【今週はこれを読め! エンタメ編】ちょっと違う青森にバスで行く〜能町みね子『デッドエンドで宝探し』
文=高頭佐和子
青森。私にとっては、素敵な書店員たちががんばっている場所である。そして、毎年元同僚の農園からすっごく美味しいリンゴを購入させてもらっている。旅行したことは数回しかないのだけれど、勝手に親しみを感じている県だ。いつかまた行ってみたい。その時の参考にという気持ちもあって、この本を手にとったのだが......。
数年前から1年の1/3くらい(冬以外)を青森に住んでいるという著者が訪れるのは、県内にあるさまざまな「行き止まり」なのだ。有名観光地からは離れていそうなハードル高めの場所ばかりなんだけれど、目的地までは基本バスを使うという著者の方針が、運転免許のない自分にはツボにはまった。インパクトのある写真とユニークな目のつけどころが愉快な一冊だ。
下北半島と津軽半島の間にある「小さなとんがり」夏泊半島の「沖縄的な」景色、「青森の青山」であり「青森のタージマハル」でもあるのどかな墓地・三内霊園、小泊の漁港に並ぶさまざまなデザインの大量の小屋たちとレトロな喫茶店。青森と聞いて思いつくのとはちょっと違う景色に驚かされる。青森市内のスーパーの漬物コーナーを占拠しているというヤマモト食品(若社長がいいキャラ)の「ねぶた漬」も気になる! これ、絶対に美味しいやつだよね。
そして、あちこちにある「謎バス停」を調査するシリーズが面白い。最も衝撃的だったのは青森の「東京」についての章である。のどかな山裾の集落になぜか「東京線三叉路」というバス停がある。なぜ東京?そこに何がある? 分からないままに著者は現地を訪れるのだが、村の人からあっさりと妙な命名の由来を聞き出し、さらに驚きの(そして脱力の)展開が......。ええっ!そんなことってある??と思わず叫んでしまいましたよ。気になる方は、ぜひ65ページからを読んでください。
「いつまでもあると思うな親とバス停」という著者の言葉にハッとした。取材時にはあったバス路線が、本になるまでの間にどんどん廃止になったり短縮しているという現実があるのだ。いつか行ってみようなんて思っていても、なくなってしまうのかも。そして、「残念」だけですまない思いをしている人もいるんだよね......。
そんなこともいろいろ考えさせられつつ、小泊への行き方やら宿泊場所を調べて妄想旅行を楽しんだり、ねぶた漬を通販で購入しようとしている私であった。
(高頭佐和子)

