第17回:上野から赤坂へ

ある火曜日。夜中に起きてサッカーを見て、また寝て、今度は昼前に目が覚めた。本当はもう少し眠っていたかったが、母親からLINEが来て、それを見ると「お昼どう?早めの時間ならお父さんも行けるらしいんだけど」とのことだったので、布団から重たい体を起こしてシャワーを浴びた。

近所で母と父と待ち合わせて「生駒軒」へ向かう。東京に来て今日で5日目で、その間に生駒軒に行くのが、これで3回目になる。私はその店が好きなので、東京に来るたびにできる限り行くし、メニューはいくらでもあるから何度でもいい。

といってもだいたいの場合、「タンメン」を注文する。ここのタンメンが本当に好きだ。ただ、今回はすでに2回続けてタンメンを食べていたので、「今日は別でもいいかな」と「味噌ラーメン」を選ぶことにした。母も味噌ラーメンにして、麺は少し減らしてもらう。父はタンメンを注文した。

ラーメンができあがるまでの間、近況のことなどを聞く。妹たちの家族のこと、親戚のこと、父の会社のこと。店のテレビでは、昨夜遅くに行われたサッカーの試合について、詳細に振り返っている。「前半は完璧でした」「あと一歩及ばず!」と、そんな声が聞こえてくる。ラーメンが運ばれてきた。

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タンメンも好きだが、たまに食べる味噌ラーメンもやはりいい。本当は「広東麺」とか、久々に「しいたけそば」も食べてみたいけど、どうしてもタンメンが最優先になり、次に味噌ラーメンという感じなので、その他の色々なメニューにたどり着くためには、1週間毎日通うぐらいでないと無理だ。

食べ終えて父は先に去って行き、母と喫茶店でアイスコーヒーを飲む。「今度はいつ東京に来るの?」「いや、今のところは何も予定がないけど、また何かで来るわ」とそんなやり取りをした。母は一ヶ月ほど前に入院して手術をして、私はその時はタイミングが合わなくてお見舞いには行けなかった(妹や父がかわるがわるお見舞いに行っていた)。

手術は無事終わり、しばらく安静にした後、生駒軒のラーメンを食べられるぐらいに回復していたから、私からすれば、前回会った時とまったく変わらない母だ。元気なようで何よりだが、それはたまたま運がよかっただけなのかもしれず、「これを当たり前と思わず、元気なうちにたまには旅行にでも行くことにしよう」というようなことをぼんやり思いながらコーヒーを飲む。

母と別れて上野へ向かう。指定された喫茶店に私が早めについて、編集者のMさんと、ライターの白央篤司さんがやってくるのを待つ。電源を借りてパソコンで仕事を進めて待とうと思ったが、この喫茶店では電源を借りることができないようだった。私の使っているノートパソコンはだいぶポンコツなので、コンセントをつながないと起動しないのだ。

仕事はあきらめ、スマホでSNSを見て過ごす。しばらくして二人が同時にお店に来て、コーヒーを飲みつつしばし打ち合わせ。形になるかはまだわからない話だが、現時点で確認しておくべきことは話し合うことができた。

喫茶店を出たところで解散となり、編集のMさんは上野駅の方へ。白央さんから「時間あったら軽くどう?」と声をかけてもらい、御徒町駅の方まで移動して立ち飲みの「味の笛」に入る。

白央さんは食をテーマにした原稿を多く書いている人で、私から見るとライター界の先輩という感じで、いつも色々と教わってばかりだ。そして同時に、"ただの飲み仲間"という風にも振る舞ってくれるような気さくな方でもある。

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カウンターに並ぶ小鉢というか、トレーに入った惣菜類をいくつか選び、生ビールも注文して(会計はその都度キャッシュオンなので気軽)、のんびりと飲む。お互いの最近の仕事の話、共通の友人の話、ライター業界で活躍しているうらやましい人たちについての話などなど。

「この後も色々あるのに付き合わせちゃってごめんね。また飲もう」と白央さんは去っていった。私はほろ酔いだが、いよいよどこかで仕事をしなければと、スマホで検索してチェーンの喫茶店を探す。

無事に電源のある喫茶店が見つかり、そこでしばらく作業。眠気に襲われ、うとうとしながら、今日中に送らなければいけない原稿をなんとか書いてメールで送った。

御徒町駅から地下鉄に乗って赤坂へ向かう。今日はTBSラジオの「アフター6ジャンクション2」という番組のワンコーナーに呼んでもらっており、そこに同行してくれる森山さんと、少し早めに集まろうと話してあった。森山さんは私の初めての本を一緒に作ってくれた編集者で、今日のラジオでも、森山さんと共に作った新しい本の話をすることになっている。

駅近くの居酒屋を何軒か探してみるもどこも満席で、やっと席が空いていた蕎麦屋で、軽く乾杯をした。徐々に迫ってくるラジオの出番の時間。時計を何度も見て、緊張感が高まってくる。

それから数時間後、ラジオの出番は無事終わっていた。パーソナリティの宇多丸さん、日比麻音子さんが私の本についての感想を言ってくれるのを夢を見ているかのような気持ちで聞き、私自身は大したことを何も言えなかったのだが、ありがたい時間だった。

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森山さんと二人でTBSのビルを出て、終電近い電車に乗る。東京にいると色々な人に会える。あまりに街が混み合っていて息苦しく思うような時もあるが、「東京には人がいっぱいいて、やっぱりいいな」と思う。