未来視SFドラマ、日本上陸

文=大森望

  • フラッシュフォワード (ハヤカワ文庫 SF ソ 1-12) (ハヤカワ文庫SF)
  • 『フラッシュフォワード (ハヤカワ文庫 SF ソ 1-12) (ハヤカワ文庫SF)』
    ロバート・J・ソウヤー,内田 昌之
    早川書房
    4,343円(税込)
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 昨年9月から米ABCで放送中のSFドラマ「フラッシュフォワード」がようやく日本に上陸。この夏から、海外ドラマチャンネルのAXNで独占放送の予定だが、それに先駆けて、5月22日(土曜日)午後10時から、第1話の字幕版がプレミアム放送される。
 物語の発端は、全世界の人々が同時に2分17秒間だけ意識を失うという奇怪な大事件。各地で交通事故や航空機事故が相次ぎ、世界は大混乱に陥る。やがて、人々の証言から、驚くべき事実が判明した。その2分17秒のあいだ、彼らは六カ月後の自分に意識だけタイムスリップし、未来の光景を見ていたのだ。いったいなぜこんな現象が起きたのか? 未来を知った人々はどう行動するのか?
 マーク・ベンフォード(ジョセフ・ファインズ)をはじめとするFBIロサンジェルス支局の特別チームは、人々の証言を大量に集め、このフラッシュフォワード(未来視)現象の原因を探りはじめる......。
 このドラマの原作は、カナダのSF作家ロバート・J・ソウヤーが1999年に発表した長編『フラッシュフォワード』(内田昌之訳/ハヤカワ文庫SF)。原作では、CERNの粒子加速器による衝突実験の結果、フラッシュフォワードが発生。人々は(半年後じゃなくて)21年後の自分に転位して未来を見る。
 未来視の情報をウェブで集める「モザイク・プロジェクト」や、夫婦間の軋轢、未来での殺人をめぐるミステリ的要素など、主要なモチーフのいくつかは原作から引き継がれているものの、主要登場人物の大半やストーリー展開は大きく変更されている。小説がドラマのネタバレになる心配はないので、AXNの本放送開始を待ちつつ、先に原作を読むのもいいかもしれない。
 なお、ABC版「フラッシュフォワード」の今後ですが、残念ながら、アメリカで5月27日にオンエアされる第22話が最終回になる模様。「LOST」に続く長寿シリーズになることを期待されて鳴り物入りでスタートしたのに、回を追うごとに視聴率が急落。海外での高い人気にもかかわらず、あえなく打ち切りが決定した。もっとも、先へ先へとずるずるひっぱるより、最初から1シーズンだけと割り切って観るほうが、きっちりしたSFドラマには向いている気がしないでもない。なお、ラスト2話には、アライダ・ケイコ役の竹内結子も登場する(7、9、19、21、22話に出演。9話ではほぼ主役)。

(大森望)

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