史上初、文学賞贈賞式をニコ生で中継

文=大森望

 去る6月25日、ホテルオークラ東京で開催された新潮三賞(新潮文芸振興会主催の三島由紀夫賞・山本周五郎賞と、川端康成記念会主催の川端康成文学賞)贈呈式が、ニコニコ動画の「ニコニコ生放送」で初めてライブ中継された。
 芥川賞・直木賞はじめメジャーな文学賞の贈賞式にTVカメラが入るのは珍しくないし、本屋大賞などでは贈賞式のネット中継も行われているが、ニコ生で1時間にわたりまるまる生放送したのは今回が初めてだろう。
 第23回三島賞を『クォンタム・ファミリーズ』で受賞した東浩紀が挨拶に登壇するとニコ生視聴者もヒートアップ。娘からの花束贈呈を受けたあと、「小説に登場する汐子のモデルです」と言って抱き上げ、場内とネットを沸かせた。
 生中継の視聴者は最大時で2500人以上。川端賞を「トモスイ」で受賞した高樹のぶ子が登壇すると、「綺麗」「奇跡の64歳」「64歳の萌えキャラである」「おれのばあちゃんになってくれ」「勝間のが若いけd、こっちが断然いい」など、いかにもニコ動らしいコメントが画面を埋めた。
 第23回山周賞を『光媒の花』で受賞した道尾秀介がスピーチで披露したタクシー車内のエピソード(「[三号線を]越えてないですよね」を「[屁を]こいてないですよね」と聞き違えた話)では、本人がオチを言うより先に、ニコ動のコメントがオチを先取りするひと幕も。もっとも、スピーチ自体はおおむね好評で、ニコ生の番組としても人気を集めた。
 主催の新潮社サイドも、予想以上に大きな関心が集まったことに手応えを感じた様子。今後、文学賞が中継される機会もドンドン増えてくるかもしれない。いやそれより、芥川賞・直木賞選考会の模様をニコ生で中継したら、何万人でも視聴者が集まりそうだが......。
(大森望)

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