第7回:夜の集まり

ある火曜日。来月に刊行される新しい本の原稿を細かくチェックし、直していく作業を急ぐ必要があった。その本の中には数年前に書いた文章も、割と最近書いたものも収録される予定なのだが、それがいつのものであろうと、過去に自分が書いた文章をもう一度読んで直していくという作業が、私はとても苦手である。

読み直していくと、誤字脱字もたくさんあるし、文章がまとまっていなかったりする。まとまらない文章でも、それはそれとして迫力があればいいのだが、そういうことではなく、単純に「何言ってるかわかんない」というように感じる部分もあり、嫌になってくる。それがそのまま本の形になるのは不本意なので、ここでなんとか直しておかねばならないのだが、なんとも気が重い作業なのだ。

というか、直している今の自分だって、少し経てば古い自分になるわけだし、そもそも最新の自分が正しいという確証もない。私は、というか、みんなが、常に時間の流れの中で変化し続けているのだから、その時々の判断は異なっているのが当然だ。今はこのような文章でいいと思っても、たとえば明日、圧倒的な本を読んで、今までの自分の書いてきた文章がたまらなくダサく思えることだってあるだろう。それ以降の自分の目で過去の文章を直そうと思えば、根本的なところから取り掛かるしかなくなるのではないか。

そういうことだって考え得るのだから、つまり、どこかで諦めるしかないのである。どこかで諦めないと、スケジュールに間に合わない。でも、諦めてしまったという罪悪感は心に残る。つくづく難しい作業だ。

日中、ずっとそれに取り組んでいて、お昼ご飯が遅くなった。すぐ近くにある「ローソン100」で、もやしと舞茸とハムを買った。そして、その食材を使って、インスタントの「皿うどん」を作る。ローソン100でよく買うインスタントの皿うどんは乾麺と粉末スープが2組セットになったもので、フライパンで好きな食材を炒め、そこに粉末スープを指定された量の水で溶いて加えると、とろみがついた餡のような状態となる。皿の上にあらかじめ置いてあった乾麺の上に、そのとろとろ具材をダーッとかけたら出来上がり。皿の端に柚子胡椒を少しのせて、適宜、混ぜながら食べるのが好きだ。

まず、皿うどんの乾麺が餡によってパリパリからふやふやに変化していく、その食感の変化がいい。そして、皿うどんの餡って、本当に何でもだいたい美味しくしてくれるからいい。今日は節約のために肉ではなくハムをチョイスしたが、豚肉でも鶏肉でも、海鮮でもいい。野菜も、キャベツや白菜を加えたっていいし、ピーマンやパプリカなんかもいいな。なんでも合う。鶏ガラベースの粉末スープの風味と、それを水で溶いて炒めることによって生まれるとろみがどんな具材も包み込んでくれるのだ。

それを急いで食べ、また原稿のチェック作業だ。眠くなったら一瞬の迷いもなくすぐに横になる。寝て起きてまた作業続行。私にとってはそれが最も効率的なのである。

夜、前々からのチェアリングの約束があったので、椅子を持って近所の川べりに向かう。以前、大阪のテレビ局からチェアリングをテーマにした取材を受けたことがあり、その後、たまにその関係者の方々と川沿いでチェアリングをするようになった。しかし、いつもみんなを取りまとめてくれていたリーダー的な方が別の地域に転勤となり、以後、そのような機会もなくなっていた。

それが最近、再びリーダーが大阪に戻ってくることになったそうで、「久々にチェアリングしましょう!」と誘ってもらったのが今日だった。休肝日は数日ずらすことに。

街灯が明るく照らしている一角に椅子を置いた。トイレも近くにあって安心。途中で買ってきたチューハイで乾杯をする。椅子を忘れて来たメンバーもいたが、ちょうどいいことに、すぐそばにベンチがあったので、そこに座れば何の問題もなかった。

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初めて会う方もいて、その人が海外に留学していた頃の話を楽しく聞かせてくれた。暮らしていた寮がめちゃくちゃ汚かったという話が笑えた。

温かい日が続いていたが、今日は少し冷える気がした。天気に詳しいメンバーがいて、「今日はずっと天気が良かったから、夜は寒いんです。こういうのを放射冷却っていうんです」と教えてくれた。雲がない日は、日中の日差しによって生まれた地面の熱が、遮るものもなく成層圏の方まで昇っていってしまうため、地表が冷え込むらしい。

「へー!」と見上げた夜空には星が見えた。自分が今いる場所が宇宙と繋がっているような気がして、それは夢のあることのようにも思えたが、たしかに寒い。いつもなら途中で近くのコンビニまで買い出しに行ってもう少し飲み続けるのだが、こんなことで無理をして風邪を引いてはいけないと、早めに解散することになった。リーダーは最近、三線を習おうと思っていると話していた。今度川べりで会う時は、その音色を聞かせてもらおう。