第14回:矢継ぎ早に割って飲む

ある火曜日。雑誌の特集に向けた取材をするために大阪の鶴橋にやって来た。編集担当者とカメラマンのNさんと、JR鶴橋駅前で待ち合わせをする。

昨日も同じメンバーで取材をしていた。昨日は、神戸の街をあちこち散策しながら誌面に必要な写真を撮影していった。移動だけでも時間がかかりそうだし、イメージしたような場面がうまく撮れるだろうかと不安だったのだが、カメラ担当のNさんがこちらの意を汲んで柔軟に対応してくれたおかげで予想よりもだいぶスムーズに進めることができた。

今日は料理と飲み物の写真を撮る必要があり、私の友人・Hさんに協力してもらい、Hさんの部屋にお邪魔して撮影することになっていた。Hさんのお宅に到着し、すぐに撮影が始まる。

あらかじめHさんにお願いして用意してもらっていた料理をテーブルに並べ、Nさんがそれを撮っていく。一品目の撮影が終わったらそれをみんなで食べ、一旦それを片付け、また次の一品を用意してもらう。

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スペースに余裕のある料理スタジオのような場所と違い、いわゆる普通の台所でやっていくから、割とてんやわんやな状態になる。みんなが食べ終えたお皿を洗い、そうしながら次の料理を調理して......とHさんはかなり忙しそうである。

「だいぶ負荷のかかることをお願いしてしまったな」と私はその姿を見て申し訳なくなってくるのだったが、「いやーすみません」などと言いつつ結局何も手伝えずにいる私に、Hさんは「大丈夫なので気にしないでください!」と動きを止めずにいる。

やっと私の出番がまわって来た。この日、私は甲類焼酎を様々な割り材で割って、オリジナルチューハイみたいなものを何パターンか作ることになっている。そしてそれも写真に撮ってもらう。

Hさんの台所を借り、グラスやマドラーも借りてオリジナルチューハイを用意していくのだが、自分でやってみるといかにHさんの手際がいいかがわかる。グラスに入れようとした氷が床に落ちたり、それで慌てているうちに次に自分が何をすべきだったかすっかり忘れてしまったりして、モタモタし続けている。

たとえば、甲類焼酎をトマトジュースで割って、グラスのふちにソルティドッグみたいにミックススパイスをまぶしたいと思っていたのだが、ふちに粉をまぶすという、そのやり方がわかっていない。

困ってHさんに聞いたところ、「あ、それは後からだと難しくて、まず先にグラスのふちにスパイスをつけて、それから中身を注ぐという順番です。一旦グラスを空にして、カットレモンでふちを湿らせて、ミックススパイスを小皿に入れておいたところに、グラスをくっつけて回転させるとうまくいきます」と、説明してくれた。その通りにやってみると、本当だ!うまくいった!

と、そんな風に、自分で提案したチューハイを実際に作る段階になって準備不足が露呈し、時間がどんどん経過していく。失敗したチューハイは捨てるのがもったいないから自分で飲んで、ハイペースで酔っていく。

次に困ったのがコーヒー焼酎の豆乳割りである。私のイメージでは、グラスの下の方にコーヒー焼酎が溜まって、その上に豆乳を注ぐことによって、ツートンカラーの美しい一杯ができあがるはずだったのだが、全然そうならない。豆乳を注ぐと中身はすぐに混ざって見栄えのよくない感じになってしまう。失敗したチューハイをすぐに飲む。うまい。「うまい!」と言っている場合じゃない。

「どうすれば下にコーヒー焼酎が溜まるようになるだろう......」とHさんにまた意見を聞く。「ああ、コーヒー焼酎にガムシロを混ぜて重たくするといいのかも」という意見をもらい、それを試してみるがうまくいかず、また失敗チューハイを飲む。うまい。

カメラマンNさんから「豆乳を注ぎながら撮ったらちょうど混ざっていく感じになっていいんじゃないですか」と提案してもらい、そのようにしたところ、いい写真が撮れた。

そんな風に、私の段取り悪さによって、今日の撮影は予想以上に時間がかかってしまった。この後、もう一軒、近くの飲食店で撮影をする予定になっていたのだが、あまり遅くなるとその店に迷惑になる。

残りを急ぎで進め、Hさんの家を出て、次の目的地へ。予定よりは少し遅い到着になったが、無事にそこでの撮影も完了した。

そのままそのお店で軽く打ち上げをさせてもらう。私は失敗チューハイをハイペースで飲んだためにすでに結構酔っている。そもそも、なぜちゃんと本物の甲類焼酎を入れてチューハイを作ってしまったんだろう。せめてもっと薄めにすればよかった。

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その店での打ち上げを終え、さらに隣の店でHさんともう一杯。ポルチーニのグラタンがすごく美味しかったという記憶はたしかにあるのだが、Hさんとどんな話をしたのだったか、かなりぼんやりしている。自分の不手際をひたすら詫び続けていたような気がする。それにしてもあの失敗チューハイ、我ながら美味しかったな。

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