第18回:3日間を思い出しながら

ある火曜日。体がだるくて重たくて、栄養剤のCMで繰り返し聞いたからいつの間にか覚えてしまった「だるおもー」というフレーズを頭に思い浮かべながら起床。今夜は以前、ライブ会場で偶然会った友人と久々に飲む約束をしている。それまでに回復しなければ。

こうして体が重たいのは昨日までの酒のせいである。昨日までの3日間がとても楽しくて、つい飲み過ぎてしまった。でも後悔はしていない。3日間ともあちこちへ移動して、好きな音楽をたっぷり聴いて、色々なことを思い出したり、新たに考えたりした。

3日前は大阪市の南西の方にある住之江区のゴリラホールという会場でceroのライブを見ていた。その日は朝から雨が強く降っていて、雨の日にいつも履く防水スニーカーを履いて外に出たのだが、その靴も完璧というわけではなく、激しい雨だとじわじわと靴の中に水が入り込んできて、不快な状態になる。

昼過ぎに兵庫県の西宮の方にいる友人とほんの少しだけ酒を飲んで、時刻表アプリで検索したら西宮からライブ会場まで移動するには丸々1時間ほどかかることがわかり(なぜかもっとすぐ行けると思っていた)、本当に1杯だけ飲んで友人と別れて慌てて電車に乗って、住之江公園駅から会場まで歩く。初めて行く会場だったので少し迷って、その間にもう靴の中は濡れてきていた。小さな折り畳み傘で雨に立ち向かっているのもよくない。しかし、ライブ会場に大きな傘を持っていくのが嫌で、折り畳みならリュックの脇のポケットに突っ込めるから、そうした。

やっとたどり着いた入口でドリンク代600円を支払い、ドリンクチケットを缶ビールに引き換える。開演前に会場に流れている音楽が心地よく、それを聴いてじっと待つ。

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ceroの演奏を聴きながら、こうしてライブを見るのは結構久々だなと思う。ここ何年かの関西圏で行われた野外イベントで何度か見た記憶はあるのだが、どれも、たくさんの出演者がいる中の一つのアクトという感じだったので演奏時間も短かったはず。こんなしっかり見たのはいつぶりだろうか。

この日のceroは5人編成で、サポートメンバーがたくさんいて大所帯で演奏することの多いceroにしては異例のことらしかった。大人数でやる曲を5人で演奏するためにアレンジを加えたと、ボーカルの高城さんが途中のMCで言っていて、まさにその通り、演奏の途中で「あ、この曲だったのか!」とやっと気づいた曲が私にはたくさんあった。

ceroの曲を聴いていて、東日本大震災があった時にまだ東京にいた私は(被災地の方々に比べるべくもないにせよ)、この先どうなっていくのだろうかと不安になるような日々を、ceroの音楽に支えられるようにして過ごしていたのを思い出した。「マイ・ロスト・シティー」「Summer Soul」「わたしのすがた」といった、その頃の東京で何度も何度も聴いた曲を、今のアレンジでまた、大阪に住む私が聴いている。

素晴らしいライブだったな......と外に出ると雨はかなり弱まっており、急いで電車に乗ったら、西宮でちょっとしか飲めなかった友人ともう一度合流して乾杯し直すことができた。

2日前は神戸・三ノ宮にあるKOBE QUILTという会場に二階堂和美のライブを見に行った。今年リリースされた『潮汐』というアルバムの発売記念として、神戸で久々に開催されるライブだった。「三田村管打団?」という名の演奏集団がゲストで参加していて、私はその三田村管打団?も好きだから、この組み合わせでの演奏が聴けるのも楽しみだった。

三ノ宮から山の方へ坂を上って会場へ向かう。開演までまだ時間があったのでどこかで昼ご飯をと思い、適当に歩いていたら「ベルーガ」というロシア料理の店があって、そこに入って食事をしている途中で、その店は私が好きでたまに買っていた神戸・水道筋の「ロシアンピロシキ」という、ピロシキのテイクアウト専門店の方が開いたお店だとわかって感激した。美味しいピロシキをまた食べることができた。

そんないい流れから会場に入ってビールを飲んで、まずは三田村管打団?の演奏が始まる。神戸・塩屋の旧グッゲンハイム邸の管理人でもある森本アリさんをリーダーに、管楽器中心の流動的な、たくさんのメンバーで奏でられる音楽は、「音楽は自由でどこまでも楽しいものなのだ」と、音色が叫んでいるようだ。

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二階堂和美の歌を聴くのは本当に久しぶりで、私はいつもそのチャンスを求めていたのだが、なかなかタイミングが合わず、またここ数年、二階堂和美さんご自身の環境の変化などもあって、ライブの機会自体があまりなかったこともあるから、歌声を聴くことができるだけですでに泣いてしまいそうだった。

静かな歌もあれば、三田村管打団?を加えての爆発しそうに華やかな歌もあって、感情が激しく揺れた。終演後、ライブ会場で販売するために作られた冊子を買って、そこにサインをもらった。握手もしてくださり、その握手の力強さを思い出しながら、缶チューハイを飲みながら海の方まで歩いた。

昨日は大阪・なんばにある「難波ベアーズ」というライブハウスに行ってきた。SPDILLという、speedometer. という電子音楽家とラッパーのイルリメとのユニットのライブが見たくて行った。

また、会場の難波ベアーズがこの7月末で今の場所での営業を終了するということもあって(移転先はまだ未定らしい)、今のうちに行けるだけ行っておきたい気持ちもあった。

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ベアーズに行く時はいつも緊張する。地下に降りていく階段に、タバコを吸う人が座っていて、kk mangaというバンドをやっているハマジさんが大抵いて、「おいっす」と声をかけて中に入って......中はもうギュウギュウの人で、4組の出演者のうちの最初のバンド「Music Start Against Young Assault Again」の演奏がもう始まっていた。

ベアーズは持ち込み自由なのでさっきコンビニで買っておいたチューハイを飲みつつ揺れながら聴く。反復しながらじわじわと上昇していくような曲で、いい。その後の池永正ニの演奏も酩酊感があって心地よく、人でいっぱいの場なのに不思議と窮屈に感じなかった。

楽しみにしていたSPDILLのライブはspeedometer. の繊細で美しいトラックにイルリメのラップと歌が寄り添って、大好きな曲を大きな音で、目の前で聴けることがとてもうれしかった。それをこのベアーズの空間で聴けたことをできるだけ忘れないでいたいと思った。「Lip Sync」という、初めて耳にして以来、すごく好きで繰り返し聴いていた曲も聴けて、涙が出て困る。

最後のアクトの「indian no echo sign bine no!」の突き抜けるような演奏を堪能して階段を上がる。イルリメさんがいて、「最高でした」と伝えられてよかった。夜の空気を吸い込みながら、近くのコンビニにチューハイを買いに向かった。

......そんな3日間を反芻しながら過ごす日中。あちこちで聴いた音楽が、それぞれの輪郭を超えて自分の中で繋がって、今まで気づけなかった何かにたどり着かせてくれたような感覚があった。パソコンを立ち上げて、まずはどの曲を部屋に流そうかと考えていた。