第6回:東京の仕事

ある火曜日。東京に来ていた。その日の取材仕事が今回の上京の目的だった。動物園を歩き、そこで写真を撮る。その後にどこかの店で酒を飲むことも含めて文章にする仕事なので、今週もまた、休肝日は別の曜日にずらすことにする。

天気に恵まれ、それはいいことだが、着てきた服では暑過ぎた。私は寒さに対する怯えがあって、寒い時にそれを衣類やマフラーなどでカバーできるように、常に備えておきたい。この原稿を書いているのが4月なのだが、多くの人は「暖かくなって桜が咲く頃でも、会社帰りに花見をしていると夜は結構冷える」というような経験をしたことがあるだろう。日中は暖かくても、夜は冷えるし、天候次第では日中だって結構肌寒かったりする。そんな時に薄着でいるのが怖いのだ。

数日前まで用事があって札幌に行っていたことも大きい。私の住んでいる大阪と札幌の4月中旬の最高気温は10度以上違っていて、夜の札幌を歩いていると、フリースでも寒いほどだった。ちなみに今思い出したが、札幌で会った方によると札幌の花見シーズンは5月の連休あたりで、東京と大阪でしか暮したことがない私は「4月と言えば花見!」と反射的に考えてしまうが、それは地域限定の常識でしかないのだ。「満開の桜の中で迎える始業式」みたいなものもやはり地域限定のイメージで、札幌の人の始業式は溶け残った雪と共にあるという。

それはそうと、とにかくこの日は暑くて、しかも動物園の敷地は広大で、自分が見たい動物をかなり絞り込んでめぐっていくだけでも時間が足りないほどだった。汗をかき、体力を使ったのもあって、園内のレストランで飲んだビールがとても美味しかった。

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平日でもたくさんの人が訪れていた動物園だったが、中でもオランウータンは人気で、ロープや柵につかまって飛ぶように移動する姿には迫力があった。私もその動きにしばらく見惚れていたのだが、なんのタイミングか、オランウータンの前にいた多くの人がいつの間にかどこかへ去って、自分とオランウータンの二人きりになった瞬間があった。その時、張り詰めるような緊張を感じて、さっきまでは動物を見る大勢の観客の一人としてどこか安心していられた自分が、オランウータンと初めて対峙したような気がした。目が合って、ふいに向こうから何か話しかけられそうな。静かで印象的な時間だった。

動物園を出て、近くの街まで電車に乗って、その駅の近くの居酒屋で酒を飲んだ。1週間ほど前から私はなぜかずっと焼き鳥の「ナンコツ」が食べたくて仕方なかった。そしてそう思って入った店にはナンコツがなかったりして、もどかしい思いをしていたのだが、この店でようやくナンコツを食べることができた。歯ごたえはもちろん、塩加減も絶妙で、本当に美味しいナンコツだった。シイタケの串も美味しかった。

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......と、こうして結局は酒を飲んで過ごしたのだが、この連載ページを「休肝日の過ごし方の参考にしよう!」と思って閲覧した人がもし一人でもいたとしたら申し訳ないという気持ちがある。

そこで、私がいつもどんな風に休肝日を過ごしているかについて、一度書いておきたい。まず、休肝日の私は、とにかくずっと寝ている。一回目が覚めても、また眠くなってくるかもしれないから、念のため布団の中にいる。休肝日は短ければ短いほどいいからである。

限界まで眠って起きたら淡々と仕事をする。それが飲みに行った時のレポート記事だったりした場合、思い出しながら書くのがとても辛いが仕方ない。夕方頃まで頑張って、できるだけまだ明るいうちに外に出る。私の住まい近くには川が流れていて、その川沿いを歩いて、ベンチに座って少し本を読んだりする。事前に近くのリカーショップでノンアルコール飲料を買っておく。

ここ数年のノンアルコール飲料の市場の広がりには目を見張るものがある。各メーカーがどんどん新商品を作っているようで、いつ行っても見たことのない商品が棚にある。休肝日にはノンアルコール飲料をどれだけ飲んでもいいことにしているから、そう思って棚を眺めると選びたい放題で楽しい気分になる。

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川沿いを散歩する時、いつもの自分なら缶チューハイを一本買って行くのだが、ノンアルコール飲料だったら二本は必要だ。ノンアルコール飲料は、アルコール飲料と違って、思った以上にスイスイ飲めてしまうのだ。倍の量を用意しておきたい。

それを飲みながら外で読書。ノンアルコールだから本を読む集中力が低下したりしないのがありがたい。暗くなってきたら立ち上がって、たいていスーパーでその日の夕食の食材を買う。そしてノンアルコールビールの6缶パックも一緒に買って帰る。

野菜や肉を煮たり焼いたりしながら、その6缶をどんどん飲む。ノンアルコール飲料ならいくら飲んでもいいルールだから、躊躇はない。ただ、当たり前だが飲み物だけでだいぶお腹が膨れてしまう。

食事が終わったら後はテレビやインターネットを少し見て寝るだけ。早く眠気が来て、自分を明日に運んでくれるよう、祈りながら布団に入って過ごすのだ。