第26回:梅田のトークイベント

ある火曜日。19時から大阪・梅田の「ラテラル」というイベントスペースで社会学者の岸政彦さんと対談することになっていて、朝から気持ちがそわそわしていた。

明け方まで仕事をしていたのに、なぜか早起きしてしまった。まだ8時過ぎである。もっとたっぷり眠らないと夜からの大事な時間帯に頭がぼーっとしてしまいそうな気がした。そこで、すぐにご飯を食べ、冷蔵庫に入っていた缶チューハイも飲んでしまうことにした。

しばらく前に買って使わずにいたトマト缶の中身をフライパンにあけ、そこにツナ缶を入れる。塩コショウで適当に味付けして、茹でたパスタと絡めて食べた。麺の量はそれほどでもなかったが、トマト缶を丸ごと一缶使ったからかなりのボリュームになって、食べ終えるとお腹がはちきれそうになった。

そうなるだろうと思った通り、しばらくしたら猛烈に眠くなってきて、布団に横になった。気づくと午後2時を過ぎている。目は覚めたが、まだ体が重くて、しばらく横になったままで過ごす。

ようやく起き上がり、仕事を少しだけして、また徐々に緊張してくる。今日のイベントは私の新しい本(『このロボで、行けるところまで行くしかないのだ。』というタイトル)の刊行を記念したもので、その本の巻末に今日のお相手である岸政彦さんとの対談が収録されていて、その縁もあって開催されるものだ。

中年と言われる歳になった自分の所感みたいなものをテーマにした本で、巻末対談でも「中年以降をどう生きていけばいいか」というようなことが話題になった。だから今日のトークもその対談で出た話などをとりあえずベースにして、あとは流れに任せて......とイメージしつつ、もし困った時のために議題をいくつか用意しておこうと思った。

自分で少し考えてみたが、こういうのは客観的な、つまり来てくれるお客さんにとって興味のあるようなことの方がいいんだろうと思い、ChatGPTにトークテーマを10個ほど提案してもらうことにした。私の聞き方のせいか、かなりオーソドックスなアイデアばかり(「いつから自分を中年だと思ったか」「中年になって良かったことは?」など)だったが、案外こういうテーマから話が広がるかもしれない。スマホにメモしておく。

17時過ぎに家を出て、18時前には会場に到着。本の版元である幻冬舎の編集担当・Kさんはすでに会場に来ていて、本の販売の準備をしてくれている。

IMG_8901.JPG

イベントのスタート時間は19時だが、開場は18時からで、お客さんが徐々に入ってくる。控室にいてもいいのだが、それはそれで緊張が高まりそうで、客席の友人と話しながら過ごすことにした。しばらくして岸さんが来て、手ぶらなので驚いた。

控室で「手ぶらなんですね」「いつも手ぶら」「肌寒い時に羽織る上着とか、一応持ってないと不安じゃないですか?」「そんなのいつも持って歩いてんの?」みたいな話をして笑って、それで少し気が楽になる。

いつの間にか会場は満席に近い状態となり、こんなことは稀なので、ありがたい。しかしこれはこれで緊張する。

いよいよ開演時間となり、岸さんと二人で席について、お客さんから差し入れでいただいたお酒を飲んで、岸さんが進行してくれるのに身を委ねる感じで色々と話して、またお酒を飲んで......予定時間を大幅に超えて、トータル3時間ほど、その場が続いた。

IMG_8906.JPG

新刊を買ってくれた方がたくさんいて、拙いサインを入れるついでにお礼を言う。他の本も読んでくれているという方が多く、ありがたいことだと思う。精進せねば。

しばらく会場にいて、荷物をまとめ、岸さんと、編集担当・Kさんと、親しい友人数人と一緒に、近くにある「揚子江ラーメン」へ向かう。澄んだスープの、お湯かと思うほど淡い味わいの揚子江ラーメンは、この辺で飲む人にとって"締めの一杯"として定番になっているのだ。

お店まで歩くと、飲み会帰りに食べていく人々で席は埋まっていて、しばらく待ちそうだった。そこは諦めることにして近くのお好み焼き屋へ。みんなでビールで乾杯して、お好み焼き、焼きそばなど、それぞれ食べたいものを食べて打ち上げとする。緊張もしたが、終わってみればあっという間のような、楽しい時間だった。

IMG_8905.jpg

食べ終えたところで解散となり、それぞれの帰路へ。家についてリュックをおろし、イベントに来てくれた友人からTシャツを預かっていたのを思い出し、取り出して広げてみた。

IMG_8907.jpg

何回か前の火曜日、神戸・塩屋の旧グッゲンハイム邸のイベントで友人たちとチューハイを販売した。店の屋号をその場で考えて「チューハイの酎や」として、その時もまた楽しい時間を過ごしたのだった。Tシャツをくれた友人はその時にも来てチューハイをたくさん飲んでくれた。で、「その日がすごく楽しかったのでTシャツを作りました」と渡してくれたのである。

友人は、このTシャツを「チューハイの酎や」のメンバーとして働いてくれたHさん(住まいのある東京から来てくれていた)に渡して欲しいと言っていた。色々あってしばらく仕事を休んでいるHさんに少しでも笑ってもらえればと、そういう思いもあってのことだったようだ。今度、東京に行く時に渡そう。

明日は昼過ぎまで何もないので、たっぷり眠れそうだ。来週の火曜日あたり、そろそろ休肝日にしようと思いながら横になった。