【【文学賞記者日記2016 11/18 第29回小説すばる新人賞贈賞式レポート】】16歳の新人作家、登場「『2分ぐらいここでしゃべれ』と言われて、『マジか!?』と」

文=大森望

 ジャンルを限定しない長編小説の新人賞でいちばん打率が高いのは、集英社の小説すばる新人賞だろう。花村萬月、篠田節子、佐藤賢一、村山由佳、荻原浩、熊谷達也、堂場瞬一、三崎亜記、天野純希、千早茜......と錚々たる顔ぶれを輩出。ここ数年でも、朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』(09年)や櫛木理宇『赤と白』(12年)が受賞している。

 その最新受賞作が、青羽悠『星に願いを、そして手を。』。

 中学生最後の夏を過ごす4人と町立科学館をめぐる青春小説だが(小説すばる12月号に抄録。単行本は2017年2月刊行予定)、話題を集めたのは、著者のプロフィール。2000年、愛知県生まれの16歳、高校2年生。なにしろ「受賞の言葉」の書き出しにいわく、

「二百万円という賞金に、僕よりも友達の方が目をギラギラさせています。学園祭の打ち上げでクラス全員に焼肉を奢らされそうになりました」

 この高校生らしさは、贈賞式のスピーチでも変わらず、

「担当の方に『2分ぐらいここでしゃべれ』と言われて、『マジか!?』と。こんな大人の方に囲まれて高校生が何をしゃべればいいんだと悩みました。

 と切り出す。もっとも、最後は作家らしく、

「この小説を簡単に吹き飛んでしまうようなものにしてたまるかとずっと思って書いてきた。それが伝わったのならうれしい」と語り、「未熟さも含めていただけた賞なのかと思っています。すこしずついろんなことをがんばって----まずは受験をがんばらないといけないですが----面白いものを書いてきたいと思います」

 メジャーな文学賞を高校生以下で受賞したと言うと、過去に、文藝賞の堀田あけみ「アイコ十六歳」、綿矢りさ「インストール」、羽田圭介「黒冷水」、三並夏「平成マシンガンズ」などの例があるが、小説すばる新人賞ではこれが初めて。
『星に願いを、そして手を。』の刊行と、青羽悠の今後の活躍が楽しみだ。

(11/18 帝国ホテル東京にて)

(大森望)

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