第5回:大阪から遠く赤坂へ
ある火曜日。週末に札幌でのトークイベントに出る予定があって、過去に自分が札幌に行った時に撮った写真をまとめる必要が生じた。
とはいえ、私は写真データの管理が雑で、ただ年月別のフォルダに投げ込んであるだけなので、その中のどこに札幌に行った時の写真があるかわからない。こういう時にオンライン上、あるいはPC内に日記がつけてあれば、テキスト検索からだいたいの日付の見当がつけられて便利だ。
私の場合、数年前まではエキサイトブログに日記を書いていて、そっちは検索が容易なのだが、現在ではnoteに日記を書いていて、それは月額500円で読めるという有料式にしてあるために(それなのになかなか更新できていなくて恐縮なのだが)、全文を対象にして検索をすることが難しく、写真集め作業は遅々として進まないのだった。
結局、「これは無理!」と思ってある程度わかる範囲に限ることにして、懐かしい写真を少しだけフォルダにまとめて、イベント主催者の「ことさら出版」さんに送る。
2011年、私がやっているバンドのメンバーと一緒に札幌に行った(というかメインの目的は「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」の音楽イベントに出演することだった)時の写真はデータが残っていた。その前となると1999年、同じバンドメンバーの"ミヤマッチ"と二人で北海道を旅した記憶があって、その頃はデータではなく、フィルムカメラで写真を撮って、近所のタバコ屋さんで現像してもらっていた。
中学校から同級生で、その後もバンド活動を続けて長い付き合いになっているミヤマッチと、なぜ二人で北海道に行こうということになったのか。今となっては定かではないが、大学時代の春休みが暇で、「どこか遠出してみよう」と話したのかもしれない。もしくはその時、二人でライジング・サン・ロック・フェスティバルの第1回目に行った記憶があるから、それが目当てだったのか。
押し入れからその時の写真が収められたアルバムを見つけ出した。ライジング・サン・ロック・フェスティバルの会場にいるところを自分たちで撮った写真があった。ヤングである。
その時のことを思い出してしばらくぼんやり過ごす。小樽に行ったり、富良野に行ったり、また札幌に戻ってきて酒を飲んだり、とにかく時間を贅沢に使った旅だった。
夕方、スーパーに買い出しに行く。今日は20時過ぎからTBSラジオの"アトロク"こと「アフター6ジャンクション2」という番組にオンラインで出演させてもらうことになっている。ライムスターの宇多丸さんがメインMCを務める人気番組で、パリッコさんと私がたまにゲストで呼んでもらうことがある。たいていは何かアイデアを出して面白い飲み会をしてみるような感じで、日比麻音子アナウンサーとともに、他愛もない話をしながら酒を飲む。
本当は赤坂のTBSのスタジオに行って一緒に乾杯したいのだが、いつもタイミングが合うわけでもなく、そういう場合は私だけ大阪からオンラインで参加させてもらう。その生出演に先立って"春らしいピンク色のおつまみ"を用意しておくことになっていて、それでスーパーにやってきた。ピンク色の花だけ知覚できる虫のように、スーパーの店内をうろうろし、いくつかの食べ物と「美酢」のざくろ酢を買った。これを使えばピンク色の「ざくろサワー」が作れるだろう。
飲み仲間のYさんが遊びに来てくれることになった。私だけがオンラインで参加すると、「じゃあ、お疲れ様でしたー!」と中継が切れた時、すごく寂しいのだ。それでYさんに来てもらった。大変助かる。Yさんと乾杯し、私はパソコンの画面に向かって出番の時間をそわそわしながら待った。
時が来た。画面越しに乾杯する。今日の企画はみんなで意見を出し合って理想のお品書きを作ろうというようなもの。お品書きというのは、旅館で夕飯をいただく時など、先付があって刺身があって後の方でお肉が出てきて、みたいな、ああいうコースのようなものである。「お通しはこれがいいのでは?」「それがお通しなんだったら次はこれが欲しいよね」という感じで、みんなの理想のお品書きができあがっていった。結果、こんなコースが旅館で出てきたら最高だなという内容のものになった。
・スナップエンドウの塩茹で
・川海老の唐揚げ
・牛のたたき
・ヤングコーンの丸焼き
・季節のチビグラタン
・鶏白湯のにゅうめん
宇多丸さんが、「これまでのアトロクの歴史の中で最もゆるいコーナーでした」というようなことをおっしゃっていた。光栄な思い出になった。
スタジオのみなさんに手を振って赤坂との中継が切れ、ここは大阪、Yさんと二人に。それぞれ缶チューハイを飲みながら、ふと、昔の酒のCMをYouTubeで見る流れになった。検索してみると1970年から最近までのCMをジャンルごとにアップしている人がたくさんいるのである。
古いものから順に見ていくと、お酒にまつわるイメージがどんな風に変化していったか、酒造メーカーがどんな層にどんなお酒をアピールしようとしてきたかが伝わってきてすごく面白い。お酒の種類ごとに背負わされがちなイメージというものもある。ウイスキーは「時は流れない、それは積み重なる」みたいな重厚なナレーションが入りがちで、ビールはもっとカジュアルで、家庭が舞台だったり、仕事に精を出す会社員が主人公だったりする。甲類焼酎とかチューハイなどのCMにはその時代の流行を積極的に取り入れたものが多く、ディスコサウンドで踊る若者とか、そんなイメージだったりする。
長い動画をずっと二人で笑いながら見て、私はウイスキーとビールとチューハイのCMのナレーションの差をモノマネできるようになった。いつかどこかで披露したい。
