【今週はこれを読め! エンタメ編】『本を読むのが超速い人の頭の中ってどうなってんの殺人事件』に脱帽!

文=高頭佐和子

  • 本を読むのが超速い人の頭の中ってどうなってんの殺人事件
  • 『本を読むのが超速い人の頭の中ってどうなってんの殺人事件』
    白井智之
    実業之日本社
    660円(税込)
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 ここ数年の間にいくつか刊行されたやたらちっこい本を、皆さんはご覧になったことがあるだろうか。手のひらに乗るサイズで、厚みもあまりない。本というよりは小さいメモ帳のような感じだ。

 正直にいうと、読者としてこういう本を読みたいと思ったことはない。だって、コスパ悪いじゃん。値段は高くないけれど、ボリュームは短編小説程度。だったら文庫買ったほうが良くない? 奇を衒わず、短編集に収録してくれればいいんじゃないかと思ってしまう。売り手としては、新しい形態を面白がりたいという気持ちはあるけれど、何度もやらなくていいのではないかと思う。売れるっちゃ売れるんだけど、単価安いし管理するのが結構難しいのだ。こういうのがあまり増えすぎるのも困るんだよね。

 といいつつもこの本を読んでみようと思ったのは、私は本を読むのが速い方ではなく、「超速い人の頭の中」に興味があったからである。ちょっくら好奇心を満たすために、サクッと読んでみよう。そんな気持ちで手に取ったのだが......。

 文庫本が放り投げられるシーンから始まる。二人の男が誰かの殺人を計画をしている最中のようだ。本を投げるのは許せん。バチが当たってしまえ......などと思っているうちに場面は変わり、今度は少年が登場する。ただの子供ではなく、地球防衛軍情報戦略部の一員なんだとか。司令官からの依頼で、地球人になりすましている宇宙人のアジトを、自分の部屋から望遠鏡を使って監視しているそうだ。宇宙人っていっても、部屋でパソコンをいじったり文庫本を読んだりしているだけみたいだけど......。少年の妄想なのか? そして、殺人事件が起こる。被害者は、著名な「速読の達人」の甥である会社社長。事件を捜査するのは、本を読むのがあまり早くない読書好きの刑事である。短い小説だけど、人間関係は結構複雑だ。やたらと本が出てくるのが気になるなあ......なんて思いながら読んでいったが、ちっこい本なので、あっという間に事件は解決する。

 最後まで読むと「おおおおっ!そういうことだったのか!!」と、拍手をしたいような気分になっていた。この小説は、短編集とかに収録できない。ちっこい本に書かれていることが重要なのだ。最後の数ページは、もうニヤニヤが止まらない。著者のウィットに脱帽である。

(高頭佐和子)

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