなと自負してます。詳しさでは上には上がいると思うんだけど、好きっていうものは数値化できないので。僕の場合は別に仕事道具でもなくて、別に取り上げられたからって途端に困るわけじゃない分、愛が深いんじゃないかなと思ってます。これからゲストの方々とギターとともにその方の生きてきた思い出を伺えることを楽しみにしています。
【近日開催のイベント】
- 9月6日(日)18:30~ 「だんだん好きになっていきましょう 」(中延・隣町珈琲)
- 9月20日(日)12:00~、10月17日(土)12:00~ 「仮面ライダー555 ファイズリマインド」vol.30(お茶の水・ワテラスコモンホール)
※詳細は半田健人公式X(@handakento)をご確認ください。

