第26回 反ディープステート団体「神真都Q」が移住した「コロニー」にお邪魔してきました(前編)

 

Sさんとの出会いによって自然豊かな地に移住し始める

 美しい海岸線に険しい山々、そんな雄大な自然がいたるところに残るX市。歴史を感じる建造物や遺跡も点在する、この街には国内外から多くの観光客が訪れています。

 ......と言われても、具体的な情報がなにひとつないからイメージがまったく浮かばないよ、という文句が聞こえてきそうですが、これは「トラブル防止」のためですので、何卒ご理解ください。

 コロナ禍に「反ワクチン団体」として大きく報道された「神真都Q」のメンバーが移住した地域を具体的に説明してしまうと、YouTuberや好奇心旺盛な野次馬が現地に殺到する恐れがあります。そうなれば、「神真都Q」の皆さんの日常が脅かされるのはもちろん、近隣住民にまでご迷惑をかけてしまうかもしれません。そこで、今回は場所の特定につながる情報はすべて伏せて、関係者の素性や名前もぼやかすということにしました。とにかく、舞台は「自然な豊かなエリア」だと思ってください。

 

 そんなX市内のZ地区に「神真都Q」のメンバーが本格的に移住を始めたのは2025年秋、私が村井大介代表にインタビューをしてからしばらく後のことでした。

 もともと山深くて過疎化が進んでいたエリアで空き家がたくさんあったことで、それをメンバーが購入して転居してきたのです。「神真都Q」によれば、そのような移住者は今は総勢で20人ほどにもなっているそうです。

 では、日本各地にさまざまな移住先候補がある中で、彼らはなぜこのZ地区に住むことになったのでしょうか。

 それには、Sさんというひとりの男性との「出会い」がありました。Z地区出身のSさんは現在70代で市内で複数の飲食店を経営しています。その中で現在は閉店してしまいましたがZ地区で、おしゃれなギャラリーカフェを経営していたことがあり、そこにある日、村井氏と神真都Qのメンバーが客として、たまたまやってきたというのです。当時のことをSさんはこう振り返ります。

「最初に甲兄さん(村井大介代表のニックネーム)をひと目見た時から"ああ、この人は普通の人ではないな"とすぐにわかりましたよ。私もいろんな人生経験をしてきて、ちょっと口ではうまく説明できない力があるんで、そういう人のことはすぐに見抜ける。だからすぐに意気投合しましたよ」

 実はSさんは飲食店経営のかたわらで、「口ではうまく説明できない力」を活かして、心身の不調に悩む人々を癒す活動にも力を入れている御仁なのです。

 例えば、Sさんは、不定期で大自然の中でリトリートイベントを開催していて、そこでは短冊に自身の名前と日付を書くことで、今その人に必要な言霊が自然に降りてくるという「言霊降ろし」というものをやっています。また、心身の不調に悩む人には、触れる触れないかというくらい感触で体に触れて、体と心の緊張をゆるめる「センタリングセラピー」というものも行っています。実際に私自身も経験させてもらいましたが、確かに体の余計な緊張が緩んで、驚くほど姿勢がよくなりました。

 ちなみに、Sさんがこのような"特殊能力"を得たのは「めちゃくちゃな働き方で生死を彷徨ったから」だそうです。

 Sさんは、バブル真っ只中の大手酒造メーカーのスーパーバイザーという立場で、飲食店の出店や経営に携わり、東京の六本木や麻布、さらには米ニューヨークでも話題の人気店をプロデュースしたことで、テレビ番組にも取り上げられた、「外食のプロ」でした。ああゆう時代ですので当然、休みはゼロ、睡眠時間を削って馬車馬のように働く日々を生き抜いていくうちに、「このままでは死んでしまう」と、誰に教えてもらうわけではなく、心身の不調を癒す方法が自然に身に着いていったというのです。

 そんな数奇な人生を歩み、不思議な力を持つSさんと、村井代表や「神真都Q」メンバーが奥深い山の中にあるカフェで邂逅して、しかも意気投合するというのは「偶然」で片付けられない「縁」のようなものを感じざるを得ません。

消滅自治体を救い歓迎ムードに

 そう聞くと、このSさんも「神真都Q」の思想に影響を受けた人、あるいはシンパのような人だと誤解をする人もいるでしょうが、そんなことはありません。

「彼らが言っているディープステートだとかは正直、私はよくわかりません。ただ、実際に彼らと会って話をしてみて善人だということはわかります。考え方が自分と違う、理解できない相手だからといって、全否定したり、排除したりというのは、私は違うと思っているんです」(Sさん)

「カルト」と呼ばれる団体の取材をしているだけで「洗脳されやがって」と批判を受けている身からすると、Sさんの考え方は非常に共感できます。このように「異なる価値観との共生」に抵抗がないSさんは、村井代表や「神真都Q」メンバーたちに影響を受けるわけでもなく、シンパになるわけでもなく、ごくシンプルに「友人」として付き合っているのです。

 

 そんな風に交流を重ねるなかで、Sさんは、村井代表たちがこの地にやってきたのは、ディープステートの攻撃から身を隠すためであり、活動の拠点となる「コロニー」に適した場所を探していることを聞きます。そこで、自分の生まれ故郷であるZ地区の中でも、豊な自然に囲まれた土地と空き家を紹介。そこからはトントン拍子で話が進んで不動産売買契約を締結、メンバーたちの活動拠点となる「コロニー」の建築を進めるため、Z地区の全国各地からメンバーが移住してきた――という流れなのです。

「四方を山に囲まれたロケーションで、木々が生い茂っていたところなんですが、驚くことに神真都Qの人たちはそれをすべて自分たちで切り拓いて、手作業で建物の補修などを行っているんです。重機を操る資格のある人はいたそうですが、ほとんどの人は林業や建設業の経験ゼロの素人だそうです。地元住民でもあそこまでやりません、すごいですよ」(Sさん)

 私も当時、作業の様子を写真で送ってもらいましたが、女性がチェンソーで大きな木を伐採したり、小型重機で丸太を運んでいたりなど、あまりのたくましさに驚いたものでした。

 住民流出による「消滅自治体」が深刻な課題になっている中で、このようなバイタリティのある移住者の集団は、受け入れ自治体にとって大歓迎であることは言うまでもありません。実際、村井代表らがX市長に挨拶をしに行ったところ、Z地区を盛り上げてほしい、と市長から歓迎の言葉ももらったそうです。

 

 ただ、そこから「悪い噂」がたちはじめます。Sさんと一緒にサロンや飲食店を「神真都Q」メンバーの移住のサポートをしていたKさんという女性が、その経緯を説明してくれました。

「きっかけはZ地区のお祭りです。Sさんが早く地域に打ち溶けられるようにと、甲兄さんを連れて行って、自治会長などにも紹介して、神社に奉納もしてもらったんです。それが地域で話題になって、Sさんが怪しい団体を東京から呼び寄せた、などという根も葉もないデマが流れてしまったんです」

 こういう流言飛語が生まれた背景には、Sさんが地元の一部住民から「移住推進派」と見られていることがあります。

 先ほど述べたように、Sさんはアメリカで飲食店のプロデュースをしていたこともあって海外にも幅広い人脈を持っています。ある時、知り合いの外国人から日本でゲストハウスをやりたいと相談を受けた際、SさんはZ地区を紹介、異国でのビジネスのサポートをしたことがありました。

 これがZ地区内の一部の保守的な住民から「怪しい外国人と組んでおかしなビジネスを始めている」などという悪い噂に繋がってしまいます。開業から5年ほど経過して、このゲストハウスはなんの問題もなく地域社会に溶け込んでいますが、一部住民にはこの時の印象があるため、「神真都Q」メンバーの移住というのも、実はSさんが裏で仕掛けているという「陰謀論」が唱えられているのです。

「甲兄さんたちが、荒れていた里山もきれいに整備したし、空き家にも人が入るようになって地域に活気も出てきたしいいことばかりなのに、反ワクチンとかイメージだけで悪く言われているのはちょっとひどいですよ」(Kさん)

歓迎ムードから一変、SNSの噂によって接近を拒む住民たち

 では、実際のところ「神真都Q」はZ地区の住民からどう思われているのでしょうか。メンバーたちを何度も見かけたというある地域の60代女性に話を聞いたところ、意外な答えが返ってきました。

「ごく普通の人たちって感じですよ。会えば挨拶もするし、特に怖いとかはないですよ」

 こういうフラットな反応が多いのかと思った矢先、女性は顔をちょっとしかめてこんな言葉を続けました。

「でも、ほら、あの人たちってカルト宗教でしょ? そこがちょっとねえ......」

 私が「神真都Qは宗教ではないと聞いてますけど」と指摘すると、女性は"こいつは何も知らないのか"と呆れたような顔をして、諭すようこう言いました。

「もともとこの場所にやって来たのも、あの人たちが信じている教えみたいなもので、ここが"聖地"とされているかららしいですよ。だから巡礼じゃないけど、全国から信者が続々と集まってきているわけ」

 

 どうやらこの女性の中では「神真都Q」というのは宗教団体のようなイメージのようでした。なぜこうなっているのか興味を持った私は、どのあたりがカルト宗教っぽいと考えているのか質問をしてきました。

「そりゃ布教するところでしょ」

「え? 神真都Qの人たちって布教して回っているんですか?」

「この辺では人の目があるからしないでしょ。でも、東京とか大阪ではやっているみたいですよ。そこで信者を集めてこの聖地に連れてくるんでしょうね。ここも過疎化が進んで空き家だらけだから、人が増えるのはいいことだけどちょっと難しいよね」

 他にも何人か話を聞いてまわりましたが、この女性と似たような認識でした。私はあらためて「異なる価値観との共生」の難しさを痛感しました。

 彼らが語る「神真都Q」のイメージは、私が取材で見てきたものと明らかに違いますし、SさんやKさんが移住の手助けをした人々との実像とかけ離れています。どこかの誰かがネットやSNSで無責任に煽ったイメージが勝手に一人歩きして「隣人」の認識にも影響を与えてしまっている事実に、私に背筋が冷たくなりました。

 声をかければ実際に対話できる距離にいるのですから、SさんやKさんのように「神真都Q」のメンバーと実際に会って、話に耳を傾けて自分の頭で判断をすればいいはずです。しかし、そういう形で「接近」することすらも危険で「布教される」と考えているような住民も少なくないようなのです。

 

 この構図は実は「洗脳」もまったく同じです。実際に、旧統一教会の信者たちがマインドコントロールされているのか、本人たちと直接会って取材をすればいいじゃないか、とメディアの知人など引き合わせようとするたびに、こんな感じで断られてしまいます。

「カルト信者だから何を聞いても、どうせ本当のことは喋らないし、窪田さんみたいに逆に洗脳されて、利用される危険もありますんで遠慮します」

 一見するともっともらしい理屈ですが、それでは「異なる価値観」を持つ人々とは「分断」していくしか道がないということではないでしょうか。「洗脳されている」「頭がおかしい」と糾弾していくことで、「異なる価値観」を持つことをギブアップさせていく、あるいは自分の生活圏から追い出していくーー。我々の社会には、そんな排他的な解決策しかないものなのでしょうか。

 

 答えを見つけるため、私は移住した「神真都Q」のメンバーが移住した「コロニー」へ行ってみることにしました。