第247回:高瀬隼子さん

作家の読書道 第247回:高瀬隼子さん

2019年に『犬のかたちをしているもの』で第43回すばる文学賞を受賞してデビュー、今年、3作目の『おいしいごはんが食べられますように』で第167回芥川賞を受賞した高瀬隼子さん。現代が抱える違和感や悩みを丁寧に描いて支持を得る高瀬さんの読書遍歴、作家になるまでの経緯とは? 貴重な私物の本もたくさん持参してお話してくださいました。

その2「好きだった絵本や漫画」 (2/6)

  • ONE PIECE 1 (ジャンプコミックス)
  • 『ONE PIECE 1 (ジャンプコミックス)』
    尾田 栄一郎
    集英社
    484円(税込)
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  • 名探偵コナン (1) (少年サンデーコミックス)
  • 『名探偵コナン (1) (少年サンデーコミックス)』
    青山 剛昌
    小学館
    499円(税込)
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  • 君に届け 1 (マーガレットコミックス)
  • 『君に届け 1 (マーガレットコミックス)』
    椎名 軽穂
    集英社
    484円(税込)
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  • よつばと!(1) (電撃コミックス)
  • 『よつばと!(1) (電撃コミックス)』
    あずま きよひこ
    KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
    660円(税込)
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――小学校時代、他に好きだった本は。

高瀬:絵本も好きだったんです。絵本作家になりたいとも思っていたんですけれど、絵が全然描けなくて諦めました。
 この絵本が大好きでした(と、本を見せる)。立原えりかさんの『大あたり アイスクリームの国へごしょうたい』。私はご飯はそんなに好きではないんですけれど、アイスはこれのおかげで好きなんです。1日1個食べたくなります。
 男の子がアイスクリームを買って食べたら、フタの裏に「大あたり」と書いてあって。招待状がきて朝いちばんのバスに乗ると、シロクマたちが働くアイスの工場に着いて、美味しそうなアイスが出てきて、おみやげにアイスの種をもらうんです。その種をアイスの空き容器に入れておくともう1個アイスができるという。

――(本を見ながら)可愛いですね。

高瀬:これのおかげで、大人になってもアイスを食べるとフタの裏を見てしまいます。すごく好きでずっと手元に置いてあります。あ、「全国学校図書館協議会選定図書」って書いてありますね。学校で買ったのかな...。

――学校で買った、とは?

高瀬:夏休み前とかに、1枚の本のカタログみたいなものが渡されるんですが、そこに「〇年生ならこの本がおすすめ」みたいなことが書いてあるんです。親にお金をもらって申し込むと、夏休み前に学校に本が届くんですよ。堂々と本を買ってもらえるチャンスでした。
 他に、この絵本も好きでした(と、本を出す)。

――ジミー『君といたとき、いないとき』。

高瀬:台湾の絵本作家さんらしいです。当時は知らなくて、大人になってからちゃんと「ジミー」で調べて知りました。お月様が空から落ちて来て、男の子が拾っておうちに連れて帰るんです。他のみんなは空を見上げて月がなくなっちゃった、どうしようとなって、工場でいっぱい月を作る。男の子のほうは、月が元気になったら空に浮かべてあげようとしていて...という話です。ざっくり言っちゃいましたけれど。

――(めくりながら)めちゃくちゃ絵がきれいだし、隅々まで丁寧に眺めたくなりますね。

高瀬:そうなんです。私も家でずっと眺めていました。このジミーさんの絵本は何冊かあって、田舎でも売っていたんです。本屋さんの小説の棚を舐めるように見た後に店内をぐるぐる歩いていたら見つけました。奥付を見ると2001年発行なので、小6か中1だったんだと思います。ジミーさんの『君のいる場所』という絵本もすごく素敵です。

――小説以外で、漫画などは読みましたか。

高瀬:漫画は好きなんですけれど、詳しくないままここまで来てしまいました。本屋さんに行っても、小説の棚は舐めるように端から端まで見るけれど、漫画は平積みのところしか見なかったんですよね。なので、知る人ぞ知る、みたいな漫画は通らないままです。
 好きなのは、小学生の頃から読み続けている『ONE PIECE』、『名探偵コナン』、『君に届け』とか、『よつばと!』、『ちはやふる』、『暗殺教室』、『バクマン。』、『BEASTARS』......有名な作品ばかりですよね。
 私は雑誌も「花とゆめ」を買っていたんですが、弟は特に漫画雑誌は買わず、ふたりでコミックスを集めていましたが、私が大学進学で実家を出る時に、全部持ってきてしまいました。『ONE PIECE』も全部...(笑)。
 いま単行本が出ると買っている漫画は、ヤマシタトモコさんの『違国日記』と、堀尾省太さんの『ゴールデンゴールド』。『ゴールデンゴールド』はフクノカミが海に落ちていて、瀬戸内海の小さな島に住む女の子が拾ったところ、その子のおばあちゃんの民宿にいっぱい人が来るようになるんです。それがどんどんエスカレートして......という。

――小さな書店さんの棚を舐めるように見ていたのなら、本の並びまで憶えそうですね。

高瀬:めちゃくちゃ憶えています。「この本この棚に1年あるな」とか分かっていました。東京に出てきてジュンク堂さんとかに行くと、こんなところに子供の頃から通っていたらどうなっていたんだろうと思います。10歳くらいの自分がそんな大きな書店でちゃんと本が探せたか分かりませんが、でもすごくワクワクしただろうなと思います。

――今振り返ると、どんな子どもだったと思いますか。

高瀬:すっごくおとなしい子でした。本が好きで、でも休み時間には、浮かないように、女の子と一緒にトイレに行っていました。浮かないように、浮かないようにと思って過ごしていました。たぶん、小学校の同級生に憶えられていないんじゃないかな。いちばん引っ掛かりのない子だったので。先生たちも、真面目で問題を起こさなかった子って忘れると思うんです。

  • ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)
  • 『ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)』
    末次 由紀
    講談社
    239円(税込)
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  • 暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)
  • 『暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)』
    松井 優征
    集英社
    484円(税込)
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  • バクマン。 1 (ジャンプコミックス)
  • 『バクマン。 1 (ジャンプコミックス)』
    小畑 健,大場 つぐみ
    集英社
    440円(税込)
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  • BEASTARS 1 (少年チャンピオン・コミックス)
  • 『BEASTARS 1 (少年チャンピオン・コミックス)』
    板垣 巴留
    秋田書店
    499円(税込)
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  • 違国日記 1 (フィールコミックス FCswing)
  • 『違国日記 1 (フィールコミックス FCswing)』
    ヤマシタトモコ
    祥伝社
    748円(税込)
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  • ゴールデンゴールド(1) (モーニング KC)
  • 『ゴールデンゴールド(1) (モーニング KC)』
    堀尾 省太
    講談社
    682円(税込)
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