作家の読書道 第241回:織守きょうやさん

2012年に『霊感検定』で大14回講談社BOX新人賞Powers、15年に『記憶屋』で第22回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞、後者は映画化もされた織守きょうやさん。昨年話題になった『花束は毒』のように驚愕の結末が待つミステリから、霊の記憶が視える探偵が主人公の『ただし、無音に限り』シリーズのように不思議な要素を盛り込んだ作品まで、さまざまなテイストを生み出すその源泉にある読書遍歴とは? リモートでお話をうかがいました。

その1「好きな作品はいろんな翻訳を読む」 (1/7)

  • ノンタンぶらんこのせて (ノンタン あそぼうよ1)
  • 『ノンタンぶらんこのせて (ノンタン あそぼうよ1)』
    キヨノ サチコ,キヨノ サチコ
    偕成社
    660円(税込)
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  • The Very Hungry Caterpillar (Big Board Book)
  • 『The Very Hungry Caterpillar (Big Board Book)』
    Carle, Eric
    Puffin
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  • 若草物語―少年少女世界名作の森〈4〉
  • 『若草物語―少年少女世界名作の森〈4〉』
    ルイザ=メイ=オルコット,山内 亮,Louisa May Alcott,植松 佐知子
    集英社
    1,045円(税込)
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  • 小公女―少年少女世界名作の森〈6〉
  • 『小公女―少年少女世界名作の森〈6〉』
    フランシス・ホジソン バーネット,林 寿恵,Frances Hodgson Burnett,大島 かおり
    集英社
    1,045円(税込)
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――織守さんはプロフィールに「ロンドン生まれ」とありますね。いつまでそちらにいらしたのですか。

織守:5歳までイギリスにいて、小学校の6年間は神戸、中学の3年間はドイツ、高校の3年間はイギリスという感じです。

――なるほど。では、いちばん古い読書の記憶といいますと。

織守:本当に古い読書というと、たぶん幼児の頃の『ノンタン』シリーズかなと思います。もしくは、今はミッフィーと呼ばれていますが、当時は「うさこちゃん」で知られていたディック・ブルーナの絵本シリーズで、それらを同じくらいの時期に繰り返し読んでいました。どちらも日本語版だったので、たぶん送ってもらったものだと思います。『はらぺこあおむし』も憶えていますが、これは英語版だった気がします。簡単な英語なので自分でも読めたのかな、と。

――小さい頃、家では日本語、外では英語を使っていた感じですか。

織守:そうですね。そうはいっても最初にロンドンにいたのは5歳までなので、たいした英語は喋ってないんです。幼稚園で先生と話すくらいで、それほど英語力の貯金もないまま日本に戻ってきました。

――日本に戻ってきからの読書生活は。

織守:本は好きだったんですがお小遣いをもらっていなかったので、図書室にある本や親が買ってくれる本を読んでいました。よく本ならなんでも買ってもらえたという人もいますが、私は際限なく欲しがるので、そういうことはなかったです(笑)。図書室で読んだ気に入った本をどうしても所有したいと親に言って、ようやく買ってもらったり、お年玉をためて自分で買ったりして。だから、そんなにいっぱい持っていたわけではないです。
 小学生時代は、今でいうヤングアダルトとかライト文芸みたいなものをよく読んでいました。表紙が漫画のような、可愛いイラストのものが多かったですね。あまり手元に残っていないんですが、これとか(と、モニター越しに本を見せる)。

――『ぼくの・ミステリーなあいつ』、さとうまきこさん、偕成社。

織守:これは図書室で順番待ちをして読んで、自分でもほしいと思った本です。ちょっとSFが入った児童書ですね。他には、コバルト文庫から出ていた日向章一郎さんの「放課後シリーズ」とか。『放課後のトム・ソーヤー』や『放課後のハックルベリィ・フィン』といったタイトルの、ライトミステリのシリーズです。これも表紙が可愛いイラストでした。頭がいい女の子が探偵役で、すごく魅力的だったので、憧れながら読んでいました。
 それと、藤川桂介さんの『宇宙皇子(うつのみこ)』シリーズ。小学生が読むにはちょっと難しいけれど、アニメ映画を観てから角川文庫を買ってもらいました。でもどんどん難しくなるのでシリーズの最後までは読めなかった気がします。

――海外の小説はいかがですか。

織守:集英社の「少年少女世界名作の森」という名作全集で『若草物語』や『小公女』などを読みました。『小公女』がものすごく好きで、いろんな出版社の版を読みました。日本では馴染みのない食べ物の訳が、ちょっとずつ違うんです。ある本では「ミートパイ」と書かれた食べ物が、別の本では「肉まんじゅう」とあって、なんで違うんだろうと思って。後にまた海外に行った時に原書を見たら「mince pie」とありました。ミンスパイってミートパイではないのにミンチと間違えて訳したのかな、と思ったりしていました。

――同じ作品を違う訳で読んでいたとは。

織守:子どもの頃からオタク気質がありました(笑)。といっても、その世界を何度も味わいたいけれど同じ版を繰り返し読んでも飽きるから違う版を読んでいただけで、比べようという気はなかったです。子どもの頃は同じ本を繰り返し読んでいたんです。
 他には、魔法や架空の世界の話が好きでした。学研の「新しい世界の童話」シリーズから出ているプロイスラ―の『小さい魔女』とか、那須田淳さんの『ボルピィ物語』とか。ウェルズの『魔法を売る店』も好きで、当時は楽しいなと思って読んでいましたが、いま思うと結構、SFというかホラーなんですよね。大人向けの話を子ども向けに訳したのかなと思います。
 赤い鳥文庫から出ている舟崎克彦さんの『仙人になる方法』も好きでした。中国の古い時代に、男の子が仙人に弟子入りして修行する話です。魔法とか妖精が好きという流れで仙人の話に惹かれたんですよね。
 食べ物が美味しそうな作品も好きでした。『小公女』もそうですし。青い鳥文庫の『オズの魔法使い』も、意外に食べ物が美味しそうなんですよね。「オズ」のシリーズは3作目の『オズのオズマ姫』くらいまでしか読んでいない人が多いと思うんですが、私はオタクだったので『オズのエメラルドの都』や『オズの魔法使いとグロリア姫』などの続篇も繰り返し読みました。
 ローラ・インガルス・ワイルダーの『大きな森の小さな家』のシリーズも大好きで、いまだに読み返します。これは大人になって違う版のものや絵本版も買いました。生活が細かく書かれたものが好きで、何度も読んでしまいます。
 他には『十五少年漂流記』や『メアリー・ポピンズ』とか。好きだった本はいっぱいありますね。

  • 小さい魔女 (新しい世界の童話シリーズ)
  • 『小さい魔女 (新しい世界の童話シリーズ)』
    オトフリート・プロイスラー,ウィニー・ガイラー,大塚 勇三
    学研プラス
    990円(税込)
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  • 大きな森の小さな家 ―インガルス一家の物語〈1〉 (福音館文庫 物語)
  • 『大きな森の小さな家 ―インガルス一家の物語〈1〉 (福音館文庫 物語)』
    ローラ インガルス ワイルダー,ガース ウィリアムズ,恩地 三保子
    福音館書店
    660円(税込)
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  • 十五少年漂流記 (新潮文庫)
  • 『十五少年漂流記 (新潮文庫)』
    ジュール・ヴェルヌ,完治, 波多野
    新潮社
    440円(税込)
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  • 風にのってきたメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)
  • 『風にのってきたメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)』
    P.L. トラヴァース,メアリー・シェパード,Pamela Lyndon Travers,林 容吉
    岩波書店
    792円(税込)
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