第291回:砂村かいりさん

作家の読書道 第291回:砂村かいりさん

小説投稿サイト「カクヨム」の第5回カクヨムコンの恋愛部門で、『炭酸水と犬』『アパートたまゆら』が特別賞をダブル受賞。二作とも書籍化されてデビューをはたした砂村かいりさん。恋愛小説に限らず、現代社会を生きる人々の葛藤や再生を丁寧に描く著者は、どんな本を読み、影響を受けてきたのか。愛読書について、たくさんの書名を挙げてくださいました。ご堪能あれ。

その4「中学生時代の読書生活」 (4/9)

  • 笑うな (新潮文庫)
  • 『笑うな (新潮文庫)』
    筒井康隆
    新潮社
    737円(税込)
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  • 家族八景 (新潮文庫)
  • 『家族八景 (新潮文庫)』
    筒井康隆
    新潮社
    737円(税込)
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  • 七瀬ふたたび (新潮文庫)
  • 『七瀬ふたたび (新潮文庫)』
    筒井康隆
    新潮社
    781円(税込)
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  • エディプスの恋人 (新潮文庫)
  • 『エディプスの恋人 (新潮文庫)』
    筒井康隆
    新潮社
    693円(税込)
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――中学時代の読書生活は。

砂村:中2の時、担任の女性の先生が、学級文庫に自宅から持参した本を置いてくれたんです。その中で、筒井康隆に初めて触れました。まず『笑うな』を読んだんですよね。なんてシュールでおもしろいんだと痺れてしまって、そこから自分でも買うようになり、有名な七瀬シリーズも読みました。『家族八景』、『七瀬ふたたび』、『エディプスの恋人』ですね。その学級文庫には赤川次郎のミステリもたくさんありました。公文の本棚にも赤川次郎はあったので、この時期、浴びるように赤川作品を読んでいました。中でも「天使と悪魔」シリーズがおもしろかったですね。天使と悪魔が一致協力して殺人事件の犯人捜しに乗り出すという。
学級文庫にあった中では、影山民男の『遠い海から来たCoo』も印象に残っています。自分は恐竜が好きな子どもだったので、フィジーの海で少年が恐竜の赤ちゃんを拾うという冒頭からわくわくして引きこまれました。映画版も観に行きました。
やっぱり、ファンタジーやSFが絡むものが好きだったんですね。自分ではそういうジャンルを全然書かないので不思議ですよね。でもファンタジーって、想像力を広げてくれる装置みたいな役割をするんじゃないかと思っています。子ども時代にそういう要素に触れてきたことが、今の自分にものすごく大きく作用していると思います。
それと、これは家の本棚にあったものですが、北杜夫の『ぼくのおじさん』。小学生の「ぼく」のおじさんが、本当に冴えない人なんですよね。子どもに尊敬されない大人を主人公にして書くというシュールさがおもしろかった。文学ってこういうアプローチもあるんだなと知りました。その後、北杜夫にどんどんはまっていって、エッセイの「どくとるマンボウ」シリーズも読みましたし、小説の『夜と霧の隅で』や『怪盗ジバコ』など、さまざまに楽しみました。

――海外作品は読みましたか。

砂村:中学時代には、幼い頃に触れた名作を大人向けの体裁のもので読み返していました。『赤毛のアン』とか『若草物語』とか『あしながおじさん』とか。『赤毛のアン』は、マシューが死ぬところで本を伏せて号泣しました。マシューが「1ダースの男の子より女の子のお前がいいんだよ」「俺たちの娘はアン・シャーリーなんだよ」と言って......もう、いつ思い出しても泣いちゃいます。

――中学時代、部活はどうされていたのですか。

砂村:美術部に入って、油彩画や水彩画を描いたりしていました。けれど、アニメおたくの友人たちがノートにイラストを描く以外はひたすらお喋りに興じていて、それに影響されて自分も真面目に筆をとらなくなってしまって。そのことはだいぶ後悔しています。
油彩と水彩はちょっとずつ作品を完成させましたが、本当は小学生の頃から漫画家になりたい気持ちがあったんですよね。でも、親が漫画を読むことはおろか描くことも禁止していたんです。特に母親が、少女漫画を嫌悪していました。主人公たちが恋愛しかせず、好き嫌いばかり言い合っているイメージを持っていたようです。少女漫画ってそれだけじゃないのに。母は、子どもが性的に成熟することを異常に怖がっていたところがありましたね。画材屋でGペンやインクを買って机の引き出しにそっとしまっていたんですけれど、母に見つかるといけないので、とうとう一度もペンをインクに浸すことはしませんでした。今ではそこまで怖れなくてもよかったのにと思うけれど、当時はどうしても抗えない圧を感じていました。子どもの机の中まで全部見るような親だったので、まったくプライバシーが守られなかったんです。わたし宛に友達から手紙が届くと勝手に封を切って読むくらいの人でした。交換日記も全部読まれていました。だから、こっそり漫画を描いても見つかって文句を言われるんだろうと思い、鉛筆でさささっと絵を描いてすぐ捨てる、みたいなことしかできなかったですね。

  • 遠い海から来たCOO (角川文庫)
  • 『遠い海から来たCOO (角川文庫)』
    景山 民夫,宇野 亜喜良
    KADOKAWA
    880円(税込)
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  • 夜と霧の隅で (新潮文庫)
  • 『夜と霧の隅で (新潮文庫)』
    北杜夫
    新潮社
    737円(税込)
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  • 怪盗ジバコ (文春文庫 101-1)
  • 『怪盗ジバコ (文春文庫 101-1)』
    北 杜夫
    文藝春秋
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  • あしながおじさん
  • 『あしながおじさん』
    ジーン・ウェブスター,岩本 正恵
    新潮社
    649円(税込)
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